106 / 211
若君、ひとり
しおりを挟む
見事に晴れ渡った朝、千代丸は意気揚々と草履に足を入れました。
そして、のっしのっしと歩き始めました。
門のところまで来ると、きょろきょろと辺りを見回しました。
「よし!」
かわいらしい声を上げ、確認を終えると門番に丁寧に挨拶をして、門の外に出ていきました。
いよいよ、千代丸の初めてのひとりお散歩が始まるのです。
千代丸がいるこの国は片田舎の小さな国でした。
温暖な気候でのんびりとしており、大きな争いごとなどは忘れるほど大昔にあったらしいと文書で残っているくらいでした。
大好きなお散歩にはいつも、口うるさい佐助がついてきました。
すぐに「若、これをしてはいけません」、「若、それはなりません」、「若、それは危のうございます」とやかましく言うのです。
千代丸はこの正月で、数えで四歳になりました。
もう立派な男子だと思います。
なので先日、父上に「ひとりで散歩に行きたい」と申し出てみました。
そばに控えていた佐助がさっそく「若、それは危のうございます。わたくしめがお供いたしますので」と言い始めました。
「父上!」
千代丸はきりりとした顔つきで正座をし、父上を見上げました。
後ろからは小さな袴からちんまりとした足の親指が見えます。
「わたくしは十分おとなになりました。
ひとりでも大丈夫だと思います!」
きらきらとした黒い目で千代丸は自信満々に言います。
父上はしばらく考えましたが、静かに口を開きました。
「よろしい。
三日後に晴れたら、ひとりで散歩に行くがよい」
桃のようなほっぺたがぷるるんと震え、千代丸は嬉しさのあまり父上に手をつき頭を下げました。
「ありがとうございます、父上!
早速、てるてる坊主を作り、晴れるようにお祈りいたします!」
佐助は慌てましたが、殿様の言うことには逆らうことができませんでした。
門から少し歩いて、千代丸はもう一度辺りを見回しました。
佐助の姿はありません。
てっきり隠れてついてくると思ったのに、じいも乳兄弟の菊之丞もいません。
ちょっぴり不安になってきましたが、かぶりを振り、気を取り直して「ひとりでもだいじょうぶ!ひとりでもだいじょうぶ!」と大声で言いながら、武家屋敷が並ぶ道をひとりで歩いていきました。
そして、のっしのっしと歩き始めました。
門のところまで来ると、きょろきょろと辺りを見回しました。
「よし!」
かわいらしい声を上げ、確認を終えると門番に丁寧に挨拶をして、門の外に出ていきました。
いよいよ、千代丸の初めてのひとりお散歩が始まるのです。
千代丸がいるこの国は片田舎の小さな国でした。
温暖な気候でのんびりとしており、大きな争いごとなどは忘れるほど大昔にあったらしいと文書で残っているくらいでした。
大好きなお散歩にはいつも、口うるさい佐助がついてきました。
すぐに「若、これをしてはいけません」、「若、それはなりません」、「若、それは危のうございます」とやかましく言うのです。
千代丸はこの正月で、数えで四歳になりました。
もう立派な男子だと思います。
なので先日、父上に「ひとりで散歩に行きたい」と申し出てみました。
そばに控えていた佐助がさっそく「若、それは危のうございます。わたくしめがお供いたしますので」と言い始めました。
「父上!」
千代丸はきりりとした顔つきで正座をし、父上を見上げました。
後ろからは小さな袴からちんまりとした足の親指が見えます。
「わたくしは十分おとなになりました。
ひとりでも大丈夫だと思います!」
きらきらとした黒い目で千代丸は自信満々に言います。
父上はしばらく考えましたが、静かに口を開きました。
「よろしい。
三日後に晴れたら、ひとりで散歩に行くがよい」
桃のようなほっぺたがぷるるんと震え、千代丸は嬉しさのあまり父上に手をつき頭を下げました。
「ありがとうございます、父上!
早速、てるてる坊主を作り、晴れるようにお祈りいたします!」
佐助は慌てましたが、殿様の言うことには逆らうことができませんでした。
門から少し歩いて、千代丸はもう一度辺りを見回しました。
佐助の姿はありません。
てっきり隠れてついてくると思ったのに、じいも乳兄弟の菊之丞もいません。
ちょっぴり不安になってきましたが、かぶりを振り、気を取り直して「ひとりでもだいじょうぶ!ひとりでもだいじょうぶ!」と大声で言いながら、武家屋敷が並ぶ道をひとりで歩いていきました。
0
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説
性的イジメ
ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。
作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。
全二話 毎週日曜日正午にUPされます。
女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男
湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。
何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる