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第6巻第1章 ドラゴンの住まう山
ドラゴンライダー
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「それで、ドラゴンライダーって何?」
「ドラゴンライダーって言うのは、ドラゴンに乗って戦う戦士のことだ」
マヤはダンカンの案内で村に向かっていた。
「いやそれよりもマヤ、大丈夫なのかあのドラゴンは……」
一番後ろを歩くウォーレンは、後ろに付いて来ているドラゴンを見て気が気でない様子だ。
「襲ってこないっぽいからそのままにしてるけど、大丈夫なんだよね、ダンカン君」
「ああ、ドラゴンはこっちが何もしなけりゃ襲ってきたりはしないからな。ただ、縄張りに勝手に入っただけでも襲ってくるから、むやみに近づかないほうがいいと思うぜ」
「ドラゴンにも縄張りとかあるんだ。でも、それならなんであの子はついてきてるの?」
「あいつは代々俺の家族と一緒に暮らしてるドラゴンだからな」
「飼ってるってこと?」
「まさか。飼ってるなんて恐れ多い。一緒に暮らしてるのさ。言うなれば家族だな」
「そういう感じなんだ。その割には散々吹き飛ばされてたみたいだけど?」
「うるせえ。ドラゴンライダーってのはな、伝説の存在なんだよ。そう簡単に成れるもんじゃねえんだ」
「伝説なの? ねえオリガ、ドラゴンライダーって聞いたことある?」
「いえ、聞いたことないですね。そもそも、ドラゴンに関する情報が少ないですから」
「だよねえ。ダンカン君、そのドラゴンライダーっていうのは、一体何者なの?」
「本当に知らないんだな。そっちの人も知らないってことは、外じゃドラゴンライダーの話はみんな知らないのか」
「一般、的では、ない。ん? カーリ? …………うん、うん、わかった」
「久しぶりだな、マヤ」
「うん? もしかしてカーリ?」
カーリとは、初代剣聖であり、現在はカーサの中に精神体として同居している人物だ。
カーサとはよく話しているようだが、カーサ以外の者と話す時は、今回のようにカーサが身体を明け渡し、カーリがカーサの体を使って話すこともある。
「その通りだ。それにしてもドランゴライダーか、懐かしい名前だ」
「なんだ、この姉ちゃん突然喋り方が変わったぞ?」
「説明すると話が長くなっちゃうからとりあえずさっきのお姉さんとは別の人が喋ってると思っといて」
「それどういう状況だよ……まあいいや、それで、お姉さんはドランゴライダーを知ってるのか?」
「まあな。まだドラゴンがこの山に集められる前のことだ。ドラゴンライダー呼ばれる、選ばれし龍の民の戦士たちがドラゴンの背に乗り、ドラゴンと華麗に連携しながら戦っていた」
「へえ、それは強そうだね」
「強かったとも。私やデリックもその頃はまだそれほど強くなかったからな。挑んでは敗れを繰り返していた」
「姉ちゃん、ドラゴンライダーと戦ったことがあるのか!? ん? でも、最後にドラゴンライダーいたのって相当昔だった気が……」
「色々あって今話しているお姉さんは、すっごく昔から来た人だから、おかしくはないと思うよ」
「そうなのか? 変わってるな、マヤの仲間は」
「あはは、そうかもね。あっ、もしかしてあれが村かな?」
マヤは前方に見えてきた柵を指差す。
「そうだ。ようこそ、俺たちの村へ。大したもてなしもできないけど、歓迎するぜ」
マヤたちは、思いがけずであったダンカンのお陰で、ゾグラス山で暮らす龍の民の村へとたどり着くことができたのだった。
***
「流石に食料もなくなってきたか……」
オスカーは持物の中を確認して呟いた。
「もう2週間も籠りっぱなしだもの。なくなり始めても仕方ないわ」
