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第四章「カルネアデス編」

 第228.5話 002「if-story ミーシャとデート ②」

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 ◆ ◆ ◆ ◆

 ミーシャと二人で仲良くシャワーを浴び、着替えて居間に向かうとマヤが朝食のパンとミルクを準備してくれていた。

「おはようお兄ちゃん」

「おはよう。マヤ」

「おはようございます。マヤさん」

 オレが席に着くとその隣にミーシャが座った。

「あーズルい!」

 マヤがそう言って反対側に座る。

「早くしないとバスに間に合わないよ」

 言われなくても分かっている――今日はミーシャとデートなのだから。

 ◆ ◆ ◆ ◆

 ミーシャと二人バスに揺られることに時間。ようやく目的の場所に到着する。

 ザザザザ――――――ッ!

「うわぁ――――――――っ!」

 白い砂浜に寄せては返す白波。
 海だ。
 太平洋だ。
 今までオレが避けてきた真夏の海に――オレはやってきたのだ。

 照りつける真夏の日差し――暑い!
 髪を撫でる風――潮くさい!
 楽しく泳ぐ若者たち――人ごみ嫌い!

 オレには縁のない場所だとばかり思っていたのだが――

「ノゾミ! 早く行きましょう」

 水着姿でオレの手を引くミーシャが見られるだけですべてを許せる気がした。
 皮膚が日差しを浴びてじりじりとしているがきっと明日は日焼けでヒイヒイ言っているだろう。
 ミーシャが歩けば周囲の男たちが振り返る。
 それはそうだろう。これだけの美少女が水着姿で砂浜を歩いているのだ。ミーシャは気にしていないだろうがオレは大いに気にしていた。
 できるだけ男どもの視線から守るようにしてオレとミーシャは波打ち際に到着する。足に当たる波が心地よく熱かった体温が一気に下がっていく感じがした。

「海って広いんですね!」

 当たり前のことを……と言いかかてやめた。
 そうだ。ミーシャにとって海は初めての経験なのだ。

「ちょっと舐めてみろよ」

「えっ、ここで……ですか?」

 ミーシャが赤くなる。オレの手をつかみ人差し指を小さな口で咥え込む。ちゅぱちゅぱと指をなめる姿はとても艶めかしくイケナイコトをさせているんだという罪悪感がふつふつと沸き起こる。
 こんなイヤラシイことを指せている鬼畜な男――オレだった。

「すまない。オレの言い方が悪かった」

 まさかこんな風に勘違いするとは……今度「違うところを舐めて欲しい」って言ったらどこまでしてくれるのかな……なんてな。
 オレは海水をすくって見せる。

「海の水だ」

 ミーシャはやっとオレの言いたいことを理解したのだろう。赤くなりながらオレのすくった海水を舌で舐める。自分ですくって舐めてみればいいのになぜわざわざオレの手のものを舐めようとするのだろう。

「うわっ、しょっぱい!」

 ミーシャがびっくりしたようにオレを見る。

「海の水は海水……まあ、塩水だ。湖と違って塩分がある」

「もう、先に言って下さい」

 思いの外、多く口に含んでしまったのかミーシャは顔をしかめたままだった。

「ははは、悪い。ジュースおごるから」

「ふふふ。冗談ですよ」

 ミーシャはすぐに笑顔になる。

「でも、ジュースはおごってくださいね」

「ああ、もちろんだ」

 ミーシャの笑顔のためなら何本でもおごるさ。
 しばらく泳いだり、海面に浮かんだりしながら過ごす。
 オレは自慢ではないがあまり泳ぎが上手ではない。なのであまり深い所まで泳ぐようなことはなかった。ミーシャも特に何も言わずオレと一緒に泳いだりしてくれる。
 昼になり、オレたちは休憩することにした。
 海の家で昼食だ。
 まずはかき氷から注文することにした。

「ノゾミ……これは何ですか?」

 彼女の目の前にはイチゴシロップのかかったかき氷の皿が置かれている。
 彼女には定番のイチゴをオレはブルーハワイを頼んでいる。

「これは――白い雪の上に深紅の血痕をイメージしたものですか?」

 真剣な顔してトンデモないこと言いました。

「いや……そんな物騒なものじゃないよ」

 とにかく食べてみて、とオレはスプーンですくってミーシャの口の中にかき氷を放り込む。
 途端にミーシャの顔がぱっと輝いた。

「冷たくっておいしい!」

 そうだろうそうだろう。見るとミーシャはかき氷をガンガン口へと運び――頭痛を起こして一人頭を抱え込んでいる。

「これは……かき氷の……呪い?」

 そんなもの売ってるわけないだろう。なんでわざわざ行楽地で呪いのかき氷を出すんだよ。そもそもの発想が物騒だ。

「いいから、ゆっくり食べるんだ。急いで食べると頭痛は起こらない」

 冷たいものを一気に食べると起こる――いわゆる【アイスクリーム頭痛】だ。
 ミーシャはゆっくりとかみしめるようにかき氷を食べ、今度は焼きそばに挑戦した。

「これもすごくおいしいです!」

 ミーシャは嬉しそうに焼きそばをフォークで食べる。彼女にはまだ箸は難しいようだった。
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