158 / 211
妖精王の指輪2 かけら(7)
しおりを挟む
この間のゴールデンウィークには、瑞生も俺も帰省した。
行き帰りは一緒だったが、実家に戻ってからはそれぞれで過ごした。
久しぶりに、家族とじーちゃんの家に行った。
じーちゃんの家の庭には新しいロッキングチェアが置かれていた。
それを見たときに、なぜか胸がキュンと締め付けられた。
古いロッキングチェアはじーちゃんの母さん、つまり俺のひーばーちゃんが使っていた。
透明感、と言えば、この間のGWに帰省したとき、誠士郎は家族で祖父の家を訪ねたときのことであった。
祖父の庭には新しいロッキングチェアが置かれていた。
まだ、祖父の母、つまり誠士郎の曾祖母が生きていたときには庭にはロッキングチェアが置かれており、彼女はいつもそれを揺らしながら座り、ずっと表情のない顔で空を見上げていた。
しかし、曾祖母が亡くなり、ロッキングチェアも傷みが激しくなり祖父の手で処分された。
「やっぱり、ここにはこれがないと落ち着かんでね」
祖父は笑いながら言い、今度は自分が座ってロッキングチェアを揺らしていた。
しばらく会わないでいると、祖父が年を取っていくのがはっきりとわかった。
進学で家を出るまでは、比較的近くに住んでいたのでなにかにつけ、祖父の家を訪れていたが、大学生になると帰省もそんなに頻繁にしないので、祖父に会うのも間が空いた。
祖父はロッキングチェアを揺らし、彼の母親のように空を見上げてぼそりと言った。
「じぃちゃんはなぁ、誠士郎が急にどこかに行ってしまっても覚悟はできている」
誠士郎と2人になったのを狙ったかのように、祖父は急に話し始めた。
内容が内容のために、誠士郎はぎょっとして祖父を見た。
祖父はそれを気にするふうでもなく、世間話をするように続けた。
「おまえの父さんも母さんもおんなじだ。
だから、誠士郎、もしその時が来たら、こっちのことは心配せんでいい」
「じぃちゃん?」
「誠士郎が思うようにしたらいい」
誠士郎の問いかけに答えず、祖父はそう言い切った。
そして、最後に
「選択は絶対に間違えるなよ」
と強く言った。
誠士郎はそのことを両親には話せずに、こっちに戻ってきた。
が、不安になる言葉だったので、同じく帰省から戻ってきた瑞生に話した。
瑞生の不安がぐんと増した。
誠士郎の透明感は、「ある日、ふといなくなってしまうのではないか」という儚さも持ち合わせていたからだ。
情緒不安定になり、急に泣き出したり、切なそうな溜息をつき始めた頃、誠士郎はえも言えぬ色気を漂わせていた。
誰かにたっぷりと愛されて溢れてくるような、どこか苦しくて悲しそうな。
そばにいた瑞生と克也は「色気がだだ漏れ!」と心配して、誠士郎をあまりひとりにしないようにしていたこともあった。
本人は無自覚だったが、たまに危ない目に遭ったり、誠士郎の先輩が注意したことから警戒もするようになった。
高校を卒業する頃には、艶やかさは抑えられ、代わりに出てきたのが「透明感」だった。
しかし、本人にそんなことは言えず、不安を抑えながら、
「どっかに行くなら、ちゃんと知らせろ」
とだけ、その時瑞生は言った。
誠士郎は、
「俺、どこかに行っちゃうのかなぁ。
でも、行く前には瑞生と克也には言っていくね」
と答えた。
その答えも、瑞生にとっては頭を抱えることになり、克也にはメールで知らせた。
克也もメールで叫んでいたが、どうすることもできなった。
20170102
行き帰りは一緒だったが、実家に戻ってからはそれぞれで過ごした。
久しぶりに、家族とじーちゃんの家に行った。
じーちゃんの家の庭には新しいロッキングチェアが置かれていた。
それを見たときに、なぜか胸がキュンと締め付けられた。
古いロッキングチェアはじーちゃんの母さん、つまり俺のひーばーちゃんが使っていた。
透明感、と言えば、この間のGWに帰省したとき、誠士郎は家族で祖父の家を訪ねたときのことであった。
祖父の庭には新しいロッキングチェアが置かれていた。
まだ、祖父の母、つまり誠士郎の曾祖母が生きていたときには庭にはロッキングチェアが置かれており、彼女はいつもそれを揺らしながら座り、ずっと表情のない顔で空を見上げていた。
しかし、曾祖母が亡くなり、ロッキングチェアも傷みが激しくなり祖父の手で処分された。
「やっぱり、ここにはこれがないと落ち着かんでね」
祖父は笑いながら言い、今度は自分が座ってロッキングチェアを揺らしていた。
しばらく会わないでいると、祖父が年を取っていくのがはっきりとわかった。
進学で家を出るまでは、比較的近くに住んでいたのでなにかにつけ、祖父の家を訪れていたが、大学生になると帰省もそんなに頻繁にしないので、祖父に会うのも間が空いた。
祖父はロッキングチェアを揺らし、彼の母親のように空を見上げてぼそりと言った。
「じぃちゃんはなぁ、誠士郎が急にどこかに行ってしまっても覚悟はできている」
誠士郎と2人になったのを狙ったかのように、祖父は急に話し始めた。
内容が内容のために、誠士郎はぎょっとして祖父を見た。
祖父はそれを気にするふうでもなく、世間話をするように続けた。
「おまえの父さんも母さんもおんなじだ。
だから、誠士郎、もしその時が来たら、こっちのことは心配せんでいい」
「じぃちゃん?」
「誠士郎が思うようにしたらいい」
誠士郎の問いかけに答えず、祖父はそう言い切った。
そして、最後に
「選択は絶対に間違えるなよ」
と強く言った。
誠士郎はそのことを両親には話せずに、こっちに戻ってきた。
が、不安になる言葉だったので、同じく帰省から戻ってきた瑞生に話した。
瑞生の不安がぐんと増した。
誠士郎の透明感は、「ある日、ふといなくなってしまうのではないか」という儚さも持ち合わせていたからだ。
情緒不安定になり、急に泣き出したり、切なそうな溜息をつき始めた頃、誠士郎はえも言えぬ色気を漂わせていた。
誰かにたっぷりと愛されて溢れてくるような、どこか苦しくて悲しそうな。
そばにいた瑞生と克也は「色気がだだ漏れ!」と心配して、誠士郎をあまりひとりにしないようにしていたこともあった。
本人は無自覚だったが、たまに危ない目に遭ったり、誠士郎の先輩が注意したことから警戒もするようになった。
高校を卒業する頃には、艶やかさは抑えられ、代わりに出てきたのが「透明感」だった。
しかし、本人にそんなことは言えず、不安を抑えながら、
「どっかに行くなら、ちゃんと知らせろ」
とだけ、その時瑞生は言った。
誠士郎は、
「俺、どこかに行っちゃうのかなぁ。
でも、行く前には瑞生と克也には言っていくね」
と答えた。
その答えも、瑞生にとっては頭を抱えることになり、克也にはメールで知らせた。
克也もメールで叫んでいたが、どうすることもできなった。
20170102
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
性的イジメ
ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。
作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。
全二話 毎週日曜日正午にUPされます。
女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男
湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。
何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。
R-18♡BL短編集♡
ぽんちょ♂
BL
頭をカラにして読む短編BL集(R18)です。
pixivもやってるので見てくださいませ✨
♡喘ぎや特殊性癖などなどバンバン出てきます。苦手な方はお気をつけくださいね。感想待ってます😊
リクエストも待ってます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる