転生したらただの女の子、かと思ったら最強の魔物使いだったらしいです〜しゃべるうさぎと始める異世界魔物使いファンタジー〜

上村 俊貴

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第7巻第1章 聖剣の扱い方

カーリ狂気の真相

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「お、おはよう……ウォーレンさん……」

「お、おう。よく眠れたか?」

「う、うん、おかげさまで……」

 ウォーレンから告白の返事をもらった後、マヤはカーサとウォーレンが暮らす家に泊まらさせてもらった。

 晴れて恋人同士になったのだから、ウォーレンの部屋で寝ても良かったのかもしれないが、お互いそんな勇気はなく、ウォーレンは自室で、マヤはカーサの部屋で寝たのだった。

「お兄、ちゃんも、マヤさんも、なんか、ぎこち、ない。恋人、なんだよ、ね? もう、2人は」

「…………話したのかマヤ」

 恥ずかしそうにカーサから目をそらすウォーレンに、マヤは小さく頷く。

 マヤとは対照的に、カーサは大きく頷くと、昨晩のことを話し始めた。

「マヤさん、とっても、嬉し、そうに、ずーっと、話して、た。私、ねむ、かった、けど、寝かして、くれな、かった、くらい」

「ちょ、ちょっとカーサっ……ウォーレンさんの前でバラしちゃわないでよっ……!」

「寝かせて、くれ、なかった、しかえし」

 カーサはいたずらっぽく笑うと、マヤの頭をぽんぽんと撫でてから、朝食の準備をしに台所へと消えていった。

「その……そんなに長々と話してたわけじゃないんだよ?」

「いや、その……嬉しそうに話してたってカーサも言ってたし、なんだ……俺も嬉しいから気にしないでくれ」

「う、うん…………そうだ、それで、これからどうすればいいんだろう?」

「どうする、とは?」

「いや、晴れて恋人同士になったわけだけど、何をすればいいのかなあ、って」

「うーん、そうだなあ……」

 ウォーレンもマヤも、恋人などいたことがないので、恋人とは何をするものなのかよく分からなかった。

 その後、朝食中も朝食後もしばらく悩んでいた2人が出した結論は――。

***

「今だ! マヤ!」

「了解!」

 聖魔石の剣を持つことでマヤの強化魔法を受けたウォーレンの猛攻で、両手に聖剣を手にしたシャルルの体勢が一瞬崩れる。

 その一瞬の隙に、マッシュと人魔合体したマヤが拳を叩き込んだ。

「くっ!」

 マヤの拳を交差させた聖剣で受け止めたシャルルは、マヤの拳の勢いを殺しきれず、そのまま後ろに吹き飛ばされる。

 地面に倒れたシャルルに、ウォーレンの剣が突きつけられた。

「そこまで!」

 デリックの声で、マヤたちの間に流れていた空気が弛緩する。

 マヤは倒れたシャルルに近づくと手を差し伸べた。

「息ぴったりだな、2人は」

「そうかな? まあこれでもカーリを倒すために色々やったからね」

「あの初代剣聖カーリをか?」

「うん、なんだか色々あって別人格に乗っ取られてたみたいで。そういえば、あれって誰の仕業だったんだろう?」

 そういえば、という感じで思い出した疑問に答えたのは――。

「カーリの精神が子孫に宿った理由は知らんが、狂気してた理由なら見当がつくぜ?」

 ――いつの間にやら現れたのはセシリオだった。

「セシリオさん、なんでここに? というかどうやって?」

「忘れたのか? 俺は空間を操る力を魔神様から引き継いでんだ、いくら聖魔石のルースが作った空間でも、入るくらいはできるさ。なんで来たかって言えば、マヤを探してたらカーサが、「恋人同士は何をするのかわからないからとりあえず戦うために封印空間に行った」とかなんとか訳のわからんこというからとりあえず来てみたってわけだ」

「なんだ、やはり2人は無事恋人になれたのか。夜這いの成果が出たな」

「夜這い? ああ、そういえば昨日風呂でそんなことを言っていたな」

 ウォーレンの言葉に、シャルルは顔を輝かせる。

「おおっ、早速一緒に入浴とは、やるなマヤ!」

「いやっ、ちがっ!? いや、違くはないけど……もうっ、ウォーレンさん!」

「す、すまん! あれは事故みたいなものだったな」

「そう、あれは事故! だから何にもないから! それより、カーリが狂気してた理由に見当がつくって言うのはどういうこと?」

「はははっ、マヤは相変わらず面白いな。で、カーリが狂気してたって話だが、あれはおそらく神の仕業だ」

「神って言うと、魔神様じゃなくて、襲ってくる方の神だよね?」

「そうだ。カーリの場合は死んだ人間の魂だからな。死者の魂は神が管理してる。子孫に宿るようになってたとしても、その過程で神が干渉したんだろうな」

「でも、カーリの話だと、生きてた頃にすでに別の人格が現れたみたいだよ?」

「それもおそらくは神の仕業だろうな。初代剣聖がいた頃は、魔神様と神が戦っていた頃らしい。初代剣聖を暴走させて、オークを壊滅させようとしたんだろう」

「だから手当たり次第に人を襲ってたのか……」

 人を襲っていたのは、支配に従わないなら一旦人を殺し尽くしてしまおうという神の意志、力を求めていたのは、かつて聖女に負けて目的を達成できなかったので今回はそうならないように、と考えれば説明がつく。

「じゃあ、あの騒動そのものが神のせいだった、ということですか?」

 セシリオに尋ねるウォーレンは、口調こそ静かなものだったが、その声音には明確な怒りが感じられた。

 それも仕方のないことだろう。

 なにせ、狂気したカーリがウォーレンの宿らなければ、ウォーレンはカーサをおいて家を出る必要もなく、カーサが人斬りをしてしまうこともなかったのだ。

 この場にいる者の中では、一番カーリの狂気によって人生を狂わされたのがウォーレンなのだ。

「そうなるな」

「ふざけやがってっ!」

 ウォーレンは怒りに任せて地面を殴りつける。

 その拳の間からは赤いものが滲んでいた。

「落ち着いて、ウォーレンさん」

「…………すまん、取り乱した」

「ううん、仕方ないよ。私も神を許せない気持ちは一緒だから。絶対倒そうね」

 マヤは強化魔法で、怒りで握りしめすぎて血が出てしまっているウォーレンの手を治しながら、その手を握る。

「ああ」

「そういえば、セシリオさんはどうして私を探してたの?」

「そうだった。実はマルコスが聖剣の正しい使い方が記された古文書を見つけたらしい。それで直接説明したいからシャルルと、それからマヤを呼んでくるように言われてな」

「聖剣の正しい使い方? 今のじゃ間違ってるの?」

「さあ、俺は詳しいことは聞いてないからなんとも言えないが。それじゃあな」

 セシリオはひらひらと手をふると、そのまま近くの空間に穴を開けて外の世界に戻っていく。

「よくわからないけど、とりあえず行ってみようか」

「そうだな」

 ひとまず考えていても仕方ないので、マヤとシャルルは、マルコスのところを訪ねることにした。
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