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第6話 ひたすら待つ
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ジンと僕が遊ぶようになってから初めての発情期が近づいてきたのを知ったのは、ジンのお母さんから連絡があったからだ。
僕は「発情には会わない」とジンと約束をしていたので、ジンに「会えるようになったら教えてほしい」と短いメッセージを送った。
しかし、その後、ジンから一切連絡はなかった。
僕は辛抱強く待った。
だって初めてのヒートがあれだったら、怖いかもしれない。
それに僕だってこう見えてもアルファだ。
オメガのジンにとっては恐ろしい存在として映るかもしれない。
どれもこれも、僕はオメガとしてヒートを経験したことがないので、想像しかできなかった。
しかし、発情期には心身共に不安定になりやすいことは、オメガの知識として習った。
僕はジンが苦しむことなくヒートを無事に過ごせるよう願った。
しかし、一か月も待たされるとさすがの僕もつらくなってきた。
もう大丈夫かな、と思い、こちらからメッセージを送ってしまった。
返事は来なかった。
僕は不安になった。
ジンに嫌われたかもしれない。
ジンのご両親に様子をそっと聞いてみたほうがよかったんじゃないか。
でもジンが知らないところでそういうことをしていたことのほうが、ジンは嫌うかもしれない。
僕がどんどん不安になりイラついてしまうのを、父さんたちは距離を置いて見ていた。
あれこれ詮索されるよりか、よっぽどかありがたかった。
三日後、やっとやっとジンから返事が返ってきた。
僕は大声を上げてしまった。
彼からのメッセージは短い言葉だったけど、僕はジンの無事を知ることができてとても幸せだった。
そしてまた、週末の遊びに誘ってみた。
その返事は半日後に来たけど、三日に比べたら短いものだった。
僕たちはまた、たまに会い始めた。
やっぱり誘うのは僕ばっかりだけど、僕は気にしないことにした。
ほどなくして、ジンが僕の高校に転入してくることになった。
それをジンのお父さんから聞いたときには驚いた。
高校3年も半年近く経とうか、という時期でもある。
元いた進学校では、ジンは派手な振る舞いをするアルファのグループに属していたらしい。
しかし、ジンがオメガだとわかると差別的な言動をする生徒が出てきた。
そのグループでも「オメガはいらない」と言われたそうだ。
あのプライドの高い僕のジンは相当傷ついただろう。
そう思うと、僕は話を聞きながら唇を噛んだ。
今すぐ、ジンのところに行って慰めてあげたかった。
でもジンのことだからそれも「余計なことするな」と言って、素直じゃないんだろうな。
そんな学校生活が続き、そしてジン自らが「ユウヤのいる高校に転校したい」とご両親に訴えたそうだ。
僕はここで、申し訳ないけど、天にも昇る気持ちだった。
だって、ジンが僕と一緒がいい、って言ってくれたんだ!
選んでくれたんだ!
僕を頼ってくれたんだ!
僕の通っている高校は、オメガも安心して通える穏やかな高校としても有名だった。
アルファは少ししかいないし、ちょっと強引なところはあるけど、オメガに対してひどいことをする生徒はいなかった。
あとはベータとオメガ。
ベータでも、アルファと同じように差別をする生徒もいるけれど、ほかの学校よりかは少なかった。
ジンのご両親がなにかしたのか、学校の配慮なのかわからないけど、ジンと僕は同じクラスになった。
最初は席も隣にされた。
僕はジンが僕の学校の制服を着て現れたとき、もう一度惚れ直した。
好奇の目にさらされているのを知りながらも、それを気にも留めていないように堂々とした態度で転入の挨拶をした。
首のプロテクターもまだ僕があげたものをそのまま使っていた。
僕はじっとジンを見つめていた。
挨拶が終わり、ジンが僕の席の隣に座るとき、小声でぼそりと「そんなに見るな」と言った。
それくらい見てた。
ジンは相変わらず素気なかったけど、それでも僕と一緒にいることを拒むことはなかった。
すぐにクラスメイトからは、僕たち二人はワンセットみたいに認識されたけど、ジンはそれを嫌がるふうもなかった。
そんなジンが僕の隣にいるのは心地よかった。
学校でそれだけ会ってるのに、帰ってからや会う約束をしていない休みの日に交わすメッセージの回数は少しずつ増えていった。
その次の発情期の前には、ジンから「しばらく会えなくなるから」とメッセージが来た。
彼の親からの連絡じゃない!
また会えなくなるのは寂しかったけど、発情期の一週間をできるだけ刺激を少なく過ごしてほしくて「教えてくれてありがとう。穏やかに過ごせますように。休みの間のノートは任せといて!」と返事した。
するとすぐに「ヒートが終わって学校に行けるようになったら連絡する」と返ってきた。
僕は嬉しくて嬉しくてたまらなかった。
できるなら今すぐ抱きしめたかった。
まだ手もつないでいないのに。
「恋人みたいなことをするつもりはない」とずっと言われていて、僕はそれを守っている。
強引なことはしたくない。
アルファの強引さがオメガにとってどんなに恐ろしいか、肌で知っているからかもしれない。
僕はまた待つ。
早くジンからの連絡がほしかった。
ひたすら待った。
僕は「発情には会わない」とジンと約束をしていたので、ジンに「会えるようになったら教えてほしい」と短いメッセージを送った。
しかし、その後、ジンから一切連絡はなかった。
僕は辛抱強く待った。
だって初めてのヒートがあれだったら、怖いかもしれない。
それに僕だってこう見えてもアルファだ。
オメガのジンにとっては恐ろしい存在として映るかもしれない。
どれもこれも、僕はオメガとしてヒートを経験したことがないので、想像しかできなかった。
しかし、発情期には心身共に不安定になりやすいことは、オメガの知識として習った。
僕はジンが苦しむことなくヒートを無事に過ごせるよう願った。
しかし、一か月も待たされるとさすがの僕もつらくなってきた。
もう大丈夫かな、と思い、こちらからメッセージを送ってしまった。
返事は来なかった。
僕は不安になった。
ジンに嫌われたかもしれない。
ジンのご両親に様子をそっと聞いてみたほうがよかったんじゃないか。
でもジンが知らないところでそういうことをしていたことのほうが、ジンは嫌うかもしれない。
僕がどんどん不安になりイラついてしまうのを、父さんたちは距離を置いて見ていた。
あれこれ詮索されるよりか、よっぽどかありがたかった。
三日後、やっとやっとジンから返事が返ってきた。
僕は大声を上げてしまった。
彼からのメッセージは短い言葉だったけど、僕はジンの無事を知ることができてとても幸せだった。
そしてまた、週末の遊びに誘ってみた。
その返事は半日後に来たけど、三日に比べたら短いものだった。
僕たちはまた、たまに会い始めた。
やっぱり誘うのは僕ばっかりだけど、僕は気にしないことにした。
ほどなくして、ジンが僕の高校に転入してくることになった。
それをジンのお父さんから聞いたときには驚いた。
高校3年も半年近く経とうか、という時期でもある。
元いた進学校では、ジンは派手な振る舞いをするアルファのグループに属していたらしい。
しかし、ジンがオメガだとわかると差別的な言動をする生徒が出てきた。
そのグループでも「オメガはいらない」と言われたそうだ。
あのプライドの高い僕のジンは相当傷ついただろう。
そう思うと、僕は話を聞きながら唇を噛んだ。
今すぐ、ジンのところに行って慰めてあげたかった。
でもジンのことだからそれも「余計なことするな」と言って、素直じゃないんだろうな。
そんな学校生活が続き、そしてジン自らが「ユウヤのいる高校に転校したい」とご両親に訴えたそうだ。
僕はここで、申し訳ないけど、天にも昇る気持ちだった。
だって、ジンが僕と一緒がいい、って言ってくれたんだ!
選んでくれたんだ!
僕を頼ってくれたんだ!
僕の通っている高校は、オメガも安心して通える穏やかな高校としても有名だった。
アルファは少ししかいないし、ちょっと強引なところはあるけど、オメガに対してひどいことをする生徒はいなかった。
あとはベータとオメガ。
ベータでも、アルファと同じように差別をする生徒もいるけれど、ほかの学校よりかは少なかった。
ジンのご両親がなにかしたのか、学校の配慮なのかわからないけど、ジンと僕は同じクラスになった。
最初は席も隣にされた。
僕はジンが僕の学校の制服を着て現れたとき、もう一度惚れ直した。
好奇の目にさらされているのを知りながらも、それを気にも留めていないように堂々とした態度で転入の挨拶をした。
首のプロテクターもまだ僕があげたものをそのまま使っていた。
僕はじっとジンを見つめていた。
挨拶が終わり、ジンが僕の席の隣に座るとき、小声でぼそりと「そんなに見るな」と言った。
それくらい見てた。
ジンは相変わらず素気なかったけど、それでも僕と一緒にいることを拒むことはなかった。
すぐにクラスメイトからは、僕たち二人はワンセットみたいに認識されたけど、ジンはそれを嫌がるふうもなかった。
そんなジンが僕の隣にいるのは心地よかった。
学校でそれだけ会ってるのに、帰ってからや会う約束をしていない休みの日に交わすメッセージの回数は少しずつ増えていった。
その次の発情期の前には、ジンから「しばらく会えなくなるから」とメッセージが来た。
彼の親からの連絡じゃない!
また会えなくなるのは寂しかったけど、発情期の一週間をできるだけ刺激を少なく過ごしてほしくて「教えてくれてありがとう。穏やかに過ごせますように。休みの間のノートは任せといて!」と返事した。
するとすぐに「ヒートが終わって学校に行けるようになったら連絡する」と返ってきた。
僕は嬉しくて嬉しくてたまらなかった。
できるなら今すぐ抱きしめたかった。
まだ手もつないでいないのに。
「恋人みたいなことをするつもりはない」とずっと言われていて、僕はそれを守っている。
強引なことはしたくない。
アルファの強引さがオメガにとってどんなに恐ろしいか、肌で知っているからかもしれない。
僕はまた待つ。
早くジンからの連絡がほしかった。
ひたすら待った。
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