38 / 406
第一章「いきなり冒険者」
第28.5話 007「小さな冒険者」
しおりを挟む
話の勢いで依頼を受けることになった。
内容はともかく依頼を受けることに対して文句はない。
文句はないのだが……
「おい、にーちゃん早く出発しようぜ!」
カルルが荷物を背に大きな声で叫んだ。
このクソガキ……もとい、お子様が同行することになったのは何とも言い難い。
「こら、そんな言い方はいけませんよ。冒険者の方に失礼ですよ」
どういうわけか、シャルカも同行してしまっている。
シャルカはシスターが着るような修道服を着ていた。
修道士見習いのシャルカは外出する時には正装をするというのが決まりらしい。
なんということだ。これではクソガキが暴走した時に【制裁】……ではなく【天罰】を下せないではないか。
「シャルカはともかくとして……カルルも一緒というのは……」
最初、ミーシャはそう言って渋った。交易の街の近郊といっても魔物が出ないということはない。しかも今回は森の中に入る予定だ。できるだけ危険になる要素は避けたいところだった。
「カルルを一人外出させるわけにはいきません」
カルルの同行だけでも危険を伴う。しかもそこにシャルカも同行ともなれば難易度はさらに跳ね上がる。
「まあ、今回は比較的安全な場所に行くみたいですから……」
ミーシャは自分を納得させるように呟いた。
「いざとなったら頼りにしていますからね」
ミーシャに熱のこもった目で見つめられる。
「おう、任せておけ!」
こんな時に「無理です」と言い切れない自分が情けない。
「大丈夫です。信じる者には神のご加護があります」
シャルカはそう言って祈りを捧げた。
どの世界でも祈り方は似たようなものになるのか、手を合わせて組むその姿は凛々しくオレの目に映った。
「神様はいつでも私たちを見て下さっています」
シャルカは初級ではあるが光魔法を使うことができるということだ。
護身術にも多少の覚えがあるようで、護衛用のロッドを手にしていた。
戦力としてはたして期待していいのかどうかはわからないが、ここは自分自身の身は守れる程度として認識しておこう。
――まあ、オレが胸を張って威張れることでもないのだが……
オレの冒険者としてのLVは15。聖騎士見習いのアランよりもレベルは上だ。
ミーシャだけでなくマヤもいる。ゴブリン程度なら何とかなるだろう。それ以上の脅威があるようなら早々に逃げ出せばいい。
「でも、こんな頼りない兄ちゃんに任せて大丈夫なのか?」
カルルが生意気な口をきく。
ほほう。このクソガキはまだオレの力を信じていないらしい。
この冒険を通してオレの素晴らしさをしっかりと教えてあげなければならないな。
目的地は孤児院から二日ほどかかるということだった。
シャルカの話を聞いた後、オレ達はいったん依頼内容の報告を行うためにギルドへと戻り正式に依頼を受けることにした。しかし、目的とする場所への道程を考えるとどう考えても赤字だった。そこで、行商人の護衛の依頼のついでにランタン草を探すことにしたのだ。
行商人の出発の日程と、その間の装備を整えたりと出発までに三日を要してしまった。
「では、出発しますよ」
今回は馬車に乗っての出発だ。オレとミーシャは馬車の前後に中ではマヤが待機している。
「カルネアデスの探知網があれば一〇〇キロ先からでも探知できます」
マヤが自信満々に言うが、周囲すべてに警戒するわけではない。道程の途中で危険だと思われる魔物から守ることができればいいのだ。
それにできるだけカルネアデスの力を使わずに依頼を達成したいという気持ちもあった。
「ランタン草の生息地の探索にはカルネアデスの力を借りたのに?」
マヤがジト目でこちらを見つめてくる。
それはそれ、これはこれだよ。
内容はともかく依頼を受けることに対して文句はない。
文句はないのだが……
「おい、にーちゃん早く出発しようぜ!」
カルルが荷物を背に大きな声で叫んだ。
このクソガキ……もとい、お子様が同行することになったのは何とも言い難い。
「こら、そんな言い方はいけませんよ。冒険者の方に失礼ですよ」
どういうわけか、シャルカも同行してしまっている。
シャルカはシスターが着るような修道服を着ていた。
修道士見習いのシャルカは外出する時には正装をするというのが決まりらしい。
なんということだ。これではクソガキが暴走した時に【制裁】……ではなく【天罰】を下せないではないか。
「シャルカはともかくとして……カルルも一緒というのは……」
最初、ミーシャはそう言って渋った。交易の街の近郊といっても魔物が出ないということはない。しかも今回は森の中に入る予定だ。できるだけ危険になる要素は避けたいところだった。
「カルルを一人外出させるわけにはいきません」
カルルの同行だけでも危険を伴う。しかもそこにシャルカも同行ともなれば難易度はさらに跳ね上がる。
「まあ、今回は比較的安全な場所に行くみたいですから……」
ミーシャは自分を納得させるように呟いた。
「いざとなったら頼りにしていますからね」
ミーシャに熱のこもった目で見つめられる。
「おう、任せておけ!」
こんな時に「無理です」と言い切れない自分が情けない。
「大丈夫です。信じる者には神のご加護があります」
シャルカはそう言って祈りを捧げた。
どの世界でも祈り方は似たようなものになるのか、手を合わせて組むその姿は凛々しくオレの目に映った。
「神様はいつでも私たちを見て下さっています」
シャルカは初級ではあるが光魔法を使うことができるということだ。
護身術にも多少の覚えがあるようで、護衛用のロッドを手にしていた。
戦力としてはたして期待していいのかどうかはわからないが、ここは自分自身の身は守れる程度として認識しておこう。
――まあ、オレが胸を張って威張れることでもないのだが……
オレの冒険者としてのLVは15。聖騎士見習いのアランよりもレベルは上だ。
ミーシャだけでなくマヤもいる。ゴブリン程度なら何とかなるだろう。それ以上の脅威があるようなら早々に逃げ出せばいい。
「でも、こんな頼りない兄ちゃんに任せて大丈夫なのか?」
カルルが生意気な口をきく。
ほほう。このクソガキはまだオレの力を信じていないらしい。
この冒険を通してオレの素晴らしさをしっかりと教えてあげなければならないな。
目的地は孤児院から二日ほどかかるということだった。
シャルカの話を聞いた後、オレ達はいったん依頼内容の報告を行うためにギルドへと戻り正式に依頼を受けることにした。しかし、目的とする場所への道程を考えるとどう考えても赤字だった。そこで、行商人の護衛の依頼のついでにランタン草を探すことにしたのだ。
行商人の出発の日程と、その間の装備を整えたりと出発までに三日を要してしまった。
「では、出発しますよ」
今回は馬車に乗っての出発だ。オレとミーシャは馬車の前後に中ではマヤが待機している。
「カルネアデスの探知網があれば一〇〇キロ先からでも探知できます」
マヤが自信満々に言うが、周囲すべてに警戒するわけではない。道程の途中で危険だと思われる魔物から守ることができればいいのだ。
それにできるだけカルネアデスの力を使わずに依頼を達成したいという気持ちもあった。
「ランタン草の生息地の探索にはカルネアデスの力を借りたのに?」
マヤがジト目でこちらを見つめてくる。
それはそれ、これはこれだよ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
510
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる