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第7巻第2章 連携
カーサとパコ
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「それで、姉ちゃんは何しに来たんだ?」
パコはお茶を飲んで少し落ち着いたところで、カーサへと尋ねた。
「えっと、その…………パコに、会いに、来た?」
実際はマヤに勧められるまま、勢いでパコに告白しに来たわけだが、いきなりそんなことを言えるような勇気は、カーサにはなかった。
「なんで俺に会いに来たんだ? いや姉ちゃんが来てくれるとエマも喜ぶし、来てくれるのは嬉しいんだけどさ」
「パコは、喜んで、くれない、の?」
カーサは不安そうにパコをチラチラ見ながら尋ねてくる。
「そ、そんなわけないだろっ。俺だって姉ちゃんに会えるのは嬉しいよ」
「そ。よかった」
両手を胸に当てて安堵したように息を吐くカーサに、パコは再び顔が熱くなるのを感じた。
「あーもう、調子狂うなあ……」
パコにとってカーサは、今まで知り合いのお姉ちゃん、くらいにしか思っておらず、どちらかというと友達に近い存在だった。
そのカーサが、初めて見るような女の子らしい服装で、女の子らしい仕草で、目の前にいるという状況に、パコはどう対応したものかわからない。
「どう、したの、パコ?」
「どうしたはこっちのセリフだよ……なんで今日の姉ちゃんはこんなに……」
思わずカーサから顔をそらしてつぶやくパコ。
そんなパコの顔を、カーサは身を乗り出して覗き込む。
「パコ?」
息遣いがわかるほど近くからカーサの声がして、パコが慌てて声の方に目をやると、目と鼻の先にカーサの顔があった。
「うわっ!?」
「そんなに、驚か、なくても、いいのに」
「ご、ごめん……でも、今日の姉ちゃん、なんか近くない? 前からこんな感じだったっけ?」
「うん、前は、もっと、近かった、かも? パコ、私の、膝の上に、座ってたり、してた、でしょ?」
「そういえばそうだった……」
しかしあの頃とは状況が違う。
いや、パコの方は何も変わっていないと思うのだが、カーサの雰囲気が全く違うのだ。
カーサは昔から美人ではあったものの、服装は剣士としての動きやすさを優先させた、言葉を選ばず言えば色気のかけらもないものだった。
その上、以前のカーサは基本的に無表情で、今日のように、恥ずかしがったり、不安そうにしたり、安堵したように微笑んだり、といった表情を見せてくれることはなかった。
それが今日は、今までのカーサからは考えられないほどおしゃれをしており、カーサの整った顔立ちと、スラリと長い手足、メリハリのある身体、とカーサが持つ女性的な魅力を最大限活かした姿なのだ。
「でも、私、流石に、昔みたい、には、できない、かも」
カーサは湯気が出そうな程顔を赤くしてうつむく。
「いや、昔みたいにされたら俺も困るから……」
「そう、なんだ。うん、わかった」
しばしの間、カーサとパコの間に沈黙の時間が流れる。
「ねえお兄ちゃん、お姉ちゃん、どうしてお話しないの? 喧嘩しちゃったの?」
エマは黙ってしまった2人を交互の見て不安そうしている。
それを見た2人は慌ててエマの言葉を否定した。
「えっ? い、いやいやいや、喧嘩じゃないぞエマ」
「うん、喧嘩じゃ、ない。私は、パコと、仲良し、だから………………ううん、そうじゃ、ない。それだけ、じゃ、ない」
「姉ちゃん?」
カーサはゆっくりと顔をあげると、パコを正面から見据える。
まだやや赤い頬をしていたカーサだったが、その目は何かを決意したようにパコから外れることはなかった。
「パコ、私…………私は、今日、パコに、伝えたい、ことが、あって、来た、の」
「伝えたいこと? 手紙とかじゃ駄目だったのか?」
「うん、手紙じゃ、だめ。だから、聞いて、ほしい。いい、かな?」
「ああ、もちろん」
「あり、がとう。じゃあ、言う、ね」
カーサは大きく息を吸い込むと、長くゆっくりと吐き出してから、再び息を吸い込む。
そうして心を落ち着けたカーサは、再びパコを正面から見据えた。
「私ね、パコの、ことが、好き、なの」
「………………え? それだけか? そんなの知ってるよ。俺だって姉ちゃんのことは好きだし――」
「違う、の。そういう、「好き」じゃ、ない、の」
「そういう「好き」じゃない?」