「だよね。うーん、しかしどうしたものか」
オスカーは相変わらずの景色が広がる洞窟の入口に目を向ける。
そこには、道を歩くドラゴン達や、空を飛ぶトラゴン達の姿があった。
ここ数日突破口がないかと観察していたオスカーだが、ドラゴンが怒る理由が分からず、結局動けずじまいなのだった。
(向こうから積極的に襲ってくるわけじゃない、ってことはわかったんだけど……)
オスカーが一か八かで洞窟の外に出て、ドラゴン達の前に姿を晒して確認した結果、人を見るなり襲ってくるわけではないことは確認できている。
「オスカー、なにかわかった?」
「ううん、なんにも。どうして私達が最初にドラゴン出会った時は襲われて、この前は襲われなかったのか。その違いがわかればいいのだが……」
「襲われた時はドラゴンと距離が近かったわよね? 単純に近づくと襲われるって可能性は無いのかしら?」
「そう思って、この洞穴から一番近くにいるドラゴンが、一番この洞穴に近づく地点の少し手前で待ってたことがあるんだけど」
「そんな危ないことしてたの!?」
「う、うん。ステラが寝た後にね。でね、その結果、ドラゴンは私の目の前に来たものの、何もしなかったんだよ」
「じゃあ何が基準なのかしら。何を基準に彼らは私達が自分の領域を侵したと判断するのかしらね?」
「うーん、何なんだろうね? って、ん? 自分の領域?」
オスカーはステラの言葉になにか思いつきそうな気がして、顎に手を当てて考え始める。
(最初にドラゴンに近づいた時は襲われ、遠くにいる時と、近くにいる場合でも彼らが最も近づいて来る範囲の外にいれば、襲われない)
これらの条件から導き出される結論は……。
「彼らには固有の縄張りがあって、そこに足を踏み入れたものを攻撃している?」
「オスカー?」
オスカーは思いついた仮説を検証するべく、大急ぎで外にいるドラゴンたちの行動範囲を改めて確認し、縄張りと思われる範囲を書き込んだ地図を作り始めたのだった。
「ドラゴンライダーって言うのは、ドラゴンに乗って戦う戦士のことだ」
マヤはダンカンの案内で村に向かっていた。
「いやそれよりもマヤ、大丈夫なのかあのドラゴンは……」
一番後ろを歩くウォーレンは、後ろに付いて来ているドラゴンを見て気が気でない様子だ。
「襲ってこないっぽいからそのままにしてるけど、大丈夫なんだよね、ダンカン君」
「ああ、ドラゴンはこっちが何もしなけりゃ襲ってきたりはしないからな。ただ、縄張りに勝手に入っただけでも襲ってくるから、むやみに近づかないほうがいいと思うぜ」
「ドラゴンにも縄張りとかあるんだ。でも、それならなんであの子はついてきてるの?」
「あいつは代々俺の家族と一緒に暮らしてるドラゴンだからな」
「飼ってるってこと?」
「まさか。飼ってるなんて恐れ多い。一緒に暮らしてるのさ。言うなれば家族だな」
「そういう感じなんだ。その割には散々吹き飛ばされてたみたいだけど?」
「うるせえ。ドラゴンライダーってのはな、伝説の存在なんだよ。そう簡単に成れるもんじゃねえんだ」
「伝説なの? ねえオリガ、ドラゴンライダーって聞いたことある?」
「いえ、聞いたことないですね。そもそも、ドラゴンに関する情報が少ないですから」
「だよねえ。ダンカン君、そのドラゴンライダーっていうのは、一体何者なの?」
「本当に知らないんだな。そっちの人も知らないってことは、外じゃドラゴンライダーの話はみんな知らないのか」
「一般、的では、ない。ん? カーリ? …………うん、うん、わかった」
「久しぶりだな、マヤ」
「うん? もしかしてカーリ?」
カーリとは、初代剣聖であり、現在はカーサの中に精神体として同居している人物だ。
