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番外編 騎士が花嫁こぼれ話
52. 歌う神官
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結婚式の主役の二人は向こうで参列者の祝福を受けている。
特に騎士たちの集団は圧巻で、ほっそりとしたインティアがたくましい体躯の騎士に囲まれるとますます華奢に見えてくる。
それをクリスは椅子に座って遠くから見ていた。
昨年、幼馴染のロバートと自分の姉が結婚をしたときの騒ぎを思い出し、少し間をおいてから挨拶に行くつもりだった。
すっと誰かが視界に入ってきた。
青白い長衣の裾が見えた。
「素敵なお二人ですね」
神官テヤがすっとクリスの隣にやってきた。
「初めてお二人でこの森にいらしたときもそうでしたが、ますます素敵になられて。
お二人に祝福の歌が捧げられたのを嬉しく思います」
テヤは騎士に囲まれて、恥じらうようにしながら談笑をしているインティアを見て言った。
隣にいるクラディウスは片時もインティアの腰に回した腕を離そうとはしない。
「あんなふうにお歌いになるのですね」
ぼそりとクリスが言った。
「お恥ずかしいものです。
騎士様の眉間に三回もしわを寄せてしまいました」
クリスは慌てて自分の額に手をやった。
テヤは面白そうに笑う。
「本当に騎士様はよい耳をお持ちです。
稽古をさぼっていたのが露呈しましたね。
音を外さないように身を入れて稽古に励みます」
「いや、そんな」
以前、少しでもはずれた音を聞くと眉間にしわを寄せるのだと、この神官から指摘されたことがある。
自分では自覚がまったくなかったので驚いたが、テヤがクリスの眉間に指を置き、わざと微かに音をはずして歌を聞かせると、眉間が動いたのを感じて知った。
そんなことより、クリスは今日、初めてテヤがまるまる一曲歌を歌ったのを聞いて驚いたのだ。
いつもはインティアに稽古をつけるのに最低限しか歌わないのに、テヤは神官として婚姻の儀式の中で祝福の歌を歌った。
その歌は非常に厚みがあって豊かであり、声量も素晴らしく、まるで高い天井の神殿から歌が降ってくるようだった。
インティアも歌がうまいが、正直、今のところはテヤのほうが上だとクリスは思った。
テヤの歌がどれだけ素晴らしいのか伝えたかったが、口下手のクリスがもごもごしているうちに、テヤはクリスの元から離れていった。
次にまたテヤ様の歌を聞くことができるのだろうか。
また聞きたい。
そう強く思ったが、それも伝えることができないまま、クリスはテヤを見送った。
騎士の集団が主役の二人から離れた。
そろそろ行くか、とクリスは椅子から立ち上がり挨拶をするためにクラディウスとインティアの元に向かった。
特に騎士たちの集団は圧巻で、ほっそりとしたインティアがたくましい体躯の騎士に囲まれるとますます華奢に見えてくる。
それをクリスは椅子に座って遠くから見ていた。
昨年、幼馴染のロバートと自分の姉が結婚をしたときの騒ぎを思い出し、少し間をおいてから挨拶に行くつもりだった。
すっと誰かが視界に入ってきた。
青白い長衣の裾が見えた。
「素敵なお二人ですね」
神官テヤがすっとクリスの隣にやってきた。
「初めてお二人でこの森にいらしたときもそうでしたが、ますます素敵になられて。
お二人に祝福の歌が捧げられたのを嬉しく思います」
テヤは騎士に囲まれて、恥じらうようにしながら談笑をしているインティアを見て言った。
隣にいるクラディウスは片時もインティアの腰に回した腕を離そうとはしない。
「あんなふうにお歌いになるのですね」
ぼそりとクリスが言った。
「お恥ずかしいものです。
騎士様の眉間に三回もしわを寄せてしまいました」
クリスは慌てて自分の額に手をやった。
テヤは面白そうに笑う。
「本当に騎士様はよい耳をお持ちです。
稽古をさぼっていたのが露呈しましたね。
音を外さないように身を入れて稽古に励みます」
「いや、そんな」
以前、少しでもはずれた音を聞くと眉間にしわを寄せるのだと、この神官から指摘されたことがある。
自分では自覚がまったくなかったので驚いたが、テヤがクリスの眉間に指を置き、わざと微かに音をはずして歌を聞かせると、眉間が動いたのを感じて知った。
そんなことより、クリスは今日、初めてテヤがまるまる一曲歌を歌ったのを聞いて驚いたのだ。
いつもはインティアに稽古をつけるのに最低限しか歌わないのに、テヤは神官として婚姻の儀式の中で祝福の歌を歌った。
その歌は非常に厚みがあって豊かであり、声量も素晴らしく、まるで高い天井の神殿から歌が降ってくるようだった。
インティアも歌がうまいが、正直、今のところはテヤのほうが上だとクリスは思った。
テヤの歌がどれだけ素晴らしいのか伝えたかったが、口下手のクリスがもごもごしているうちに、テヤはクリスの元から離れていった。
次にまたテヤ様の歌を聞くことができるのだろうか。
また聞きたい。
そう強く思ったが、それも伝えることができないまま、クリスはテヤを見送った。
騎士の集団が主役の二人から離れた。
そろそろ行くか、とクリスは椅子から立ち上がり挨拶をするためにクラディウスとインティアの元に向かった。
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