白妙薄紅

Kyrie

文字の大きさ
上 下
13 / 23

十二、

しおりを挟む
飯田橋いいだばしの次は、両替商の旦那の掛川かけがわが白妙を召した。
座敷に上がり、挨拶をし、掛川が静かに酒と料理を楽しむ前で、白妙は弟たちの助けを借りて、渾身の思いを込め、舞い歌った。
掛川はそれを見て、大きくうなずいたり、手を打ったりした。
一通り終わると白妙をそばに召し、酌をさせた。
まだ慣れぬ手つきで神妙な表情をし酒を注ぐ白妙をじっくり見ていた。
その視線に気がつくと、白妙は頬を染めた。

「すみません。
まだ慣れておりませんで」

「かまわないよ。
陰間になってから日が浅い。
そういう初々しい動きも愛らしいよ」

「お恥ずかしい限りです」

「すぐに慣れるよ。
嬉しいような、惜しいような、そんな気分だがね」

「そうなのですか」

「そういうのを愛でるやからもいるということだよ。
たどたどしい仕草が可愛らしくて仕方がない。
私は白妙の初々しさも、先で見られるであろう慣れた所作もきっと好きだよ」

「ありがとうございます」

ぽっと顔中を赤らめ、白妙は頭を下げた。

「ところで、今日の着物は誰が選んだんだい」

茄子紺の着物は紅葉と桜の織模様が入っていて、光の加減で秋と春とが浮き出て見えた。
それに縞の粋な帯を結び、髪の挿物は全て銀細工であった。

「うちの番頭と相談して、旦那様がお好きだと思いまして」

これまでは華やかな着物だったのに、今日はいらないものを削ぎ落した随分大人っぽい様子であった。

「お気に召しませんでしたか」

「いや、嬉しいよ。
ただ、おまえにはまだ早いと思う」

幼さがたっぷりと残る白妙にしては粋すぎた。
しかしその分、目元と唇の紅が引き立ち、白妙の内側にある大人の色気が漏れ出ていた。

「私の好みより、おまえが好きな着物を着ておいで。
どんな白妙でも私はおまえを好いているよ」

「はい」

「似合っていない、とは言っていないから、そこは誤解しないでおくれ」

「はい」

「幼さがなかったら、このまま地獄に落ちてもかまわないと思ってしまいそうなほど、この着物を着たおまえの色香は強烈なんだ」

「まぁ、恐い」

掛川は白妙の手を取り、膝の上でぎゅっと握った。
白妙は掛川に寄り添った。

掛川は弟たちに控えの間に下がるように言った。
弟たちの姿が消えると、控えの間で歓声が上がった。
不思議そうに控えの間に視線をやった白妙に、掛川が滅多に目にすることのない舶来の菓子を用意させたことを話すと、「ありがとうございます」と白妙は礼を言った。

「もちろん、おまえのもあるよ。
帰りに持って帰るといい」

「はい」

「さ、おいで」

掛川は立ち上がり、白妙の手を引いて次の間へ歩いていった。
緋色のしとねのそばまで来ると、掛川は帯を解いてやった。
それからは「自分でしなさい」と言い、掛川も羽織を脱ぎ、角帯を解き始めた。
白妙も腰紐を自分で引き抜き、茄子紺の着物と長襦袢ながじゅばんを脱いだ。
二人とも肌襦袢《はだじゅばん》になると、掛川は白妙の白足袋も脱がし、褥の上に寝かせ、自分もその横に横たわった。
そして、自分の懐に白妙を入れ、あやすように柔らかく肩をたたいた。
白妙は源蔵とのことを思い出し、口の端を緩めにへらと笑った。
肩への振動が心地よかった。
思い切り息を吸い込むと、掛川の香と共に煙管の匂いもした。



思わずうとうととしていたのにはっとし、白妙は体を震わせた。

「どうした」

温かい掛川の声がした。

「すみません。
眠ってしまいそうになりました」

「それでもいいよ」

「旦那様…?」

自分の体も差し出すのが陰間の務めだと思っていたので、掛川の言葉に驚いた。

「なにか粗相を…」

「いや、違うよ。
おまえが心地よさそうに眠っていたから、このまま眠ってもいいと思ったんだ」

「……」

自分に何か足りなかったのではないか、と不安になり言葉を失う白妙の手首を取ると、掛川は自分の股間に導いた。
肌襦袢の上から握らされたのは、掛川の立派なぼくであった。
これまで触れた中でも一番太い。

「おまえに魅力がないとは思っていないよ。
これでわかるだろう」

「旦那様ぁ」

「目が覚めたなら眠らなくてもいいかな」

白妙はうなずき、上半身を起こした。
そして掛川の足の方に下がり、そっと肌襦袢の合わせに小さな手を入れ、そそり立つ木を取り出した。
両手でそっと包み、先に仔猫の舌を伸ばしぺろりと舐めた。
くっと掛川が反応したのを確認し、またぺろりぺろりと舐め、次は口を開けしゃぶった。
それから紅時雨べにしぐれに習ったように咥えて、首を上下するように吸いながら出し入れし、ふんわりとその下のぎょくを揉み込んだ。
口の中で掛川の木はむくむくと大きくなっていき、潮水の味は濃く白妙の口の中に広がっていった。



