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第5巻第3章 過去の世界へ
シャルルが隠していること
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「シャルルさーん!」
シャルルが、布で顔を覆いマントで体を隠した謎の強者が去った方向を見て呆然としていると、背後からマヤの声が聞こえて来た。
「マヤ! どこにいたんだお前! 心配したんだぞ!」
「ごめんごめん。他の人と一緒に向こうの避難所にいたんだよ」
「避難所?」
「うん。なんか布で顔を覆った変わった人が用意してくれたらしいよ」
「そんなことまで……」
自分が一部の盗賊と戦っている間に、あの人物は他の盗賊を全て片付けただけでなく、避難所まで用意して去っていたのか、とシャルルが驚くのを見てマヤはほっと胸をなでおろす。
(よかったー、ごまかせたっぽい)
ちなみに避難所があったのもそれを顔を隠した謎の人物もといマヤが用意したのも本当だ。
ただし、当然だがマヤは避難所を用意した後、外で戦っていたわけで、避難所にいたという事実はない。
「それより、シャルルさんこそ無事なの? ずっと戦ってたんでしょう?」
「ん? ああ、私ならこの通り、特に大きな怪我もない」
「よかった。そうだ、あっちで炊き出しやってるみたいだから行こうよ。おなかすいちゃった」
マヤのその言葉を裏付けるように、マヤのお腹がくきゅうぅ、という可愛らしい音を立てる。
「ははは、こんな状況なのに、マヤは相変わらずだな」
「う~、うるさいよ! ほら、早く行こう!」
マヤは顔を真っ赤にしてシャルルの手を引っ張っていったのだった。
***
盗賊の襲撃から数日経ったある日の深夜。
最初に瓦礫の撤去が行われた街の広場に、激しく動く人影があった。
「はっ、ふんっ、はああああっ!」
月明かりに照らされた広場に、剣を振り回す風切り音と、シャルルの気合いの声が響き渡る。
夜も遅いため声は抑えているが、それでも十分な迫力だった。
それだけでシャルルが平均以上の剣士だということはわかるが、当の本人は納得がいかないのか大ききため息をついた。
「違う、あの人物はもっと鋭い太刀筋だったはずだ」
シャルルは盗賊たちの襲撃の後、謎の人物に気絶させられた盗賊たちの状態を可能な限り確認していた。
盗賊たちに加えられた攻撃は見事の一言だった。
どの盗賊たちも、的確に一撃で気絶させられており、盗賊たちは受け止めることもかわすこともできていなかったのだ。
「私に必要なのは、あの人物のような圧倒的な力なのだ……っ」
シャルルはしばらく自分の手をじっと見つめた後、再び剣を振り始めた。
そのまま数時間、一人延々と剣を振り続けたシャルルは、空がやや白み始めた頃になってようやく広場から宿の方へと去っていった。
シャルルが去った直後、広場に別の人影が現れる。
「ふわああああぁぁぁあ……シャルルさん、流石に頑張り過ぎじゃないかなあ」
大きなあくびをしながらマヤはシャルルが去っていった方に目を向ける。
「なにか訳ありっぽいけど、聞いても教えてくれないだろうなあ」
マヤはもう一度出そうになったあくびを噛み殺すと、シャルルより先に宿に戻って寝たふりをするために大きく跳躍して屋根を上を駆け出したのだった。
***
「結局かなりの間手伝ちゃったね」
盗賊の襲撃から1ヶ月後、マヤとシャルルはようやく街を出発していた。
「仕方ないさ、困ったときはお互い様だろう?」
「そうだね。それになんやかんやで色々良くしもらったし」
マヤはカバンにしまった袋をカバンの上からポンポンと叩く。
そこにはたくさんの金貨が入っていた。
復興を手伝っている間、マヤとシャルルの宿代はタダになっており、その上作業に応じてお金も貰えていたのだ。
当然通常時よりは低い金額だったようだが、1ヶ月も働けばそれなりの額にはなる。
「それでマヤ、お前の父親らしき人物がいるというのは、こっち方向に進んで3つ先の街でいいんだな?」
「うん、そうだね。あくまで私が聞いている私のお父さんと特徴の似てる人がいるらしい、ってだけだどね」
「そういえば聞いていなかったが、マヤの父親はどんな人物なんだ?」
「へ? えーっとそれは……」
正直そこら辺のことを全く考えていなかったマヤは、とっさに何も思いつかず言葉に詰まってしまう。
しかし幸いなことに、マヤのそんな様子をシャルルが都合よく誤解してくれた。
「……いや、すまない。言いにくいならいいんだな。そうだよな、父親なんてろくなもんじゃない」
「シャルルさん? 別に私のお父さんは……」
何だかおかしな気配を感じたマヤが訂正しようとするが、シャルルは聞く耳を持たず話し始める。
「いいんだ、みなまで言うな。おおかた浮気を繰り返して妻に捨てられたのだろう? 父親などそんなものだ」
「いや極端だね!? 別にそうじゃないお父さんもたくさんいると思うけど……」
「そんなはずはない! 父親というのは、いつもいつもいつもいつも! 母と私をおいて他の女のところに行ってばかり! あんな男、私は父親だとは認めんぞ!」
「完全にシャルルさんの話になってるじゃん……えーっと、じゃあもしかして、シャルルさんはそんなお父さんがいやで家を出たとかそんな感じなの?」
「そういうわけじゃ…………違うな、その通りだ。父親に反発して私は家出したんだ」
「そうなんだ。いつか分かり会えるといいね」
何の気なしに言ったマヤの言葉に、シャルルの表情が曇る。
「それは……無理だな」
あまりにも断定的なシャルルの物言いに、マヤは首を傾げた。
「どういうこと?」
「私の父親はもうこの世にはいない」
「え?」
「あんな男父親じゃない、と思っていたのにな……最期は私を守って死んだんだ、あの男は、私の父親はな」
シャルルはここではない何処か遠くを見るようにして、つぶやくように言った。
「それってどういう……」
マヤが事情を聞こうとすると、シャルルはハッとした様子でマヤから顔をそらす。
「話しすぎた。忘れてくれると助かる」
シャルルは一方的にそう言うと、それきり黙ってしまう。
(毎晩毎晩やってた訓練と、なにか関係があるんだろうけど、流石に今はこれ以上教えてくれないか)
マヤはそれ以上を詮索するのを諦め、シャルル同様黙って歩き始めたのだった。
***
「着いたー!」
マヤはようやく見えてきた次の街に、両手を上げ喜ぶと道端に座り込む。
過去の世界の来てからというもの、今までいかにシロちゃんに助けられていたか、ということをマヤは改めて感じていた。
「おいマヤ、まだ着いてはいないぞ?」
「それはわかってるけど、流石にあの距離なら今日中には着くでしょ? だからちょっと休もう?」
「全く、仕方のないやつだ」
シャルルはマヤの近くに荷物を下ろすと、マヤの隣に座り込む。
マヤに呆れた様子のシャルルだったが、シャルルもまた街が見えたことで油断していたのだろう。
次の瞬間、近くの森から飛び出して来た魔物たちにマヤたちは取り囲まれていた。
「しまった!」
総勢10匹ほどの狼の魔物に囲まれたシャルルは、慌てて剣の抜く。
「マヤ! 何をボケっとしてる! 早く立て!」
「えー、大丈夫だって。まあ見ててよ。強化!」
マヤが呪文を唱えた瞬間、マヤの手から光の粒子が溢れ出す。
「これは一体……」
驚くシャルル目の前で、マヤの手から溢れ出した光の粒子が次々と魔物たちへと吸い込まれていった。
シャルルが、布で顔を覆いマントで体を隠した謎の強者が去った方向を見て呆然としていると、背後からマヤの声が聞こえて来た。
「マヤ! どこにいたんだお前! 心配したんだぞ!」
「ごめんごめん。他の人と一緒に向こうの避難所にいたんだよ」
「避難所?」
「うん。なんか布で顔を覆った変わった人が用意してくれたらしいよ」
「そんなことまで……」
自分が一部の盗賊と戦っている間に、あの人物は他の盗賊を全て片付けただけでなく、避難所まで用意して去っていたのか、とシャルルが驚くのを見てマヤはほっと胸をなでおろす。
(よかったー、ごまかせたっぽい)
ちなみに避難所があったのもそれを顔を隠した謎の人物もといマヤが用意したのも本当だ。
ただし、当然だがマヤは避難所を用意した後、外で戦っていたわけで、避難所にいたという事実はない。
「それより、シャルルさんこそ無事なの? ずっと戦ってたんでしょう?」
「ん? ああ、私ならこの通り、特に大きな怪我もない」
「よかった。そうだ、あっちで炊き出しやってるみたいだから行こうよ。おなかすいちゃった」
マヤのその言葉を裏付けるように、マヤのお腹がくきゅうぅ、という可愛らしい音を立てる。
「ははは、こんな状況なのに、マヤは相変わらずだな」
「う~、うるさいよ! ほら、早く行こう!」
マヤは顔を真っ赤にしてシャルルの手を引っ張っていったのだった。
***
盗賊の襲撃から数日経ったある日の深夜。
最初に瓦礫の撤去が行われた街の広場に、激しく動く人影があった。
「はっ、ふんっ、はああああっ!」
月明かりに照らされた広場に、剣を振り回す風切り音と、シャルルの気合いの声が響き渡る。
夜も遅いため声は抑えているが、それでも十分な迫力だった。
それだけでシャルルが平均以上の剣士だということはわかるが、当の本人は納得がいかないのか大ききため息をついた。
「違う、あの人物はもっと鋭い太刀筋だったはずだ」
シャルルは盗賊たちの襲撃の後、謎の人物に気絶させられた盗賊たちの状態を可能な限り確認していた。
盗賊たちに加えられた攻撃は見事の一言だった。
どの盗賊たちも、的確に一撃で気絶させられており、盗賊たちは受け止めることもかわすこともできていなかったのだ。
「私に必要なのは、あの人物のような圧倒的な力なのだ……っ」
