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第四章「カルネアデス編」
第228.5話 028「if-story アメリア&マヤ ③」
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「いや、本当に不可抗力なんだって!」
川から上がってしばらくの間、ボクの弁明は続いた。
「まあ、私もふざけすぎたところは認めるけど……」
魔夜にしては珍しくいつものからかい口調ではない。
「ノゾミ君のことだからワザとじゃないと思うし」
アメリアも心なしか顔を赤らめながらちちらとこちらを見てくる。
二人ともそんなに怒っているわけではなさそうだった。
「それで……どっちが大きかったの?」
魔夜選手、大きく振りかぶって投げたぁ! 直球のストレート。
「え、大きさって……」
ノゾミ選手、直球に対してバントの構え。
「もう!」
魔夜はボクの手を握ると自分の胸に押し当てる。
おおっと、これは伝説のバット当たりに行くボールだ。
「うん。それなりに大きいと思うよ」
ノゾミ選手大きく打ち上げた。
「それなりって何よ!」
魔夜選手、ボールを見上げてミットを構える。
「ノゾミ君、私の胸はどうですか?」
アメリア選手、魔夜選手に対して妨害だぁ。
魔夜選手ボールを取り落としてしまった。
「私の方が成長してるもん!」
アメリアがボクの手を握って自分の胸に持っていく。
布越しにでも分かる柔らかな感覚。
「ち、ちょっと待って!」
ノゾミ選手一塁に向かってダッシュ。前かがみになっているのが気になるが大丈夫か。
「「じゃあ、私たちのどっちが大きいか判定して!」」
おおっと、三人ごちゃまぜのトリプルプレーだ。
◆ ◆ ◆ ◆
ボクたち三人はキャンプ場近くのシャワー棟に来ていた。来る途中、突然の雨に見舞われて結局ここでもずぶぬれのままだった。空はどんよりとしていて日差しはなく、夏だというのに吹く風は肌寒さを感じるほどだった。
ボクたち三人は無言のままシャワー室の一室に入った。他に人の気配はない。
しんとしたシャワー室にボクたち三人の静かな息遣いだけが響く。
「………………」
魔夜とアメリアが黙ってボクを見つめる。
成り行きとはいえ、ボクもここまでついてきてしまったが、これでいいのかという気持ちもないではない。
もしかしたらボクはからかわれているんじゃないかという気持ちも少しはあった。二人で結託して恥ずかしがるボクを見て楽しんでいるんじゃないのか。
でも、無言のまま手を引いて渋るボクをシャワー室に押し込む魔夜と無言のまま鍵を閉めるアメリア。二人は一切口を閉じたまま無言でここまで来た――来てしまった。
「………………して」
ん? 声が小さすぎてよく聞こえなかった。
「お兄ちゃん。早く脱がしてよ」
魔夜は真っ赤になりながら服の裾をオレに握らせる。戸惑っているとそのまま向こうを向いてしまった。裾をつかんだままなので自然と魔夜を腕で抱きしめる形になる。
ほのかに伝わってくる魔夜の身体は雨で冷えているはずなのにものずごく熱かった。
シャワー室は脱衣所も含めてそれなりに広い。アメリアはというとボクと魔夜の様子を何も言わずじーっと観察している。
気まずい。双子とはいえ妹の服を脱がす兄。
アメリアの目にはどういう風に映っているのだろうか。
「女の子が勇気を出しているんだから、応えてあげないといけないと思うの」
静かな声で、それでも意を決した声音でアメリアがそう言った。
据え膳喰わぬは男の恥だ。
ボクはゆっくりと魔夜のTシャツを脱がし始める。濡れているTシャツは脱がしにくかったけど何とか胸元まで持ち上げることができた。あと少し……あと少しで山頂だ。
手に力を込める。その手に他の手が重なった。魔夜の手だ。
「お、お兄ちゃん……」
魔夜が振り向く。反動でTシャツが捲れた。あっさりと捲れた。ぷるんと小さいながらもつんと自己主張したさくらんぼがボクの目に飛び込んでくる。
どんとボクは壁に押し付けられる。
「お兄ちゃん……大好きだよ」
魔夜の言葉にボクの中で何かが弾けた。
川から上がってしばらくの間、ボクの弁明は続いた。
「まあ、私もふざけすぎたところは認めるけど……」
魔夜にしては珍しくいつものからかい口調ではない。
「ノゾミ君のことだからワザとじゃないと思うし」
アメリアも心なしか顔を赤らめながらちちらとこちらを見てくる。
二人ともそんなに怒っているわけではなさそうだった。
「それで……どっちが大きかったの?」
魔夜選手、大きく振りかぶって投げたぁ! 直球のストレート。
「え、大きさって……」
ノゾミ選手、直球に対してバントの構え。
「もう!」
魔夜はボクの手を握ると自分の胸に押し当てる。
おおっと、これは伝説のバット当たりに行くボールだ。
「うん。それなりに大きいと思うよ」
ノゾミ選手大きく打ち上げた。
「それなりって何よ!」
魔夜選手、ボールを見上げてミットを構える。
「ノゾミ君、私の胸はどうですか?」
アメリア選手、魔夜選手に対して妨害だぁ。
魔夜選手ボールを取り落としてしまった。
「私の方が成長してるもん!」
アメリアがボクの手を握って自分の胸に持っていく。
布越しにでも分かる柔らかな感覚。
「ち、ちょっと待って!」
ノゾミ選手一塁に向かってダッシュ。前かがみになっているのが気になるが大丈夫か。
「「じゃあ、私たちのどっちが大きいか判定して!」」
おおっと、三人ごちゃまぜのトリプルプレーだ。
◆ ◆ ◆ ◆
ボクたち三人はキャンプ場近くのシャワー棟に来ていた。来る途中、突然の雨に見舞われて結局ここでもずぶぬれのままだった。空はどんよりとしていて日差しはなく、夏だというのに吹く風は肌寒さを感じるほどだった。
ボクたち三人は無言のままシャワー室の一室に入った。他に人の気配はない。
しんとしたシャワー室にボクたち三人の静かな息遣いだけが響く。
「………………」
魔夜とアメリアが黙ってボクを見つめる。
成り行きとはいえ、ボクもここまでついてきてしまったが、これでいいのかという気持ちもないではない。
もしかしたらボクはからかわれているんじゃないかという気持ちも少しはあった。二人で結託して恥ずかしがるボクを見て楽しんでいるんじゃないのか。
でも、無言のまま手を引いて渋るボクをシャワー室に押し込む魔夜と無言のまま鍵を閉めるアメリア。二人は一切口を閉じたまま無言でここまで来た――来てしまった。
「………………して」
ん? 声が小さすぎてよく聞こえなかった。
「お兄ちゃん。早く脱がしてよ」
魔夜は真っ赤になりながら服の裾をオレに握らせる。戸惑っているとそのまま向こうを向いてしまった。裾をつかんだままなので自然と魔夜を腕で抱きしめる形になる。
ほのかに伝わってくる魔夜の身体は雨で冷えているはずなのにものずごく熱かった。
シャワー室は脱衣所も含めてそれなりに広い。アメリアはというとボクと魔夜の様子を何も言わずじーっと観察している。
気まずい。双子とはいえ妹の服を脱がす兄。
アメリアの目にはどういう風に映っているのだろうか。
「女の子が勇気を出しているんだから、応えてあげないといけないと思うの」
静かな声で、それでも意を決した声音でアメリアがそう言った。
据え膳喰わぬは男の恥だ。
ボクはゆっくりと魔夜のTシャツを脱がし始める。濡れているTシャツは脱がしにくかったけど何とか胸元まで持ち上げることができた。あと少し……あと少しで山頂だ。
手に力を込める。その手に他の手が重なった。魔夜の手だ。
「お、お兄ちゃん……」
魔夜が振り向く。反動でTシャツが捲れた。あっさりと捲れた。ぷるんと小さいながらもつんと自己主張したさくらんぼがボクの目に飛び込んでくる。
どんとボクは壁に押し付けられる。
「お兄ちゃん……大好きだよ」
魔夜の言葉にボクの中で何かが弾けた。
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