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第4巻第2章 諜報部隊結成
パコとエマとの再会
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(さっきのは一体……)
マヤは倒れたカーサに駆け寄りながら考える。
(カーサは前から強いけど、あれは今までのカーサとは別次元だった。それこそベルフェゴールなんかよりも全然強かった、と思う)
マヤは戦闘の専門家ではないため、カーサが先程やってのけた絶技がどれだけ凄いことなのかということは、正直なところよくわからない。
ただ、カーサが魔人の襲撃に気がついた時点で自分へ強化魔法をかけていたマヤが、全くと言っていいほど認識できない攻撃であったことは確かだ。
(あのレベルの剣技は、それこそこの前戦った剣神さんくらいしか知らないんだけど、カーサにそんな力が秘められたのかな?)
もちろん、マヤがカーサの本気を見たことが無かっただけである可能性や、ここ数日のうちにカーサの才能が開花したという可能性もなくはない。
しかし、マヤは直感的にそのあたりの可能性を排除していた。
(何より気になるのは、あの言葉遣いというか話し方だよね)
カーサは怒っていようが悲しんでいようが楽しんでいようが、例外なくどこかとぎれとぎれにゆっくりと話す。
声だって身体の割には小さいと言わざるを得ない感じだ。
それが大きな身体に抜群のプロポーションと整った顔立ち、というカーサの外見とのギャップを生み出しておりカーサの可愛いところだとマヤは思っている。
しかし、先程のカーサははっきりと響き渡る声で淀みなくスラスラと話していた。
(まるで別の人格が乗り移ったみたいな……まさか!)
マヤはカーサが操られていた可能性に思い至り、自身への強化魔法を強めると、周囲の気配を探った。
「そこに誰かいるの!」
マヤは気配の感じ取った方向に誰何するが、その頃にはすでに気配は遠くに離れていた。
「なんで近くに誰かいるのに気が付かなかったんだろう?」
マヤは強化魔法と魔石由来の魔力が見える魔眼以外はこれと言って能力を持っていないが、カーサを操れるほどの魔法使いが近くにいれば、その魔力を感じることくらいはできる。
なぜなら、剣技を通して精神も鍛えるオークの剣士の、しかも里一番の使い手に贈られる剣聖の称号を持つカーサを操るということは、それ相応の魔力を持った魔法使いであるはずだからだ。
そして、強大な魔力を感じ取ることは、魔力を持つものなら誰でもできる。
(本当に、さっきのは何だったんだろう?)
操った上で自分がけしかけた魔人を倒させたようにしか見えない謎の人物の行動に、マヤは何がなんだかわからず首を傾げることしかできなかった。
***
「姉ちゃん!」
パコとエマが通う小中高が一緒になった学校の校門で待っていると、授業を終えたパコが走ってきた。
そのままカーサの足元に飛びつく。
「久し、ぶり。元気、だった?」
「ああ、王様のおかげで学校にも行けるし、ご飯だってお腹いっぱい食べられるんだぜ」
「ふふっ、良かった、ね」
「ああ! おかげでエマもすっかり元気になったんだ」
「そう、なんだ。それは、良かっ、たね」
カーサは自分のことにように喜びながらパコの頭をよしよしと撫でる。
撫でられたパコも、久しぶりにカーサに会えたことが嬉しいのか、目を細めて気持ち良さそうにしていた。
「おっ、マヤさんも一緒だったのか。久しぶり!」
「うん、久しぶり! それにしてもパコ君、そうやってちゃんとした格好してるとなかなかいい男じゃん」
パコは今、中学校の制服を着ていた。
マヤが日本の学校を参考にしたため、女子はセーラー服とスカート、男子は襟付きのシャツとブレザーにスラックスである。
「そ、そうかな?」
そう言ってパコは、パコを褒めたマヤではなく、カーサの方を向いて襟を整える。
「うん、かっこ、いいよ。似合ってる」
いつも通り無表情なカーサだったが、よく見るとその頬はわずかに紅潮している。
「あ、ありがとう……」
カーサに褒められたパコは、こちらはカーサとは対照的にわかりやすく顔を真っ赤にしていた。
「ねえねえマヤお姉さん、どうしてお兄ちゃんはお風呂入ったみたいに真っ赤なんですか?」
「それはねえ、パコ君がカーサお姉ちゃんのことを――むぐっ」
「こらっ、エマ! マヤさんに変なこと聞くんじゃない!」
急いでマヤに駆け寄ってその口を塞いだパコは、いつの間にやら現れてマヤに質問していた妹のエマをたしなめた。
「もごごっ、ぷはっ……パコ君って意外と力強いんだね。それと、久しぶりだねエマちゃん」
「久しぶり、マヤお姉さん。ねえねえ、エマもかっこいいかな~?」
先程のマヤたちの会話を聞いていたのか、エマは制服姿を見せつけるようにくるりと回ってみせる。
エマが通っている小学校の制服は、白いセーラーワンピースに濃紺のベレー帽といった格好だ。
「うんうんかっこいいよ。どちらかというと可愛いだけど」
「ふふん、そうでしょー、かわいいでしょー」
えっへんと胸を張るエマを見ていると、マヤとカーサは思わず笑顔になってしまう。
「さて、それじゃあ2人とも会えたし、とりあえずどこかに移動しようか。前に泊まってた宿でもいいけど……」
「それなら俺たちの家に招待するよ。王様のおかげで結構いい部屋に住ませてもらってるんだぜ?」
「そうなんだ。それじゃあお言葉に甘えてそうさせてもらおうかな」
「おう、任せとけ」
マヤが笑顔で言うと、パコは自慢げに言ってエマの手をとって歩き出す。
その後をついて歩き始めると、カーサがマヤの隣にやってきた。
「マヤさんの、ことは、まだ、黙ってるの?」
カーサは前を歩く2人には聞こえないように小さな声でマヤに尋ねる。
「あー、うん。2人には変に遠慮して欲しくないしね」
同じ小声で返すマヤに、カーサはゆっくりと頷いた。
「わかった。内緒に、しとく」
もちろん何をかといえばマヤが国王であるということだ。
ちなみにマヤがパコと話し始めてからというもの、学校の教師らしき大人のドワーフたちが戦々恐々としながらこちらの様子を伺っていた。
おそらくなにかしでかす前にどうにかしてパコとエマをマヤから引き離そうとしていたのだろうが、マヤはそれをジェスチャーで制していたのだ。
「どうしたんだ? カーサ姉ちゃん、マヤさん」
「ううん、なんでもないよ。それにしても楽しみだなあ、パコ君とエマちゃんの家」
マヤはエマの横に移動すると、その小さくて可愛らしい手と手を繋ぐ。
それを見ていたカーサは、反対側に移動するとパコと手をつないだ。
「どうしたんだよ2人とも、流石にちょっと恥ずかしいんだけど……」
「エマはマヤお姉さんと手を繋げて嬉しいよ!」
「エマが嬉しいならいいけど……」
「パコは、私と、手繋ぐの、いや?」
「へっ? いっ、いやっ! 嫌なんかじゃねーけどっ」
「そう、なら、良かった」
またもや真っ赤になったパコに、エマは首を傾げる。
4人は賑々しくパコとエマの家へと歩いていったのだった。
マヤは倒れたカーサに駆け寄りながら考える。
(カーサは前から強いけど、あれは今までのカーサとは別次元だった。それこそベルフェゴールなんかよりも全然強かった、と思う)
マヤは戦闘の専門家ではないため、カーサが先程やってのけた絶技がどれだけ凄いことなのかということは、正直なところよくわからない。
ただ、カーサが魔人の襲撃に気がついた時点で自分へ強化魔法をかけていたマヤが、全くと言っていいほど認識できない攻撃であったことは確かだ。
(あのレベルの剣技は、それこそこの前戦った剣神さんくらいしか知らないんだけど、カーサにそんな力が秘められたのかな?)
もちろん、マヤがカーサの本気を見たことが無かっただけである可能性や、ここ数日のうちにカーサの才能が開花したという可能性もなくはない。
しかし、マヤは直感的にそのあたりの可能性を排除していた。
(何より気になるのは、あの言葉遣いというか話し方だよね)
カーサは怒っていようが悲しんでいようが楽しんでいようが、例外なくどこかとぎれとぎれにゆっくりと話す。
声だって身体の割には小さいと言わざるを得ない感じだ。
それが大きな身体に抜群のプロポーションと整った顔立ち、というカーサの外見とのギャップを生み出しておりカーサの可愛いところだとマヤは思っている。
しかし、先程のカーサははっきりと響き渡る声で淀みなくスラスラと話していた。
(まるで別の人格が乗り移ったみたいな……まさか!)
マヤはカーサが操られていた可能性に思い至り、自身への強化魔法を強めると、周囲の気配を探った。
「そこに誰かいるの!」
マヤは気配の感じ取った方向に誰何するが、その頃にはすでに気配は遠くに離れていた。
「なんで近くに誰かいるのに気が付かなかったんだろう?」
マヤは強化魔法と魔石由来の魔力が見える魔眼以外はこれと言って能力を持っていないが、カーサを操れるほどの魔法使いが近くにいれば、その魔力を感じることくらいはできる。
なぜなら、剣技を通して精神も鍛えるオークの剣士の、しかも里一番の使い手に贈られる剣聖の称号を持つカーサを操るということは、それ相応の魔力を持った魔法使いであるはずだからだ。
そして、強大な魔力を感じ取ることは、魔力を持つものなら誰でもできる。
(本当に、さっきのは何だったんだろう?)