シャルルはしばらく自分の手をじっと見つめた後、再び剣を振り始めた。
そのまま数時間、一人延々と剣を振り続けたシャルルは、空がやや白み始めた頃になってようやく広場から宿の方へと去っていった。
シャルルが去った直後、広場に別の人影が現れる。
「ふわああああぁぁぁあ……シャルルさん、流石に頑張り過ぎじゃないかなあ」
大きなあくびをしながらマヤはシャルルが去っていった方に目を向ける。
「なにか訳ありっぽいけど、聞いても教えてくれないだろうなあ」
マヤはもう一度出そうになったあくびを噛み殺すと、シャルルより先に宿に戻って寝たふりをするために大きく跳躍して屋根を上を駆け出したのだった。
***
「結局かなりの間手伝ちゃったね」
盗賊の襲撃から1ヶ月後、マヤとシャルルはようやく街を出発していた。
「仕方ないさ、困ったときはお互い様だろう?」
「そうだね。それになんやかんやで色々良くしもらったし」
マヤはカバンにしまった袋をカバンの上からポンポンと叩く。
そこにはたくさんの金貨が入っていた。
復興を手伝っている間、マヤとシャルルの宿代はタダになっており、その上作業に応じてお金も貰えていたのだ。
当然通常時よりは低い金額だったようだが、1ヶ月も働けばそれなりの額にはなる。
「それでマヤ、お前の父親らしき人物がいるというのは、こっち方向に進んで3つ先の街でいいんだな?」
「うん、そうだね。あくまで私が聞いている私のお父さんと特徴の似てる人がいるらしい、ってだけだどね」
「そういえば聞いていなかったが、マヤの父親はどんな人物なんだ?」
「へ? えーっとそれは……」
正直そこら辺のことを全く考えていなかったマヤは、とっさに何も思いつかず言葉に詰まってしまう。
しかし幸いなことに、マヤのそんな様子をシャルルが都合よく誤解してくれた。
「……いや、すまない。言いにくいならいいんだな。そうだよな、父親なんてろくなもんじゃない」
「シャルルさん? 別に私のお父さんは……」
何だかおかしな気配を感じたマヤが訂正しようとするが、シャルルは聞く耳を持たず話し始める。
「いいんだ、みなまで言うな。おおかた浮気を繰り返して妻に捨てられたのだろう? 父親などそんなものだ」
「いや極端だね!? 別にそうじゃないお父さんもたくさんいると思うけど……」
「そんなはずはない! 父親というのは、いつもいつもいつもいつも! 母と私をおいて他の女のところに行ってばかり! あんな男、私は父親だとは認めんぞ!」
「完全にシャルルさんの話になってるじゃん……えーっと、じゃあもしかして、シャルルさんはそんなお父さんがいやで家を出たとかそんな感じなの?」
「そういうわけじゃ…………違うな、その通りだ。父親に反発して私は家出したんだ」
「そうなんだ。いつか分かり会えるといいね」
何の気なしに言ったマヤの言葉に、シャルルの表情が曇る。
「それは……無理だな」
あまりにも断定的なシャルルの物言いに、マヤは首を傾げた。
「どういうこと?」
「私の父親はもうこの世にはいない」
「え?」
「あんな男父親じゃない、と思っていたのにな……最期は私を守って死んだんだ、あの男は、私の父親はな」
シャルルはここではない何処か遠くを見るようにして、つぶやくように言った。
「それってどういう……」
マヤが事情を聞こうとすると、シャルルはハッとした様子でマヤから顔をそらす。
「話しすぎた。忘れてくれると助かる」
シャルルは一方的にそう言うと、それきり黙ってしまう。
(毎晩毎晩やってた訓練と、なにか関係があるんだろうけど、流石に今はこれ以上教えてくれないか)
マヤはそれ以上を詮索するのを諦め、シャルル同様黙って歩き始めたのだった。
***
「着いたー!」
マヤはようやく見えてきた次の街に、両手を上げ喜ぶと道端に座り込む。
過去の世界の来てからというもの、今までいかにシロちゃんに助けられていたか、ということをマヤは改めて感じていた。
「おいマヤ、まだ着いてはいないぞ?」
「それはわかってるけど、流石にあの距離なら今日中には着くでしょ? だからちょっと休もう?」
「全く、仕方のないやつだ」
シャルルはマヤの近くに荷物を下ろすと、マヤの隣に座り込む。
マヤに呆れた様子のシャルルだったが、シャルルもまた街が見えたことで油断していたのだろう。
次の瞬間、近くの森から飛び出して来た魔物たちにマヤたちは取り囲まれていた。
「しまった!」
総勢10匹ほどの狼の魔物に囲まれたシャルルは、慌てて剣の抜く。
「マヤ! 何をボケっとしてる! 早く立て!」
「えー、大丈夫だって。まあ見ててよ。強化!」
マヤが呪文を唱えた瞬間、マヤの手から光の粒子が溢れ出す。
「これは一体……」
驚くシャルル目の前で、マヤの手から溢れ出した光の粒子が次々と魔物たちへと吸い込まれていった。
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