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第7巻第1章 聖剣の扱い方

作戦会議

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 ウォーレンからオーガの伝説について聞いた翌日、マヤの屋敷にはキサラギ亜人王国の主要メンバーが集まっていた。

「――――というわけで、神が襲撃してくるまでになんとか準備を終わらせないといけないわけです」

 オリガはそう言うと投影プロジェクションで壁に映していた図を消した。

 マヤが時間停止中に産みの神から聞かされた情報と、オーガの伝わる情報をまとめ、投影プロジェクションで図解しながらの説明しくれていたのだ。

「ありがとねオリガ。というわけで質問がある人は……って、全員かあ…………まあそうなるよね。じゃあ、まずはマッシュ」

「半年後に神が攻めてくるというが、それはオーガの伝説の話だろう? 信じられるのか?」

「うーん、まあ確かにそれはそうなんだけど……」

 マヤは聖剣の力が本物だったこともあり、オーガの伝承にはある程度信憑性があると思っている。

 なのでオーガの伝承ならば、と信じてしまっていたわけだが、言われてただの伝承なので信じる根拠はない。

「それについては私がお答えします」

「ルーシェさん、なにか知ってるの?」

「はい。私が過去と現在のすべてを見ることができるのはご存知かと思います。加えて私は自分が見ることのできる過去と現在のすべての情報を元に、少し先の未来をかなりの精度で予測することができます」

「今更驚かないけど……恐ろしい能力だね」

「マルコスやセシリオに比べれば大したことはありません。それはさておき、私の未来予測でも、半年後に神が襲撃して来る可能性が極めて高いんです。ですから、オーガの伝承は間違っていないかと」

「なるほど……っていうか、ルーシェさんも神の襲来がわかってたの?」

「ええまあ。そもそも私達は魔神様が分裂して生まれた存在ですから、最初から神の存在を知っていましたし、魔神様が命がけで神を退けて下さってから時間が経っていましたから、そろそろ再び襲撃があると思っていましたから」

「その割には何もしてないような気がしたけど?」

「まあそうですね。私はマヤさんがなんとかしてくれるような気がしてましたから」

「丸投げかいっ! まあいいけど…………ってことで、原初の魔王様のお墨付きももらえたし、半年後ってところは信じていいかな、マッシュ」

「ああ、そういうことであれば半年後に向けて急ぎ準備を始めるべきだな」

「はい、じゃあ次は……ラッセルくん」

 指名されたドワーフの青年、ラッセルはその場で立ち上がる。

 立ち上がると際立つ小柄な体躯は、正直子供にしかみえない。

 しかしこう見えてラッセルはドワーフの里を治める里長なのだ。

「はい。メインで戦うメンバーとして、陛下、マッシュさん、原初の魔王のお三方、オリガさん、エメリンさん、シャルルさんということでしたが、最後のシャルルさんというのは本当に戦えるのですか? 他の方がお強いのは知っていますが、シャルルさんについてはよく知らなくて……」

「それは大丈夫だよ。聖剣を2つ揃えた状態のシャルルさんはここにいる誰より強いから」

「ここにいる誰より……」

 マヤの言葉にラッセルは部屋に集められた面々を見回す。

 ラッセル自身その強さを間近で見たことがあるマヤとマッシュ、オリガとカーサはもちろん、世界最強の存在である原初の魔王、かつて魔王を殺して回った伝説の副官エメリン、バニスター侵攻をたった一部隊で退け、世界中にその名を轟かせたSAMASサマス隊長のファムランド、同じく副長のレオノル、そしてなぜか剣神デリックと魔王ステラまでいる。

 それぞれ個人でも小国なら攻め落とせてしまいそうな面々だった。

 そんなラッセルからしてみれば化け物な面々の誰よりも強いとマヤが太鼓判を押すのだから、そのシャルルという人物はそれはそれは強いのだなとラッセルは息をのむ。

「そう。原初の魔王より、私より、ね」

「わかりました、陛下がそういうのであれば信じます」

 ラッセルは納得して椅子に座った。

 それを確認するやいなや、まだ質問していない者たちが全員一気に手を上げた。

 マヤのそれからも順番に指名していき、それぞれの質問にひとつひとつ丁寧に答えていった――――。

***

 神と戦いが半年後に迫っているという情報からルースの空間転移を使ってまで翌日に全員を集めて行われた作戦会議は、ちょうど日が沈むころになってようやく終了した。

 したはずなのだが、マヤと数人はそのまま会議室に残っていた。

「さて、オリガ、さっき出ていった男連中は誰も聞いてないね?」

「はい、魔法で探査していますが誰も聞き耳を立てたりはしていません…………で、なんでこんなことを?」

 さっきの会議で全く気にしていなかった盗み聞きの確認などをなぜ今更やらされたのかよく分からないオリガは首を傾げる。

「それはもちろん、事故で好きな人に聞かれたら困るからだよ」

 マヤの言葉に、部屋に残っていたナタリーとカーサの頬がピクリと動いた。

「今日はレオノルさん、エメリンさん、ステラさんにいろいろ教えてほしいんだよ」

「教えるって、何をですか?」

「それはもちろん、恋愛のことだよ」

「それで私が残されていたのですね、陛下」

 その美貌でいくつもの国を滅ぼしたエメリンは、納得がいったという様子で頷く。

「マヤさん、私恋愛のことはあまり得意ではないのですが……」

「マヤ、私が男の子しか好きじゃないの知ってるわよね? まともなアドバイスとかできると思う?」

 レオノルとは対照的に、エメリンとステラに2人は不安そうだった。

「まあまあ、なんやかんや言っても3人とも既婚者なわけだし、私達よりは経験値があるはずでしょ」

「マヤさん、私は幼い頃にあの人と出会って恋に落ちてから、あの人としかお付き合いしたことがないんですよ? そんな参考には……」

「いや、今さらっと流したところを教えほしいんだよ! エリーはどうやってハイメくんとお付き合いすることになって、どうやって結婚まで行ったの?」

「ど、どうして私の愛称を…………そうでした、マヤさんはあの頃の私とあの人に会ったんでしたね…………はあ、仕方ありません。娘の前でこんな話をするのは恥ずかしいのですが……」

 エメリンは珍しく頬を赤く染めながら、マヤもよく知るハイメとの出会いからハイメと恋人同士になるまで、そしてそこから結婚するまで馴れ初めをマヤたちに語って聞かせた。

 その後、マヤたちはエメリンを質問攻めにし、その次はステラにオスカーとの馴れ初めを聞き、また質問攻めにし、最後にレオノルとファムランドの馴れ初めを聞き、またまた質問攻めにした――。
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