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銀狐の章

第008話「お風呂で禊ぎ ③」

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 オレはなんとか身体を【無事に】洗い終えることができた。
 疲れを癒すはずの入浴でなんでこんなに疲れるのだろうか。

「のお、お主様よ」

 遠慮がちなシェンの声。
 今度は何だ?
 振り向くと泡だったボディタオルを手にしたシェンの姿があった。

「我様を清めて欲しいのじゃが」

 濡れて細くなった尻尾がゆっくりと左右に揺れている。

 ――か、身体を洗えとな!
 
 ハードル高ぇ。

「背中だけでいいのじゃ、否、できれば尻尾まで!」

 う~ん。
 オレはしばらく考えこむ。
 
 ――まあ、背中ぐらいなら。

 それが甘い考えであることを知るのは彼女の身体を洗い始めてすぐの事だった。

 ◆ ◆ ◆ ◆

「あ…………っ」

 彼女の小さな唇から甘い声が漏れる。
 その吐息には熱がこもり、時折ぴくんと身体が震える。

「もっと……強く……」

 オレの手が動く度に彼女は声を漏らす。
 手の中で彼女の分身が暴れ始める。
 おおっと、逃がしはしねぇぜ!
 ささやかな抵抗だ。オレの前では無力。
 オレは無理矢理押さえつけ作業を開始する。

「ま、待つのじゃ、そんなに激しくされると……!」

 バスタブの縁につかまりながら彼女の小さな身体がガクガクと痙攣する。

「も、もうダメなのじゃ♡」

「アホか!」

 風呂場で変な声出すんじゃない。
 オレの手の中で尻尾がぴくぴくとしている。
 
「お主様、我様は尻尾はBIN・KAN♡なのじゃ」

 尻尾強くを掴まれると力が抜けるって……どっかの野菜人じゃあるまいし。
 一軒家とはいえ、お風呂の声はよく響く。変な声を出されては変な噂が立ちオレの沽券にかかわる。

「しかし、これはクセになるのう」

 泡だらけになりながらシェンは嬉しそうに泡を飛ばす。

「お主様どうじゃ!」

 胸と下半身を泡々でコーティングしたシェン。
 きわどい水着を着ているようで背徳感満載だ。
 満載なのでさっさとシャワーで洗い流して湯船に突っ込んだ。

「遊んでないでしっかりと温まるんだぞ」

「分かっておるのじゃ、ちゃんと一〇〇〇まで数えるのじゃ」

 長げえよ。せめて一〇〇までにしてくれよ。
 小さい頃、妹と一緒に風呂に入っていた頃を思い出す。
 早く上がりたがる妹をあれやこれやと言いながら温まらせるのに苦労したものだ。
 オレに言われたとおりにきっちり一〇〇まで数えてからシェンはお風呂から上がった。
 その時になってふとオレは考えた。

「お前……着替えとか持っているのか?」

「いや、そんなのないぞ」

 こいつ、巫女服しか持ってねえのかよ。
 さすがに風呂上がりで巫女服はないだろう。
 仕方ない。オレの服を着させるか……
 ついにオレは衣・食・住を彼女に与えてしまうことになったのだ。
 
 □■□■□■□■用語解説□■□■□■□■

【衣・食・住】
 服を着て食事にありつくことができて、住む家がある。生活の基盤。
 これを与えることによってシェンは野良神狐からランクアップした……のか?
 
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