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第二章 世紀末の世界
異界転移
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バチッバチバチ!
それは初め小さな火花から始まった。
岩と砂ばかりの荒野。
雲一つない晴天の中に、黒い点が生まれる。
点はやがて大きな球体となり、人ほどの大きさの黒い球体へと育っていった。
ぼとり
黒い球体が一つの影を落とす。
それは人の形をしていた。
それはほっそりとした人の形をしていた。
それは儚げな少女の形をしていた。
白銀の髪の少女は力なく重力のままに大地へと落ちる。
少女の体が大地に接触する寸前――
ぶわり
突風が巻き起こり少女の体がふわりと持ち上がる。白銀の髪が舞った。
そして、まるで赤子をゆりかごに寝かせるが如く、優しく大地に少女を横たわらせた。
『姫様……おいたわしや……』
姿はなく声だけが響く。
少女の顔は血の気がなく白い肌がさらに白くなっていた。
『角を……封じられている』
別の声が囁く。
少女の頭には銀の角があった。ちょうど耳の上あたり、本来であれば対で二本あるべき角が片方が欠け一本となってしまっていた。
『なんということを……!』
『なんと恐れ多いことを……!』
二つの声が同時に嘆く。
『嗚呼、姫様』
『我らは命を懸けて、御身をお守りいたします』
少女の体が光に包まれる。
『この世界は魔力が薄い……』
『この世界は大地の力が薄い……』
声は少女を護るように周囲に意識を向ける。
ざらりざらり
唐突に――大地が盛り上がった。
長い体に無数の脚。
それは巨大なムカデであった。
『何奴!』
『姫様を害する者か!』
稲妻がムカデを襲う。
二撃三撃と稲妻がムカデに降り注ぐ。
『姫様を害しようとは不遜な!』
何度目かの雷撃。それらを受けてもムカデは倒れることはなかった。
『おのれ……』
『魔力さえあれば……』
命を賭した攻撃もムカデを倒すまでには至らなかった。
『姫様申し訳ありませぬ……』
『我らの力及ばず……』
ムカデが少女に近づいてくる。
『『無念!』』
二つの声が同時に響いた。
それは初め小さな火花から始まった。
岩と砂ばかりの荒野。
雲一つない晴天の中に、黒い点が生まれる。
点はやがて大きな球体となり、人ほどの大きさの黒い球体へと育っていった。
ぼとり
黒い球体が一つの影を落とす。
それは人の形をしていた。
それはほっそりとした人の形をしていた。
それは儚げな少女の形をしていた。
白銀の髪の少女は力なく重力のままに大地へと落ちる。
少女の体が大地に接触する寸前――
ぶわり
突風が巻き起こり少女の体がふわりと持ち上がる。白銀の髪が舞った。
そして、まるで赤子をゆりかごに寝かせるが如く、優しく大地に少女を横たわらせた。
『姫様……おいたわしや……』
姿はなく声だけが響く。
少女の顔は血の気がなく白い肌がさらに白くなっていた。
『角を……封じられている』
別の声が囁く。
少女の頭には銀の角があった。ちょうど耳の上あたり、本来であれば対で二本あるべき角が片方が欠け一本となってしまっていた。
『なんということを……!』
『なんと恐れ多いことを……!』
二つの声が同時に嘆く。
『嗚呼、姫様』
『我らは命を懸けて、御身をお守りいたします』
少女の体が光に包まれる。
『この世界は魔力が薄い……』
『この世界は大地の力が薄い……』
声は少女を護るように周囲に意識を向ける。
ざらりざらり
唐突に――大地が盛り上がった。
長い体に無数の脚。
それは巨大なムカデであった。
『何奴!』
『姫様を害する者か!』
稲妻がムカデを襲う。
二撃三撃と稲妻がムカデに降り注ぐ。
『姫様を害しようとは不遜な!』
何度目かの雷撃。それらを受けてもムカデは倒れることはなかった。
『おのれ……』
『魔力さえあれば……』
命を賭した攻撃もムカデを倒すまでには至らなかった。
『姫様申し訳ありませぬ……』
『我らの力及ばず……』
ムカデが少女に近づいてくる。
『『無念!』』
二つの声が同時に響いた。
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