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二人でして差し上げましょうか / 白妙薄紅
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寝仕度を整え、夜具がある部屋の障子をすっと開けると、誰もいないと思っていたのに中に人がいた。
それも、若旦那の飯田橋と源蔵が口吸いをしており、うっかり見てしまった白妙は廊下で固まってしまった。
中の二人は布団の上で、幾度も顔の角度を変え、水音を立て、時折くぐもった声を漏らした。
特に源蔵は眉根にしわを寄せ、悩まし気な顔をして目を閉じている。
白妙は頬をぷりぷりと赤く染め、見てはいけないものなのに視線を逸らすことができず、ずっと二人を見ていた。
どれくらい経った頃だろう。
「白妙、いつまでそこにいるつもりだい。入っておいで」
という飯田橋の声にはっとなると、廊下にへたり込むようにだらしなく座っていた。
細く開けていた障子を広く開け、白妙は部屋の中に入った。
ちらりと源蔵を見ると、源蔵はもう目を開いていたが、襟元を整える仕草が異様に艶っぽかった。
「いやね、白妙がいつも源蔵と口吸いをしているときにとても気持ちよさそうなので、どうやったらおまえに気持ちよくなってもらえるのか、と教えてもらっていたんだ」
飯田橋はそう言った。
「ああ、なるほど。そうですか」とすんなり納得できるわけではなかったが、白妙は静かにうなずいた。
「いや、源蔵の口吸いはすごかったね。おまえはいつもあんなふうにされているのかい」
あんなふうに、と言われても自分ではよくわからないので、なんとも返事をしなかった。
それより源蔵がまだ頬を赤く染めている姿がとても色めいていて、白妙はそちらのほうが気になっていた。
「源蔵も前は陰間だったし、花街の番頭ともなれば閨の指南もしていたから、巧いだろうとは思っていたけど、感心したね。
御衣黄様もしげしげと通ったそうじゃないか」
源蔵はからかわれているとわかりなにも言わなかったが、頬の赤味は増すばかりだった。
「さて、源蔵からも教わったことだし、試してみようか。おいで、白妙」
女物の肌襦袢を羽織った白妙を自分のところに引き寄せ、源蔵に見せつけるようにして飯田橋は白妙と唇を重ねた。
すぐに白妙は飯田橋に翻弄され、しばらくすると肩で息をしながら唇をほどいた。
「どうだい。源蔵ほど巧くなっていたかい」
白妙もまた、乱れた袷を整えながら涙がうっすらと溜まった目で飯田橋を見た。
「旦那様、源蔵さんのその口吸いは『陰間』としての技巧です」
「なんと」
「私とするときには陰間ではなく『男』としての口吸い。全く違うものです」
「ほう」
「そして、私もまた、今は陰間でも花宮でもなく、一人の男」
白妙が口の両端をにっと上げた。
「源蔵さんと私とで『男』としての口吸いを旦那様にして差し上げましょうか。
とても気持ちがいいですよ。それに」
言葉を一旦白妙は区切り、雄の目で飯田橋を見る。
「男の中にも女が潜んでいるものなんです。それは、どの男でも。
旦那様の女の部分を引き出してあげましょう。
新しい悦びが見つかるかもしれませんよ」
飯田橋がぎょっとしたときにはもう、後ろから源蔵に羽交い絞めにされていた。
その目は先ほどの陰間を匂わせるようなものではなく、雌を見る雄の目となっていた。
201018
#勝手に照れまつり
それも、若旦那の飯田橋と源蔵が口吸いをしており、うっかり見てしまった白妙は廊下で固まってしまった。
中の二人は布団の上で、幾度も顔の角度を変え、水音を立て、時折くぐもった声を漏らした。
特に源蔵は眉根にしわを寄せ、悩まし気な顔をして目を閉じている。
白妙は頬をぷりぷりと赤く染め、見てはいけないものなのに視線を逸らすことができず、ずっと二人を見ていた。
どれくらい経った頃だろう。
「白妙、いつまでそこにいるつもりだい。入っておいで」
という飯田橋の声にはっとなると、廊下にへたり込むようにだらしなく座っていた。
細く開けていた障子を広く開け、白妙は部屋の中に入った。
ちらりと源蔵を見ると、源蔵はもう目を開いていたが、襟元を整える仕草が異様に艶っぽかった。
「いやね、白妙がいつも源蔵と口吸いをしているときにとても気持ちよさそうなので、どうやったらおまえに気持ちよくなってもらえるのか、と教えてもらっていたんだ」
飯田橋はそう言った。
「ああ、なるほど。そうですか」とすんなり納得できるわけではなかったが、白妙は静かにうなずいた。
「いや、源蔵の口吸いはすごかったね。おまえはいつもあんなふうにされているのかい」
あんなふうに、と言われても自分ではよくわからないので、なんとも返事をしなかった。
それより源蔵がまだ頬を赤く染めている姿がとても色めいていて、白妙はそちらのほうが気になっていた。
「源蔵も前は陰間だったし、花街の番頭ともなれば閨の指南もしていたから、巧いだろうとは思っていたけど、感心したね。
御衣黄様もしげしげと通ったそうじゃないか」
源蔵はからかわれているとわかりなにも言わなかったが、頬の赤味は増すばかりだった。
「さて、源蔵からも教わったことだし、試してみようか。おいで、白妙」
女物の肌襦袢を羽織った白妙を自分のところに引き寄せ、源蔵に見せつけるようにして飯田橋は白妙と唇を重ねた。
すぐに白妙は飯田橋に翻弄され、しばらくすると肩で息をしながら唇をほどいた。
「どうだい。源蔵ほど巧くなっていたかい」
白妙もまた、乱れた袷を整えながら涙がうっすらと溜まった目で飯田橋を見た。
「旦那様、源蔵さんのその口吸いは『陰間』としての技巧です」
「なんと」
「私とするときには陰間ではなく『男』としての口吸い。全く違うものです」
「ほう」
「そして、私もまた、今は陰間でも花宮でもなく、一人の男」
白妙が口の両端をにっと上げた。
「源蔵さんと私とで『男』としての口吸いを旦那様にして差し上げましょうか。
とても気持ちがいいですよ。それに」
言葉を一旦白妙は区切り、雄の目で飯田橋を見る。
「男の中にも女が潜んでいるものなんです。それは、どの男でも。
旦那様の女の部分を引き出してあげましょう。
新しい悦びが見つかるかもしれませんよ」
飯田橋がぎょっとしたときにはもう、後ろから源蔵に羽交い絞めにされていた。
その目は先ほどの陰間を匂わせるようなものではなく、雌を見る雄の目となっていた。
201018
#勝手に照れまつり
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