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銀狐の章
第067話「親と子と ②」
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夕暮れ――黄昏時。
二人に手を引かれしばらく歩いた頃に、オレはその子供に会った。
横断歩道を目の前に泣きじゃくる男の子。
「あ……」
シェンが短く言葉を発する。シェンはちょっと悲しそうな表情をしている。ニャンは耳をピンとさせその少年を見つめていた。
「迷子か?」
オレの言葉にシェンとニャンが驚いたようにオレを見る。
「お主様……子供が……視えるのか?」
なんだか失礼な言い方だな。
目も前にいる子供が見えるなんてあたりまえじゃないか。
――まさか、オレが見て見ぬふりをするとでも思ったのか。
それはそれで失礼な勘違いだ。
オレだってそれなりに良識はあるつもりだ。
困っていた人がいたら助ける。
泣いている子供がいたら声をかける。
当たり前じゃないか。
「おい、どうしたんだ?」
子供は泣いたまま応えない。ただ泣くばかりだった。
仕方ない。しゃがみ込み視線を同じにする。
「どうしたんだ。迷子か?名前は?」
確か近くに交番があったはずだ。まずはそこで保護してもらえばなんとかなるだろう。
「……なまえ?」
「ああ、そうだ」
「……のぼる」
しゃくりあげながらなんとか名前を言うことができた。
おお、やればできるじゃないか。
これで知らんぷりをされたり、逃げ出されでもしようものなら大人として「きちんとしたしつけ」を行わなければならないところだ。
「そうか。のぼる君っていうんだな」
オレの言葉に頷くのぼる君。
見た感じ小学一年くらいだろうか。ちょっと気の弱そうな感じはするが根はしっかりとしているのだろう。
オレの問いかけにもしっかりと応えてくれた。そうだぞ少年。聞かれたら答える。そこからコミュニケーションはスタートするのだ。
「家の場所は……分からないからここにいるんだよな」
オレの問いかけにのぼる君は首を振った。
「ううん。家はすぐそこだよ」
近くかよ。
迷子じゃないのかよ。
「じゃあ、何で泣いてたんだ?」
「お母さんの所に……行きたくて……横断歩道の向こうで、待っているんだ」
お母さん?
横断歩道の向かい側には誰もいない。
「お主様……」
シェンがオレの肘をつつく。
「一緒にスーパーに買い物に行くんだ……お菓子を買ってくれるって……」
「そうか」
きっとはじめてのおつかいか何かだろう。母親だけ先に行ってしまったのか、その姿は見えない。
まったく。困った親もいたもんだ。
会ったらきつく言っておいてやらねば。
オレはのぼる君の手を取る。
小さな手、温かな手。
その手はしっかりとオレの手を掴んでくれた。
「じゃあ、行くぞ」
「えっ?」
びっくりしたようにオレを見る。
驚くことはないぞ少年。一緒にスーパーまで行ってやろうと言っているのだ。
横断歩道が怖いのか、のぼる君は動こうとしない。
ほほう。ならばオレがその恐怖を打ち負かす術を教えてやろう。
「いいか少年、ゲームをしよう!」
オレはビシッと横断歩道の信号機を指さした。
「あの二つ目玉の怪物は青く光っている間は襲ってこない」
そう。これはゲームなのだ。
「赤になったら?」
のぼる君の目がオレを見ている。
「襲ってくる」
オレの言葉に一瞬ひるんだようにのぼる君。
そう、世界は無慈悲なのだ。
「だが安心しろ。君には心強い味方がいるのだ!」
ビシッとシェンとニャンを指さした。
「こいつはのぼる君を護衛してくれるシェン隊員だ。そしてこいつはニャン隊員」
「コン!」
「ニャン!」
二人共ビシッと敬礼して応えてくれた。
よし、二人ともいいノリだ。
「この二人が君のことを身をもって守ってくれるから安心したまえ!」
「「えっ!?」」
ちょっと、聞いてないよ。みたいな顔をする二人だがとりあえず無視。
「さあ、オレが先に渡って安全を確認するから、君は次に信号が青になったら渡ってきたまえ」
「ひ、ひとりで?」
「当たり前だ。そのための二人の隊員だからな」
オレが手を引いて渡ることは容易い。もしくは抱っこしてとか……それじゃあダメだ。苦悩して努力して乗り越えなければ意味がない。
できることはいっぱいする。苦手なことは克服する。
それをこの横断歩道で会得するがいい!
