龍王の姫 世紀末の世界で救世の姫と呼ばれ

須賀和弥

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第一章 龍王の姫

アメリアの日課

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 朝。
 日の出と共に起床。
 メイドたちに髪をとかれつつ身支度を整える。
 王と王妃は忙しく朝食はポチと二人っきりの事が多い。
 朝食が終わると朝の勉強時間。歴史、経済、数学、言語額を中心に学ぶ。とても眠たい。
 昼食、ポチと一緒の昼ご飯。
 昼食後、お昼寝タイム。ポチをモフモフしながらの至福の時間。
 お昼寝後、マナーの勉強。とても退屈。
 その後のダンスの時間。とても楽しい。
 それからおやつの時間。最高の時間!
 夕方近くに魔法の勉強。とても楽しいけれど魔法はまだまだ難しい。氷の魔法がちょっとだけ使える。

「――もう、まいにちまいにち! おべんきょうおべんきょう! って、いやになっちゃうわよ!」

 アメリアはメイドがカットしてくれたリンゴをかじりつつ愚痴をこぼした。

「ねぇ、ネロもそうおもわない?」
「それは、アメリア様にとって大切なことなので仕方ないと思いますよ」

 ネクロシスはぷんぷんと怒り顔のアメリアを見つめながら微笑む。怒っているアメリアが微笑ましく、また目覚めてからも時間を見つけてはこうして会いに来てくれるアメリアの存在に深い感謝をしていた。
 ネロというのはアメリアがつけたネクロシスの愛称だった。
 リーフリンダの話ではアメリアはネクロシスが目覚めるまでの一か月間ほぼ毎日ここを訪れ看病をしてくれていたということだった。それはこうしてベッドに移動し、ある程度のことは自分でできるようになってからも変わっていない。
 
(こんな自分のために……!)

 自分のことを考えようとすると激しい頭痛に襲われた。
 原因は分からない。
 そもそも原因どころかネクロシスは自分の名前以外の全てを忘れてしまっていた。

(僕はなぜここにいる?)

 霊峰セレスティアルピーク。前人未到の厳しい霊峰だ。自分がそんな危険な山になぜ挑んだのか思い出せない。辿り着いた時は死ぬ寸前だったという。それほどまでしてここを訪れた理由が分からない。
 ネクロシスの隣には古びた剣が置かれていた。彼はこの剣を抱いたまま正門前に倒れていたということだ。剣は鞘から抜けず。イグニスの力をもってしても抜くことはできなかった。試しにネクロシスも抜こうと試みたが失敗。未だボロ布にくるまれたままになっている。

(僕はこの剣で何をしようとしていたんだ?)

 分からない。何よりも分からないのは今こうして自分が龍王の住まう宮殿にいること。その愛娘であるアメリアがこうして気さくに話してくれているこの状況の方だった。

「ひめしゃま、ちゅういしてくだされ。あいてはまじんぞくですぞ!」

 ポチがガルルルと尻尾をぴんと立て威嚇しながらアメリアの周囲をぐるぐると回る。ネクロシスが目覚めてからずっとこの白虎の仔はこの調子だった。しかし、それは龍王の娘を守る騎士としては当然のことだった。

(警戒を怠ってはいけない。僕を信じてはいけない)

 何も思い出せないが、そのことだけはずっとネクロシスの心の中に響き続けていた。
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