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第4話
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ナオキの身体からずるりと抜けると、あの真っ赤だったエデンの色は血の気を失ったように白く変色し、力尽きたように簡易ベッドの下にぺたりと音を立てて落ちた。
それはナオキの身体に入っていたものだけではなく、ツタのようにナオキの上に伸びていたエデンがすべて白化した。
そして先ほどまであんなにナオキの身体の上を激しく這いまわっていたのに、ところどころ切れながら次々と床の上に落ち、力なくぴくぴくと弱々しく動くだけになってしまった。
ナオキはしばらく意識が飛んでいたが、また身体を何か這う感触で気がついた。
今度は身体を拘束するものはなかったが、もっと生々しい感触と息遣いを感じた。
ふぁっ!と声を上げそうになったが、口はふさがれた。
煙草の匂いが口内にむせるように広がる。
苦くて顔を背けたかったが、ひどい力で顎を掴まれ、全身は何かがのしかかっていて動けなかった。
ハザマ先生?!
白衣のハザマがナオキの上に乗り、ナオキの口内を舌で犯しながら、空いている手でさっきエデンに巻きつかれぷっくりと膨らんだ乳首をこねたり潰したりしていた。
ナオキは暴れたが、ハザマは細いのにも関わらず、思いのほか筋肉でずっしり重い身体でナオキを押さえつけていた。
長い、キスと言っていいのかどうかわからない行為が終わると、ナオキは息を乱しながら大声を出した。
「先生、離してくださいっ!」
「どうして。
実験はこれからなのに」
ハザマは首筋から鎖骨、そして胸へと唇を滑らせていく。
「なんで、俺で実験するんですっ!」
「それは君が欲しかったからだよ、ナオキ。
ほら、かわいいな、君の乳首は。
エデンに摘ままれているときもかわいかったけど、今は私の唾液でぬらぬら光っているよ。
ね」
「はうんっ」
ハザマは乳首を口に含み舌で転がし、時々きりきりと噛んだ。
そして舐めながら、言葉を続ける。
「君もしんどかっただろう、イチリキにこうされたくても与えられなくて」
「なっ」
「あいつは臆病者だから、学生に手は出さないよ。
それに自分の都合が悪くなったから、自分の代わりにどうぞ、と私に君を差し出してきた」
「え?」
「君、イチリキに抱かれたかったんだろう?
知ってるよ、イチリキの研究室であいつが不在のときにオナニーしてたよね」
ナオキの全身が熱くなった。
「もっと周りに気をつけなきゃだめだよ。
あのとき、私たちは隣の仮眠室にいたんだ。
どうしても嫌だ、ってイチリキが拒むから素股で勘弁してやったけど。
立ちバックで私たちもいいことをしながら、君の喘ぎ声を聞いていていたよ」
これ以上聞きたくなくて、ナオキは耳を塞ごうとしたがハザマはナオキの手首をベッドに押し付け、執拗にびちゃびちゃと音を立てながら両方の乳首を舐め、噛んでいた。
「君、いい声で啼くんだね。
あれはよかった。
イチリキの名前を呼びながらペニスをこすっている姿はとてもエロティックだったよ。
私たちに見られているとも知らず、腰も大きく振って。
今からもっと聞かせてくれるよね」
「いっ」
まさかそんなことを言われるとは思わず、ナオキは抵抗しようとした。
しかしハザマはナオキの脇の下から腰までなでながら、唇は乳首から臍に移動し舌を突っ込んだ。
「はぁんっ」
途端にゾクゾクとする快感が走り、身体の力が抜けた。
「そう、その声。
もっと聞かせて」
そんなナオキにハザマは掠れた声で囁いた。
大学入学後、ナオキのイチリキへの思いは憧れからすぐに恋愛感情へと変化していった。
自分の感情に戸惑ったが、とても自然なのだとナオキは自分に言い聞かせた。
神経質なイチリキはすぐにナオキの自分に向けられる感情に気づいたらしく、やんわりと距離を取られた。
「僕は人見知りだからね。誰かと特別にはならないんだ」と言った。
イチリキは自分で言った通り、男とも女とも距離を取っているようだった。
ナオキはイチリキにこれ以上嫌われたくなくて、勤勉で誠実な学生としてイチリキのそばにいた。
なかなか忍耐が必要だったが、イチリキに拒まれそばにいられなくなるほうが嫌だった。
たまにそれが暴走しそうになり、イチリキが留守の研究室を掃除をする時間に、イチリキの匂いのするなにかを嗅ぎながら、あるいはさっきまで座っていたまだほんのりと体温が残る椅子に身を任せてオナニーをすることがあった。
それほどまでして、イチリキへの想いを抑えていたのに。
それなのに。
「かわいかったなぁ、ナオキは。
顔を赤くして、オナニーを覚えたての中学生みたいにこすって」
背中を弓なりに反らしたときにできたシーツとの隙間に手を入れ、ハザマはナオキの背中をなでる。
背骨に沿って指が行き来するだけで、感じてしまう。
「あのときのイチリキもかわいかったよ。
いつもより感じて。
君がいるから必死に声を我慢して、ね」
あんなに他人には興味がないふりをしながら、イチリキはハザマに抱かれていた?