カーサとはよく話しているようだが、カーサ以外の者と話す時は、今回のようにカーサが身体を明け渡し、カーリがカーサの体を使って話すこともある。
「その通りだ。それにしてもドランゴライダーか、懐かしい名前だ」
「なんだ、この姉ちゃん突然喋り方が変わったぞ?」
「説明すると話が長くなっちゃうからとりあえずさっきのお姉さんとは別の人が喋ってると思っといて」
「それどういう状況だよ……まあいいや、それで、お姉さんはドランゴライダーを知ってるのか?」
「まあな。まだドラゴンがこの山に集められる前のことだ。ドラゴンライダー呼ばれる、選ばれし龍の民の戦士たちがドラゴンの背に乗り、ドラゴンと華麗に連携しながら戦っていた」
「へえ、それは強そうだね」
「強かったとも。私やデリックもその頃はまだそれほど強くなかったからな。挑んでは敗れを繰り返していた」
「姉ちゃん、ドラゴンライダーと戦ったことがあるのか!? ん? でも、最後にドラゴンライダーいたのって相当昔だった気が……」
「色々あって今話しているお姉さんは、すっごく昔から来た人だから、おかしくはないと思うよ」
「そうなのか? 変わってるな、マヤの仲間は」
「あはは、そうかもね。あっ、もしかしてあれが村かな?」
マヤは前方に見えてきた柵を指差す。
「そうだ。ようこそ、俺たちの村へ。大したもてなしもできないけど、歓迎するぜ」
マヤたちは、思いがけずであったダンカンのお陰で、ゾグラス山で暮らす龍の民の村へとたどり着くことができたのだった。
***
「流石に食料もなくなってきたか……」
オスカーは持物の中を確認して呟いた。
「もう2週間も籠りっぱなしだもの。なくなり始めても仕方ないわ」
「だよね。うーん、しかしどうしたものか」
オスカーは相変わらずの景色が広がる洞窟の入口に目を向ける。
そこには、道を歩くドラゴン達や、空を飛ぶトラゴン達の姿があった。
ここ数日突破口がないかと観察していたオスカーだが、ドラゴンが怒る理由が分からず、結局動けずじまいなのだった。
(向こうから積極的に襲ってくるわけじゃない、ってことはわかったんだけど……)
オスカーが一か八かで洞窟の外に出て、ドラゴン達の前に姿を晒して確認した結果、人を見るなり襲ってくるわけではないことは確認できている。
「オスカー、なにかわかった?」
「ううん、なんにも。どうして私達が最初にドラゴン出会った時は襲われて、この前は襲われなかったのか。その違いがわかればいいのだが……」
「襲われた時はドラゴンと距離が近かったわよね? 単純に近づくと襲われるって可能性は無いのかしら?」
「そう思って、この洞穴から一番近くにいるドラゴンが、一番この洞穴に近づく地点の少し手前で待ってたことがあるんだけど」
「そんな危ないことしてたの!?」
「う、うん。ステラが寝た後にね。でね、その結果、ドラゴンは私の目の前に来たものの、何もしなかったんだよ」
「じゃあ何が基準なのかしら。何を基準に彼らは私達が自分の領域を侵したと判断するのかしらね?」
「うーん、何なんだろうね? って、ん? 自分の領域?」
オスカーはステラの言葉になにか思いつきそうな気がして、顎に手を当てて考え始める。
(最初にドラゴンに近づいた時は襲われ、遠くにいる時と、近くにいる場合でも彼らが最も近づいて来る範囲の外にいれば、襲われない)
これらの条件から導き出される結論は……。
「彼らには固有の縄張りがあって、そこに足を踏み入れたものを攻撃している?」
「オスカー?」
オスカーは思いついた仮説を検証するべく、大急ぎで外にいるドラゴンたちの行動範囲を改めて確認し、縄張りと思われる範囲を書き込んだ地図を作り始めたのだった。
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