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桜ちゃん

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 私は桜が満開の時に産まれたんだって。

 ママがそう教えてくた。

 だから、名前が「桜」っていうの。

 私は小学校6年生。身長は160cm。体重は内緒。

 4月生まれだからかな、「背が高いわねぇ」とか「お話が上手ね」ってよく言われるの。

 3つ違いの弟は3月うまれで、「男の子なのに、ちょっと小さいわね。」「おとなしいのね。」なんてことを言われる。

 でも、そんなの、生まれた月に関係あるのかな?

 私は身体を動かすのが大好きだから、いつも小学校の休み時間は外で遊んでる。

 鬼ごっこしたり、ボール遊びをしたり、縄跳びはこの前、100回飛べるようになったんだ。
 いつも男の子たちと一緒。
 だってその方が楽しいんだもん。
 教室の中で、本を読んだり、絵を描いたりするのは苦手。

 男の子たちは一緒に遊んでくれるけど、最近、女の子達があまり口を聞いてくれない。
 前は、そんなことなかったのに。

________


 ある日、女の子たちが桜ちゃんに言いました。

 「女の子は女の子と一緒に遊ばなきゃダメでしょう?」
 「桜ちゃん、どうしていつもズボンなの?女の子はスカートをはくんだよ。」
 「私、桜ちゃんと、一緒にいたくない。だから、一緒に遊ばない。」

 桜ちゃんはとても悲しい気持ちになりました。

 どうして、男の子と遊んだらいけないの?
 どうして、したくない遊びをしないといけないの?

 桜ちゃんには理由が分かりませんでした。

 でも、男の子と遊ぶことが悪いわけではないし、
 女の子たちと一緒に遊ばなくてもいいはずです。

 桜ちゃんは苦手な事は、出来ないと思い、自分が楽しいと思うことを続けることにしました。

 いつも、元気いっぱいの桜ちゃん。
 あっという間に夏休みがきました。
 桜ちゃんは夏休みを満喫し、海で泳いだり、山で遊んだりして夏の思い出を作っていました。
 夏休みが終わり、小学校に戻った桜ちゃんは、女の子たちから注目を浴びました。

「桜ちゃん、日に焼けて男の子みたいだね」女の子たちは桜ちゃんを見て笑いました。
「日に焼けたらいけないんだよ」
 桜ちゃんはその言葉にショックを受けました。
 私、夏休みにたくさん遊んで楽しかったし、そんなことを言わないでほしいなと、桜ちゃんは思いました。

________

 秋になって、ドッチボール大会が行われる事になりました。
 桜ちゃんの大好きなドッチボール。
 男女一緒に戦います。
 桜ちゃんはドッチボール大会に向けて、男の子たちと一緒に練習を重ねていました。

 ドッチボール大会は学年別で8対8で戦います。
 桜ちゃんは縄跳びで鍛えた足腰の強さを生かし、敵チームのボールをかわしながら戦いました。
 桜ちゃんのチームはどんどん勝ち進みます。
 上位チームになってくると、どこのチームも投げるのも、取るのも上手です。
 桜ちゃんのチームは決勝戦に進みました。

 相手チームのプレイヤーたちは桜ちゃんたちのチームの動きよく見て、上手にパスを回し、1人、また1人とボールを当てていきます。
 気がつけが、桜ちゃんのチームはみんな当たってしまい、桜ちゃんが一人になりました。
 ボールをなかなかとらえられず、ボールを投げるのも難しい状況です。
 桜ちゃんはボールに当たらないように、上手に逃げます。
 相手チームはあと一人打ち取れば優勝なので、真剣です。
 桜ちゃんはコートの中で一人、早いボールをかわしながら相手チームと戦います。
 桜ちゃんのチームはもう勝てないと思いました。しかし、
 桜ちゃんは最後まであきらめず、素早く、距離をとり、自分が当たらないように、自分の態勢を整えます。
 ボールのラリーはなかなか決着がつきません。
 相手チームは作戦をかえ、桜ちゃんの足元を狙い始めました。
 桜ちゃんは、コートの中で足を滑らせましたが、その時、桜ちゃんはなんと大きく跳び上がり、相手のボールをキャッチしました。
 この瞬間、会場中から拍手が沸き起こりました。
「桜ちゃん頑張って~!!」
「桜ちゃん負けないで~!!」
 負けてしまった他のチームの女の子達が桜ちゃんを応援します。
 桜ちゃんはボールをよく見て、キャッチしては、相手にボールを投げつけ、
 「ピィ」っと審判の笛が当たったことを知らせます。
 気が付けば試合は終わり、桜ちゃんのチームは、桜ちゃんが最後の一人を打ち取って、優勝しました。
 桜ちゃんはチームメイトたちと一緒に勝利を喜びあい、
 男の子たちからは「お前、すごかったな!」とたくさん声をかけてもらいました。

 この日のドッチボール大会で桜ちゃんはなんと
 「優秀選手賞」をもらい、校長先生から賞状を受けとりました。
 そして、女の子たちからも「桜ちゃん、本当にすごかったわ」という声がかかりました。
 桜ちゃんは少し恥ずかしそうでした。

 ある日、桜ちゃんが校庭で自分の好きな縄跳びをしていたところ、女の子たちが近づいてきました。

 「桜ちゃん、この前のドッチボールすごかったね。私も縄跳びやってみたい!」と一人が言いました。

 「私も!私も!」と他の女の子たちも続けて言いました。

 桜ちゃんは嬉しくて顔がほころびました。

 「一緒にやろう!」と言って、みんな一緒に縄跳びを始めました。

  最初はうまく跳べない女の子たちもいましたが、桜ちゃんが教えてくれたり、励ましてくれたりして、楽しく跳ぶことができました。

 桜ちゃんは、体育の時間に「縄跳び名人」のメダルをもらうほど、沢山の技ができるようになりました。

 その後は、桜ちゃんと女の子たちは一緒に遊ぶようになり、桜ちゃんは女の子たちとも楽しく過ごせるようになりました。

 いつの間にか、桜ちゃんはクラスの人気物です。

 そしてまた、桜の咲く季節がやって来ます。

 そう、桜ちゃん、次はいよいよ中学生です。

 ~おしまい~
 
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