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第四章「カルネアデス編」
第94.5話 073メザイヤ編「怪盗現る! ③」
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日が沈み夜になった。
かがり火が各所で焚かれ、暗がりの中炎の光がぼうっと光っている。
「いいか、犯人は真夜中に現れると予告状を出している!」
アマンダ団長は騎士たちに指示を出す。
騎士たちは緊張した面持ちで団長の顔を見つめていた。
もちろん、騎士団の団員たちに詳細は明かしていない。
ボルドー総長の件もある。未だ全員をもろ手を挙げて信用するわけにはいかなかった。
なので、団員達には本気で怪盗ルポンを捕まえる気概でこの場に臨んでもらっている。
――さて……どちらがうまくのかな。
騎士団は総勢五〇名。対する怪盗ルポンは一名。
たった一人の盗賊にこの人数はかなりの多めといえる。
それに、ガルハン卿から【応援】としてどう見ても真っ当ではない職種の人間たちもかなりの数導入されている。
――これは……侵入する前に殺してしまえということか。
恐らくは屋敷内にもかなりの数がいるだろう。
「団長……そろそろお時間です」
団員の一人が囁く。
それに合わせるかのように――
ゴーンゴーン
真夜中を示す鐘の音が響き渡った。
「みんな気を引き締めろ!」
アマンダ団長の声が静かに響く。
その時――
ヒュ――ッ!
「なんだ?花火?」
立ち上る火の玉。全員の目が一瞬火の玉に奪われる。
火の玉は屋敷の上空に達すると火花を散らしながら轟音と共に爆ぜた。
空が真昼のように煌々と輝く。
その中に人影があった。
閃光の中――空に浮かぶ人影が一つ。
「まさか――いったいどうやって!?」
「飛行魔法!?」
騎士団員たちがあんぐりと口を開けたまま呆然と呟く。
飛行魔法は未だ実現不可能とされる魔法の一種だった。
質量のある物体を常に苦衷に浮かばせるためには理論上その時間に累乗した膨大な魔力を必要とする。
一瞬だけ物体を浮かべることは確かに可能だが、継続して持続的に浮かべることは人間の魔力だけでは不可能だ。それは魔法を発動させる者が亜人であっても同じであった。それこそ神でもなければ実現などできはしない。
「これは……神の御業なのか……」
騎士団たちが呻いたその時。
「フフフ、フハハハハ!」
高らかな笑い声が辺りにこだました。
「勇敢なる騎士団諸君!私は怪盗ルポン!」
高らかに宣言する謎の男。
白いタキシード姿に白いシルクハット、白のマントをなびかせたその姿は闇夜によく映えた。
正直、めちゃくちゃ目立っている。
「貴様!領主の屋敷に侵入するとは不届き千万!」
アマンダ団長が剣を振りかざした。
「「「おう!」」」
騎士団が動き出す。しかし、空に浮かぶ怪盗ルポンに剣では対抗できない。
「弓部隊、魔法部隊!前へ!」
弓部隊が矢をつがえ、魔法部隊が詠唱を開始した。
「撃て!!」
アマンダ団長の号令に合わせて攻撃が開始される。
火の玉と雷撃、矢が一斉に怪盗ルポンに向けて飛来した。
「笑止!」
怪盗ルポンがマントを翻すと火の玉は弾かれ、雷撃は逸れ、矢はあらぬ方向へと飛んでいったのだ。
「その程度で私を止めらるとお思いかな?」
「おのれ……!」
アマンダ団長は歯ぎしりする。
これが作戦だということは知っていた。しかし、それでも騎士の誇りにかけて少しでも止められるのではないかとの思いもあったのだ。
騎士団の力が一切通じていない。
それが悔しくてたまらなかった。
「大丈夫です。アマンダ団長!」
騎士の一人がアマンダ団長に耳打ちする。
耳打ちされた団長は団員の言葉に眉をひそめた。
「見習い騎士?元冒険者?」
聞けば、先日騎士になりたいと入団の申し出があったそうだ。その実力はすさまじく、ダンベル副団長でもかなりやり込められたらしい。
「その見習い騎士はどこに?」
訓練を受けていない者が参加しているとは初耳だった。しかも、冒険者とはいえいきなりの実践投入とはあまりにも無謀だ。
「その者たちは撤退させろ」
「しかし……」
騎士は言いよどむ。いくら実力があるとはいえ、怪我でもされたらたまらない。
「いいか万が一にでもけが人が出たら――」
火魔法・風魔法 【雷炎攻撃(ライトニングボルト)】
ボウッ!
言いかけたアマンダ団長の頭上で空気が爆ぜた。
「何だ!?」
慌てて上空を見上げる。
空を照らすほどの炎の帯が視界を埋め尽くす。
――ご、合成魔法だと!?
アマンダ団長は目を見張る。魔法使いたちの夢、未だ仮説として語られる二属性魔法の融合。
それが目の前を通過していった。
「うわぁああ!」
怪盗ルポンが慌てて回避する。
怪盗ルポンが――ノゾミが慌てて魔法を回避する姿をアマンダ団長は初めて目にした。
「何なんだ今のは、あんな魔法を使える者が騎士団にいたのか!」
信じられなかった。それほどまでに驚くことだった。
「今のが、見習い騎士です」
団員も驚いたようにアマンダ団長に報告した。
かがり火が各所で焚かれ、暗がりの中炎の光がぼうっと光っている。
「いいか、犯人は真夜中に現れると予告状を出している!」
アマンダ団長は騎士たちに指示を出す。
騎士たちは緊張した面持ちで団長の顔を見つめていた。
もちろん、騎士団の団員たちに詳細は明かしていない。
ボルドー総長の件もある。未だ全員をもろ手を挙げて信用するわけにはいかなかった。
なので、団員達には本気で怪盗ルポンを捕まえる気概でこの場に臨んでもらっている。
――さて……どちらがうまくのかな。
騎士団は総勢五〇名。対する怪盗ルポンは一名。
たった一人の盗賊にこの人数はかなりの多めといえる。
それに、ガルハン卿から【応援】としてどう見ても真っ当ではない職種の人間たちもかなりの数導入されている。
――これは……侵入する前に殺してしまえということか。
恐らくは屋敷内にもかなりの数がいるだろう。
「団長……そろそろお時間です」
団員の一人が囁く。
それに合わせるかのように――
ゴーンゴーン
真夜中を示す鐘の音が響き渡った。
「みんな気を引き締めろ!」
アマンダ団長の声が静かに響く。
その時――
ヒュ――ッ!
「なんだ?花火?」
立ち上る火の玉。全員の目が一瞬火の玉に奪われる。
火の玉は屋敷の上空に達すると火花を散らしながら轟音と共に爆ぜた。
空が真昼のように煌々と輝く。
その中に人影があった。
閃光の中――空に浮かぶ人影が一つ。
「まさか――いったいどうやって!?」
「飛行魔法!?」
騎士団員たちがあんぐりと口を開けたまま呆然と呟く。
飛行魔法は未だ実現不可能とされる魔法の一種だった。
質量のある物体を常に苦衷に浮かばせるためには理論上その時間に累乗した膨大な魔力を必要とする。
一瞬だけ物体を浮かべることは確かに可能だが、継続して持続的に浮かべることは人間の魔力だけでは不可能だ。それは魔法を発動させる者が亜人であっても同じであった。それこそ神でもなければ実現などできはしない。
「これは……神の御業なのか……」
騎士団たちが呻いたその時。
「フフフ、フハハハハ!」
高らかな笑い声が辺りにこだました。
「勇敢なる騎士団諸君!私は怪盗ルポン!」
高らかに宣言する謎の男。
白いタキシード姿に白いシルクハット、白のマントをなびかせたその姿は闇夜によく映えた。
正直、めちゃくちゃ目立っている。
「貴様!領主の屋敷に侵入するとは不届き千万!」
アマンダ団長が剣を振りかざした。
「「「おう!」」」
騎士団が動き出す。しかし、空に浮かぶ怪盗ルポンに剣では対抗できない。
「弓部隊、魔法部隊!前へ!」
弓部隊が矢をつがえ、魔法部隊が詠唱を開始した。
「撃て!!」
アマンダ団長の号令に合わせて攻撃が開始される。
火の玉と雷撃、矢が一斉に怪盗ルポンに向けて飛来した。
「笑止!」
怪盗ルポンがマントを翻すと火の玉は弾かれ、雷撃は逸れ、矢はあらぬ方向へと飛んでいったのだ。
「その程度で私を止めらるとお思いかな?」
「おのれ……!」
アマンダ団長は歯ぎしりする。
これが作戦だということは知っていた。しかし、それでも騎士の誇りにかけて少しでも止められるのではないかとの思いもあったのだ。
騎士団の力が一切通じていない。
それが悔しくてたまらなかった。
「大丈夫です。アマンダ団長!」
騎士の一人がアマンダ団長に耳打ちする。
耳打ちされた団長は団員の言葉に眉をひそめた。
「見習い騎士?元冒険者?」
聞けば、先日騎士になりたいと入団の申し出があったそうだ。その実力はすさまじく、ダンベル副団長でもかなりやり込められたらしい。
「その見習い騎士はどこに?」
訓練を受けていない者が参加しているとは初耳だった。しかも、冒険者とはいえいきなりの実践投入とはあまりにも無謀だ。
「その者たちは撤退させろ」
「しかし……」
騎士は言いよどむ。いくら実力があるとはいえ、怪我でもされたらたまらない。
「いいか万が一にでもけが人が出たら――」
火魔法・風魔法 【雷炎攻撃(ライトニングボルト)】
ボウッ!
言いかけたアマンダ団長の頭上で空気が爆ぜた。
「何だ!?」
慌てて上空を見上げる。
空を照らすほどの炎の帯が視界を埋め尽くす。
――ご、合成魔法だと!?
アマンダ団長は目を見張る。魔法使いたちの夢、未だ仮説として語られる二属性魔法の融合。
それが目の前を通過していった。
「うわぁああ!」
怪盗ルポンが慌てて回避する。
怪盗ルポンが――ノゾミが慌てて魔法を回避する姿をアマンダ団長は初めて目にした。
「何なんだ今のは、あんな魔法を使える者が騎士団にいたのか!」
信じられなかった。それほどまでに驚くことだった。
「今のが、見習い騎士です」
団員も驚いたようにアマンダ団長に報告した。
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