「あれ、いつもみたいに入れていたら、イチリキは声は我慢しきれなかっただろうな。
もし、君に気づかれたらどうしたかな。
君も見てみたかった?
私に立ったまま抱かれているイチリキを」
俺の好意に気づいていたのに。
俺が抱かれたがっているのを知っていたのに。
それは拒んで自分はハザマ先生に抱かれていた?
ナオキは今、裏切られたような気持ちになってイチリキへ怒りが湧いてきた。
ハザマはナオキの両膝を割って入ると、スラックスのジッパーを下ろした。
そして下着の中から上を向いたペニスを取り出した。
血管が浮いて、どくどくしていた。
まるで、さっきまでナオキの中を蠢いていたエデンのように。
それからナオキの股間に自分のペニスを擦り付けるようにしながら、腰を上下に動かした。
ただそれだけなのに、ナオキは下腹部の奥のほうからゾクゾクする快感を感じ取った。
「ほら、ほしいだろ。
もうすぐ、あげるから」
その声に、快楽の中にいたナオキは気を取り戻した。
「いやっ。
なんでこんなことっ!」
ナオキが大声を出しても、ハザマは行為を止めようとはしなかった。
股間を行き来するハザマのペニスは太く硬くなっていて、べっとりと濡れているのを知った。
「私はね、怒っているんだ」
言い終わるとハザマはナオキの腰にがぶりと噛みつき歯を立てた。
ナオキは悲鳴を上げる。
ハザマは歯形がついた皮膚を舐めながら言った。
「これまでゲイだということで散々差別されたよ。
それなのに、『人工オメガ計画』の動物実験が成功したら、手のひらを反すようにゲイであることは人口増加の希望だとお偉いさんから言われるしね」
ナオキは自分の股間で、ハザマの息を感じた。
これからされることを想像し、嫌がっているのに、身体は早く早くと求めている。
「ゲイだからといって、全員がオメガになりたいわけではないのに。
あいつらは私たちを実験の動物と同じように扱うんだ。
酷いと思わないかい」
「ふわぁっ」
ハザマはナオキのペニスの先を一舐めした。
それだけで、ナオキはまたぴゅくりと精液を垂らした。
「早いね。
さっき、あんなに長時間イッていたのに。
もう出るの?」
ハザマがそれに息を吹きかけただけで、ナオキは爪先をぴくぴくと動かした。
今度は鈴口に親指の先を当てて、ぬるついた先をぐりぐりといじった。
ナオキが声を上げた。
「あんなにかわいがっていたイチリキが、私から離れていこうとするんだ。
まぁ、学生のときからセフレでずるずると関係してたけどね。
今頃になって『学長の娘と結婚したいから関係を解消してくれ』って言い出して。
そして身代わりに、ナオキをくれたよ。
くっくっくっ、私にはそれで好都合だったけどね」
ハザマはナオキのペニスをいじるのを止め、アナルにまた指を入れた。
中はエデンが吐き出したものでぬるついていたので、指の滑りはよかった。
「どうして」
「君は自分の遺伝子を見たことがあるか?」
じれるほどゆっくり、ハザマは指を動かす。
「あのときのかわいいナオキが忘れられなくてね。
すぐに君の遺伝子を入手した。
簡単だよね、髪の毛一本あれば済むことだから」
くちゅくちゅと粘る水音がする。
「君の遺伝子は美しかったよ。
とても綺麗だった。
思わず欲しくなるほどに」
内側でハザマが指をくの字に曲げた。
ちょっとした刺激でも、ナオキはペニスから精液を流して悶えていた。
「ナオキ、君のここに私たちのエデンを創ろう」
