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第四章「カルネアデス編」
第94.5話 065メザイヤ編「騎士団襲撃 ③」
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翌朝。
騎士団詰所で起こった火災は騎士たちの活躍もありボヤ程度ですんだ。
黒装束の男たちはいつの間にかいなくなっていた。
怪我人は多く、重傷者もかなりの数に上ったがオレの光魔法【治癒】と駆けつけてくれた神官たちの献身的な治療によって、幸いなことに死者ゼロであった。
「今回はまんまとしてやられたな」
応接室――アマンダ団長、ダンベル副団長、ミネルバ補佐官、そしてボルドー総長とオレを含めた五人がこの場にいた。
メザイヤ騎士団の総長だ。確か、この騎士団を初めて訪れた際に挨拶した以来だ。
ボルドー総長は心なしか顔色が悪い。周囲を落ち着きなくきょろきょろと見回し、手には目に見えて分かるほどに手汗をかいている。
今だけはこの男と握手をしたくない――オレは本気でそう思った。
「さて、ボルドー総長。今回の件ですが……敵はここ騎士団の詰所に直接攻撃を仕掛けてきました」
ガン!
アマンダ団長の拳がボルドー総長の目の前のテーブルに激しく叩きつけられた。ボルドー総長はビクリと身体を震わせアマンダ団長を見上げる。
「ててて、敵とは……一体何者なのかね!」
ガクガクと震えながらボルドー総長。
「さあ、恐らくは我々の調査に対して不満を持つどこかのバカ貴族だと思われますが……」
アマンダ団長の口調には殺気がこもっていた。
「ししし、証拠でもあるのかね!」
「はあ?証拠?」
ギロリ。
アマンダ団長がボルドー総長を睨みつける。
ボルドー総長は震えあがり、失神寸前だ。
「どこかのバカ貴族……仮にガルハン卿と名付けましょうか……そいつの人身売買の証拠をつかんだ。するとその証拠の子供たちをかくまっている詰所に監視する者たちが現れたんです」
ガン!
再度、拳でテーブルを殴りつける。
「それは……ぐぐぐ、偶然では!」
「はん!偶然ねぇ!」
ダン!
今度は拳ではなくテーブルの上にアマンダ団長の足が載せられる。
「私はねえ、この街が好きなんですよ」
アマンダ団長がぐっとボルドー総長の肩を掴んだ。総長はパクパクと小魚のように口を開け閉めしながらアマンダ団長を見上げた。
「この街が楽しい場所であるなら……多少の事には目をつむるつもりでした」
バサッ!
ミネルバ補佐官が書類の束をテーブルの上に広げる。
「こ、これは……!?」
書類を一瞥しボルドー総長の顔が一瞬にして青ざめる。
「ええ、あなたの……メザイヤ騎士団総長の不正を暴くための書類一式です」
ガン!
再び拳が叩きつけられ耐久値の限界を超えたテーブルが瓦解する。書類が飛び散りボルドー総長は気を失いかけた。
「気を失ってんじゃねぇよ!!」
パアン!
見事な平手打ちがボルドー総長の頬を叩く。
打たれた総長は目を瞬かせ呆然としたようにアマンダ団長を見た。
「ダンベル副団長!」
「はっ!」
ダンベル副団長がボルドー総長の肩を押さえ込んだ。何事かと慌てる総長だが、その身体はピクリとも動かない。
「こいつは――敵だ。できるだけの情報を引き出せ」
「はっ!」
ダンベル副団長の返事には確かな決意を感じた。
「お、横暴だ! 総長である私に……」
ガン!
