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第三章「魔法学園の劣等生 魔法技術大会編」
第147話「VS タニア ⑤」
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タニアに対峙したオレには迷いがあった。
今まで全力で戦ったことなどない。
オレの力が通用するのか……それとも全く歯が立たないのか……
「取り敢えず……やってみるか」
「楽しみにしてるよ……ノゾミン!」
オレは自分の中に意識を集中させる。身体の奥――其処にドロリとした黒い感覚があった。
そこに到達してしまえば……もう二度ともどってこれない。そんな直感めいた感覚がある。
前回は戻ってこれた――その代わり、バージル卿は片腕を失った。
今回は分からない。
何が犠牲になるのか分からない。
戻ってこれなかったら……みんなでオレを止めてくれるだろうか。
戻ってこれなかったら……みんなでオレを殺してくれるだろうか。
(お兄ちゃん!)
突然、マヤの声が念話で届く。
(絶対大丈夫だよ。待ってるからね!)
絶対の信頼。念話だからこそ伝わってくるマヤの気持ち。
(ノゾミ様……ご武運を!)
(頑張りすぎないようにねノゾミ君)
(お兄さん、無理しないでくださいね)
(ノゾミ、力に慣れなくてごめんね)
(生徒たちは無事だ。あなたはあなたの全力を出せればそれでいい。結果は気にするな)
アンナ、アメリア、アープル、ミーシャ、システィーナの声が届いてきた。
なんだよ。みんなオレを信じすぎだ。
オレはそんなに強くない。
臆病で、卑怯で、優柔不断で、弱虫だ。
そんなオレを信じるなんて、お前たちは馬鹿だ。
そして、本当の馬鹿は――オレだ。
これじゃオレだけが逃げてるみたいじゃないか。
パァン!
オレは自らを平手打ちした。
不安になるな!
自分を信じろ!
信じて待っている仲間の為に――オレは今ここにいるんだ。
「覚悟が決まったみたいだね……いい目してるよ」
「そいつはどうも……それと、一つ頼まれてくれないか」
「なんだい?」
「もしオレが理性を失う化物になったら……」
「やだね!」
タニアはフンと鼻を鳴らす。
「そういった事は自分で何とかしてくれよ。ボクはゴメンだよ」
タニアは心底嫌そうな顔だ。
大丈夫。彼女ならきっとオレの願いを叶えてくれる。
「魔竜人化!」
黒いオーラがオレを包み込む。
破壊しろ!
破壊しろ!
破壊しろ!
(警告。身体の侵食を確認。強制停止プログラムを実行中します――プログラムがブロックされました)
慌てたようなマザーの声が響く。
身体が熱を帯びてきた。朦朧とする意識をなんとか保つ。
ここで流されるな。
自分を保て!
「あががががががぁぁぁぁ!」
叫んでいるのは――オレだ。
体中に激痛が走った。メキメキと身体が鳴る。
視野が広くなり全方位が見渡せるようになった。身長が伸びたのかタニアが低く見える。
「へぇー、まるでドラゴンだね」
漆黒のドラゴン――それが今のオレだった。
「破壊!」
拳を振るう。それだけで大地が裂けた。
「それじゃ。ボクも全力だ!!」
タニアの姿が歪む。すると直ぐに紅のドラゴンが現れた。
「これが本来のボクの姿さ」
タニアが誇らしげに言う。魔人族はまれに獣人化することのできる個体が生まれることがある。バージル卿は白い虎に、オレは黒竜族の力を手に入れていたので漆黒のドラゴンになったというわけだ。
タニアは紅のドラゴン――純正魔人族の力がどれだけのものか。
オレは破壊衝動に突き動かされるようにタニアに向かって突進していった。
今まで全力で戦ったことなどない。
オレの力が通用するのか……それとも全く歯が立たないのか……
「取り敢えず……やってみるか」
「楽しみにしてるよ……ノゾミン!」
オレは自分の中に意識を集中させる。身体の奥――其処にドロリとした黒い感覚があった。
そこに到達してしまえば……もう二度ともどってこれない。そんな直感めいた感覚がある。
前回は戻ってこれた――その代わり、バージル卿は片腕を失った。
今回は分からない。
何が犠牲になるのか分からない。
戻ってこれなかったら……みんなでオレを止めてくれるだろうか。
戻ってこれなかったら……みんなでオレを殺してくれるだろうか。
(お兄ちゃん!)
突然、マヤの声が念話で届く。
(絶対大丈夫だよ。待ってるからね!)
絶対の信頼。念話だからこそ伝わってくるマヤの気持ち。
(ノゾミ様……ご武運を!)
(頑張りすぎないようにねノゾミ君)
(お兄さん、無理しないでくださいね)
(ノゾミ、力に慣れなくてごめんね)
(生徒たちは無事だ。あなたはあなたの全力を出せればそれでいい。結果は気にするな)
アンナ、アメリア、アープル、ミーシャ、システィーナの声が届いてきた。
なんだよ。みんなオレを信じすぎだ。
オレはそんなに強くない。
臆病で、卑怯で、優柔不断で、弱虫だ。
そんなオレを信じるなんて、お前たちは馬鹿だ。
そして、本当の馬鹿は――オレだ。
これじゃオレだけが逃げてるみたいじゃないか。
パァン!
オレは自らを平手打ちした。
不安になるな!
自分を信じろ!
信じて待っている仲間の為に――オレは今ここにいるんだ。
「覚悟が決まったみたいだね……いい目してるよ」
「そいつはどうも……それと、一つ頼まれてくれないか」
「なんだい?」
「もしオレが理性を失う化物になったら……」
「やだね!」
タニアはフンと鼻を鳴らす。
「そういった事は自分で何とかしてくれよ。ボクはゴメンだよ」
タニアは心底嫌そうな顔だ。
大丈夫。彼女ならきっとオレの願いを叶えてくれる。
「魔竜人化!」
黒いオーラがオレを包み込む。
破壊しろ!
破壊しろ!
破壊しろ!
(警告。身体の侵食を確認。強制停止プログラムを実行中します――プログラムがブロックされました)
慌てたようなマザーの声が響く。
身体が熱を帯びてきた。朦朧とする意識をなんとか保つ。
ここで流されるな。
自分を保て!
「あががががががぁぁぁぁ!」
叫んでいるのは――オレだ。
体中に激痛が走った。メキメキと身体が鳴る。
視野が広くなり全方位が見渡せるようになった。身長が伸びたのかタニアが低く見える。
「へぇー、まるでドラゴンだね」
漆黒のドラゴン――それが今のオレだった。
「破壊!」
拳を振るう。それだけで大地が裂けた。
「それじゃ。ボクも全力だ!!」
タニアの姿が歪む。すると直ぐに紅のドラゴンが現れた。
「これが本来のボクの姿さ」
タニアが誇らしげに言う。魔人族はまれに獣人化することのできる個体が生まれることがある。バージル卿は白い虎に、オレは黒竜族の力を手に入れていたので漆黒のドラゴンになったというわけだ。
タニアは紅のドラゴン――純正魔人族の力がどれだけのものか。
オレは破壊衝動に突き動かされるようにタニアに向かって突進していった。
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