「うん。パコの、言って、る、「好き」、は、家族、とか、友達の、「好き」、でしょ?」
「ああ、そうだな……」
「でも、私の、「好き」は、違う。私は、パコの、こと、男の、人として、「好き」、なの」
カーサは耳まで真っ赤にしながら、なんとか言葉を紡ぎ切る。
「カーサ姉ちゃんが、俺のことを、男として好き、ってことか?」
カーサと自分を交互に指差すパコに、カーサは小さく頷く。
カーサは恥ずかしさが限界の達したのか、両手で顔を覆って俯いてしまう。
「そ、そう、なのか…………なんて言ったらいいんだろうな……」
パコは、生まれてはじめて女性から告白され、嬉しくて舞い上がる気持ちと、どう答えたら良いか分からず困惑する気持ちが混じり合い、頭の中がごちゃごちゃになっていた。
「俺、どうすればいいかわからないんだけど…………でもカーサ姉ちゃん、俺、1つだけはっきり言えることがある」
「…………」
パコの言葉の続きを、カーサは何も言わずに待つ。
「俺、カーサ姉ちゃんに告白されてすげー嬉しかった。昔から姉ちゃんは綺麗だったけど、今日の姉ちゃんはなんていうか、女の子らしくてめちゃくちゃドキドキしたし……だから、俺も多分、カーサ姉ちゃんの事好きだ…………その……女の人として」
パコは気恥ずかしそうに頬を掻いて、カーサから目をそらしてしまっていた。
家の前で2時間逡巡していたとはいえ、パコの家を訪ねると決めた時点から心の準備をしていたカーサと異なり、パコは突然の告白されたのだから、目をそらしてしまっている事を責めることはできないだろう。
「パコっっ!」
次の瞬間、カーサは思わずパコを抱きしめていた。
パコは大きく開いたカーサの胸元から覗く深い谷間に顔の側面から勢いよく押し付けられる形になる。
「ちょっ、ちょっと、カーサ姉ちゃん!?」
耳まで真っ赤にしたパコがカーサの谷間から逃れようと顔を上げると、その頬に雫が落ちてきた。
「よか、った……よか、った、よおぉぉっ…………」
その雫はカーサの涙だった。
カーサは、パコもカーサのことを異性として好きだと言ってくれたことに安堵し、涙を流していたのだった。
「姉ちゃん……」
パコは逃げようとするのを止めて、カーサの背中に腕を回し、パコからもカーサを抱きしめたのだった。
パコはお茶を飲んで少し落ち着いたところで、カーサへと尋ねた。
「えっと、その…………パコに、会いに、来た?」
実際はマヤに勧められるまま、勢いでパコに告白しに来たわけだが、いきなりそんなことを言えるような勇気は、カーサにはなかった。
「なんで俺に会いに来たんだ? いや姉ちゃんが来てくれるとエマも喜ぶし、来てくれるのは嬉しいんだけどさ」
「パコは、喜んで、くれない、の?」
カーサは不安そうにパコをチラチラ見ながら尋ねてくる。
「そ、そんなわけないだろっ。俺だって姉ちゃんに会えるのは嬉しいよ」
「そ。よかった」
両手を胸に当てて安堵したように息を吐くカーサに、パコは再び顔が熱くなるのを感じた。
「あーもう、調子狂うなあ……」
パコにとってカーサは、今まで知り合いのお姉ちゃん、くらいにしか思っておらず、どちらかというと友達に近い存在だった。
そのカーサが、初めて見るような女の子らしい服装で、女の子らしい仕草で、目の前にいるという状況に、パコはどう対応したものかわからない。
「どう、したの、パコ?」
「どうしたはこっちのセリフだよ……なんで今日の姉ちゃんはこんなに……」
思わずカーサから顔をそらしてつぶやくパコ。
そんなパコの顔を、カーサは身を乗り出して覗き込む。
「パコ?」
息遣いがわかるほど近くからカーサの声がして、パコが慌てて声の方に目をやると、目と鼻の先にカーサの顔があった。
「うわっ!?」
「そんなに、驚か、なくても、いいのに」
「ご、ごめん……でも、今日の姉ちゃん、なんか近くない? 前からこんな感じだったっけ?」
「うん、前は、もっと、近かった、かも? パコ、私の、膝の上に、座ってたり、してた、でしょ?」
「そういえばそうだった……」
しかしあの頃とは状況が違う。
いや、パコの方は何も変わっていないと思うのだが、カーサの雰囲気が全く違うのだ。
カーサは昔から美人ではあったものの、服装は剣士としての動きやすさを優先させた、言葉を選ばず言えば色気のかけらもないものだった。
その上、以前のカーサは基本的に無表情で、今日のように、恥ずかしがったり、不安そうにしたり、安堵したように微笑んだり、といった表情を見せてくれることはなかった。
それが今日は、今までのカーサからは考えられないほどおしゃれをしており、カーサの整った顔立ちと、スラリと長い手足、メリハリのある身体、とカーサが持つ女性的な魅力を最大限活かした姿なのだ。
「でも、私、流石に、昔みたい、には、できない、かも」
カーサは湯気が出そうな程顔を赤くしてうつむく。
「いや、昔みたいにされたら俺も困るから……」
「そう、なんだ。うん、わかった」
しばしの間、カーサとパコの間に沈黙の時間が流れる。
「ねえお兄ちゃん、お姉ちゃん、どうしてお話しないの? 喧嘩しちゃったの?」
エマは黙ってしまった2人を交互の見て不安そうしている。
それを見た2人は慌ててエマの言葉を否定した。
「えっ? い、いやいやいや、喧嘩じゃないぞエマ」
「うん、喧嘩じゃ、ない。私は、パコと、仲良し、だから………………ううん、そうじゃ、ない。それだけ、じゃ、ない」
「姉ちゃん?」
カーサはゆっくりと顔をあげると、パコを正面から見据える。
まだやや赤い頬をしていたカーサだったが、その目は何かを決意したようにパコから外れることはなかった。
「パコ、私…………私は、今日、パコに、伝えたい、ことが、あって、来た、の」
「伝えたいこと? 手紙とかじゃ駄目だったのか?」
「うん、手紙じゃ、だめ。だから、聞いて、ほしい。いい、かな?」
「ああ、もちろん」
「あり、がとう。じゃあ、言う、ね」
カーサは大きく息を吸い込むと、長くゆっくりと吐き出してから、再び息を吸い込む。
そうして心を落ち着けたカーサは、再びパコを正面から見据えた。
「私ね、パコの、ことが、好き、なの」
「………………え? それだけか? そんなの知ってるよ。俺だって姉ちゃんのことは好きだし――」
「違う、の。そういう、「好き」じゃ、ない、の」
「そういう「好き」じゃない?」
「うん。パコの、言って、る、「好き」、は、家族、とか、友達の、「好き」、でしょ?」
「ああ、そうだな……」
「でも、私の、「好き」は、違う。私は、パコの、こと、男の、人として、「好き」、なの」
カーサは耳まで真っ赤にしながら、なんとか言葉を紡ぎ切る。
「カーサ姉ちゃんが、俺のことを、男として好き、ってことか?」
カーサと自分を交互に指差すパコに、カーサは小さく頷く。
カーサは恥ずかしさが限界の達したのか、両手で顔を覆って俯いてしまう。
「そ、そう、なのか…………なんて言ったらいいんだろうな……」
パコは、生まれてはじめて女性から告白され、嬉しくて舞い上がる気持ちと、どう答えたら良いか分からず困惑する気持ちが混じり合い、頭の中がごちゃごちゃになっていた。
「俺、どうすればいいかわからないんだけど…………でもカーサ姉ちゃん、俺、1つだけはっきり言えることがある」
「…………」
パコの言葉の続きを、カーサは何も言わずに待つ。
「俺、カーサ姉ちゃんに告白されてすげー嬉しかった。昔から姉ちゃんは綺麗だったけど、今日の姉ちゃんはなんていうか、女の子らしくてめちゃくちゃドキドキしたし……だから、俺も多分、カーサ姉ちゃんの事好きだ…………その……女の人として」
パコは気恥ずかしそうに頬を掻いて、カーサから目をそらしてしまっていた。
家の前で2時間逡巡していたとはいえ、パコの家を訪ねると決めた時点から心の準備をしていたカーサと異なり、パコは突然の告白されたのだから、目をそらしてしまっている事を責めることはできないだろう。
「パコっっ!」
次の瞬間、カーサは思わずパコを抱きしめていた。
パコは大きく開いたカーサの胸元から覗く深い谷間に顔の側面から勢いよく押し付けられる形になる。
「ちょっ、ちょっと、カーサ姉ちゃん!?」
耳まで真っ赤にしたパコがカーサの谷間から逃れようと顔を上げると、その頬に雫が落ちてきた。
「よか、った……よか、った、よおぉぉっ…………」
その雫はカーサの涙だった。
カーサは、パコもカーサのことを異性として好きだと言ってくれたことに安堵し、涙を流していたのだった。
「姉ちゃん……」
パコは逃げようとするのを止めて、カーサの背中に腕を回し、パコからもカーサを抱きしめたのだった。
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