空と傷

Kyrie

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第43話

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和やかにダ・カンの屋敷で3日間を過ごしたルーポとカヤはそこを出ると、新しい生活を始めた。

ルーポは薬局やくきょくに通いながら、王宮の宰相や薬局長サキムにエトコリアでのことを話した。
メリニャでは効能を知られていなかった植物。
養蜂。
植物の繊維で作る紙。
軟膏。
薬としてではなく、日常に取り入れて病気を防いでいるハーブの使い方。
恐ろしく細い繊維でできた妖精国の布。

その報告はマグリカ王も関心が高く、時間が合えば短い時間でも聞きにきていた。
それらは全て記録としてまとめられ、有益そうなものは王と宰相が専門の職人に相談したり、試してみたりしていた。
サキムは植物油を使った軟膏の研究を進めてみることにした。


薬局でルーポは注文があった薬を調合し、新しい薬の調合のしかたをサキムと共に他の薬師に教え、合間に痛み止めや手荒れの軟膏などの自分の研究をした。


カヤはルーポの護衛をしながら、時には訓練所に顔を出すことになった。
優秀な指導者でもあるカヤが抜ける穴は大きく、それを補充できる人材が見つからなかった。
騎士として自分の技を磨くためにも、カヤにとってよかった。
久しぶりに騎士としての訓練に参加したが、驚くほど身体の切れはよく動きもしなやかで、痛みがなかった。
自分自身でも驚き、再び騎士として務めることができることに感謝した。
やはり騎士として剣を握ることを手放したのは、カヤにとって歯がゆく悔しいことであった。
カヤがルーポに感謝の言葉を言うと、ルーポは涙を浮かべて喜んだ。






それからルーポはマグリカ王から新しい家の希望を聞かれた。
ルーポは「2人で住むんだから」とカヤの意見も聞こうとしたが、「俺は屋根とベッドがあって眠れればそれでいい」と言うだけだった。
ルーポは「壁が全部棚なのがいいなぁ。大魔術師様のお部屋がそうなっていたんですよ。たくさんものが入るし、本も薬草も上皿天秤も乳鉢も全部そこに収められるんです」とうっとりと語り出すと、その世界に入ってしまい、考えをまとめることができなかった。
カヤが「いいな、それ」と相槌を入れながら聞いてやる。
「カヤ様もいいと思いますか。ふふふ。それでですね」と続き、家と薬草園についての夢を描く。
カヤがそれを羊皮紙にまとめて書いてやった。

カヤが要望を提出したときに、ちらりと羊皮紙を覗いたクラディウスは苦い顔をした。

「いくらかかると思ってるんだ」

「そんなことは度外視ですよ。
ただ夢を語らせました」

カヤは飄々とした様子で言った。

「まぁ、イリヤが残した財産も結構な額だったし、足りないところは王がなんとかするかもしれないな。
とりあえず、このまま王に提出してみよう」

「ありがとうございます」

「家具までは手が回らないかもな」

「その分は私が」

クラディウスはカヤが長年傭兵をしていたことを思い出した。

「ならば安心だな。
多少は私からも出そう」

「ありがとうございます」

カヤはクラディウスに礼を言った。






家ができるまではルーポの住居として、クラディウスの屋敷の広い客室の一つが提供された。
案内したのはクラディウスの伴侶であり、うた巫人みこのインティアだった。

「この部屋がいいと思うんだけど、どう?」

ドアを開けてルーポとカヤに中を見せると、ルーポはその豪華さに驚いた。

「あ、あの、落ち着きません」

「なに言ってるの。
すぐに慣れるよ。
ルーポはこれから忙しくなるんだから、いいベッドで寝なくちゃね。
この部屋のベッドが一番寝心地がいいんだよ」

インティアはルーポの手を引いて中に入るとベッドに一緒に座り、その弾力を試すようにふかふかとベッドを揺らしてみた。

「カヤもきっと気に入ると思う」

「私、ですか?」

「そうだよ。
カヤもここで一緒に暮らすんだから」

「私は寮に部屋があります」

「ルーポの護衛でしょ。
いつでもどこでも一緒にいなきゃ。
それに」

インティアは猫っぽい目を細めて笑う。

「あんなところでセックスしたら、他の騎士が眠れないから」

「せっ!」

一番に反応したのはルーポで、顔を真っ赤にしている。

インティアは立ち上がり、ベッドのそばの小さなチェストのひきだしを引いた。

「ここに潤滑油を入れているから。
なくなったら教えて。
補充する。
ここに入っている布は清潔だから、どんどん使って」

カヤはインティアと一緒にチェストを覗き込んで「ありがとうございます」と平然と言った。

「したあとお風呂も使うでしょ。
うちの人たちはそういうのも慣れてるし。
いつでも入れるようにできるから」

インティアの言う「うちの人たち」はクラディウスの屋敷の使用人のことを指していた。

「な、慣れてる?
なにに?」

ルーポがいっぱいいっぱいになりながら聞いてみる。

「君たちがセックスしたあとすぐにお風呂が使えるように準備したり、使ったあとのシーツを新しいものに交換したり」

「ちょっと待って、待って。
それって、どういう……?」

ルーポの問いにインティアは呆れる。

「お風呂が魔法を使うみたいに勝手に夜中に沸くと思っているの?
セックスが終わるタイミングを見計って彼らが準備しているんだよ。
ダ・カン様の屋敷でもそうだったでしょ」

