174 / 211
俺には二人の旦那様がいる
しおりを挟む
俺には二人の旦那様がいる。
どうしてこうなったのか、詳しい理由は知らない。
生まれたときからそうなっていて、俺はずっと「よい妻」になるための教育をされていた。
だから家事全般、家の切り盛り、そして閨での性技までみっちり仕込まれた。
婚姻可能な13歳の誕生日、俺は二人の旦那様に嫁いだ。
結婚式の間はずっとベールをかぶっていたので、旦那様を直接は見ていない。
式が終わるとお二人で買ったといわれる屋敷に俺を連れてきた。
俺の親は浅はかな知識しかなかったようだ。
二人の旦那様は貴族で、俺は家を切り盛りすることも家事をする必要もなかった。
俺はただ「奥様」として部屋にいさえすれば、使用人がすべてを行ってくれた。
おまけに旦那様は朝早くに家を出、夜遅くに帰ってきた。
俺はお二人に会うこともなく、立派なお屋敷でやることもなく、1年間過ごしてきた。
1年だ、1年。
屋敷の敷地内にいれば、行動を制限されることはなかった。
14歳の誕生日、俺は広い庭を歩いていた。
もう耐えられなかった。
どうしてここにいる必要があるのかわからない。
出ていこうと思った。
小さな東屋の中のベンチに腰を下ろす。
まだ14年しか生きていないが、なんの意味もない気がしてきた。
あんなに厳しく仕込まれた「よい妻になるため」のもろもろは一体なんだったんだろう。
家事はあまり好きではなかったし、閨でなにをするのかを知ってしまうと怖かった。
ここにいれば、寒さに震えることもなく、おいしい食事にありつけた。
使用人は俺を「身分の高い奥様」と扱ったので、誰も話をすることがなかった。
それもまた、自分がどんどん透明になっていく気がしていた。
ここにいるのに、いないも同然の存在。
そんなことを考えると悲しくなってきて、しくしく泣いてしまった。
この屋敷に来て、初めて泣いたかもしれない。
ずっと「もしかしたら今日こそは」と思って気を張っていた。
1年も待てば、もういいだろう。
なにもかも嫌になって、俺は泣いた。
「誰が泣いているの?」
俺は声を上げて泣いていたので、最初はその声に気づかなかった。
次に同じ声がしたとき、俺は泣きながら辺りを見た。
「あなたが泣いているの?」
青く長い髪をした背の高い男の人が立っていた。
ここに来て初めて話しかけられた。
俺は嬉しさと同時にそれまでせき止めていたものが一気にあふれ出すのを感じた。
俺がおんおんと泣き出すと、その男の人は音もなく俺に近づいてきて俺の隣に座るとひょいと俺を抱き上げ抱きしめた。
「泣かないで、愛しい人」
男の人は俺の頬を流れる涙を手で拭い、顔を近づけてきた。
俺ははっと気がつき、身を離す。
「おやめください」
「どうして」
俺は精一杯、男の人の胸を手で押し返した。
「私は結婚をしている身。
旦那様以外の方とこのようなことをしてはいけないのです。
お離しください」
仕込まれたとおりにきちんと言えているだろうか。
粗相のない態度だろうか。
それにも不安になりながら、俺は言った。
「それなら問題ないよ」
男の人がぐっと腕に力を込めると、俺の腕は呆気なく男の人の胸から外れ、抱き込まれた。
このままなにかあったら、大変だ。
貞淑を疑われてはならない。
「お戯れはおよしください」
俺は逃れようと顔を背け身をよじる。
しかし、もともと俺をすっぽりと包みこむくらい大きな人だ。
逃れられない。
俺はこの人を怖いと思った。
20170423
どうしてこうなったのか、詳しい理由は知らない。
生まれたときからそうなっていて、俺はずっと「よい妻」になるための教育をされていた。
だから家事全般、家の切り盛り、そして閨での性技までみっちり仕込まれた。
婚姻可能な13歳の誕生日、俺は二人の旦那様に嫁いだ。
結婚式の間はずっとベールをかぶっていたので、旦那様を直接は見ていない。
式が終わるとお二人で買ったといわれる屋敷に俺を連れてきた。
俺の親は浅はかな知識しかなかったようだ。
二人の旦那様は貴族で、俺は家を切り盛りすることも家事をする必要もなかった。
俺はただ「奥様」として部屋にいさえすれば、使用人がすべてを行ってくれた。
おまけに旦那様は朝早くに家を出、夜遅くに帰ってきた。
俺はお二人に会うこともなく、立派なお屋敷でやることもなく、1年間過ごしてきた。
1年だ、1年。
屋敷の敷地内にいれば、行動を制限されることはなかった。
14歳の誕生日、俺は広い庭を歩いていた。
もう耐えられなかった。
どうしてここにいる必要があるのかわからない。
出ていこうと思った。
小さな東屋の中のベンチに腰を下ろす。
まだ14年しか生きていないが、なんの意味もない気がしてきた。
あんなに厳しく仕込まれた「よい妻になるため」のもろもろは一体なんだったんだろう。
家事はあまり好きではなかったし、閨でなにをするのかを知ってしまうと怖かった。
ここにいれば、寒さに震えることもなく、おいしい食事にありつけた。
使用人は俺を「身分の高い奥様」と扱ったので、誰も話をすることがなかった。
それもまた、自分がどんどん透明になっていく気がしていた。
ここにいるのに、いないも同然の存在。
そんなことを考えると悲しくなってきて、しくしく泣いてしまった。
この屋敷に来て、初めて泣いたかもしれない。
ずっと「もしかしたら今日こそは」と思って気を張っていた。
1年も待てば、もういいだろう。
なにもかも嫌になって、俺は泣いた。
「誰が泣いているの?」
俺は声を上げて泣いていたので、最初はその声に気づかなかった。
次に同じ声がしたとき、俺は泣きながら辺りを見た。
「あなたが泣いているの?」
青く長い髪をした背の高い男の人が立っていた。
ここに来て初めて話しかけられた。
俺は嬉しさと同時にそれまでせき止めていたものが一気にあふれ出すのを感じた。
俺がおんおんと泣き出すと、その男の人は音もなく俺に近づいてきて俺の隣に座るとひょいと俺を抱き上げ抱きしめた。
「泣かないで、愛しい人」
男の人は俺の頬を流れる涙を手で拭い、顔を近づけてきた。
俺ははっと気がつき、身を離す。
「おやめください」
「どうして」
俺は精一杯、男の人の胸を手で押し返した。
「私は結婚をしている身。
旦那様以外の方とこのようなことをしてはいけないのです。
お離しください」
仕込まれたとおりにきちんと言えているだろうか。
粗相のない態度だろうか。
それにも不安になりながら、俺は言った。
「それなら問題ないよ」
男の人がぐっと腕に力を込めると、俺の腕は呆気なく男の人の胸から外れ、抱き込まれた。
このままなにかあったら、大変だ。
貞淑を疑われてはならない。
「お戯れはおよしください」
俺は逃れようと顔を背け身をよじる。
しかし、もともと俺をすっぽりと包みこむくらい大きな人だ。
逃れられない。
俺はこの人を怖いと思った。
20170423
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
性的イジメ
ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。
作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。
全二話 毎週日曜日正午にUPされます。
女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男
湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。
何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。
R-18♡BL短編集♡
ぽんちょ♂
BL
頭をカラにして読む短編BL集(R18)です。
pixivもやってるので見てくださいませ✨
♡喘ぎや特殊性癖などなどバンバン出てきます。苦手な方はお気をつけくださいね。感想待ってます😊
リクエストも待ってます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる