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第13話 ジン(5)
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目が覚めた。
俺の隣で、俺が作った不格好な白い巣の中で、白いシーツにくるまりユウヤがあどけない顔をして眠っていた。
初めてアルファと過ごしたヒートの第一波が収まった。
俺は眠る前のユウヤとの行為を思い出して、真っ赤になった。
『ユウヤがほしい』
ヒートじゃないと言えない、こんな恥ずかしいこと!
思わずシーツの中に潜ってしまった。
そして、律儀にコンドームを使おうとするユウヤも思い出して、にやにやしてしまった。
俺が妊娠を望んでいないのをユウヤはよく理解してくれていた。
その上で、ユウヤはアルファの本能で言った。
『僕ので孕んで』
身体中がぞくぞくした。
ユウヤが俺の奥に放ったとき、「これを待ちわびていた」と感じた。
ユウヤの子どもを妊娠したい、と思った。
俺はオメガの本能に溺れ、やっとやっと欲しいものを手に入れた感覚を持った。
バックから抱かれ、ユウヤができたばかりのうなじの噛み傷を舐めた。
そのときは番の相手ができたことの幸せに浸った。
俺がネック・プロテクターを外したとき、ユウヤは本気で焦っていた。
往生際の悪いユウヤに俺はちょっとむっとした。
俺にプロポーズしたのは誰だっけ?
ユウヤに俺の全部を奪ってほしかった。
すべてを委ねたかった。
これからのことを二人で創りあげたかった。
他の誰かにおびえることなく生きたかった。
ユウヤに俺を欲してほしかった。
ユウヤのすべてを手に入れたかった。
ユウヤ
ユウヤ
俺の最愛の人
シーツの中に潜っていると見えたのは、ユウヤの両腕の噛み傷。
俺を助けたときに自分でつけたものだ。
鋭利なものでつけた傷とは違い、治りも悪く、皮膚もひきつって痕が残ってしまった。
ユウヤは半袖の季節になっても、それを隠そうとはしなかった。
俺も、俺の両親も申し訳なくてゼン先生に相談したら、人工皮膚の移植手術できれいに治ると言われた。
それをユウヤに話したら、すぐに断ってきた。
「ジンを助けたときにできた傷だよ。
僕にとっては誇らしい気持ちになる。
それともジンはこれを見るのが嫌?」
嫌なはず、ない。
いけない、と思いながらも嬉しくなってしまう。
ユウヤの誠実さを知る証。
「じゃあ、このままでいさせて。
いい?」
遠慮がちに聞いてくるユウヤを俺は愛おしく思った。
起こさないように、目の前のユウヤの腕の傷痕にそっと指を伸ばす。
おまえが俺を守ってくれたから、俺は自分らしくいられる。
あのとき、もうダメだと思ったんだ。
この人生を棒に振って、これっぽっちも幸せじゃなくて、多分、周りの人も不幸にして、やさぐれて生きていくんだと絶望したんだ。
ユウヤ…
俺はシーツから出た。
ユウヤはよく眠っている。
柔らかくさらさらした茶色い髪が揺れる。
色素の薄い目ときめ細やかな肌。
俺よりよっぽどかオメガらしい。
でも、この腕に抱かれて、この人の精を注ぎ込まれた。
思い出すと腰の奥がずぐりと疼き、愛液で濡れてきそうだった。
またすぐ抱いて、ユウヤ。
手を握るのは気恥ずかしくて、ユウヤを起こしたくなくて、俺はユウヤの指に指を絡めた。
それだけなのに、とても嬉しかった。
ユウヤが起きるまで、俺ももう少し寝よう。
指先にユウヤを感じながら、俺は目を閉じた。
俺の隣で、俺が作った不格好な白い巣の中で、白いシーツにくるまりユウヤがあどけない顔をして眠っていた。
初めてアルファと過ごしたヒートの第一波が収まった。
俺は眠る前のユウヤとの行為を思い出して、真っ赤になった。
『ユウヤがほしい』
ヒートじゃないと言えない、こんな恥ずかしいこと!
思わずシーツの中に潜ってしまった。
そして、律儀にコンドームを使おうとするユウヤも思い出して、にやにやしてしまった。
俺が妊娠を望んでいないのをユウヤはよく理解してくれていた。
その上で、ユウヤはアルファの本能で言った。
『僕ので孕んで』
身体中がぞくぞくした。
ユウヤが俺の奥に放ったとき、「これを待ちわびていた」と感じた。
ユウヤの子どもを妊娠したい、と思った。
俺はオメガの本能に溺れ、やっとやっと欲しいものを手に入れた感覚を持った。
バックから抱かれ、ユウヤができたばかりのうなじの噛み傷を舐めた。
そのときは番の相手ができたことの幸せに浸った。
俺がネック・プロテクターを外したとき、ユウヤは本気で焦っていた。
往生際の悪いユウヤに俺はちょっとむっとした。
俺にプロポーズしたのは誰だっけ?
ユウヤに俺の全部を奪ってほしかった。
すべてを委ねたかった。
これからのことを二人で創りあげたかった。
他の誰かにおびえることなく生きたかった。
ユウヤに俺を欲してほしかった。
ユウヤのすべてを手に入れたかった。
ユウヤ
ユウヤ
俺の最愛の人
シーツの中に潜っていると見えたのは、ユウヤの両腕の噛み傷。
俺を助けたときに自分でつけたものだ。
鋭利なものでつけた傷とは違い、治りも悪く、皮膚もひきつって痕が残ってしまった。
ユウヤは半袖の季節になっても、それを隠そうとはしなかった。
俺も、俺の両親も申し訳なくてゼン先生に相談したら、人工皮膚の移植手術できれいに治ると言われた。
それをユウヤに話したら、すぐに断ってきた。
「ジンを助けたときにできた傷だよ。
僕にとっては誇らしい気持ちになる。
それともジンはこれを見るのが嫌?」
嫌なはず、ない。
いけない、と思いながらも嬉しくなってしまう。
ユウヤの誠実さを知る証。
「じゃあ、このままでいさせて。
いい?」
遠慮がちに聞いてくるユウヤを俺は愛おしく思った。
起こさないように、目の前のユウヤの腕の傷痕にそっと指を伸ばす。
おまえが俺を守ってくれたから、俺は自分らしくいられる。
あのとき、もうダメだと思ったんだ。
この人生を棒に振って、これっぽっちも幸せじゃなくて、多分、周りの人も不幸にして、やさぐれて生きていくんだと絶望したんだ。
ユウヤ…
俺はシーツから出た。
ユウヤはよく眠っている。
柔らかくさらさらした茶色い髪が揺れる。
色素の薄い目ときめ細やかな肌。
俺よりよっぽどかオメガらしい。
でも、この腕に抱かれて、この人の精を注ぎ込まれた。
思い出すと腰の奥がずぐりと疼き、愛液で濡れてきそうだった。
またすぐ抱いて、ユウヤ。
手を握るのは気恥ずかしくて、ユウヤを起こしたくなくて、俺はユウヤの指に指を絡めた。
それだけなのに、とても嬉しかった。
ユウヤが起きるまで、俺ももう少し寝よう。
指先にユウヤを感じながら、俺は目を閉じた。
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