285 / 406
第四章「カルネアデス編」
第228.5話 011「if-story システィーナ ②」
しおりを挟む
オレはシスティーナを案内して校舎を巡った。
その間樹システィーナはオレの手を握りっぱなしだ。夏休みとはいえ活動している部活は運動系ばかりではない。書道部や吹奏楽部などの文科系の部活も活動していて、時折すれ違う生徒たちがオレとシスティーナの姿に驚いたように振り返る。
「外人さん?」
「撮影か何か?」
「あの手をつないでいるやる気のなさそうな男は誰? うちの生徒?」
システィーナの評価のわりにオレの評価ひどくね。
そりゃ輝く太陽の下では他の惑星なんて目立たないだろうけど――それにしても、ひどくね?
「みんながノゾミを見て振り返っているぞ」
システィーナ、それは盛大な誤解だ。みんなが注目しているのはお前だ。
「うふふふ」
システィーナは嬉しそうに笑った。
「どうした?」
システィーナは後ろから抱きついてきた。
む、胸が背中に。
「私の愛している男がこうして人気者だと嬉しいものだな」
う~ん。言っている意味は理解できるがその解釈は大いに間違ってるとオレは言いたい。
「そうだな」
せっかく誤解したままなのだ。わざわざ訂正することもないだろう。
校内をしばらく回る。
彼女が一番驚いたのはなんと図書館だった。
「凄い! ここは国立図書館なのか?」
瞳をキラキラさせながら本を一冊一冊手に取りページをめくっていく。特に植物図鑑と動物図鑑が気に入ったようだった。カラーで紹介される動物や植物の姿にシスティーナのボルテージは常にマックスだった。
「凄いな……この本に世界のすべてが詰まっているのか」
食い入るように動物の写真に見入ってしまっている。
髪をかき上げながら本を真剣な表情で見つめるシスティーナ。
パシャリ。
「……ん?」
オレが携帯で写真を撮った音だ。
「すまん。あまりに綺麗だから」
撮ったばかりの写真を見せる。
「凄い魔具だな……風景を写し取るのか」
システィーナが携帯を覗き込んでくる。
顔が近い。オレの真横に、すぐ隣にシスティーナの整った顔があった。
息遣いどころか瞬きの音ですら聞こえてきそうなほどの距離。
彼女の肩がオレに触れる。
それだけでオレの心臓は高鳴った。
システィーナの瞳には今、オレしか映っていない。
近づく顔と顔。触れそうになる唇――
と、あと少しというところで人の気配がした。
見れば何人かの女子生徒がカバンを手に入ってくるところだった。どうやら図書館で宿題をするらしい。
「……邪魔が入ったな」
システィーナが囁くように言いウインクしてくる。すんげー可愛い。
「ノゾミ、あれは何だ?」
彼女が指さしたのは校舎裏の小高い丘の上、そこに建つ展望台。
なんだろう。気にはなっていたが誰かに聞こうとか、調べてみようという気になったことがない。見晴らしよさそう――と思ったことはあったが、行ってみようとは思わなかった。
「行ってみないか?」
「そうだな」
校舎内はあらかた見て回った。せっかく二人っきりになれるかと思った図書館には邪魔者が現れるし。
別に二人っきりになってどうこうしようというつもりは……ない。ないったらない。
「そうだな、じゃあ行こう。直ぐ行こう」
オレの言葉にシスティーナは嬉しそうに頷いた。
その間樹システィーナはオレの手を握りっぱなしだ。夏休みとはいえ活動している部活は運動系ばかりではない。書道部や吹奏楽部などの文科系の部活も活動していて、時折すれ違う生徒たちがオレとシスティーナの姿に驚いたように振り返る。
「外人さん?」
「撮影か何か?」
「あの手をつないでいるやる気のなさそうな男は誰? うちの生徒?」
システィーナの評価のわりにオレの評価ひどくね。
そりゃ輝く太陽の下では他の惑星なんて目立たないだろうけど――それにしても、ひどくね?