二人に手を引かれしばらく歩いた頃に、オレはその子供に会った。
横断歩道を目の前に泣きじゃくる男の子。
「あ……」
シェンが短く言葉を発する。シェンはちょっと悲しそうな表情をしている。ニャンは耳をピンとさせその少年を見つめていた。
「迷子か?」
オレの言葉にシェンとニャンが驚いたようにオレを見る。
「お主様……子供が……視えるのか?」
なんだか失礼な言い方だな。
目も前にいる子供が見えるなんてあたりまえじゃないか。
――まさか、オレが見て見ぬふりをするとでも思ったのか。
それはそれで失礼な勘違いだ。
オレだってそれなりに良識はあるつもりだ。
困っていた人がいたら助ける。
泣いている子供がいたら声をかける。
当たり前じゃないか。
「おい、どうしたんだ?」
子供は泣いたまま応えない。ただ泣くばかりだった。
仕方ない。しゃがみ込み視線を同じにする。
「どうしたんだ。迷子か?名前は?」
確か近くに交番があったはずだ。まずはそこで保護してもらえばなんとかなるだろう。
「……なまえ?」
「ああ、そうだ」
「……のぼる」
しゃくりあげながらなんとか名前を言うことができた。
おお、やればできるじゃないか。
これで知らんぷりをされたり、逃げ出されでもしようものなら大人として「きちんとしたしつけ」を行わなければならないところだ。
「そうか。のぼる君っていうんだな」
オレの言葉に頷くのぼる君。
見た感じ小学一年くらいだろうか。ちょっと気の弱そうな感じはするが根はしっかりとしているのだろう。
オレの問いかけにもしっかりと応えてくれた。そうだぞ少年。聞かれたら答える。そこからコミュニケーションはスタートするのだ。
「家の場所は……分からないからここにいるんだよな」
オレの問いかけにのぼる君は首を振った。
「ううん。家はすぐそこだよ」
近くかよ。
迷子じゃないのかよ。
「じゃあ、何で泣いてたんだ?」
「お母さんの所に……行きたくて……横断歩道の向こうで、待っているんだ」
お母さん?
横断歩道の向かい側には誰もいない。
「お主様……」
シェンがオレの肘をつつく。
「一緒にスーパーに買い物に行くんだ……お菓子を買ってくれるって……」
「そうか」
きっとはじめてのおつかいか何かだろう。母親だけ先に行ってしまったのか、その姿は見えない。
まったく。困った親もいたもんだ。
会ったらきつく言っておいてやらねば。
オレはのぼる君の手を取る。
小さな手、温かな手。
その手はしっかりとオレの手を掴んでくれた。
「じゃあ、行くぞ」
「えっ?」
びっくりしたようにオレを見る。
驚くことはないぞ少年。一緒にスーパーまで行ってやろうと言っているのだ。
横断歩道が怖いのか、のぼる君は動こうとしない。
ほほう。ならばオレがその恐怖を打ち負かす術を教えてやろう。
「いいか少年、ゲームをしよう!」
オレはビシッと横断歩道の信号機を指さした。
「あの二つ目玉の怪物は青く光っている間は襲ってこない」
そう。これはゲームなのだ。
「赤になったら?」
のぼる君の目がオレを見ている。
「襲ってくる」
オレの言葉に一瞬ひるんだようにのぼる君。
そう、世界は無慈悲なのだ。
「だが安心しろ。君には心強い味方がいるのだ!」
ビシッとシェンとニャンを指さした。
「こいつはのぼる君を護衛してくれるシェン隊員だ。そしてこいつはニャン隊員」
「コン!」
「ニャン!」
二人共ビシッと敬礼して応えてくれた。
よし、二人ともいいノリだ。
「この二人が君のことを身をもって守ってくれるから安心したまえ!」
「「えっ!?」」
ちょっと、聞いてないよ。みたいな顔をする二人だがとりあえず無視。
「さあ、オレが先に渡って安全を確認するから、君は次に信号が青になったら渡ってきたまえ」
「ひ、ひとりで?」
「当たり前だ。そのための二人の隊員だからな」
オレが手を引いて渡ることは容易い。もしくは抱っこしてとか……それじゃあダメだ。苦悩して努力して乗り越えなければ意味がない。
できることはいっぱいする。苦手なことは克服する。
それをこの横断歩道で会得するがいい!
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