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第三章「魔法学園の劣等生 魔法技術大会編」

第149話「神化 ①」

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 ノゾミの身体から光があふれる。
 まばゆい光にタニアは思わず目を細めた。

「ついに……始まったね」

 タニアは人型に戻ると、光を放つノゾミを見守る。
 それはまるでヒナの孵りを待ち望む親鳥のようでもあった。

「さて、ここからが本番だ。どう動くかな……カルネアデス」

 ◆ ◆ ◆ ◆

 生徒達は講師らに連れられ学園近くの建物に避難していた。本来であれば野外訓練用の宿泊施設として機能するはずのその場所は、今は開放され一時の避難所として使用されていた。
 その建物にも映像を映し出す魔具があった。
 かなりの遠方からではあるが、魔法学園及びその周囲の状況を見ることができる。
 その中で、ノゾミとタニアが戦っていた。
 避難した者達が固唾をのんで戦いの状況を見守っている。

「なんと高度な魔法戦闘だ……」

「ドラゴンに変身!? 彼らは一体……」

 憶測や推論が飛び交った。

「慌てるな!」

 唐突に声が上がる。全員が振り返るとそこにはアメリアを伴ったサラクニークルスがいるではないか。
 姫の姿にその場にいた全員が膝をおる。

「よい。今は礼儀は不要。状況を説明せよ」

「はっ、目下のところタニアとノゾミ殿が戦闘中であります」

 近くにいた魔法使いが説明する。

「ふむ。既にこのような状況にまで……」

 サラクニークルスはため息をつく。
 魔法学園の周囲の森、および学園の建物にまで被害が及んでいる。
 怪我人はいるものの幸いな事に死者は出ていなかった。
 ここまで被害が拡大していると、もはや穏便に済ませるなどとはいっていられない状況だ。

「その……戦況はノゾミ殿がいささか不利であるかと……」

「そんなことは分かっている!」

 サラクニークルスは思わず叫んでしまった。

「サラちゃん。落ち着いて」

 アメリアがそっと彼女の肩に手を置いた。

「ふむ、そうだな。こういう時に落ち着かねば民に対して示しがつかんな」

 サラクニークルスの態度にその場にいた全員が安堵の溜息をついた。
 今は姫への対応に時間をかけている場合ではないのだ。

「よし、確か近くに私の別荘があったはずだ。そこも避難所として開放しよう」

「はっ、直ちに手配します」

「そういうことなら私達も屋敷を開放しよう」

 各領主たちも手配を開始する。
 とりあえず、訪れていた者たちへの対応はなんとかなりそうだ。

「あとはノゾミ次第か……」

 サラクニークルスがそっと息を吐いたその時。

「お、お兄ちゃんが……」

 マヤが胸を押さえ倒れ込んだ。

「マヤ!」

 唐突に苦しみ出したマヤにアープルが駆け寄る。

「来ないで!」

 マヤの強い制止。見れば彼女の身体から白い煙が上がっている。彼女の体の周囲の空気が揺らいでいた。
 彼女の身体が高温の熱を発していることを示していた。彼女の倒れている床部分からも炭化し煙が上がっていた。

 バタン!

「アープルちゃん!」

 マヤの横にいたアープルも倒れ込んだ。周囲にいた魔法使い画彼女に近づこうとするが、高熱のため近づくことができなかった。

「くっ、これでは熱くて近づくこともできない!」

 病気などという状況ではない。これは明らかに異常な事態だ。

「疫病か何かではないのか!」

「まさか……呪い?」

「いや……そんな気配はまったく……」

「では、何だと言うんだ!」

 周囲はパニックになりかけていた。当然だ。理由もわからずに人が倒れれば人は病気や呪いを疑う。

「とにかく彼女たちを移動させよう」

「しかし、いったいどうやって?」

 問いかけられうっとなる。高温のため触ることすらできないのだ。

「報告します!」

 魔法使いの一人が慌てて駆けつけてきた。

「どうした?」

 サラクニークルスが問いかける。

「生徒および講師の中で数名高熱で倒れる者が現れました!」

「なんだと」

 報告を聞けば、アンナ、ミーシャ、そしてシスティーナの三名ということだ。

「一体どうしたというのだ……」

 サラクニークルスが呟いたその隣でアメリアが倒れ込む。

「アメリア!」

 サラクニークルスは思わず手を伸ばそうとするが熱波に当てられ思わず飛ひ退いてしまった。

「サラちゃん……私から……離れて……!」

 アメリアの身体も高温を発していた。

「これは……いったいどうしたというのだ……」

 苦しむアメリアを見、サラクニークルスは苦しそうにうめいた。
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