「?!」

ルーポは悲鳴にならない声を上げる。
インティアは畳み込むように言う。

「貴族の夜の営みについては使用人には筒抜けなんだって。
じゃないといろいろ準備できないでしょ」

「って、ことは、え?
え?
あそこでも、皆さん、僕たちの、その、こと、全部、ご存じ、なんで……すか?」

こわごわルーポはカヤに聞いてみる。

「ああ、そうだ」

涼しい顔をして答えるカヤにルーポは恥ずかしくて両手で顔を覆う。

「やっ、そんな。
もう、どんな顔をしてお会いしたらいいかわからない」

「慣れればどうってことないから。
それに君たちに気づかれないように仕事をするように教育されているから、気にしないであげてよ」

「無理ですぅぅぅ」

ルーポはベッドに倒れ込んで、顔を上げようとはしなかった。




毎夜、ルーポはカヤと抱き合って大きなベッドで眠った。
しばらくはそれでもよかったが、たまに身体が疼いた。
「声が我慢できるように抱いてやろうか」とカヤがルーポの寝衣の隙間から手を滑り込ませながら言った。
ルーポは枕を抱きしめて涙目になりながら、うんうんとうなずいた。
「わかった。声、出すなよ」と優しく頭をなでると、カヤはゆるゆるとルーポを抱いた。
枕に顔を押し付け、時折「……ふ」と熱い吐息を漏らしながら、ルーポが声を我慢しながら感じている様子はかわいらしかった。
カヤは意地悪をせず、優しく優しく抱いてやった。

外に発散しない分、内側のうねりがより大きく溜まっていった。
ルーポは身体のより深いところで快感を感じることを覚えていった。




生活が少し落ち着くとルーポはヴェルミオンに頼んで、髪をまた短く切ってもらった。

「ほんとにいいの?
カヤとは相談したの?」

「カヤ様には相談していません。
必要ですか?」

「まぁ、あんたの自由だけどさ」

「なんだかよくわからないけど、すっきりしたくて。
それにヴェルミオン様に切っていただいた髪型が僕に一番しっくりきたから」

軽やかに笑うルーポにヴェルミオンも「嬉しいこと言ってくれるわね」と笑い返し、ルーポの髪を短く切っていった。

髪が短くなったルーポにカヤは驚いたが、「懐かしいな」と後ろ頭をなでた。
ルーポはくすぐったくて「うひゃひゃ」と笑った。




魔法を使い過ぎて倒れたルーポを医局長のユエと共に診てくれたのは、若い医者のルーだった。
イリヤとユエがメリニャに戻ってきてから医局と薬局は隣り合った建物にまとめられ、医者と薬師の連携がますます計られた。
ルーポと歳が近いこともあって、2人は親しくなった。
あとでルーがヴェルミオンの伴侶だと知り、ルーポは驚いた。
ヴェルミオンはカヤより年上だったし、ルーはルーポより年下だった。
またルーはルーポより小柄な男で、ヴェルミオンと比べ背も随分低かった。

「なんだよ、おかしいかよ」

「いや、びっくりしただけで」

言葉遣いは荒く乱暴なこともあったが、人情味に溢れてルーポと同じく怪我や病から少しでも人を楽にしてあげたいという思いを熱く持っていたので、ルーポは好感を持っていた。
年頃もあるのか、そういう話題になることもあり、ルーはあっけらかんとルーポにカヤとのことをあれこれを聞いてきた。

なにかの拍子に声を我慢してセックスしていることを話したルーポにルーは驚きの声を上げた。

「まじかよ、声出してないのか?!」

「だ、だって恥ずかしいじゃん」

「えー、カヤ様、つまんなくないのかよ」

「ふぁ?!」

「だってよー、せっかくあちこちいじってるんだぜ。
そのときに可愛い声や気持ちよさそうな声が聞こえたら、嬉しいじゃん」

「そう、なの?」

「カヤ様も声、出すだろ」

「……あ」

そういえば、ルーポが声を我慢できるようにと優しく抱くせいか、しばらくカヤの声も聞いていないことにルーポが気がついた。

「貴族のことはよくわかんないけどよ。
屋敷の人のために聞かせるんじゃねーし、カヤ様が喜ぶことをしても、よくない?
声くらい聞かせてやれよ。
ちゃんと俺で感じてくれてんだな、とわかって嬉しいから」



ルーとそんな会話をした日の夜、ルーポはベッドのカヤの腕の中で「したい、です」と囁いた。
カヤはうなずき、無言でルーポの身体をまさぐり始めた。
ルーポは枕ではなくカヤに抱きついて、言った。

「声、出してしたい、です」

「どうした、急に?」

「カヤ様の声も、聞きたい」

「そうか」

カヤがちゅぽっと音を立ててキスをした。

「おまえの声はかわいいからな。
止まらないかもしれないぞ」

ルーポが返事をする前に、首筋や鎖骨に派手な音を立ててキスをしていく。

「うん……僕も、我慢したく、ない」

その言葉を合図にしたように、カヤは激しくルーポを求めた。
これまで我慢していた声が漏れると、カヤの身体がどんどん熱くなった。
ルーポもカヤの大きな乳首を指先でつまんでみた。

「っくぅっ」

カヤの色っぽい声が漏れた。

ルーポの身体がきゅんとした。

かわいい。
カヤ様、かわいい!