「なにわけのわからないことを言っているんですかっ。
もう、やめ、いやっ」
最後まで言いたいことが言えなかったのは、ハザマがナオキの内側の指の動きを速めたからだ。
そして反対の手で下腹部を外側から優しく押した。
「ちょうどこの辺かな。
ナオキの中に子宮ができてる」
「なっ、俺、男だし!」
「君は男性のオメガになったんだよ、エデンによって」
ハザマは外からも内側からも触診をするように指を動かした。
「さっき、エデンが吐き出したのは子宮を作る卵のようなものだ。
普通はその卵が身体に着床して子宮を作りあげるまで一年以上かかるのだけど、私が改良したエデンはね、五分でできる」
「まさかっ」
「一番最初は君が暴れて、その五分が待てなかったから失敗した。
でも、さっきのは成功したと思うよ。
触診では子宮の存在が確認できたから」
ハザマは丁寧に指を抜き、それをナオキに見せつけるように舐め、言った。
「それがうまくいったかどうか、試してみようじゃないか」
「いやだっ!」
「イチリキより君のほうがフレッシュな身体を持っている。
私のオメガにふさわしい。
さぁ、ナオキのココに私たちの楽園《エデン》を作ろう」
ナオキは抵抗した。
しかし、あっという間にハザマはずぶずぶとナオキの中にペニスを埋めた。
ナオキはすんなりとハザマを咥えこみ、深く飲み込んでいった。
ナオキの気持ちとは違い、身体はすんなりとハザマを受け入れまずは満足そうにした。
そしてハザマの腰の動きに合わせ、より奥により多く精子を搾り、取り込もうと収縮を始める。
「やだっ、い、いやぁ」
抵抗したかったが、ナオキは艶めいた喘ぎ声を上げるだけだった。
「待っていたんだろう、これを。
ほら、こんなにぎゅっと締め付けて。
私を欲しがっている」
「あんっ」
ハザマが奥に打ち付けるように腰を動かすと、ナオキはハザマの腰に足を絡みつけ離すまいとする。
「かわいいね、ナオキ」
ちゅっと音を立て、ハザマがキスをした。
そのときにナオキの子宮が喜んだ。気がした。
ハザマは喉の奥で笑った。
「やっぱり私たちはニンゲンなんだよ。
かわいがってくれる人とセックスすると嬉しいんだ。
意外だったね」
ナオキは潤んだ目で濁ったハザマの目を見上げた。
ハザマはまたナオキの赤い乳首を摘まんだ。
「私たちの子どもを妊娠したら、ここから母乳が出るはずだよ。
実験ではそうだった。
君ならどうかな。
甘い甘い母乳が出るかな。
そのときには、私にも味見をさせてくれ」
ハザマは器用にナオキの乳首を咥え、ぎゅううううっと吸った。
「はぁぁぁんっ。
やっ!
それより、こっち」
ナオキがゆさゆさと腰をゆすって、ねだった。
ハザマが突いてやると、先が子宮の入り口に当たった。
「今度はうまく子宮ができたね。
一番最初は君が抵抗するから失敗してしまったけど、今度はうまくいった。
ほら、これが欲しいんだろ」
ハザマは腰をグラインドさせる。
「んっ」
ナオキは刺激に甘い声を上げる。
どこからか漂う煙草の香り。
一瞬、我に返る。
「違うっ!
俺はイチリキ先生とっ」
「イチリキは君を捨てて私にくれたんだ。
私との関係も一緒に捨てた。
捨てられた者同士なんだよ」
ぐいんぐいんと腰を打ち付ける。
ナオキのアナルからは自分が出した愛液が滴り、ぴちゃぴちゃと音を立てるくらい濡れていた。
抱かれたいのはイチリキ先生。
なのにっ!
なのにっ!
「もっとぐちゃぐちゃにして。
奥に熱いの注いで」
飛び出した言葉は全然違った。
ナオキはハザマの身体を欲した。
オメガの本能がナオキの感覚を覆っていく。
「赤ちゃんが欲しい。
だからもっと…はんっ。
そう、それ、もっと…」
イチリキへの怒りもハザマへの嫌悪も薄れていき、ただただ自分の中に精子を欲しがった。
「俺をかわいがって。
もっと狂わせて。
足りないから、もっと、もっと」
「いいねぇ、ナオキ。
どんどんオメガになっていく。
子宮の生成も成功したようだ」
ハザマが本気を出して、腰を動かし始めた。
しかし、物足りないようでナオキは繋がったままハザマぐいと抱き寄せると上下を変えた。
ナオキはハザマの上へ乗ると、嬉しそうにハザマを見下ろし、舌なめずりした。
ハザマは興奮し、ペニスを太くした。
ナオキの小さな色っぽい声がこぼれた。
ナオキは艶然と微笑み、そして思う存分腰を振った。
「あ、そこっ、気持ちいいっ。
あっ、あああっ、んふっ」
ハザマも下から突き上げる。
「いいっ!
いいっ!」
ナオキは快楽の渦へと巻き込まれていった。
体位を変え上になったり下になったりしながらお互いに何度か吐精し、最後、ハザマは後ろからナオキの腰を掴み、大きくストロークを繰り返していた。
それに合わせて、いいところに当たるようにナオキも腰を振る。
そして、切羽詰まってどうしようもなくなり、二人が最後の射精をしたとき、それぞれから漏れた声。
「イチリキ…」
「イチリキせんせ…」
それは互いには聞こえはしないほど、小さなうめき声となった。
長い間ずっとナオキの中に入っていたハザマが抜かれた。
ぽっこりと開いた大きな穴からは、何回分かわからない精液がこぼれ出した。
それを気にすることもなく、二人は狭いベッドの上に倒れた。
床の上のエデンは青白くなり少し腐敗臭を漂わせながら、ぴくりとも動かなくなっていた。
それはナオキの身体に入っていたものだけではなく、ツタのようにナオキの上に伸びていたエデンがすべて白化した。
そして先ほどまであんなにナオキの身体の上を激しく這いまわっていたのに、ところどころ切れながら次々と床の上に落ち、力なくぴくぴくと弱々しく動くだけになってしまった。
ナオキはしばらく意識が飛んでいたが、また身体を何か這う感触で気がついた。
今度は身体を拘束するものはなかったが、もっと生々しい感触と息遣いを感じた。
ふぁっ!と声を上げそうになったが、口はふさがれた。
煙草の匂いが口内にむせるように広がる。
苦くて顔を背けたかったが、ひどい力で顎を掴まれ、全身は何かがのしかかっていて動けなかった。
ハザマ先生?!
白衣のハザマがナオキの上に乗り、ナオキの口内を舌で犯しながら、空いている手でさっきエデンに巻きつかれぷっくりと膨らんだ乳首をこねたり潰したりしていた。
ナオキは暴れたが、ハザマは細いのにも関わらず、思いのほか筋肉でずっしり重い身体でナオキを押さえつけていた。
長い、キスと言っていいのかどうかわからない行為が終わると、ナオキは息を乱しながら大声を出した。
「先生、離してくださいっ!」
「どうして。
実験はこれからなのに」
ハザマは首筋から鎖骨、そして胸へと唇を滑らせていく。
「なんで、俺で実験するんですっ!」
「それは君が欲しかったからだよ、ナオキ。
ほら、かわいいな、君の乳首は。
エデンに摘ままれているときもかわいかったけど、今は私の唾液でぬらぬら光っているよ。
ね」
「はうんっ」
ハザマは乳首を口に含み舌で転がし、時々きりきりと噛んだ。
そして舐めながら、言葉を続ける。
「君もしんどかっただろう、イチリキにこうされたくても与えられなくて」
「なっ」
「あいつは臆病者だから、学生に手は出さないよ。
それに自分の都合が悪くなったから、自分の代わりにどうぞ、と私に君を差し出してきた」
「え?」
「君、イチリキに抱かれたかったんだろう?
