転生したらただの女の子、かと思ったら最強の魔物使いだったらしいです〜しゃべるうさぎと始める異世界魔物使いファンタジー〜

上村 俊貴

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第4巻第1章 魔王会議

魔王会議に向けて

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 ルーシェが突然やってきて魔王会議に出るように、とだけ告げて帰った翌日、マヤの屋敷にある会議室には、マッシュ、オリガ、カーサといったマヤの側近から、エメリン、ジョセフ、ファムランドなどのキサラギ亜人王国の幹部的な立場の人物まで十数名が集められていた。
 
「魔王会議、か……おとぎ話だと思っていたが実際に行われるとはな」

 マヤがルーシェから聞いたことを一通り説明すると、マッシュがゆっくりと呟いた。
 
「おとぎ話レベルの話なの?」

 マヤの膝の上で後ろ足で立ち上がり、机の上にひょこっと顔だけ出しているマッシュに、マヤは下を向いて話しかける。

「少なくとも一般的な認識ではそうだな。エメリン殿、確かあなたは魔王ルーシェの副官だったのだろう? 魔王会議とは頻繁に行われるものだったのか?」

「マヤさんにも言いましたが、最後にいつ行ったのだったか忘れるくらいには開催されてません」

「ねえお母さん、それじゃあ魔王同士はどうやって連絡を取ってるの?」

「魔王同士は連絡を取ったりしないのよ。みんな自分勝手好き勝手にやってるの。それに、魔王って基本的に人の言うことなんて聞かないからやっても意味がないっていうのもあるわね。たとえ他の魔王の言うことだろうが聞く耳を持たないなら集まるだけ無駄でしょう?」

 最後に、だからあんまり言うことを聞かない魔王を始末したわけだしね、とさらりと言ってお茶に口をつけるエメリンに、尋ねたオリガは思わず苦笑する。

「あはは……さすがお母さん……。それでマヤさん、今日集められたのはそれを伝えるためですか?」

「ううん、実はその魔王会議には部下を連れて行っていいらしいんだよね。だから誰を連れて行こうかなって」

 マヤがそう切り出した直後、遠慮がちに手を上げたのはカーサだった。

「マヤ、さん。私、行き、たい」

「うん、私もカーサは連れて行くつもり。あとはオリガとマッシュかなって思ってるんだけど、大丈夫かな?」

「私は大丈夫ですけど……」

 オリガはそう言ってエメリンの方を見る。

「行ってきていいわよ。学校の方はどうにかするわ。そうだマヤさん、後でルースさんをお借りしたいんですが、いいでしょうか?」

「いいけど、何するの? 改造するとか言うことだったら流石に許可できないよ? ね、ルース?」

 マヤは端の方の席でぼーっとしていたルースに水を向ける。

「改造だと!? 何をする気なのだ悪魔の副官殿!?」

 悪魔の副官呼ばわりされたエメリンのこめかみがピクリと動いた気がしたが、マヤは気が付かないふりをすることにした。

 大方ルーシェにエメリンは怒らせると怖い悪魔の副官だった、とかなんとか吹き込まれたのだろう。

 マヤは心のなかでルーシェに合掌する。

(自業自得だけど、生きて魔王会議に出席してね。じゃないと私知り合いいないんだから)

「お2人の中での私ってどんなイメージなんですか……当然ですが改造なんてしませんよ。ちょっと新しい先生の育成に使わせて貰おうかなと思いまして」

「あー、確かにルースって見た目子供だしねえ」

「誰が見た目子供だ! それにマヤ、それをお前が言うのか? お前だって見た目子供だろう!」

「えー、だってほら私には胸があるし?」

 マヤはこれみよがしに胸を両手で持ち上げてみせる。

「ぐっ……たしかに私はぺったんこだが……」

「でしょ? だから私は大人なんだよ?」

 マヤとルースが子供そのものの喧嘩を始めたところで、エメリンが話題を戻すべく割り込んでくる。
 
「……盛り上がっているところ悪いんですが、私は別にルースさんを生徒役としてお借りしたいわけではなくて、ルースさんの封印空間を貸してほしいだけです」

「え? 封印空間? あんな何もないところで何するの?」

 エメリンの予想外の提案に、マヤは完全に目が点になってしまう。

 封印空間の管理者であるルースも同様に、エメリンの意図が読めないのか、首を傾げている。

「ルースさん、あの封印空間は時間の流れを操作できるんですよね?」

「ああ、できるが……それがどうかしたのか?」

「実はそこで新しい先生の教育をしようと思ってるんです。時間の流れ早くした封印空間で教育を行えば、明日にでも十分な教育が終わった先生が用意できるのではないかと」

 そこまで説明を聞いて、マヤはようやくエメリンのしたいことを理解した。

 つまり、短期間で教員育成を終わらせるためにあの封印空間を使いたい、ということのようだ。

「それは構わんが、そんなことをすれば結果として寿命が縮むぞ? いいのか?」

「ええ、ですからエルフの教員のみです。私達エルフにとっては寿命の1年や2年縮んだとしても誤差ですから」

「それもそうか。承知した、私は問題ないぞ」

「ルースが問題ないなら私が止める理由はないよ。エメリンさん、そういうことだから、ルースの封印空間を自由に使っていいよ」

「ありがとうございます。そういうことであれば、オリガが魔王会議に行ってしまっても問題ありません。それまでに先生を補充します」

「うん、よろしくね。それでマッシュはどうかな?」

「構わんぞ。ベルフェゴールの元部下たちのお陰で私が1人で担当していた国境警備の仕事も最近は余裕があるしな」

「よし、じゃあ決まり。エメリンさんやファムランドにはまた留守を任せることになるけど、いいかな?」

「ええ、任せてください」

「おう、任せとけ。もう今回みたいなへまはしねえからよ」

 ファムランドの言葉に気まずそうにうつむいてしまったレオノルを、ファムランドは腰に腕を回して抱き寄せる。

「別にお前さんが悪いわけじゃねえんだから気にすんなって」

「ファムランドさん……」

 ファムランドとレオノルが一瞬で2人の世界に入りそうになってしまったので、マヤはぱんぱんと手を叩いた。

「あーはいはい、乳繰り合うなら家に帰ってからにしてねー。それじゃ、まだいつになるかわからないけど、呼び出しがあったら私とカーサとオリガとマッシュは魔王会議にでかけちゃうから、そのつもりで今日から準備してもらうってことで、よろしくね」

 マヤの言葉に、部屋に集まった全員がそれぞれの言葉で了解の意志を表して頷いた。

「よしっ、それじゃあ解散」

 マヤの言葉で会議は終わり、それぞれがそれぞれに他の出席者と話し始めたり足早に会議室を後にしたりする。

 そんな中、カーサがマヤのところにやってきた。
 
「マヤ、さん」

「ん? どうした、カーサ?」

「連れて、行くって、言って、くれて、あり、がとう」

「ううん、カーサがいると私が安心できるから選んだだけだよ。当日はよろしくね」

「うん、頑張る。でも、もし、かしたら、迷惑、かける、かも」

「どういうこと?」

 マヤが聞き返した時には、すでにカーサの姿はなかった。

「陛下、以前お話していた――」

 カーサを追いかけようとしたマヤだったが、せっかく国王の屋敷まで来たのだから、とついでに仕事の相談事に来た各地域の責任者にあっという間にとり囲まれてしまう。

 そしてそのまま、それらの相談事を解決しているうちに、マヤはカーサの言葉とそれについてカーサに確認するということをすっかり忘れてしまったのだった。
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