16 / 16
第16話 番外編 ジンの巣づくり(2)
しおりを挟む
家事は何もやったことがなかったジンだが、掃除と洗濯はすぐに僕よりうまくなった。
手早く確実にきれいにできる。
僕はどちらかと言えば掃除が下手なので、ジンは「ふふふん~」と鼻歌交じりに掃除と洗濯をしている。
少し悔しい。
でも、そんなジンがかわいい。
ジンにとって、家から出ることは随分勇気のいることだったと思う。
しかし、アルファ・カップルの彼の両親にヒートのときに一緒に居づらいという理由にはうなずけた。
それに加えて僕との新しい生活。
家事。
大学での新生活。
大変そうだったけど、ジンはどこか楽しそうだった。
僕が心配して聞いたことがある。
ジンは、
「大変だけど、『俺たち』の生活なんだろ。
ユウヤだけしんどいのは違うと思う」
と、健気なことをいうので、泣きそうになった。
ジンが掃除と洗濯がうまくなった理由は、彼の「巣づくり」のせいじゃないかと思う。
ヒートに入る前、ジンは部屋中からお目当ての布を集めて「オメガの部屋」に巣を作る。
作っているところは見せてもらったことはないし、完成した巣もヒートが本格的にやってきて、僕たちがオメガの部屋に籠るときじゃないと見せてくれない。
作っているところを見られるのは恥ずかしいし、一人で作りたいんだって。
そう話しているジンはヒートではないのにほっぺたをピンクにして、かわいくはにかんでいるので、オメガ性であることを楽しんでいるのかもしれない。
「楽しみにしてるよ」
と、僕がジンの額にキスをしたら、真っ赤になって俯いてしまった。
なに、この反応。
かわいい。
僕と二人でいるときは、こういうかわいい姿を見せることが多くなった。
ジンが作る巣は決まって「白」だった。
それは初めてのヒートから変わっていない。
僕と愛し合う場所。
オメガの本能が求める「赤ちゃん」を育てるための場所。
それがジンの巣づくりの目的で、「そこは清潔であってほしい」というので、ありとあらゆる白い布が集められる。
洗濯はその「白くて清潔な巣づくりの素材の品質確保」となった。
気に入らないと洗濯をし直し、天日で干して満足そうにオメガの部屋にせっせと運んでいく。
僕と暮らし始めてからは、僕の服もターゲットになった。
そのせいか、僕たちの服は白いものが多くなった。
普段使っているシーツも白だし、タオルもシャツも白。
一回、僕が実家から持ってきていた白のボクサーパンツまで持っていかれそうになって、「それはだめーーーーーっ!」と止めたことがある。
なのに、ジンったら僕のボクサーパンツを両手で握りしめ、くんくんと顔の前にもってきて匂いをかぎ、とろんとした表情で言った。
「だって、これ、ユウヤの匂いがいっぱいするから」
だあああああーーーーっ!
