世にも不思議な物語!

須賀和弥

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〇一一話〜〇ニ〇話

〇一九話「繁栄の塔」

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 ある大きな街に、高い高い塔がありました。
 それはどこからでも見ることができ、今では観光の名所になっていました。
 旅人がこの街を訪れて言いました。

「あの塔は一体なんですか?」

 お土産物屋の店主は言いました。

「これは『繁栄の塔』と言うんだよ」

「繁栄の塔ですか?」

 旅人は首を傾げました。

 昔、この辺りには小さな村がひとつあるだけでした。
 土地は痩せており、農作物もほとんど育たなかったといいます。
 周辺に村はなく、村人たちは放牧などをしながらほそぼそと暮らしていました。
 その村にあるとき一人の旅人が訪れました。
 村人たちは少ないながらも食事と宿を提供したといいます。
 その行為に感動した旅人は村人たちにこう言いました。

「この村を繁栄へと導く方法を教えましょう」

 村人たちの目は輝きました。

「それは本当ですか」

「ええ」

 旅人はうなずきました。

「一人ひとりが一日にたった一つのことをするだけで、この村はだんだん豊かになっていくのです」

 村人たちは、旅人の言うとおりにすることにしました。
 それは、一日に村人が一つずつレンガを積み上げていくというものでした。

「村人が一日に必ず一つずつレンガを積み上げて塔を造っていきます。雨の日も風の日も一日も欠かすことなく続けることが大切なのです」

 村人たちは、旅人たちの言うとおりに毎日せっせとレンガを積み上げていきました。
 最初は小さな家ぐらいだったものが、だんだんと大きくなっていきました。

「そして今、積み上げること百年!」

 土産物屋の店主は塔を見上げて言いました。

「小さなレンガは天まで届く塔になりましたとさ」

「ほほう、それはすごいですね」

 旅人は関心したようにうなずきました。

「昔は小さな村だったこの辺りも、塔の話を聞きつけた旅人なんかが集まってきて、今では立派な観光の街さ」

 今でも、村の子孫たちはこの塔を造り続けているといいます。

「旅人さんは初めてみたいだから安くしとくよ」

 そう言って、土産屋の店主は旅人に手を差し出しました。
 旅人が首を傾げていると。

「今の塔の案内料だよ。それが払いたくないんだったら、何か買っておくれ」

 旅人はしぶしぶ塔のパンフレットを購入しました。

「ありがとよ。まさしく『繁栄の塔』だろ」

 土産物屋の店主は笑顔で言いました。



 「ロンよりショウコ」


ロン「懐かしいなぁ。しかも、あいつら立派な物を造ってるなぁ」

ショウコ「なんですかいきなり」

ロン「昔、この辺を旅した時、小さな村で行き倒れたんだ」

ショウコ「その時に村人に助けてもらった?」

ロン「いいや、見捨てられたから。腹いせに毎日レンガを積み続けなければどんどん運気が衰退していく呪いをかけた…まぁ、冗談だったんだけど、村人たちは本気にしていたみたいだな」

ショウコ「史実と事実にかなりの違いがあるみたいですけど…」

ロン「そんなこと、歴史の中ではよくあることだよ」

ショウコ「ところで…それって、いつの頃の話ですか?」

ロン「…百年くらい前かな」

ショウコ「ロンさん、一体何歳なんですか!」
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