もっとさわってみると、堪えられないような切ないカヤの声がする。
腰に衝撃が走る。

や、なにこれっ。

「こぉら、ルーポ。
今日は、大胆だなぁ」

「だって、カヤ様、かわい」

それ以上、ルーポは話すことができなかった。
カヤの唇で口を塞がれ、潤滑油で濡れた指を挿入され、前もこすられる。
しっかりほぐされると、ずぶずぶとカヤが沈められた。

「やぁっ、同時にそんな、あんっ」

「お、まえ、乳首も、感じやすく、なったなぁ」

「そんなこと、言わない、でっ」

「いいじゃないか。
俺に、愛される身体になっていってるんだから」

ぎゅんっとルーポがカヤを締め付けたので「んふぅっ」とカヤの苦しそうな声が漏れた。
その熱い息が耳にかかり、ルーポはまたカヤを締めあげた。
カヤは「くっ」とまた声を上げた。

どうしよう、カヤ様の声だけで、いきそう。

カヤもルーポを欲しがり、がつがつと腰を動かす。
浅いところをこすり上げ、深いところを穿つ。

身体のより深いところに気持ちいいがどんどん溜まっていく。

「ふっ?」

それは初めての感覚だった。

「やっ、やっ、やっ。
カヤ様っ、なにか、くっっ!
ふぅぅぅぅんっっっ!!」

溜まってくる快感にこらえきれず、いったはず。
なのに、いつもの解放感がない。
その代わり、内側を嵐のように荒れ狂う。

「なっ、これ、な」

「ぐぅぅぅっ、ルーポ、おまえ」

「やっ、なにっ、あ」

ルーポの中がひどくうねり、カヤも翻弄される。
熱くとろとろなのにぎゅんぎゅん締め付け、言葉に表せない刺激で包まれる。

「おまえ、出さずにいった、のか」

「へ?」

「中、すごい、ぞ。
どうにか、なりそ」

「ふぅぅぅっ」

「ぐっ、あ、だめだ。
でるっ」

どぷんっと大量の液体が吐き出されてことがわかった。
ルーポの快感はまだ続いていた。





声を出さずに抱き合っていたときは、ルーポの吐き出したものはひきだしの布で受け留めていた。
カヤもルーポの中でいくことはせず、抜き、ルーポの腹や背中に吐き出し、それを布で拭き取ったあと、水で濡らした布でもう一度拭いていた。

が、今回は身体中がべとべとになった。
初めての吐精なしでいってしまったルーポはぐったりとしている。
カヤがルーポを抱き上げ、部屋についている浴室に行くと風呂が準備されていた。
意識があるルーポは恥ずかしくなってしまった。
カヤが中に吐き出したものを掻き出し、身体を洗い、ルーポを抱えてゆったりと湯船に入った。
大きく息をつき、ルーポはようやく身体を緩めた。







半年を過ぎるまで、ルーポとカヤのこの生活が続いた。
やがて、ルーポの家が出来上がった。
家具はカヤと一緒に街の職人のところに見に行った。
素朴なつくりだが、頑丈な木材でできた家具が気に入り、そこでベッドやテーブル、椅子を買った。
ルーポは自分で買うと言い張ったが、「おまえは家を作った。家具は俺が準備する。それでいいだろ?」とカヤに押し切られる形になった。
「ずっと一緒に使うものをルーポに贈りたいと思うのは、いやか」と聞かれると、ルーポは首を横に振るしかなかった。
特に椅子とベッドにカヤはこだわって選んだ。


家には小さいがゲストルームを作った。
叶わないとは思ったが、いつかマーガスとアキトが来た時に使ってほしかった。
それを聞いてカヤは、少し寂しそうなルーポを抱き寄せ「その2人に会ってみたいな」と言った。

一番凝ってあるのはルーポの作業部屋だった。
大魔術師の部屋のように壁は棚になっていて、たくさんのものが収納できた。
作業台は広く、明り取りの窓は広く開いていた。
ルーポは嬉々として今持っている少ない持ち物を大切に置いた。




新しい家への引っ越しはたくさんの人が手伝いに、あるいは挨拶をしにやってきた。
賑やかな時間だった。
日がかげりようやく客がいなくなると、ルーポはカヤと2人きりになった。
なんとなく物寂しくなり、2人は肩を寄せた。
ルーポの空色の瞳がカヤを見上げた。
右頬の傷を視線でたどると黒曜石の瞳にぶつかる。
カヤは満足そうに微笑んだ。

「やっと始まりますね」

「そうだな」

「楽しみだな」

ルーポの明るい声に、カヤが楽しそうに笑った。









<了>





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