操った上で自分がけしかけた魔人を倒させたようにしか見えない謎の人物の行動に、マヤは何がなんだかわからず首を傾げることしかできなかった。
***
「姉ちゃん!」
パコとエマが通う小中高が一緒になった学校の校門で待っていると、授業を終えたパコが走ってきた。
そのままカーサの足元に飛びつく。
「久し、ぶり。元気、だった?」
「ああ、王様のおかげで学校にも行けるし、ご飯だってお腹いっぱい食べられるんだぜ」
「ふふっ、良かった、ね」
「ああ! おかげでエマもすっかり元気になったんだ」
「そう、なんだ。それは、良かっ、たね」
カーサは自分のことにように喜びながらパコの頭をよしよしと撫でる。
撫でられたパコも、久しぶりにカーサに会えたことが嬉しいのか、目を細めて気持ち良さそうにしていた。
「おっ、マヤさんも一緒だったのか。久しぶり!」
「うん、久しぶり! それにしてもパコ君、そうやってちゃんとした格好してるとなかなかいい男じゃん」
パコは今、中学校の制服を着ていた。
マヤが日本の学校を参考にしたため、女子はセーラー服とスカート、男子は襟付きのシャツとブレザーにスラックスである。
「そ、そうかな?」
そう言ってパコは、パコを褒めたマヤではなく、カーサの方を向いて襟を整える。
「うん、かっこ、いいよ。似合ってる」
いつも通り無表情なカーサだったが、よく見るとその頬はわずかに紅潮している。
「あ、ありがとう……」
カーサに褒められたパコは、こちらはカーサとは対照的にわかりやすく顔を真っ赤にしていた。
「ねえねえマヤお姉さん、どうしてお兄ちゃんはお風呂入ったみたいに真っ赤なんですか?」
「それはねえ、パコ君がカーサお姉ちゃんのことを――むぐっ」
「こらっ、エマ! マヤさんに変なこと聞くんじゃない!」
急いでマヤに駆け寄ってその口を塞いだパコは、いつの間にやら現れてマヤに質問していた妹のエマをたしなめた。
「もごごっ、ぷはっ……パコ君って意外と力強いんだね。それと、久しぶりだねエマちゃん」
「久しぶり、マヤお姉さん。ねえねえ、エマもかっこいいかな~?」
先程のマヤたちの会話を聞いていたのか、エマは制服姿を見せつけるようにくるりと回ってみせる。
エマが通っている小学校の制服は、白いセーラーワンピースに濃紺のベレー帽といった格好だ。
「うんうんかっこいいよ。どちらかというと可愛いだけど」
「ふふん、そうでしょー、かわいいでしょー」
えっへんと胸を張るエマを見ていると、マヤとカーサは思わず笑顔になってしまう。
「さて、それじゃあ2人とも会えたし、とりあえずどこかに移動しようか。前に泊まってた宿でもいいけど……」
「それなら俺たちの家に招待するよ。王様のおかげで結構いい部屋に住ませてもらってるんだぜ?」
「そうなんだ。それじゃあお言葉に甘えてそうさせてもらおうかな」
「おう、任せとけ」
マヤが笑顔で言うと、パコは自慢げに言ってエマの手をとって歩き出す。
その後をついて歩き始めると、カーサがマヤの隣にやってきた。
「マヤさんの、ことは、まだ、黙ってるの?」
カーサは前を歩く2人には聞こえないように小さな声でマヤに尋ねる。
「あー、うん。2人には変に遠慮して欲しくないしね」
同じ小声で返すマヤに、カーサはゆっくりと頷いた。
「わかった。内緒に、しとく」
もちろん何をかといえばマヤが国王であるということだ。
ちなみにマヤがパコと話し始めてからというもの、学校の教師らしき大人のドワーフたちが戦々恐々としながらこちらの様子を伺っていた。
おそらくなにかしでかす前にどうにかしてパコとエマをマヤから引き離そうとしていたのだろうが、マヤはそれをジェスチャーで制していたのだ。
「どうしたんだ? カーサ姉ちゃん、マヤさん」
「ううん、なんでもないよ。それにしても楽しみだなあ、パコ君とエマちゃんの家」
マヤはエマの横に移動すると、その小さくて可愛らしい手と手を繋ぐ。
それを見ていたカーサは、反対側に移動するとパコと手をつないだ。
「どうしたんだよ2人とも、流石にちょっと恥ずかしいんだけど……」
「エマはマヤお姉さんと手を繋げて嬉しいよ!」
「エマが嬉しいならいいけど……」
「パコは、私と、手繋ぐの、いや?」
「へっ? いっ、いやっ! 嫌なんかじゃねーけどっ」
「そう、なら、良かった」
またもや真っ赤になったパコに、エマは首を傾げる。
4人は賑々しくパコとエマの家へと歩いていったのだった。
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