知ってるよ、イチリキの研究室であいつが不在のときにオナニーしてたよね」
ナオキの全身が熱くなった。
「もっと周りに気をつけなきゃだめだよ。
あのとき、私たちは隣の仮眠室にいたんだ。
どうしても嫌だ、ってイチリキが拒むから素股で勘弁してやったけど。
立ちバックで私たちもいいことをしながら、君の喘ぎ声を聞いていていたよ」
これ以上聞きたくなくて、ナオキは耳を塞ごうとしたがハザマはナオキの手首をベッドに押し付け、執拗にびちゃびちゃと音を立てながら両方の乳首を舐め、噛んでいた。
「君、いい声で啼くんだね。
あれはよかった。
イチリキの名前を呼びながらペニスをこすっている姿はとてもエロティックだったよ。
私たちに見られているとも知らず、腰も大きく振って。
今からもっと聞かせてくれるよね」
「いっ」
まさかそんなことを言われるとは思わず、ナオキは抵抗しようとした。
しかしハザマはナオキの脇の下から腰までなでながら、唇は乳首から臍に移動し舌を突っ込んだ。
「はぁんっ」
途端にゾクゾクとする快感が走り、身体の力が抜けた。
「そう、その声。
もっと聞かせて」
そんなナオキにハザマは掠れた声で囁いた。
大学入学後、ナオキのイチリキへの思いは憧れからすぐに恋愛感情へと変化していった。
自分の感情に戸惑ったが、とても自然なのだとナオキは自分に言い聞かせた。
神経質なイチリキはすぐにナオキの自分に向けられる感情に気づいたらしく、やんわりと距離を取られた。
「僕は人見知りだからね。誰かと特別にはならないんだ」と言った。
イチリキは自分で言った通り、男とも女とも距離を取っているようだった。
ナオキはイチリキにこれ以上嫌われたくなくて、勤勉で誠実な学生としてイチリキのそばにいた。
なかなか忍耐が必要だったが、イチリキに拒まれそばにいられなくなるほうが嫌だった。
たまにそれが暴走しそうになり、イチリキが留守の研究室を掃除をする時間に、イチリキの匂いのするなにかを嗅ぎながら、あるいはさっきまで座っていたまだほんのりと体温が残る椅子に身を任せてオナニーをすることがあった。
それほどまでして、イチリキへの想いを抑えていたのに。
それなのに。
「かわいかったなぁ、ナオキは。
顔を赤くして、オナニーを覚えたての中学生みたいにこすって」
背中を弓なりに反らしたときにできたシーツとの隙間に手を入れ、ハザマはナオキの背中をなでる。
背骨に沿って指が行き来するだけで、感じてしまう。
「あのときのイチリキもかわいかったよ。
いつもより感じて。
君がいるから必死に声を我慢して、ね」
あんなに他人には興味がないふりをしながら、イチリキはハザマに抱かれていた?
「あれ、いつもみたいに入れていたら、イチリキは声は我慢しきれなかっただろうな。
もし、君に気づかれたらどうしたかな。
君も見てみたかった?
私に立ったまま抱かれているイチリキを」
俺の好意に気づいていたのに。
俺が抱かれたがっているのを知っていたのに。
それは拒んで自分はハザマ先生に抱かれていた?
ナオキは今、裏切られたような気持ちになってイチリキへ怒りが湧いてきた。
ハザマはナオキの両膝を割って入ると、スラックスのジッパーを下ろした。
そして下着の中から上を向いたペニスを取り出した。
血管が浮いて、どくどくしていた。
まるで、さっきまでナオキの中を蠢いていたエデンのように。
それからナオキの股間に自分のペニスを擦り付けるようにしながら、腰を上下に動かした。
ただそれだけなのに、ナオキは下腹部の奥のほうからゾクゾクする快感を感じ取った。
「ほら、ほしいだろ。
もうすぐ、あげるから」
その声に、快楽の中にいたナオキは気を取り戻した。
「いやっ。
なんでこんなことっ!」
ナオキが大声を出しても、ハザマは行為を止めようとはしなかった。
股間を行き来するハザマのペニスは太く硬くなっていて、べっとりと濡れているのを知った。
「私はね、怒っているんだ」
言い終わるとハザマはナオキの腰にがぶりと噛みつき歯を立てた。
ナオキは悲鳴を上げる。
ハザマは歯形がついた皮膚を舐めながら言った。
「これまでゲイだということで散々差別されたよ。
それなのに、『人工オメガ計画』の動物実験が成功したら、手のひらを反すようにゲイであることは人口増加の希望だとお偉いさんから言われるしね」
ナオキは自分の股間で、ハザマの息を感じた。
これからされることを想像し、嫌がっているのに、身体は早く早くと求めている。
「ゲイだからといって、全員がオメガになりたいわけではないのに。
あいつらは私たちを実験の動物と同じように扱うんだ。
酷いと思わないかい」
「ふわぁっ」
ハザマはナオキのペニスの先を一舐めした。
それだけで、ナオキはまたぴゅくりと精液を垂らした。
「早いね。
さっき、あんなに長時間イッていたのに。
もう出るの?」
ハザマがそれに息を吹きかけただけで、ナオキは爪先をぴくぴくと動かした。
今度は鈴口に親指の先を当てて、ぬるついた先をぐりぐりといじった。
ナオキが声を上げた。
「あんなにかわいがっていたイチリキが、私から離れていこうとするんだ。
まぁ、学生のときからセフレでずるずると関係してたけどね。
今頃になって『学長の娘と結婚したいから関係を解消してくれ』って言い出して。
そして身代わりに、ナオキをくれたよ。
くっくっくっ、私にはそれで好都合だったけどね」
ハザマはナオキのペニスをいじるのを止め、アナルにまた指を入れた。
中はエデンが吐き出したものでぬるついていたので、指の滑りはよかった。
「どうして」
「君は自分の遺伝子を見たことがあるか?」
じれるほどゆっくり、ハザマは指を動かす。
「あのときのかわいいナオキが忘れられなくてね。
すぐに君の遺伝子を入手した。
簡単だよね、髪の毛一本あれば済むことだから」
くちゅくちゅと粘る水音がする。
「君の遺伝子は美しかったよ。
とても綺麗だった。
思わず欲しくなるほどに」
内側でハザマが指をくの字に曲げた。
ちょっとした刺激でも、ナオキはペニスから精液を流して悶えていた。
「ナオキ、君のここに私たちのエデンを創ろう」
「なにわけのわからないことを言っているんですかっ。
もう、やめ、いやっ」
最後まで言いたいことが言えなかったのは、ハザマがナオキの内側の指の動きを速めたからだ。
そして反対の手で下腹部を外側から優しく押した。
「ちょうどこの辺かな。
ナオキの中に子宮ができてる」
「なっ、俺、男だし!」
「君は男性のオメガになったんだよ、エデンによって」
ハザマは外からも内側からも触診をするように指を動かした。
「さっき、エデンが吐き出したのは子宮を作る卵のようなものだ。
普通はその卵が身体に着床して子宮を作りあげるまで一年以上かかるのだけど、私が改良したエデンはね、五分でできる」
「まさかっ」
「一番最初は君が暴れて、その五分が待てなかったから失敗した。
でも、さっきのは成功したと思うよ。
触診では子宮の存在が確認できたから」
ハザマは丁寧に指を抜き、それをナオキに見せつけるように舐め、言った。
「それがうまくいったかどうか、試してみようじゃないか」
「いやだっ!」
「イチリキより君のほうがフレッシュな身体を持っている。
私のオメガにふさわしい。
さぁ、ナオキのココに私たちの楽園《エデン》を作ろう」
ナオキは抵抗した。
しかし、あっという間にハザマはずぶずぶとナオキの中にペニスを埋めた。
ナオキはすんなりとハザマを咥えこみ、深く飲み込んでいった。
ナオキの気持ちとは違い、身体はすんなりとハザマを受け入れまずは満足そうにした。
そしてハザマの腰の動きに合わせ、より奥により多く精子を搾り、取り込もうと収縮を始める。
「やだっ、い、いやぁ」
抵抗したかったが、ナオキは艶めいた喘ぎ声を上げるだけだった。
「待っていたんだろう、これを。
ほら、こんなにぎゅっと締め付けて。
私を欲しがっている」
「あんっ」
ハザマが奥に打ち付けるように腰を動かすと、ナオキはハザマの腰に足を絡みつけ離すまいとする。
「かわいいね、ナオキ」
ちゅっと音を立て、ハザマがキスをした。
そのときにナオキの子宮が喜んだ。気がした。
ハザマは喉の奥で笑った。
「やっぱり私たちはニンゲンなんだよ。
かわいがってくれる人とセックスすると嬉しいんだ。
意外だったね」
ナオキは潤んだ目で濁ったハザマの目を見上げた。
ハザマはまたナオキの赤い乳首を摘まんだ。
「私たちの子どもを妊娠したら、ここから母乳が出るはずだよ。
実験ではそうだった。
君ならどうかな。
甘い甘い母乳が出るかな。
そのときには、私にも味見をさせてくれ」
ハザマは器用にナオキの乳首を咥え、ぎゅううううっと吸った。
「はぁぁぁんっ。
やっ!