口から木が引き抜かれると、掛川は自分のも白妙のも肌襦袢を脱がし、そして横にした白妙の爪先を掴むとおもむろに口に含み、ねぶった。
指の間にも丁寧に舌が入っていく。
初めての感覚に、白妙は小さな声を上げ、体をくねらせる。
そうしながら、掛川は渦桜うずざくらの液で濡れた指を白妙の淵に出し入れし始めた。

両足を高く上げ、横に開く。
掛川の指が出入りする白妙の濡れた淵が赤い行灯《あんどん》の光に照らされてよく見えた。

「旦那様ぁ、あ、あ、あ」

掛川は白妙の唇を吸った。
白妙は掛川の肩をぎゅっと掴んだ。
それを合図にしたかのように、木が淵に沈み始めた。
木はあまりに太かった。
白妙の淵はこれ以上ないくらいに広がった。
じりじりと挿し込まれ、やがてぱちゅんと音がした。
一番太いところが入った。

「ふぅんっ」

白妙が声を上げた。



掛川は白妙に覆いかぶさるように正面から抱いた。
細い肩を抱きしめ、赤い唇から「旦那様」と自分を呼ぶ声がこぼれるのを見ながら抱いた。
一度木液ぼくえきを白妙の淵に放つと、今度は白妙をうつ伏せにし、尻を高く上げさせ腰を抱え再び貫いた。
ぴたりと白妙の背中に腹をつけ、白妙の腹や胸をまさぐりながら腰を打ちつける。
そして白妙が体をよじり始めると、ふるふると立ち上がってきた白妙の小枝に指を伸ばした。

「あっ、だめえっだめえええっ」

白妙はこらえることができず、まだ薄い木液を放った。

「早いな」

白妙は恥ずかしくて体中を赤くした。

「まだ慣れてなくて…
に、二度目です」

「一度目はいつ?」

掛川は優しく問う。

「水揚げのときに…」

「ああ、御衣黄ぎょいこうのご隠居のときか。
手荒なことをされなかったかい。
あの人は趣味人のせいか、何を考えているのかわからない得体の知れないことばかりだからね」

「はい」

白妙は後ろに御衣黄、前に源蔵、横に紅時雨がいた異常な時間を思い出したが、口には出さなかった。

「ということは、飯田橋は自分ばかり気持ちよくなった、というわけか」

「いえ、そんな」

「白妙、私は自分だけ気持ちよくなるのは嫌いなんだよ。
おまえにも気持ちよくなってほしい。
声が上がるなら素直に出してほしいし、体が動くのなら素直に動かしてほしい」

そして再び、ゆっくりと腰を動かし始めた。

「ふううっ」

「しまいには白妙から私を欲してもらいたいね。
もっともっととねだられたい。
だから」

ぐんと木を奥に穿ち、手を前にやると白妙の小枝もゆるゆるとこすり始めた。

「やああっ、旦那様ぁ、両方は」

「気持ちいいだろう」

「ふっ、ん、ん。
気持ち…いい……」

「いい子だ。
もっと気持ちよくさせてあげる」

すぐに二人は木液を放った。




横たわる掛川の上に跨り、淵には木が深く刺さったまま、白妙は腰を揺らしていた。

「はあああっ、旦那様あっ」

「いいよ、白妙」

「んっ、気持ち、い…」

「私もだよ、白妙」

掛川の手は白妙の腰を支え、もう一つは胸の桜を愛おしそうにいじっていた。
桜はすぐに桃のように色づいた。
白妙が耐えられず身を倒すと、掛川は口を吸い、そして白妙の体を抱え込むと上下を反対にした。
そして白妙の足を大きく開かせ、垂直に木を穿った。

「やっ、そんな奥…っ、はっ」

掛川が小枝にも手を伸ばすと、またすぐに木液を出した。
出すたびに木液の白は濃くなっていった。
そしてまた、掛川も真っ白な木液を白妙の淵の奥底に放ったが、淵は溢れ、尻を伝って流れていった。





しおりを挟む
Twitter @etocoria_
ブログ「ETOCORIA」
サイト「ETOCORIA」

感想 3

あなたにおすすめの小説

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

大学生はバックヤードで

リリーブルー
BL
大学生がクラブのバックヤードにつれこまれ初体験にあえぐ。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

カフェ ILYA

Kyrie
BL
重厚な雰囲気のカフェ。美しくかわいらしい40代バリスタ。バリスタに淡い好意を寄せている会社員。その友達。そして波乱の空気をまとった男。 * 題字・協力 310 https://twitter.com/310__sato 協力 マーケット https://twitter.com/market_c_001 * fujossy おじ様の色香短編コンテスト入選作品に加筆修正。 * コーヒーに関しては完全にファンタジーです。 * 他サイトにも掲載。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

処理中です...