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第4巻第2章 諜報部隊結成
責任者決め
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「ということで、前から話してる諜報部隊なんだけど、私が信頼できる人物から極秘に教えてもらった情報と、バニスター将国のマノロ将軍に提出させた資料によると、こんな感じの規模でこんな感じの組織になるらしい」
マヤは自分の屋敷の会議室に集められたキサラギ亜人王国の各責任者たちに、大きな紙に書かれた各組織の人数とそれらの関係が書かれた組織図を示した。
ちなみに会議に集められた責任者達のうち、マヤに近しいオリガやマッシュなどは、マヤのいう信頼できる人物というのが、おそらくジョン王子なんだろうな、と容易に推測できてしまったが、マヤが伏せているのであえて言及することはしなかった。
マヤは、ドワーフに魔力を流すと光る石と、穴の空いた鉄の筒で作ってもらったレーザーポインターで該当箇所を示しながら説明を続けていく。
「ざっくり説明すると、管理部門が50人、諜報部門が500人、情報操作部門が250人、工作部門が200人くらいの合計1000人くらいがいれば大丈夫なんじゃないかなって思ってる。はい、ファムランド」
マヤは手を挙げたファムランドを指名する。
「それは俺たちSAMASからも人を出さねえといけねえのか?」
ファムランドは明言していないが、その口ぶりは言外にSAMASにはそんな余裕はない、と言っていた。
確かに少数精鋭のSAMASはたとえ数人でも抜けてしまえば大打撃だろう。
マヤは大きく首を横に振ってファムランドの質問に答える。
「ううん、SAMASから出してもらう予定はないよ。SAMASが人手不足なのはわかってるし、あそこまで鍛え上げた精鋭部隊を諜報部隊に回しちゃうのはもったいないしね」
「それは助かる。あいつらもようやく1人前の戦士になってきたところだからな、今取られちゃかなわねえ」
「ほかに質問は? はい、ジョセフ」
「SAMASから人を出さないということですが、そうなると他の一般兵から希望者を募る、ということでしょうか?」
マヤとファムランドの話を聞いてすぐにこの質問ができるあたり、なんやかんや言ってもジョセフも優秀だよな、とマヤは思った。
ベルフェゴールに操られていたとはいえ、流石に何年もエルフの村の村長をやっていただけのことはある。
「そうだね、まずはそうしようかと思ってる。もちろん諜報部門は人間の国に潜入してこっちに情報を送ってもらう人がたくさん必要だし、人間の国に潜入するとなると人間の方が都合がいいから、バニスターの元捕虜兵とかにも希望を募るつもりだけどね。他には?」
マヤは誰も挙手していないのを確認して、続きを説明し始めた。
「じゃあ続けるね。とりあえず人員募集とかその後の訓練とかはおいおい考えるとして、今回は諜報部隊の責任者を決めたいと思うんだよね。その上でその責任者を中心に検討を進めてほしい。と言っても、私が勝手に候補を決めてきちゃったんだけど。入ってきてくれるかな?」
マヤがドアの向こうに声をかけると、ゆっくりとドアが開き、小柄な2つの人影が会議室に入ってきた。
入ってきたのは、まだ幼さの残る顔立ちのドワーフの青年と肉感的な体つきをしたドワーフの美女だった。
「紹介するね、こちらドワーフの里長代理のラッセルくんと秘書のナタリーさん」
「ラッ、ラッセルと申します! よ、よろっ、よろしくお願いします」
「もう、お孫様ったら、落ち着いて下さい……。はじめまして、ナタリーです。お孫様共々よろしくお願いします」
「ありがとね2人共。それで、私としてはこの2人の諜報部隊の責任者にしたいと思ってるんだよね。はい、長老さん」
「聖女様、いい加減名前を覚えてくだされ、私の名前はウォルターです」
マヤに指名されたカーサの故郷の村の長老もといウォルターがマヤにお願いをする。
マヤがこれをお願いされるのはもう何度目かわからないのだが、どうしてもとっさに長老と呼んでしまうのだった。
「ごめんごめん、それで質問はなにかなウォルターさん」
「なぜ責任者がドワーフ2人なのでしょうか? いえ、ドワーフだからいけない、というわけではないのですが……」
「確かにもっともな疑問だね。理由は簡単だよ、一番世界各国のことに詳しいと思ったから。質素にそれぞれの集落で暮らしていたオークと、昔エルフ狩りにあってからエルフの森の中だけで暮らしていたエルフと比べると、ドワーフは商売を通じて世界中の国と交流があったみたいだからね」
「なるほど、そういう理由なら納得です」
「納得できません! なぜ私ではなくその小僧なのですか!」
ウォルターが納得したのと同時に声を上げ立ち上がったのはセルヒオだ。
「ドワーフが諜報部隊の責任者として適任なら、私でも良いはずでしょう?」
「えー、セルヒオさんが諜報部隊の責任者ー?」
「なんです、何が問題なんです」
「セルヒオさんって、最初ラッセルの里とかの他のドワーフの里があることを黙ってたよね?」
「ええ、言う必要がなかったからですから」
「セルヒオさんの里の利益のためには言う必要がなかったってことでしょ?」
「そのとおりですが?」
「ねえみんな、平然とこんなことを言う人を情報収集のトップにして大丈夫だと思う?」
マヤの問いかけに、会議に参加した者の多くが首を横に振る。
「まあそういうことだよ」
「……仕方ありませんね」
セルヒオは特にショックを受けた様子でもなく座り直した。
すごいメンタルの強さだが、これくらいでないと商人などやっていけないのかもしれない。
「じゃあひとまずラッセルくんとナタリーさんを諜報部隊の責任者ってことにしようと思うけど、いいかな?」
マヤはしばらく待ってみたが、今度は質問も異論も出なかった。
「異論なしだね。じゃあラッセルくん、ナタリーさんに諜報部隊の設立を2人に任せます。よろしくね」
「は、はいっ! 頑張ります」
「ええ、任せてください」
こうして、諜報部隊の責任者はラッセルとナタリーに決まったのだった。
マヤは自分の屋敷の会議室に集められたキサラギ亜人王国の各責任者たちに、大きな紙に書かれた各組織の人数とそれらの関係が書かれた組織図を示した。
ちなみに会議に集められた責任者達のうち、マヤに近しいオリガやマッシュなどは、マヤのいう信頼できる人物というのが、おそらくジョン王子なんだろうな、と容易に推測できてしまったが、マヤが伏せているのであえて言及することはしなかった。
マヤは、ドワーフに魔力を流すと光る石と、穴の空いた鉄の筒で作ってもらったレーザーポインターで該当箇所を示しながら説明を続けていく。
「ざっくり説明すると、管理部門が50人、諜報部門が500人、情報操作部門が250人、工作部門が200人くらいの合計1000人くらいがいれば大丈夫なんじゃないかなって思ってる。はい、ファムランド」
マヤは手を挙げたファムランドを指名する。
「それは俺たちSAMASからも人を出さねえといけねえのか?」
ファムランドは明言していないが、その口ぶりは言外にSAMASにはそんな余裕はない、と言っていた。
確かに少数精鋭のSAMASはたとえ数人でも抜けてしまえば大打撃だろう。
マヤは大きく首を横に振ってファムランドの質問に答える。
「ううん、SAMASから出してもらう予定はないよ。SAMASが人手不足なのはわかってるし、あそこまで鍛え上げた精鋭部隊を諜報部隊に回しちゃうのはもったいないしね」
「それは助かる。あいつらもようやく1人前の戦士になってきたところだからな、今取られちゃかなわねえ」
「ほかに質問は? はい、ジョセフ」
「SAMASから人を出さないということですが、そうなると他の一般兵から希望者を募る、ということでしょうか?」
