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本編
09. まずは聞く - リノ
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わからないことがあったら、まずは聞く。
これ、鉄則ね。
俺、男同士のつき合い方って、あんまり知らなかった。
ジュリアス様のことも男の先輩とか友達とかと一緒に暮らすようなもんだから気軽でいいや、と思ってた。
でも、俺たちは夫婦で、ちょっとなにか違うみたい。
いろいろすっ飛ばした感もあるけれど、これからどうしたらいいのかわからないから、まずは聞いてみることにした。
聞く相手はアイーニュさん。
今、ザクア伯爵様の庭を整えてる庭師の弟子で、センスのよさからお師匠さんにも目をかけられている。
20代半ばで、比較的俺とも歳が近い。
思い立ったら決行!
昼休み、俺はアイーニュさんのそばに行った。
「アイーニュさん、お聞きしたいことがあります。いいでしょうか?」
「ん?なに?」
アイーニュさんは日陰に寝そべって言った。
午前中もハードだったし、多くの人が休憩時間には横になっている。
じゃないと、午後が持たないし。
「あの、アイーニュさんって恋人は男の人ですよね。
男の人とつき合う、ってどんな感じですか?」
アイーニュさんは「お?」というふうに右の眉を上げて、こっちを見た。
ここ、メリニャ王国では性に関しては結構緩やかで、ピニャータ王様の後宮には美しい男女がわんさか召されているし、同性の恋人も珍しくないし結婚もできる。
「あん?そうか、リノのところも男同士か。
どう、って言われてもフツーだよ。
結婚してるわけじゃないから、時間があるときに相手の家に行ったり、一緒に出かけたり、飯食ったり、夜ヤることヤったり」
「はあ…」
「リノのとこはどうなのよ?
うまくいってんの?」
「それがよくわからなくて」
「まぁ、もともとリノは男好きじゃないからな。
夜、どうしてるの?」
「夜?」
「そうだよ。ヤってないの?」
あ…う?
それって、それって、それって、アレ?
上目づかいでアイーニュさんをちらっと見る。
ぎゃああああああっ!
俺とジュリアス様が?
その、夜の営み、ってヤツをですね?
やってるか、ってことですよね?
そんなの想像できない!
「ちょっと、リノ、頭爆発してるけど大丈夫?
真っ赤になっちゃって。
刺激強かったかな。
あ、もしかして、リノ、童貞?」
「いえ、それは違います!」
それはソッコー否定する。
あ、うん。
俺、もうそこは済ませてある。
っていうか、このあたりでは男が15歳になったら年上の男に花街の近くに連れていかれて、その道に長けている女性と経験することになっている。
恋愛対象が男の場合は男性とね。
「ヤり方、知ってる?」
うっ…
「……あんまり……」
初夜騒動や朝騒動はあったけど、そんながっつりいたすだなんて、考えたことなかった。
俺はともかく、ジュリアス様が必要なら花街の女性をお招きして…、までは考えたことはあったけど、俺とジュリアス様がどうこうなんて。
そもそも、やり方知らないし。
「あー、それは困ったね。
教えてあげてもいいけど」
い?
「いやいやいやいやいや、それはご遠慮申し上げますっ!」
アイーニュさんはにやにや笑っている。
もうっ!俺は真面目なんですよ!
「抱きたいの?」
「いやいやいやいやっ!」
「抱かれたいの?」
「無理無理無理無理無理っ!」
な、なんてこと言い出すんだ、アイーニュさんよぉっ。
「俺たちはカラダから始まった恋愛だからまずは抱きたい抱かれたい、っていうのがあったけど、リノは違うじゃん。
気持ちが伴わない結婚もあるというけど、一緒に暮らしていくんだぜ。
やっぱりある程度は好きじゃなくちゃ。
俺とアイツが結婚に踏み切れないのは、そこがちょっと恐くて」
「そっか」
「人のことは参考になることもあるかもしれないけど、あくまでも『参考』だからな。
考えたり決めていくのは、当人だからね。
振り回されないようにな」
「はい」
「で、どこまでいってんの?」
「は?」
「手はつないだ?」
「まぁ」
「ハグは?」
「あ、うん…」
「キスは?」
キキキキキキキキスぅぅぅぅっ?!
いやいやいやいやいやいやいやっ!
俺はっ!
俺は、ジュリアス様が自由になるまでお守りするために一緒にいるんであって、そ、そそそそそんなことがしたいわけじゃなく…
「くくくくっ」
アイーニュさんは手で顔を覆って笑っている。
「笑わないでください!」
「いや、キスがまだだっていうのはよーくわかった。
聞いたこっちのほうが恥ずかしくなる反応で、参った!」
なっ!
