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第四章「カルネアデス編」

 第228.5話 011「if-story システィーナ ②」

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 オレはシスティーナを案内して校舎を巡った。
 その間樹システィーナはオレの手を握りっぱなしだ。夏休みとはいえ活動している部活は運動系ばかりではない。書道部や吹奏楽部などの文科系の部活も活動していて、時折すれ違う生徒たちがオレとシスティーナの姿に驚いたように振り返る。

「外人さん?」

「撮影か何か?」

「あの手をつないでいるやる気のなさそうな男は誰? うちの生徒?」

 システィーナの評価のわりにオレの評価ひどくね。
 そりゃ輝く太陽の下では他の惑星なんて目立たないだろうけど――それにしても、ひどくね?

「みんながノゾミを見て振り返っているぞ」

 システィーナ、それは盛大な誤解だ。みんなが注目しているのはお前だ。

「うふふふ」

 システィーナは嬉しそうに笑った。

「どうした?」

 システィーナは後ろから抱きついてきた。
 む、胸が背中に。

「私の愛している男がこうして人気者だと嬉しいものだな」

 う~ん。言っている意味は理解できるがその解釈は大いに間違ってるとオレは言いたい。

「そうだな」

 せっかく誤解したままなのだ。わざわざ訂正することもないだろう。
 校内をしばらく回る。
 彼女が一番驚いたのはなんと図書館だった。

「凄い! ここは国立図書館なのか?」

  瞳をキラキラさせながら本を一冊一冊手に取りページをめくっていく。特に植物図鑑と動物図鑑が気に入ったようだった。カラーで紹介される動物や植物の姿にシスティーナのボルテージは常にマックスだった。

「凄いな……この本に世界のすべてが詰まっているのか」

 食い入るように動物の写真に見入ってしまっている。
 髪をかき上げながら本を真剣な表情で見つめるシスティーナ。

 パシャリ。

「……ん?」

 オレが携帯で写真を撮った音だ。

「すまん。あまりに綺麗だから」

 撮ったばかりの写真を見せる。

「凄い魔具だな……風景を写し取るのか」

 システィーナが携帯を覗き込んでくる。
 顔が近い。オレの真横に、すぐ隣にシスティーナの整った顔があった。
 息遣いどころか瞬きの音ですら聞こえてきそうなほどの距離。
 彼女の肩がオレに触れる。
 それだけでオレの心臓は高鳴った。
 システィーナの瞳には今、オレしか映っていない。
 近づく顔と顔。触れそうになる唇――

 と、あと少しというところで人の気配がした。
 見れば何人かの女子生徒がカバンを手に入ってくるところだった。どうやら図書館で宿題をするらしい。

「……邪魔が入ったな」

 システィーナが囁くように言いウインクしてくる。すんげー可愛い。

「ノゾミ、あれは何だ?」

 彼女が指さしたのは校舎裏の小高い丘の上、そこに建つ展望台。
 なんだろう。気にはなっていたが誰かに聞こうとか、調べてみようという気になったことがない。見晴らしよさそう――と思ったことはあったが、行ってみようとは思わなかった。

「行ってみないか?」

「そうだな」

 校舎内はあらかた見て回った。せっかく二人っきりになれるかと思った図書館には邪魔者が現れるし。
 別に二人っきりになってどうこうしようというつもりは……ない。ないったらない。

「そうだな、じゃあ行こう。直ぐ行こう」

 オレの言葉にシスティーナは嬉しそうに頷いた。
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