転生したらただの女の子、かと思ったら最強の魔物使いだったらしいです〜しゃべるうさぎと始める異世界魔物使いファンタジー〜

上村 俊貴

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第7巻第2章 連携

連携技

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「連携技を練習したい?」

「うん。最近は息もあってきたし、今のままでも十分戦えそうではあるんだけど、やっぱりいくつか連携のパターンは決めておいたほうがいいと思うんだよ」

「それで連携技か……必要か? かえって柔軟さがなくなる気がするんだが…………」

「たしかにシャルルさんの言うことも一理あると思うけど、強い連携ってあるじゃん? 例えば私が相手の体勢を崩した瞬間に、シャルルさんが斬りかかるとか」

「それができれば確かに強いな」

「でしょ? それに、そういう動きが自然にできるようになれば、連携も今よりスムーズになると思うんだよね」

「ふむ……なるほどな……」

「あと、いい加減エメリンさんに勝ちたい」

「あー……まあそれは私も同感だ。いくら今のエリーが強いとはいえ、2人がかりで未だに膝すらつかせられていないのは悔しいな」

「でしょ? しかもハイメ君と2人だともっと強いらしいじゃん?」

「らしいな。まさかハイメまで強くなってるとは思わなかったが」

「まあその話はエメリンさんが言ってるだけだから本当かどうかわからないけど」

「よしっ、連携技、考えてみるか。とりあえずさっきマヤが言っていたやつをやってみよう」

「うん。じゃあまずは私が――」

 それからマヤとシャルルは連携技の開発と、出来上がった連携技の訓練に励んだ。

 そして連携技を練習し始めてから1週間がたった頃――。

「まさか、お母さんが膝をつくなんて……」

 オリガはマヤとシャルルの連携で追い込まれたエメリンがとうとう膝を屈したのを見て思わず口に手を当てて驚く。

 今まで母の戦いは何度も見てきたオリガだが、子どもたちを人質にとられた際などを除いて、エメリンが膝を屈したのは初めて見た。

「やった!」

「ああ、やったな!」

 マヤとシャルルはエメリンの姿を見て拳を突き合わせる。

 が、喜んだのもつかの間――。

「それでは、続きといきましょうか」

「「えっ?」」

 2人の目の前には、何事もなかったかのように治癒魔法で回復し立ち上がったエメリンの姿があった。

「なんか回復してない?」

「ええ、回復しましたね」

 差も当然といった様子で認めるエメリンに、マヤの頬を冷や汗が伝う。

「なあマヤ、そういえば今までの戦闘で、エリーは治癒魔法使ったことあったか?」

 シャルルは青ざめた表情でエメリンを指差す。

「あれ、そういえば…………うん、言われてみれば、ない、かもしれない……」

 シャルルの言葉の意味を理解したマヤも、声が震えそうになるをなんとか抑えながら答える。
 
「だよな? つまり、エリーはまだまだ全然本気じゃなかったってことにならないか?」

「う、うん…………そう、かも……」

 マヤの背中を冷や汗が流れる。

 マヤとシャルルはここまでの戦闘でなかなかに満身創痍だった。

「やれるか?」

「やるしかない、でしょう!」

 マヤは無理やり大きな声を出すと、自身の傷を強化魔法で治す。

 そのままマヤとシャルルは、体力の限界までエメリンと戦い続けたのだった。

***

 マヤとシャルルが連携技の訓練に励んでいる頃、カーサはドワーフに里を訪れていた。

 到着したのは2時間ほど前。

 カーサはそれからずっと1件の家の前でうろうろとしていた。

 最初は気に求めなかった周辺住民も、あまりにも不審なカーサの行動に、やや警戒した様子で遠巻きにカーサの事を観察していた。

「どう…………しよう…………うん、今度、鳥が、鳴い、たら、ノック、する。絶対…………」

 何やらぶつぶつ言いながら、何に変哲もない民家の前をウロウロウロウロと、不審極まりないカーサが未だに誰にも声をかけられていないのは、ひとえにその服装ゆえである。

 一言で言えば、今のカーサは目一杯におしゃれをしているのだ。

 緑の髪を結い上げ、少し胸元の開いたフリル多めのオフショルダーのトップスに、膝上丈の真紅のミニスカート、足元は慣れないヒールを履いている。

 マヤとオリガ、2人の渾身のコーディネートに身を包み、時折窓に映った自分を見て髪を直したりしているカーサの姿は、不審であっても悪意は感じられない。

 そんなこんなでウロウロしているカーサを周辺住民が観察していると、近くの木から鳥の鳴き声が聞こえた。

「よっ、よし。ノック、しよう……」

 ようやっと決心したカーサが、民家の玄関のドアをノックしようとした時、横からカーサに近づく小さな影があった。

「あれ、カーサ姉ちゃん?」

「っっっ!?」

 横から聞こえたパコの声に、カーサはバッと顔を向けた。

 なにか挨拶をしようとしたカーサだったが突然のことに言葉が出て来ず、パクパクと口を動かすことしかできない。

「あははははっ、お姉ちゃんおもしろーい」

 そんなカーサを見て、パコに手を引かれていた妹のエマが楽しそうに笑った。

 その声を聞いたカーサは、ようやく少しだけ落ち着きを取り戻すと、エマへと微笑みを向ける。

「こん、にちは、エマちゃん。それと、パコも、久し、ぶり」

「おう、久しぶりだな姉ちゃん。それにしても、俺たちの家の前で何してるんだ?」

 先ほどまでカーサを見ていた周辺住民が全員が疑問に思っていたであろう事をパコが質問する。

「いや、その……2人に、会いに、来たん、だけど、いない、みたい、だった、から。待って、た」

 本当は不在に気づいてすらいなかったのだが、カーサは恥ずかしいので黙っておくことにした。

「やっぱりそういうことか。ごめんな姉ちゃん、手紙とかで教えてくれれば待ってたんだけど……」

「ううん、いい。私が、勝手に、来た、だけ、だから」

「そうか? でも待たせちゃったのは事実だし、とりあえず上がってよ」

「うん、ありが、とう」

 パコはドアを開けると、カーサを中に案内した。

「お姉ちゃん今日はとってもかわいいお洋服だね!」

「そう、かな?」

「うん、とってもかわいい! ねえ、お兄ちゃんもそう思うでしょ?」

「あ、ああっ、そ、そうだなっ……」

 お茶とお菓子を用意してきてくれたパコは、エマに言われてカーサを改めて見て、やや目をそらしながら言った。

「本当? 嬉しい、な……」

 カーサは頬を染めて俯いてしまう。

 その表情は嬉しそうに緩んでいた。

 なんだかいつもと違う雰囲気のカーサに、パコは思わずドキリとする。

「で、でも、姉ちゃんにしては珍しいよな、そんな格好」

「やっぱり、私には、似合わ、ない、かな?」

 一転して不安そうに上目遣いでパコを見るカーサに、パコは慌てて自分の言葉を否定した。 

「いやいやいや、そんなことないよっ! すげー似合ってる! めちゃくちゃかわい――――」

 パコは途中まで言って思わず手で口を塞いだ。

(な、何言ってんだ俺!? 恥ずかしい……)

「パコ? どう、したの?」

 可愛らしく小首を傾げて見せるカーサに、パコはまたも胸の高鳴りを感じた。

(どうしたんだよ姉ちゃん……なんで今日の姉ちゃん、こんなに……)

 パコは自分の感情は分からず混乱するのだった。
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