「みんながノゾミを見て振り返っているぞ」
システィーナ、それは盛大な誤解だ。みんなが注目しているのはお前だ。
「うふふふ」
システィーナは嬉しそうに笑った。
「どうした?」
システィーナは後ろから抱きついてきた。
む、胸が背中に。
「私の愛している男がこうして人気者だと嬉しいものだな」
う~ん。言っている意味は理解できるがその解釈は大いに間違ってるとオレは言いたい。
「そうだな」
せっかく誤解したままなのだ。わざわざ訂正することもないだろう。
校内をしばらく回る。
彼女が一番驚いたのはなんと図書館だった。
「凄い! ここは国立図書館なのか?」
瞳をキラキラさせながら本を一冊一冊手に取りページをめくっていく。特に植物図鑑と動物図鑑が気に入ったようだった。カラーで紹介される動物や植物の姿にシスティーナのボルテージは常にマックスだった。
「凄いな……この本に世界のすべてが詰まっているのか」
食い入るように動物の写真に見入ってしまっている。
髪をかき上げながら本を真剣な表情で見つめるシスティーナ。
パシャリ。
「……ん?」
オレが携帯で写真を撮った音だ。
「すまん。あまりに綺麗だから」
撮ったばかりの写真を見せる。
「凄い魔具だな……風景を写し取るのか」
システィーナが携帯を覗き込んでくる。
顔が近い。オレの真横に、すぐ隣にシスティーナの整った顔があった。
息遣いどころか瞬きの音ですら聞こえてきそうなほどの距離。
彼女の肩がオレに触れる。
それだけでオレの心臓は高鳴った。
システィーナの瞳には今、オレしか映っていない。
近づく顔と顔。触れそうになる唇――
と、あと少しというところで人の気配がした。
見れば何人かの女子生徒がカバンを手に入ってくるところだった。どうやら図書館で宿題をするらしい。
「……邪魔が入ったな」
システィーナが囁くように言いウインクしてくる。すんげー可愛い。
「ノゾミ、あれは何だ?」
彼女が指さしたのは校舎裏の小高い丘の上、そこに建つ展望台。
なんだろう。気にはなっていたが誰かに聞こうとか、調べてみようという気になったことがない。見晴らしよさそう――と思ったことはあったが、行ってみようとは思わなかった。
「行ってみないか?」
「そうだな」
校舎内はあらかた見て回った。せっかく二人っきりになれるかと思った図書館には邪魔者が現れるし。
別に二人っきりになってどうこうしようというつもりは……ない。ないったらない。
「そうだな、じゃあ行こう。直ぐ行こう」
オレの言葉にシスティーナは嬉しそうに頷いた。
0
お気に入りに追加
508
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
男女比世界は大変らしい。(ただしイケメンに限る)
@aozora
ファンタジー
ひろし君は狂喜した。「俺ってこの世界の主役じゃね?」
このお話は、男女比が狂った世界で女性に優しくハーレムを目指して邁進する男の物語…ではなく、そんな彼を端から見ながら「頑張れ~」と気のない声援を送る男の物語である。
「第一章 男女比世界へようこそ」完結しました。
男女比世界での脇役少年の日常が描かれています。
「第二章 中二病には罹りませんー中学校編ー」完結しました。
青年になって行く佐々木君、いろんな人との交流が彼を成長させていきます。
ここから何故かあやかし現代ファンタジーに・・・。どうしてこうなった。
「カクヨム」さんが先行投稿になります。
異世界エステ〜チートスキル『エステ』で美少女たちをマッサージしていたら、いつの間にか裏社会をも支配する異世界の帝王になっていた件〜
福寿草真@植物使いコミカライズ連載中!
ファンタジー
【Sランク冒険者を、お姫様を、オイルマッサージでトロトロにして成り上がり!?】
何の取り柄もないごく普通のアラサー、安間想介はある日唐突に異世界転移をしてしまう。
魔物や魔法が存在するありふれたファンタジー世界で想介が神様からもらったチートスキルは最強の戦闘系スキル……ではなく、『エステ』スキルという前代未聞の力で!?
これはごく普通の男がエステ店を開き、オイルマッサージで沢山の異世界女性をトロトロにしながら、瞬く間に成り上がっていく物語。
スキル『エステ』は成長すると、マッサージを行うだけで体力回復、病気の治療、バフが発生するなど様々な効果が出てくるチートスキルです。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる