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第四章「カルネアデス編」
第179話「タニア ②」
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「外の世界から……つまり魔法の世界から直接この世界……カルネアデスの世界に来たってことか?」
「そうだよ。そう聞こえなかった?」
そんな無茶苦茶な――それは次元転移などという簡単な問題じゃない。ソフトとハードがバラバラな状態でデータをコンバートするようなものだ。しかも、カルネアデスは人類の科学の粋を集めて造られた宇宙船。曲がりなりにも魔法でどうにかできるとは到底思えなかった。
「まあ、ボクの力だけじゃこの世界に来ることなんてできないんだけどね」
そうだとしても、無理がありすぎる。
魔法世界では人類移民船カルネアデスは悪魔の苗床として人々に恐れられている。ましてやそこに人類の魂を閉じ込めた世界が広がっているなどと想像することもできないだろう。
「十六夜美琴……」
マヤがぽつりと呟いた。なぜ美琴が関係しているんだ。
「いや……美琴がタニアと接触していたとしたら……」
「美琴――ああ、魔法様のことだね!」
「魔王?」
「うん。そうだよ」
盛大にネタバレを含んだタニアの発言にオレは言葉が出ない。
美琴が……魔王? 魔人族を率いて人魔大戦を引き起こした張本人?
いやいやいやいや!
そんなはずはない。
時系列的のおかしいだろ。
オレは美琴と――この世界の話ではあるが――ついこの前まで一緒にいたのだ。
人魔大戦が怒ったのは五〇年前……時間の経過が……
「そうか……この世界と魔法世界とでは時間の経過が違う!?」
「その通り!」
つまりは、美琴は調査体として魔法世界に派遣され逃亡し、魔人族の魔王になったと……それ無茶苦茶じゃ……いや、美琴なら魔王やっててもおかしくないな。
「美琴なら……魔王だってできるかも……」
そうだ。あいつはやればできる子なのだ。
やればできるのか――魔王?
「だからね。ノゾミンを誘いに来たんだよ」
「ボクと一緒に帰ろう。もちろんここにいるみんなも一緒だよ」
「その見返りは何だ?」
まあ、答えは分かっているが。
「うーんそうだね。正直仲間になって欲しいんだけど……」
タニアは少しだけ考えているようだった。
「今はいいや。ボクの目的は君をこの世界から解放することだからね」
「この世界からの解放?」
「そうだよ――仕方ない。本当は君たちが帰るまで秘密にしておこうと思ったんだけど」
タニアはそういうとスマホを取り出した。スマートフォン――オレの時代における最強の情報端末だ。
「見て欲しい……これが君たちの今の状況だ」
スマホの画面が光る。するとそこには大きなクリスタルが映し出された。
その中には――
「これは……私?」
クリスタルの中にはアンナがいた。白い髪の竜人族のアンナ。オレの知るアンナの姿だ。
「これは……どういうことだ?」
「これがさっきの質問の答えだよ」
アンナは言葉を失ったまま画面の中の自分の姿を食い入るように見つめている。
「彼女の身体はクリスタルの中……正確には【時間牢獄】の中にいる」
「時間牢獄?」
「そうだよ。このクリスタルの中では時間が経過しない。時間そのものが停止しているから干渉も破壊も不可能……文字通り牢獄さ」
クリスタルの中の彼女はまるで生きているかのようだった。
「他のみんなは?」
「分からないんだ。あの災害の後発見できたのはアンアンとアメリンだけだったからね」
アンナとアメリアだけ?
「いったいどうしてこんなことに……」
二人はタニアが保護してくれているということだった。
しかし、他の者たちがどうなったのかは分からないという。
「タニア……さっき【災害】と言ったか?」
「ああ、言ったよ」
ちょっと悲しげな表情でタニアが呟く。
「いいかいノゾミン。君が【覚醒】した時に魔法学園一帯はカルネアデスの荷電粒子砲の攻撃を受けたんだ」
「あ…………」
おぼろげながらの記憶。
降り注ぐ光。
大地はえぐれ、炎がすべてを焼き尽くしていた。
「その中で君は【神化】したんだ」
「神化?」
「そう……神へとつながる道……まあ、まだ踏み出したばかりだけどね」
「そうだよ。そう聞こえなかった?」
そんな無茶苦茶な――それは次元転移などという簡単な問題じゃない。ソフトとハードがバラバラな状態でデータをコンバートするようなものだ。しかも、カルネアデスは人類の科学の粋を集めて造られた宇宙船。曲がりなりにも魔法でどうにかできるとは到底思えなかった。
「まあ、ボクの力だけじゃこの世界に来ることなんてできないんだけどね」
そうだとしても、無理がありすぎる。
魔法世界では人類移民船カルネアデスは悪魔の苗床として人々に恐れられている。ましてやそこに人類の魂を閉じ込めた世界が広がっているなどと想像することもできないだろう。
「十六夜美琴……」
マヤがぽつりと呟いた。なぜ美琴が関係しているんだ。
「いや……美琴がタニアと接触していたとしたら……」
「美琴――ああ、魔法様のことだね!」
「魔王?」
「うん。そうだよ」
盛大にネタバレを含んだタニアの発言にオレは言葉が出ない。
美琴が……魔王? 魔人族を率いて人魔大戦を引き起こした張本人?
いやいやいやいや!
そんなはずはない。
時系列的のおかしいだろ。
オレは美琴と――この世界の話ではあるが――ついこの前まで一緒にいたのだ。
人魔大戦が怒ったのは五〇年前……時間の経過が……
「そうか……この世界と魔法世界とでは時間の経過が違う!?」
「その通り!」
つまりは、美琴は調査体として魔法世界に派遣され逃亡し、魔人族の魔王になったと……それ無茶苦茶じゃ……いや、美琴なら魔王やっててもおかしくないな。
「美琴なら……魔王だってできるかも……」
そうだ。あいつはやればできる子なのだ。
やればできるのか――魔王?
「だからね。ノゾミンを誘いに来たんだよ」
「ボクと一緒に帰ろう。もちろんここにいるみんなも一緒だよ」
「その見返りは何だ?」
まあ、答えは分かっているが。
「うーんそうだね。正直仲間になって欲しいんだけど……」
タニアは少しだけ考えているようだった。
「今はいいや。ボクの目的は君をこの世界から解放することだからね」
「この世界からの解放?」
「そうだよ――仕方ない。本当は君たちが帰るまで秘密にしておこうと思ったんだけど」
タニアはそういうとスマホを取り出した。スマートフォン――オレの時代における最強の情報端末だ。
「見て欲しい……これが君たちの今の状況だ」
スマホの画面が光る。するとそこには大きなクリスタルが映し出された。
その中には――
「これは……私?」
クリスタルの中にはアンナがいた。白い髪の竜人族のアンナ。オレの知るアンナの姿だ。
「これは……どういうことだ?」
「これがさっきの質問の答えだよ」
アンナは言葉を失ったまま画面の中の自分の姿を食い入るように見つめている。
「彼女の身体はクリスタルの中……正確には【時間牢獄】の中にいる」
「時間牢獄?」
「そうだよ。このクリスタルの中では時間が経過しない。時間そのものが停止しているから干渉も破壊も不可能……文字通り牢獄さ」
クリスタルの中の彼女はまるで生きているかのようだった。
「他のみんなは?」
「分からないんだ。あの災害の後発見できたのはアンアンとアメリンだけだったからね」
アンナとアメリアだけ?
「いったいどうしてこんなことに……」
二人はタニアが保護してくれているということだった。
しかし、他の者たちがどうなったのかは分からないという。
「タニア……さっき【災害】と言ったか?」
「ああ、言ったよ」
ちょっと悲しげな表情でタニアが呟く。
「いいかいノゾミン。君が【覚醒】した時に魔法学園一帯はカルネアデスの荷電粒子砲の攻撃を受けたんだ」
「あ…………」
おぼろげながらの記憶。
降り注ぐ光。
大地はえぐれ、炎がすべてを焼き尽くしていた。
「その中で君は【神化】したんだ」
「神化?」
「そう……神へとつながる道……まあ、まだ踏み出したばかりだけどね」
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