それより、こっち」
ナオキがゆさゆさと腰をゆすって、ねだった。
ハザマが突いてやると、先が子宮の入り口に当たった。
「今度はうまく子宮ができたね。
一番最初は君が抵抗するから失敗してしまったけど、今度はうまくいった。
ほら、これが欲しいんだろ」
ハザマは腰をグラインドさせる。
「んっ」
ナオキは刺激に甘い声を上げる。
どこからか漂う煙草の香り。
一瞬、我に返る。
「違うっ!
俺はイチリキ先生とっ」
「イチリキは君を捨てて私にくれたんだ。
私との関係も一緒に捨てた。
捨てられた者同士なんだよ」
ぐいんぐいんと腰を打ち付ける。
ナオキのアナルからは自分が出した愛液が滴り、ぴちゃぴちゃと音を立てるくらい濡れていた。
抱かれたいのはイチリキ先生。
なのにっ!
なのにっ!
「もっとぐちゃぐちゃにして。
奥に熱いの注いで」
飛び出した言葉は全然違った。
ナオキはハザマの身体を欲した。
オメガの本能がナオキの感覚を覆っていく。
「赤ちゃんが欲しい。
だからもっと…はんっ。
そう、それ、もっと…」
イチリキへの怒りもハザマへの嫌悪も薄れていき、ただただ自分の中に精子を欲しがった。
「俺をかわいがって。
もっと狂わせて。
足りないから、もっと、もっと」
「いいねぇ、ナオキ。
どんどんオメガになっていく。
子宮の生成も成功したようだ」
ハザマが本気を出して、腰を動かし始めた。
しかし、物足りないようでナオキは繋がったままハザマぐいと抱き寄せると上下を変えた。
ナオキはハザマの上へ乗ると、嬉しそうにハザマを見下ろし、舌なめずりした。
ハザマは興奮し、ペニスを太くした。
ナオキの小さな色っぽい声がこぼれた。
ナオキは艶然と微笑み、そして思う存分腰を振った。
「あ、そこっ、気持ちいいっ。
あっ、あああっ、んふっ」
ハザマも下から突き上げる。
「いいっ!
いいっ!」
ナオキは快楽の渦へと巻き込まれていった。
体位を変え上になったり下になったりしながらお互いに何度か吐精し、最後、ハザマは後ろからナオキの腰を掴み、大きくストロークを繰り返していた。
それに合わせて、いいところに当たるようにナオキも腰を振る。
そして、切羽詰まってどうしようもなくなり、二人が最後の射精をしたとき、それぞれから漏れた声。
「イチリキ…」
「イチリキせんせ…」
それは互いには聞こえはしないほど、小さなうめき声となった。
長い間ずっとナオキの中に入っていたハザマが抜かれた。
ぽっこりと開いた大きな穴からは、何回分かわからない精液がこぼれ出した。
それを気にすることもなく、二人は狭いベッドの上に倒れた。
床の上のエデンは青白くなり少し腐敗臭を漂わせながら、ぴくりとも動かなくなっていた。
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ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?
【完結】兎と寅~2023年もよろしくお願いします~
鬼ヶ咲あちたん
BL
運命の番だと思った。だから俺はうなじを噛んだ。でも違った。お前は運命の番ではなかった。お前のほかに、もっと強くフェロモンを感じるオメガがいる。うなじを噛まれたお前は、もう俺以外のアルファと番えない。俺が間違えたばっかりに。どう償えばいい?
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