「少し横になって休んどかないと、昼からがもたないぞ」
アイーニュさんが声をかけてくれたので、俺も日陰で横になった。
「早くキスできるといいな」
ぼそっと言われた言葉に声にならない悲鳴を上げ、どきどきする心臓のせいで全然休憩にならなかった。
これ、鉄則ね。
俺、男同士のつき合い方って、あんまり知らなかった。
ジュリアス様のことも男の先輩とか友達とかと一緒に暮らすようなもんだから気軽でいいや、と思ってた。
でも、俺たちは夫婦で、ちょっとなにか違うみたい。
いろいろすっ飛ばした感もあるけれど、これからどうしたらいいのかわからないから、まずは聞いてみることにした。
聞く相手はアイーニュさん。
今、ザクア伯爵様の庭を整えてる庭師の弟子で、センスのよさからお師匠さんにも目をかけられている。
20代半ばで、比較的俺とも歳が近い。
思い立ったら決行!
昼休み、俺はアイーニュさんのそばに行った。
「アイーニュさん、お聞きしたいことがあります。いいでしょうか?」
「ん?なに?」
アイーニュさんは日陰に寝そべって言った。
午前中もハードだったし、多くの人が休憩時間には横になっている。
じゃないと、午後が持たないし。
「あの、アイーニュさんって恋人は男の人ですよね。
男の人とつき合う、ってどんな感じですか?」
アイーニュさんは「お?」というふうに右の眉を上げて、こっちを見た。
ここ、メリニャ王国では性に関しては結構緩やかで、ピニャータ王様の後宮には美しい男女がわんさか召されているし、同性の恋人も珍しくないし結婚もできる。
「あん?そうか、リノのところも男同士か。
どう、って言われてもフツーだよ。
結婚してるわけじゃないから、時間があるときに相手の家に行ったり、一緒に出かけたり、飯食ったり、夜ヤることヤったり」
「はあ…」
「リノのとこはどうなのよ?
うまくいってんの?」
「それがよくわからなくて」
「まぁ、もともとリノは男好きじゃないからな。
夜、どうしてるの?」
「夜?」
「そうだよ。ヤってないの?」
あ…う?
それって、それって、それって、アレ?
上目づかいでアイーニュさんをちらっと見る。
ぎゃああああああっ!
俺とジュリアス様が?
その、夜の営み、ってヤツをですね?
やってるか、ってことですよね?
そんなの想像できない!
「ちょっと、リノ、頭爆発してるけど大丈夫?
真っ赤になっちゃって。
刺激強かったかな。
あ、もしかして、リノ、童貞?」
「いえ、それは違います!」
それはソッコー否定する。
あ、うん。
俺、もうそこは済ませてある。
っていうか、このあたりでは男が15歳になったら年上の男に花街の近くに連れていかれて、その道に長けている女性と経験することになっている。
恋愛対象が男の場合は男性とね。
「ヤり方、知ってる?」
うっ…
「……あんまり……」
初夜騒動や朝騒動はあったけど、そんながっつりいたすだなんて、考えたことなかった。
俺はともかく、ジュリアス様が必要なら花街の女性をお招きして…、までは考えたことはあったけど、俺とジュリアス様がどうこうなんて。
そもそも、やり方知らないし。
「あー、それは困ったね。
教えてあげてもいいけど」
い?
「いやいやいやいやいや、それはご遠慮申し上げますっ!」
アイーニュさんはにやにや笑っている。
もうっ!俺は真面目なんですよ!
「抱きたいの?」
「いやいやいやいやっ!」
「抱かれたいの?」
「無理無理無理無理無理っ!」
な、なんてこと言い出すんだ、アイーニュさんよぉっ。
「俺たちはカラダから始まった恋愛だからまずは抱きたい抱かれたい、っていうのがあったけど、リノは違うじゃん。
気持ちが伴わない結婚もあるというけど、一緒に暮らしていくんだぜ。
やっぱりある程度は好きじゃなくちゃ。
俺とアイツが結婚に踏み切れないのは、そこがちょっと恐くて」
「そっか」
「人のことは参考になることもあるかもしれないけど、あくまでも『参考』だからな。
考えたり決めていくのは、当人だからね。
振り回されないようにな」
「はい」
「で、どこまでいってんの?」
「は?」
「手はつないだ?」
「まぁ」
「ハグは?」
「あ、うん…」
「キスは?」
キキキキキキキキスぅぅぅぅっ?!
いやいやいやいやいやいやいやっ!
俺はっ!
俺は、ジュリアス様が自由になるまでお守りするために一緒にいるんであって、そ、そそそそそんなことがしたいわけじゃなく…
「くくくくっ」
アイーニュさんは手で顔を覆って笑っている。
「笑わないでください!」
「いや、キスがまだだっていうのはよーくわかった。
聞いたこっちのほうが恥ずかしくなる反応で、参った!」
なっ!
「少し横になって休んどかないと、昼からがもたないぞ」
アイーニュさんが声をかけてくれたので、俺も日陰で横になった。
「早くキスできるといいな」
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