僕は思わずジンをソファに押し倒し、キスで口の中を犯した。
いくら「温厚なアルファ」と言われている僕でも、それは我慢できない。
オメガはヒートが近づくと、番のアルファの匂いに敏感になりそれを求める、というのは知識として知っていたけど、こんなに煽られるとは思わなかった。
僕たちはヒートに入る前に、コンドームとローションを使ってセックスをした。
ヒート以外でセックスをするようになったのは、これ以来だ。
ヒートではない身体でのセックスはジンに負担をかけたようで、疲れて倒れるように眠ったジンから僕は握りしめられてくしゃくしゃになった白いボクサーパンツを回収した。
後日、そっと実家のタンスに戻しておき、新しく買う下着は絶対に白は選ばなかった。
おしまい
***
おまけのお話
https://etocoria.blogspot.jp/2017/06/1516.html
手早く確実にきれいにできる。
僕はどちらかと言えば掃除が下手なので、ジンは「ふふふん~」と鼻歌交じりに掃除と洗濯をしている。
少し悔しい。
でも、そんなジンがかわいい。
ジンにとって、家から出ることは随分勇気のいることだったと思う。
しかし、アルファ・カップルの彼の両親にヒートのときに一緒に居づらいという理由にはうなずけた。
それに加えて僕との新しい生活。
家事。
大学での新生活。
大変そうだったけど、ジンはどこか楽しそうだった。
僕が心配して聞いたことがある。
ジンは、
「大変だけど、『俺たち』の生活なんだろ。
ユウヤだけしんどいのは違うと思う」
と、健気なことをいうので、泣きそうになった。
ジンが掃除と洗濯がうまくなった理由は、彼の「巣づくり」のせいじゃないかと思う。
ヒートに入る前、ジンは部屋中からお目当ての布を集めて「オメガの部屋」に巣を作る。
作っているところは見せてもらったことはないし、完成した巣もヒートが本格的にやってきて、僕たちがオメガの部屋に籠るときじゃないと見せてくれない。
作っているところを見られるのは恥ずかしいし、一人で作りたいんだって。
そう話しているジンはヒートではないのにほっぺたをピンクにして、かわいくはにかんでいるので、オメガ性であることを楽しんでいるのかもしれない。
「楽しみにしてるよ」
と、僕がジンの額にキスをしたら、真っ赤になって俯いてしまった。
なに、この反応。
かわいい。
僕と二人でいるときは、こういうかわいい姿を見せることが多くなった。
ジンが作る巣は決まって「白」だった。
それは初めてのヒートから変わっていない。
僕と愛し合う場所。
オメガの本能が求める「赤ちゃん」を育てるための場所。
それがジンの巣づくりの目的で、「そこは清潔であってほしい」というので、ありとあらゆる白い布が集められる。
洗濯はその「白くて清潔な巣づくりの素材の品質確保」となった。
気に入らないと洗濯をし直し、天日で干して満足そうにオメガの部屋にせっせと運んでいく。
僕と暮らし始めてからは、僕の服もターゲットになった。
そのせいか、僕たちの服は白いものが多くなった。
普段使っているシーツも白だし、タオルもシャツも白。
一回、僕が実家から持ってきていた白のボクサーパンツまで持っていかれそうになって、「それはだめーーーーーっ!」と止めたことがある。
なのに、ジンったら僕のボクサーパンツを両手で握りしめ、くんくんと顔の前にもってきて匂いをかぎ、とろんとした表情で言った。
「だって、これ、ユウヤの匂いがいっぱいするから」
だあああああーーーーっ!
僕は思わずジンをソファに押し倒し、キスで口の中を犯した。
いくら「温厚なアルファ」と言われている僕でも、それは我慢できない。
オメガはヒートが近づくと、番のアルファの匂いに敏感になりそれを求める、というのは知識として知っていたけど、こんなに煽られるとは思わなかった。
僕たちはヒートに入る前に、コンドームとローションを使ってセックスをした。
ヒート以外でセックスをするようになったのは、これ以来だ。
ヒートではない身体でのセックスはジンに負担をかけたようで、疲れて倒れるように眠ったジンから僕は握りしめられてくしゃくしゃになった白いボクサーパンツを回収した。
後日、そっと実家のタンスに戻しておき、新しく買う下着は絶対に白は選ばなかった。
おしまい
***
おまけのお話
https://etocoria.blogspot.jp/2017/06/1516.html
1
お気に入りに追加
331
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(4件)
あなたにおすすめの小説
【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜
ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。
そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。
幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。
もう二度と同じ轍は踏まない。
そう決心したアリスの戦いが始まる。
婚約破棄?しませんよ、そんなもの
おしゃべりマドレーヌ
BL
王太子の卒業パーティーで、王太子・フェリクスと婚約をしていた、侯爵家のアンリは突然「婚約を破棄する」と言い渡される。どうやら真実の愛を見つけたらしいが、それにアンリは「しませんよ、そんなもの」と返す。
アンリと婚約破棄をしないほうが良い理由は山ほどある。
けれどアンリは段々と、そんなメリット・デメリットを考えるよりも、フェリクスが幸せになるほうが良いと考えるようになり……
「………………それなら、こうしましょう。私が、第一王妃になって仕事をこなします。彼女には、第二王妃になって頂いて、貴方は彼女と暮らすのです」
それでフェリクスが幸せになるなら、それが良い。
<嚙み痕で愛を語るシリーズというシリーズで書いていきます/これはスピンオフのような話です>
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
金色の恋と愛とが降ってくる
鳩かなこ
BL
もう18歳になるオメガなのに、鶯原あゆたはまだ発情期の来ていない。
引き取られた富豪のアルファ家系の梅渓家で
オメガらしくないあゆたは厄介者扱いされている。
二学期の初めのある日、委員長を務める美化委員会に
転校生だというアルファの一年生・八月一日宮が参加してくれることに。
初のアルファの後輩は初日に遅刻。
やっと顔を出した八月一日宮と出会い頭にぶつかって、あゆたは足に怪我をしてしまう。
転校してきた訳アリ? 一年生のアルファ×幸薄い自覚のない未成熟のオメガのマイペース初恋物語。
オメガバースの世界観ですが、オメガへの差別が社会からなくなりつつある現代が舞台です。
途中主人公がちょっと不憫です。
性描写のあるお話にはタイトルに「*」がついてます。
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
キンモクセイは夏の記憶とともに
広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。
小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。
田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。
そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。
純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。
しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。
「俺になんてもったいない!」
素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。
性描写のある話は【※】をつけていきます。
運命の息吹
梅川 ノン
BL
ルシアは、国王とオメガの番の間に生まれるが、オメガのため王子とは認められず、密やかに育つ。
美しく育ったルシアは、父王亡きあと国王になった兄王の番になる。
兄王に溺愛されたルシアは、兄王の庇護のもと穏やかに暮らしていたが、運命のアルファと出会う。
ルシアの運命のアルファとは……。
西洋の中世を想定とした、オメガバースですが、かなりの独自視点、想定が入ります。あくまでも私独自の創作オメガバースと思ってください。楽しんでいただければ幸いです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
君はアルファじゃなくて《高校生、バスケ部の二人》
市川パナ
BL
高校の入学式。いつも要領のいいα性のナオキは、整った容姿の男子生徒に意識を奪われた。恐らく彼もα性なのだろう。
男子も女子も熱い眼差しを彼に注いだり、自分たちにファンクラブができたりするけれど、彼の一番になりたい。
(旧タイトル『アルファのはずの彼は、オメガみたいな匂いがする』です。)全4話です。
ふしだらオメガ王子の嫁入り
金剛@キット
BL
初恋の騎士の気を引くために、ふしだらなフリをして、嫁ぎ先が無くなったペルデルセ王子Ωは、10番目の側妃として、隣国へ嫁ぐコトが決まった。孤独が染みる冷たい後宮で、王子は何を思い生きるのか?
お話に都合の良い、ユルユル設定のオメガバースです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
ジンくんが可愛すぎて萌え死にました…
ユウヤくんの溺愛っぷり…もうニヤニヤが止まりません♪
2人の間に産まれたミサキくんの将来が楽しみですね♪ ( ´艸`)
彩斗さま
コメントありがとうございます。
ジンはツンデレみたいになってしまって最後デレデレで私も驚いていました。
この3人は別のお話で全然違う設定で登場します。そちらのほうが先にできた作品で、そのときのユウヤを幸せにしたい、と思い名づけました。
私もこのお話が大好きで、何回も読み返してはにんまりさせて頂いてます。
細々とでもいいので、ぜひぜひ番外編をお願いします!
sai3さん
コメント、ありがとうございます。
「噛み傷」をかわいがっていただいて、とても嬉しいです。
番外編はあまり考えていません。
ただ、私のお話の書き方は「あるシーンがふっと見えた」ときに書き始めます。もしユウヤとジンの2人のお話の欠片が見えたときには、書けます。そんな瞬間がありますように。
またTwitterもやっておりますので、「見えろ~!見えろ~!」と念を送りにきてくださいね(笑)。
長く長くかわいがってもらって、本当に嬉しいです。ありがとうございます。
kyrieさま
このお話し好きです。
楽しませていただきました。ありがとうございます。
あんずさん
感想ありがとうございます。
かわいいお話なので、私も好きです。