転生したらただの女の子、かと思ったら最強の魔物使いだったらしいです〜しゃべるうさぎと始める異世界魔物使いファンタジー〜

上村 俊貴

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第5巻第6章 魔王オズウェル

オズウェルの城へ

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「じゃあここは、オズウェルの領地であることは間違いないんだね」

 マヤは要塞にいた兵士から聞き出した情報をまとめてそう言った。

「そういうことみたいね。それにしても、この大森林が魔王オズウェルの領地だったなんて、全然気が付かなかったわ」

 マヤたちが転移させられた場所は、予想通りどこの国にも属していない大森林だった。

 予想外だったのは、その大森林がオズウェルの領地であり、随所に要塞が建設されていたことだ。

「サミュエルさんも知らなかったの?」

「ええ。おそらくですが、私は雇われの幹部でしたから、信用されてなかったのでしょうね。魔王オズウェルと会うときはいつも各都市にある館でしたし」

「なるほど。そう考えると、あの鍵でここに飛ばされたのはある意味幸運だったのかもね」

 これは推測に過ぎないが、おそらく魔王オズウェルは、裏切りが発生した場合、自身に関する情報が外にもれないように自分の領地内に転移させ、部下たちに処理させることにしているのだろう。

 こう考えればはるか上空に転移させ、他国の侵攻などあるはずもない大森林の中に要塞をいくつも用意していることも説明がつく。

「そうね。とりあえず魔王オズウェルを探す手間は省けたわけだし」

「問題はこの森の中のどこにオズウェルがいるメインの城があるかがわからないことだけど、とりあえずこの要塞の場所が書かれた地図は見つかったから、これから見つけた要塞の場所をこの地図に書き込んでいけば……」

「要塞に囲まれた中心にオズウェルの城があるってわけね」

「そういうこと。もちろん裏をかいてくる可能性もあるかもだけど……用心深いからこそ、やっぱり王道に一番安全なところにいると思うんだよね」

 マヤは地図を閉じると、狼の魔物に跨がった。

「それじゃあ、次の要塞を探してみよう。ほらサミュエルさんも乗って乗って」

「いえ、私は身体強化で走って……」

 サミュエルは露骨に嫌そうな顔をして魔物に乗ることを拒んだ。

「何言ってるのよ。そんなことして戦闘で使い物になったら承知しないわよ?」

「しかし……」

「はいはい、駄々こねないの~」

「ちょ、ちょっと! やめっ――」

 マヤは魔物から降りてサミュエルをヒョイっと持ち上げると、再び魔物に跨がり、サミュエルを後ろに座らせて手綱を握る。

「よーしっ、しゅっぱーつ!」

 マヤがパシッと手綱を入れ、両足で魔物の腹を軽く叩く。

 同時にマヤの強化魔法をもらった狼の魔物は、雄叫びを上げると、後方の地面にクレーターを作る勢いで駆け出した。

「速すぎるって言ってるだろうがあああ!」

 マヤの細いに必死にしがみつき、敬語も忘れて叫ぶサミュエルは、早くもマヤに鞍替えしたのは間違いだったのではないか、と後悔し始めていたのだった。

***

「たぶんあれがオズウェルの城なんだろうね」

 発見した要塞を示すバツ印がたくさん書かれた地図から顔を上げたマヤは、前方にそびえる城へと目を向けた。

「それにしても、あれだけ大きいものを見えなくしちゃうなんて、そのプラシドって魔法使いは相当優秀なんだね」

「プラシドは確かに卓越した魔法使いですが、城1つを隠してしまうほど大規模な魔法を使うほどの魔力はないはずです。おそらくですが、かつて私がダニーに作らせたような、魔力を集めた水晶玉などを魔力源にして魔法を発動しているのでしょう」

「それであんなにたくさんの魔力が必要だった、ってわけね」

「でもそこまでして隠してるってことは、あそこにオズウェルがいる可能性が高いってことだよね」

 マヤの言葉に、エリーとサミュエルも頷く。

「じゃあさっさとオズウェルを片付けてプラシドにエメリスさんをもとに戻す方法を吐かせよう、と言いたいところだけど、さっそくお出迎えみたいだね」

「そうみたいね」

 城を目視で確認できる距離に来ていたマヤたちは、裏を返せばオズウェルの城からも丸見えだという事だ。

 もちろん隠れることもできたが、最悪マヤがどうにかすればいいだろう、ということでマヤたちは魔法で姿を隠したりしていなかったので、見つかって当たり前ではある。

「じゃあまずは、サミュエルさんの今の力を見せて貰おうかな」

 マヤはサミュエルに強化魔法をかける。

 サミュエルは1つ頷くと、そのままマヤたちに迫ってきていたサミュエルの城の兵士たちの方へと駆け出した。

「めちゃくちゃ速かったわね……なんであの速度で走れるくせに、魔物に乗ってたときあんなに騒いでたのかしら?」

「まあ自分で走るのと何かに乗って速く移動するのは違うんじゃない?」

「その通りです、エリー様。それと、こちらに向かっていた兵たちは片付けました」

「早いね。殺してないよね?」

「…………そういうご命令だったようですので」

 サミュエルが顔をしかめる。

 理由は簡単で、マヤがサミュエルを、敵兵を殺せないように操っていたからだ。

 殺そうと思ったのに殺せなかったので不満だったのだろう。

「よろしい。しばらくはこの調子でサミュエルさんに戦ってもらいながら行こうか」

 マヤたちはオズウェルの城の方へと歩き出した――。

***

「こんにちはー」

 マヤは城中の兵士をサミュエルに叩きのめしてもらいながら、城の最上階にあるサミュエルの部屋らしき場所にたどり着くなり、ノックもなしにドアを開け呑気な挨拶とともに勝手に部屋の中に入った。
   
「誰だ貴様は!? それに後ろにいるのは……サミュエル……お前か……」

「ご無沙汰しております」

 サミュエルはかつての主に向けて、大げさに敬意を払って頭を下げる。

「どうやって私の魔法陣から逃れたのだ」

「新たな主に助けていただきました」

「どうもどうも、サミュエルさんの新しい主のマヤと言います。よろしくね。それと、オズウェルさんの魔法陣じゃないでしょ? プラシドって人が作ったんでしょ、あの魔法陣」

「うるさいガキだ。おいプラシド、あれを発動しろ」

『くくっ、承知いたしました。いやー、流石オズウェル様、容赦ね~』

 姿が見えないプラシドと思われる声は、どこか人を小馬鹿にする雰囲気を感じさせ、あまり心地よいものではなかった。

「いいから早くやれ」

『へいへい、言われなくても』

 次の瞬間、マヤたちの足元に魔法陣が現れ光を放つ。

「ふーん、なかなかやるじゃない」

「なんの魔法なの、これ」

「これはドラゴンの顎を召喚する魔法だと思うわ。このままだと食べられるわね」

「へえ……って、え? それってやばいんじゃないの?」

「そうですね。ドラゴンの牙には防御魔法を無効化する力があると聞きますし」

「いやそれじゃあ感心してる場合じゃないじゃん? どうする? 私がなんとかしようか?」

 マヤは剣に手をかけてエリーに尋ねる。

 マヤがその気になれば魔法が発動する前に、床ごと魔法陣を粉々に切り刻むこともできる。

「大丈夫よ。私に任せて頂戴」

 エリーは自信満々に笑うと、床に現れたものと同じ大きさの魔法陣を自身の周囲に展開する。

「この魔法陣、乗っ取らせてもらうわ!」
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