今度はアマンダ団長の拳がボルドー総長の頬をえぐった。
「がはっ!」
ボルドー総長の口から血と一緒に何がが飛び出した――歯だ。
「こっちは団員が死にかけたんだぞ!」
早朝の襟首をつかみアマンダ団長が叫んだ。
「子供を売り飛ばし、団員に怪我を負わすような奴を……私は人として許せん!」
「馬鹿な……領主に手を出すなど……!?」
「領主?ただのクズだろ?」
アマンダ団長から殺気があふれ出す。
「ヒイッ!」
ボルドー総長が悲鳴を上げた。
「ここで動かなきゃ女が廃る!」
アマンダ団長が毅然と言い放った。
ヤバイ。オレこの女に惚れそうだ。
騎士団詰所で起こった火災は騎士たちの活躍もありボヤ程度ですんだ。
黒装束の男たちはいつの間にかいなくなっていた。
怪我人は多く、重傷者もかなりの数に上ったがオレの光魔法【治癒】と駆けつけてくれた神官たちの献身的な治療によって、幸いなことに死者ゼロであった。
「今回はまんまとしてやられたな」
応接室――アマンダ団長、ダンベル副団長、ミネルバ補佐官、そしてボルドー総長とオレを含めた五人がこの場にいた。
メザイヤ騎士団の総長だ。確か、この騎士団を初めて訪れた際に挨拶した以来だ。
ボルドー総長は心なしか顔色が悪い。周囲を落ち着きなくきょろきょろと見回し、手には目に見えて分かるほどに手汗をかいている。
今だけはこの男と握手をしたくない――オレは本気でそう思った。
「さて、ボルドー総長。今回の件ですが……敵はここ騎士団の詰所に直接攻撃を仕掛けてきました」
ガン!
アマンダ団長の拳がボルドー総長の目の前のテーブルに激しく叩きつけられた。ボルドー総長はビクリと身体を震わせアマンダ団長を見上げる。
「ててて、敵とは……一体何者なのかね!」
ガクガクと震えながらボルドー総長。
「さあ、恐らくは我々の調査に対して不満を持つどこかのバカ貴族だと思われますが……」
アマンダ団長の口調には殺気がこもっていた。
「ししし、証拠でもあるのかね!」
「はあ?証拠?」
ギロリ。
アマンダ団長がボルドー総長を睨みつける。
ボルドー総長は震えあがり、失神寸前だ。
「どこかのバカ貴族……仮にガルハン卿と名付けましょうか……そいつの人身売買の証拠をつかんだ。するとその証拠の子供たちをかくまっている詰所に監視する者たちが現れたんです」
ガン!
再度、拳でテーブルを殴りつける。
「それは……ぐぐぐ、偶然では!」
「はん!偶然ねぇ!」
ダン!
今度は拳ではなくテーブルの上にアマンダ団長の足が載せられる。
「私はねえ、この街が好きなんですよ」
アマンダ団長がぐっとボルドー総長の肩を掴んだ。総長はパクパクと小魚のように口を開け閉めしながらアマンダ団長を見上げた。
「この街が楽しい場所であるなら……多少の事には目をつむるつもりでした」
バサッ!
ミネルバ補佐官が書類の束をテーブルの上に広げる。
「こ、これは……!?」
書類を一瞥しボルドー総長の顔が一瞬にして青ざめる。
「ええ、あなたの……メザイヤ騎士団総長の不正を暴くための書類一式です」
ガン!
再び拳が叩きつけられ耐久値の限界を超えたテーブルが瓦解する。書類が飛び散りボルドー総長は気を失いかけた。
「気を失ってんじゃねぇよ!!」
パアン!
見事な平手打ちがボルドー総長の頬を叩く。
打たれた総長は目を瞬かせ呆然としたようにアマンダ団長を見た。
「ダンベル副団長!」
「はっ!」
ダンベル副団長がボルドー総長の肩を押さえ込んだ。何事かと慌てる総長だが、その身体はピクリとも動かない。
「こいつは――敵だ。できるだけの情報を引き出せ」
「はっ!」
ダンベル副団長の返事には確かな決意を感じた。
「お、横暴だ! 総長である私に……」
ガン!
今度はアマンダ団長の拳がボルドー総長の頬をえぐった。
「がはっ!」
ボルドー総長の口から血と一緒に何がが飛び出した――歯だ。
「こっちは団員が死にかけたんだぞ!」
早朝の襟首をつかみアマンダ団長が叫んだ。
「子供を売り飛ばし、団員に怪我を負わすような奴を……私は人として許せん!」
「馬鹿な……領主に手を出すなど……!?」
「領主?ただのクズだろ?」
アマンダ団長から殺気があふれ出す。
「ヒイッ!」
ボルドー総長が悲鳴を上げた。
「ここで動かなきゃ女が廃る!」
アマンダ団長が毅然と言い放った。
ヤバイ。オレこの女に惚れそうだ。
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