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第三章「魔法学園の劣等生 魔法技術大会編」

第134話「正解は……?」

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 オレは今、人生のターニングポイントにさしかかっている。
 ここで選択を誤れば今後の人生において大いなるマイナスとなるだろう。
 後で振りかえって「嗚呼、あの時ああすればよかった」という瞬間が必ずあるのだ。
 だから、ここで後悔する選択はしたくなかった。

「お……覚えていないな」

 これ以上話をややこしくする必要はない。
 オレは素直に言う。
 彼女の思いがどうであれ、勝負で決めていい事ではない。

「うん……覚えていないんだったらしょうがないよね」

 セレスはちょっと残念そうな顔をした。もしかして、オレってものすごくもったいないことをしているのではないだろうか。
 マーリルを見ると「このチキンめ!」と言いたげな目で見ている。
 大体、セリスの気持ちはどうなるんだ? 実際嫌々だったらこっちらも願い下げだ。

「とにかく、夕食にしよう」

 オレは明るい声で言う。何よりもセリスとこうして話をすることができるようになっただけでも収穫といえた。
 それにマーリルとも仲良くなりたい。
 彼女との接点はほとんどなく今回が初めてといっていい。
 彼女の氷結の舞もなかなか見事なものだった。
 踊りに詠唱をプラスする考えなど全く思い浮かばないのだ。

「ノゾミ! アンタはとにかく目立ち過ぎなのよ!」

 しばらくしてからセリスが唐突にそう切り出した
 見れば彼女の隣りには空になった酒瓶が転がっていたしかも二本も!
 ちょっと待て、誰だ彼女に飲ませたのは!
 
「そうでしゅよ! ノゾミさんは色々と出来過ぎなんでしゅ!」

 マーリルも呂律がおかしい……って、お前もかい!

「アンナ様とすっと一緒だなんてアンタはズルい!」

 そんなこと言われても、オレのせいではないし、そもそも契約を持ちかけてきたのは彼女自身だ。
 オレは悪くない……はずだ。
 しばらく、セレスはあれやこれやとオレに文句を垂れていた。何だこいつは、飲むと罵っちゃうタイプか?

「ところで……ノゾミ。質問があるんだが?」

 いきなり真正面からオレの瞳を覗き込む。

「アンナさまと……その……ヤッたのか?」

 いつもになく真剣な表情だ。
 これは……正直に答えるのが正解か?

「なぁ……どうなんだ?」

「あの――私も気になりますぅ」

 セレスがにじりよってきた。マーリルも反対側から迫ってくる。

「ねぇ、どうなの?」

「いやまぁ、お互い合意の上と言いますか……」

「やっぱり!」

 セレスは真っ赤になった顔で叫んだ。

「アンナさんがそんなことを……!」

 マーリルも顔を真っ赤にしている。彼女の場合はどちらなんだろう。酔いなのか、それとも恥ずかしさからなのだろうか。

「ノゾミ。そこに座りなさい」

 セレスはベッドの上を指差した。
 何なんだ?
 この今から説教! みたいな流れは……

「へいへい」

 酔っ払いには敵わない。
 仕方なくオレはベッドの上に座ることにした。

「とりあぁ!」

 セレスがいきなり飛びかかってきた。
 不意をつかれそのままもつれるように倒れ込む。

「ふふふ。勝った!」

 セレスは勝ち誇ったようにニンマリと笑顔になるとそのまま抱きついてきた。
 オレは抱き枕。ただの抱き枕だ。

「いいなぁ、私も!」

 マーリルも抱きついてきた。
 うん。酒臭いぞお二人さん。

「ねぇ、こんなにしてるのに襲わないの?」

「そうですよ。こーんなに可愛い二人に迫られてるんですよ」

 酔っ払いKOEEE!
 完全に目が座ってる。二人共とても怖いです。

「これは……私達のチカラを知らしめてあげなければならないようね」

 何その理論。

「このまま引き下がっては魚人族の恥!」

 何その矜持。

「ノゾミ。脱げ!」

 言うが早いかセレスがオレの服を脱がした。

「えーい!」

 マーリルが抱きついてくる。
 ふくよかな感触がオレを襲う。
 セレスの吐息がオレの耳に届いた。

 そうか……お前たちは今、目覚めさせてはならない魔物を目覚めさせてしまったぞ!
 愚かなる者共よ!
 その報いを受けるがいい!

「「エッ! なに?」」

 突然の出来事に二人は驚いたように目を見開く。
 二人の手首は蔓によって縛られてしまっていた。
 二人がイケないのだ。
 オレにその気はなかった。
 完全になかったのかといえば……そうでもなかったのだが。
 ここまでお膳立てされれば、お応えしなければならないだろう。
 そう。英国紳士として!

「それでは……まずはマーリルから脱がしていこうか……」
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