上 下
249 / 324
第6巻第1章 ドラゴンの住まう山

ドラゴンライダー

しおりを挟む
「それで、ドラゴンライダーって何?」

「ドラゴンライダーって言うのは、ドラゴンに乗って戦う戦士のことだ」

 マヤはダンカンの案内で村に向かっていた。

「いやそれよりもマヤ、大丈夫なのかあのドラゴンは……」

 一番後ろを歩くウォーレンは、後ろに付いて来ているドラゴンを見て気が気でない様子だ。

「襲ってこないっぽいからそのままにしてるけど、大丈夫なんだよね、ダンカン君」

「ああ、ドラゴンはこっちが何もしなけりゃ襲ってきたりはしないからな。ただ、縄張りに勝手に入っただけでも襲ってくるから、むやみに近づかないほうがいいと思うぜ」

「ドラゴンにも縄張りとかあるんだ。でも、それならなんであの子はついてきてるの?」

「あいつは代々俺の家族と一緒に暮らしてるドラゴンだからな」

「飼ってるってこと?」

「まさか。飼ってるなんて恐れ多い。一緒に暮らしてるのさ。言うなれば家族だな」

「そういう感じなんだ。その割には散々吹き飛ばされてたみたいだけど?」

「うるせえ。ドラゴンライダーってのはな、伝説の存在なんだよ。そう簡単に成れるもんじゃねえんだ」

「伝説なの? ねえオリガ、ドラゴンライダーって聞いたことある?」

「いえ、聞いたことないですね。そもそも、ドラゴンに関する情報が少ないですから」

「だよねえ。ダンカン君、そのドラゴンライダーっていうのは、一体何者なの?」

「本当に知らないんだな。そっちの人も知らないってことは、外じゃドラゴンライダーの話はみんな知らないのか」

「一般、的では、ない。ん? カーリ? …………うん、うん、わかった」

「久しぶりだな、マヤ」

「うん? もしかしてカーリ?」

 カーリとは、初代剣聖であり、現在はカーサの中に精神体として同居している人物だ。

 カーサとはよく話しているようだが、カーサ以外の者と話す時は、今回のようにカーサが身体を明け渡し、カーリがカーサの体を使って話すこともある。

「その通りだ。それにしてもドランゴライダーか、懐かしい名前だ」

「なんだ、この姉ちゃん突然喋り方が変わったぞ?」

「説明すると話が長くなっちゃうからとりあえずさっきのお姉さんとは別の人が喋ってると思っといて」

「それどういう状況だよ……まあいいや、それで、お姉さんはドランゴライダーを知ってるのか?」

「まあな。まだドラゴンがこの山に集められる前のことだ。ドラゴンライダー呼ばれる、選ばれし龍の民の戦士たちがドラゴンの背に乗り、ドラゴンと華麗に連携しながら戦っていた」

「へえ、それは強そうだね」

「強かったとも。私やデリックもその頃はまだそれほど強くなかったからな。挑んでは敗れを繰り返していた」

「姉ちゃん、ドラゴンライダーと戦ったことがあるのか!? ん? でも、最後にドラゴンライダーいたのって相当昔だった気が……」

「色々あって今話しているお姉さんは、すっごく昔から来た人だから、おかしくはないと思うよ」

「そうなのか? 変わってるな、マヤの仲間は」

「あはは、そうかもね。あっ、もしかしてあれが村かな?」

 マヤは前方に見えてきた柵を指差す。

「そうだ。ようこそ、俺たちの村へ。大したもてなしもできないけど、歓迎するぜ」

 マヤたちは、思いがけずであったダンカンのお陰で、ゾグラス山で暮らす龍の民の村へとたどり着くことができたのだった。

***

「流石に食料もなくなってきたか……」

 オスカーは持物インベントリの中を確認して呟いた。

「もう2週間も籠りっぱなしだもの。なくなり始めても仕方ないわ」

「だよね。うーん、しかしどうしたものか」

 オスカーは相変わらずの景色が広がる洞窟の入口に目を向ける。

 そこには、道を歩くドラゴン達や、空を飛ぶトラゴン達の姿があった。

 ここ数日突破口がないかと観察していたオスカーだが、ドラゴンが怒る理由が分からず、結局動けずじまいなのだった。

(向こうから積極的に襲ってくるわけじゃない、ってことはわかったんだけど……)

 オスカーが一か八かで洞窟の外に出て、ドラゴン達の前に姿を晒して確認した結果、人を見るなり襲ってくるわけではないことは確認できている。

「オスカー、なにかわかった?」

「ううん、なんにも。どうして私達が最初にドラゴン出会った時は襲われて、この前は襲われなかったのか。その違いがわかればいいのだが……」

「襲われた時はドラゴンと距離が近かったわよね? 単純に近づくと襲われるって可能性は無いのかしら?」

「そう思って、この洞穴から一番近くにいるドラゴンが、一番この洞穴に近づく地点の少し手前で待ってたことがあるんだけど」

「そんな危ないことしてたの!?」

「う、うん。ステラが寝た後にね。でね、その結果、ドラゴンは私の目の前に来たものの、何もしなかったんだよ」

「じゃあ何が基準なのかしら。何を基準に彼らは私達が自分の領域を侵したと判断するのかしらね?」

「うーん、何なんだろうね? って、ん? 自分の領域?」

 オスカーはステラの言葉になにか思いつきそうな気がして、顎に手を当てて考え始める。

(最初にドラゴンに近づいた時は襲われ、遠くにいる時と、近くにいる場合でも彼らが最も近づいて来る範囲の外にいれば、襲われない)

 これらの条件から導き出される結論は……。

「彼らには固有の縄張りがあって、そこに足を踏み入れたものを攻撃している?」

「オスカー?」

 オスカーは思いついた仮説を検証するべく、大急ぎで外にいるドラゴンたちの行動範囲を改めて確認し、縄張りと思われる範囲を書き込んだ地図を作り始めたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

魔力吸収体質が厄介すぎて追放されたけど、創造スキルに進化したので、もふもふライフを送ることにしました

うみ
ファンタジー
魔力吸収能力を持つリヒトは、魔力が枯渇して「魔法が使えなくなる」という理由で街はずれでひっそりと暮らしていた。 そんな折、どす黒い魔力である魔素溢れる魔境が拡大してきていたため、領主から魔境へ向かえと追い出されてしまう。 魔境の入り口に差し掛かった時、全ての魔素が主人公に向けて流れ込み、魔力吸収能力がオーバーフローし覚醒する。 その結果、リヒトは有り余る魔力を使って妄想を形にする力「創造スキル」を手に入れたのだった。 魔素の無くなった魔境は元の大自然に戻り、街に戻れない彼はここでノンビリ生きていく決意をする。 手に入れた力で高さ333メートルもある建物を作りご満悦の彼の元へ、邪神と名乗る白猫にのった小動物や、獣人の少女が訪れ、更には豊富な食糧を嗅ぎつけたゴブリンの大軍が迫って来て……。 いつしかリヒトは魔物たちから魔王と呼ばるようになる。それに伴い、333メートルの建物は魔王城として畏怖されるようになっていく。

スキル【僕だけの農場】はチートでした~辺境領地を世界で一番住みやすい国にします~

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
旧題:スキル【僕だけの農場】はチートでした なのでお父様の領地を改造していきます!! 僕は異世界転生してしまう 大好きな農場ゲームで、やっと大好きな女の子と結婚まで行ったら過労で死んでしまった 仕事とゲームで過労になってしまったようだ とても可哀そうだと神様が僕だけの農場というスキル、チートを授けてくれた 転生先は貴族と恵まれていると思ったら砂漠と海の領地で作物も育たないダメな領地だった 住民はとてもいい人達で両親もいい人、僕はこの領地をチートの力で一番にしてみせる ◇ HOTランキング一位獲得! 皆さま本当にありがとうございます! 無事に書籍化となり絶賛発売中です よかったら手に取っていただけると嬉しいです これからも日々勉強していきたいと思います ◇ 僕だけの農場二巻発売ということで少しだけウィンたちが前へと進むこととなりました 毎日投稿とはいきませんが少しずつ進んでいきます

俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?

八神 凪
ファンタジー
ある日、バイト帰りに熱血アニソンを熱唱しながら赤信号を渡り、案の定あっけなくダンプに轢かれて死んだ 『壽命 懸(じゅみょう かける)』 しかし例によって、彼の求める異世界への扉を開くことになる。 だが、女神アウロラの陰謀(という名の嫌がらせ)により、異端な「回復魔王」となって……。 異世界ペンデュース。そこで彼を待ち受ける運命とは?

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します

黒木 楓
恋愛
 隣の部屋の住人というだけで、女子高生2人が行った異世界転移の儀式に私、アカネは巻き込まれてしまう。  どうやら儀式は成功したみたいで、女子高生2人は聖女や賢者といったスキルを手に入れたらしい。  巻き込まれた私のスキルは「料理」スキルだけど、それは手順を省略して完璧な料理が作れる凄いスキルだった。  転生者で1人だけ立場が悪かった私は、こき使われることを恐れてスキルの力を隠しながら過ごしていた。  そうしていたら「お前は不要だ」と言われて城から追い出されたけど――こうなったらもう、異世界を満喫するしかないでしょう。

フェンリルに育てられた転生幼女は『創作魔法』で異世界を満喫したい!

荒井竜馬
ファンタジー
旧題:フェンリルに育てられた転生幼女。その幼女はフェンリル譲りの魔力と力を片手に、『創作魔法』で料理をして異世界を満喫する。  赤ちゃんの頃にフェンリルに拾われたアン。ある日、彼女は冒険者のエルドと出会って自分が人間であることを知る。  アンは自分のことを本気でフェンリルだと思い込んでいたらしく、自分がフェンリルではなかったことに強い衝撃を受けて前世の記憶を思い出した。そして、自分が異世界からの転生者であることに気づく。  その記憶を思い出したと同時に、昔はなかったはずの転生特典のようなスキルを手に入れたアンは人間として生きていくために、エルドと共に人里に降りることを決める。  そして、そこには育ての父であるフェンリルのシキも同伴することになり、アンは育ての父であるフェンリルのシキと従魔契約をすることになる。  街に下りたアンは、そこで異世界の食事がシンプル過ぎることに着眼して、『創作魔法』を使って故郷の調味料を使った料理を作ることに。  しかし、その調味料は魔法を使って作ったこともあり、アンの作った調味料を使った料理は特別な効果をもたらす料理になってしまう。  魔法の調味料を使った料理で一儲け、温かい特別な料理で人助け。  フェンリルに育てられた転生幼女が、気ままに異世界を満喫するそんなお話。  ※ツギクルなどにも掲載しております。

処理中です...