マヤとファムランドの話を聞いてすぐにこの質問ができるあたり、なんやかんや言ってもジョセフも優秀だよな、とマヤは思った。
ベルフェゴールに操られていたとはいえ、流石に何年もエルフの村の村長をやっていただけのことはある。
「そうだね、まずはそうしようかと思ってる。もちろん諜報部門は人間の国に潜入してこっちに情報を送ってもらう人がたくさん必要だし、人間の国に潜入するとなると人間の方が都合がいいから、バニスターの元捕虜兵とかにも希望を募るつもりだけどね。他には?」
マヤは誰も挙手していないのを確認して、続きを説明し始めた。
「じゃあ続けるね。とりあえず人員募集とかその後の訓練とかはおいおい考えるとして、今回は諜報部隊の責任者を決めたいと思うんだよね。その上でその責任者を中心に検討を進めてほしい。と言っても、私が勝手に候補を決めてきちゃったんだけど。入ってきてくれるかな?」
マヤがドアの向こうに声をかけると、ゆっくりとドアが開き、小柄な2つの人影が会議室に入ってきた。
入ってきたのは、まだ幼さの残る顔立ちのドワーフの青年と肉感的な体つきをしたドワーフの美女だった。
「紹介するね、こちらドワーフの里長代理のラッセルくんと秘書のナタリーさん」
「ラッ、ラッセルと申します! よ、よろっ、よろしくお願いします」
「もう、お孫様ったら、落ち着いて下さい……。はじめまして、ナタリーです。お孫様共々よろしくお願いします」
「ありがとね2人共。それで、私としてはこの2人の諜報部隊の責任者にしたいと思ってるんだよね。はい、長老さん」
「聖女様、いい加減名前を覚えてくだされ、私の名前はウォルターです」
マヤに指名されたカーサの故郷の村の長老もといウォルターがマヤにお願いをする。
マヤがこれをお願いされるのはもう何度目かわからないのだが、どうしてもとっさに長老と呼んでしまうのだった。
「ごめんごめん、それで質問はなにかなウォルターさん」
「なぜ責任者がドワーフ2人なのでしょうか? いえ、ドワーフだからいけない、というわけではないのですが……」
「確かにもっともな疑問だね。理由は簡単だよ、一番世界各国のことに詳しいと思ったから。質素にそれぞれの集落で暮らしていたオークと、昔エルフ狩りにあってからエルフの森の中だけで暮らしていたエルフと比べると、ドワーフは商売を通じて世界中の国と交流があったみたいだからね」
「なるほど、そういう理由なら納得です」
「納得できません! なぜ私ではなくその小僧なのですか!」
ウォルターが納得したのと同時に声を上げ立ち上がったのはセルヒオだ。
「ドワーフが諜報部隊の責任者として適任なら、私でも良いはずでしょう?」
「えー、セルヒオさんが諜報部隊の責任者ー?」
「なんです、何が問題なんです」
「セルヒオさんって、最初ラッセルの里とかの他のドワーフの里があることを黙ってたよね?」
「ええ、言う必要がなかったからですから」
「セルヒオさんの里の利益のためには言う必要がなかったってことでしょ?」
「そのとおりですが?」
「ねえみんな、平然とこんなことを言う人を情報収集のトップにして大丈夫だと思う?」
マヤの問いかけに、会議に参加した者の多くが首を横に振る。
「まあそういうことだよ」
「……仕方ありませんね」
セルヒオは特にショックを受けた様子でもなく座り直した。
すごいメンタルの強さだが、これくらいでないと商人などやっていけないのかもしれない。
「じゃあひとまずラッセルくんとナタリーさんを諜報部隊の責任者ってことにしようと思うけど、いいかな?」
マヤはしばらく待ってみたが、今度は質問も異論も出なかった。
「異論なしだね。じゃあラッセルくん、ナタリーさんに諜報部隊の設立を2人に任せます。よろしくね」
「は、はいっ! 頑張ります」
「ええ、任せてください」
こうして、諜報部隊の責任者はラッセルとナタリーに決まったのだった。
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