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第三章「魔法学園の劣等生 魔法技術大会編」
第102話「前夜祭 ①」 ※イラストあり〼
しおりを挟む暗闇の中、照らす光は頭上ぼ魔法灯の光のみ。
「マヤ……いいかい?」
「うん。お兄ちゃんと一緒なら、マヤ怖くないよ」
マヤの手をにぎる。ほっそりとした小さな手が小さく震えていた。
オレは指先に力を込める。
「あっ……」
ピクリとマヤの肩が震えた。
「大丈夫。お兄ちゃんを信じろ。ほら、力を抜くんだ」
「うん」
かりかりかりかり!
「お兄ちゃん……焦らないで……もっと優しく」
マヤが焦るオレをなだめた。
「もお……緊張しすぎ。ここなんて、ほらカチカチだよ」
耳元で甘い声でささやく。
「もう少ししたら……ねっ、できたでしょ!」
嬉しそうに笑う我が妹。いつ見ても可愛い奴だ。
「マヤと一緒で本当によかった」
「もう、大げさなんだから」
かりかりかりかり!
「あん。激しすぎるって♡ もっと優しく♡」
いけないいけない。いつもの癖ですぐに力を込めてしまう。
「ゆっくり入れて」
マヤの言葉通りにゆっくりと入れる。
「……ん♡ そう、ここは弧を描くように優しく……♡」
マヤの息に熱がこもり始める。そろそろゴールが見えてきた。
「マヤ……イっていいか?」
「ま、待って。まだダメ……心の準備が……」
いや待てない!ここまで来て、お預けなんて……絶対に嫌だ。
オレの手の動きが激しくなる。
「あん♡ ゆっくりって言ってるのに♡」
マヤは泣きそうな声で言った。
かりかりかりかり……バキ!
悲惨な音を立てて、完成しつつあったドラゴンの首がへし折れる。
「ぬおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「はい。ドラゴンの首が折れたから景品はなしね!」
お店のおじちゃんがニヤニヤと笑いながら嬉しそうに言った。
焼き菓子型抜き、手のひらサイズに焼かれた焼き菓子、そこに描かれたドラゴンの絵に合わせて切り抜くというものだ。地元の屋台で神童とまで謳われたオレの腕も、この世界では通じなかったらしい。
「お兄さん、焦りすぎです。激しくしていいのはベッドの上だけで十分です!」
見た目は子供、年齢は一五〇歳のアープルが危険な発言を人通りの激しい道の真ん中で堂々と言い放った。
うん。そういった発言はあんまり人前でしないでっていつも言っているよね。
「お兄ちゃんは、いつも激しいけど……縛ったりする時は優しいんだよ♡」
うん。君も静かにお願いプリーズ。
ほら、屋台のおじさんも変な目でオレを見ているじゃないか。
「こ、これは通報した方がいいのか……」
「HAHAHAHAHAHA!いつもの冗談ですYO!そう、これはかわいいシスタージョーク!」
オレはマヤとアープルの手を引いてその場を離れた。
◆ ◆ ◆ ◆
魔法学園祭は明日からの開催だ。
今日は前夜祭。
オレはマヤとアープルを連れて学園内を散策していた。
二人にはオレの作った浴衣を着てもらっている。
うん。二人ともとっても似合っています。
ふふふ。後で脱がしてやるぜ。
ミーシャやアンナは明日からのは出し物の準備があるということで今はいない。
同様に、システィーナ先生とアメリア先生、メリッタ先生もいない。
夜の学園。出店が立ち並び人通りも多い。
まるで夜祭りの出店通りのようだった。
どこか懐かしいな、この雰囲気。
「あーあ、楽しかった!」
「おじさんびっくりしていたね!」
マヤとアープルはどこか嬉しそうだ。
くそう、人の気も知らないでこの二人は……
「あのなぁ、人前であれほど言わないでっていつも言ってるじゃないか」
オレの言葉に二人はエヘヘと互いに笑い合う。
いかん、このままではいけない。
躾が必要だ。もう二度と同じ間違いを起こさないように厳しく躾けなければいけない。
許せ、妹たちよ。今晩オレは狼になる!
「お前たちにはお仕置きが必要だな」
オレは強い口調で二人に宣言した。妥協は許されない。ここで甘い顔をすればつけあがるだけだ。
「やったあ!」
「お兄ちゃん……マヤ、どんなオシオキされちゃうのかなぁ♡」
二人の期待のこもった視線。
何故か喜ばれてしまった。
「と、とにかく激しいヤツだ! 泣いても許さないからな!」
絶対にヒイヒイ言わせてやる。
オレはそう心に誓った。
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