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第1巻第2章 マッシュの家族救出作戦
マッシュの家族救出作戦2
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ぴちゃん。
「ひゃああ!」
「大丈夫ですか、マヤさん?」
マヤの前を歩いていたオリガが心配そうな顔をしてマヤを振り返る。
「大丈夫大丈夫、ちょっとびっくりしただけだから」
「マヤ、いくら静寂の範囲内にいるからと言って、簡単に大声を出すんじゃない」
「だって~、突然首のところに水が降ってきて冷たかったんだもん」
「ここは地下水路ですからね仕方ありませんよ」
そう、マヤとマッシュ、そしてオリガの3人は、今地下水路の中を進んでいた。
オリガが見せてくれた地図を確認した結果、ヘンダーソン家の屋敷に侵入するには地下水路から行くのが最も確実だとわかったからである。
「そもそも、地下水路から侵入すると決めたのはお前だろう、マヤ。少し冷たいくらい我慢せんか」
「一人だけそんなところにいるマッシュに言われてもなー」
オリガが着ているローブの胸元から顔を出した状態のマッシュに、マヤはジト目を向ける。
「仕方ありませんよ。マッシュさんはしゃべれる魔物とはいえうさぎですし、水に入るのは色々まずいですし」
「それはそうだけどさあ」
釈然としないものを感じながら、マヤは膝下まで水に使っている足を蹴り出し、水をバシャバシャ言わせる。
「おい! 言ってるそばから音を立てるやつがあるか!」
「ははは、まあまあ。大丈夫ですよ、私から離れすぎなければ外には音も聞こえませんし、姿も見えてませんし、水も動いてませんから」
すねているマヤに苦笑しながら、オリガはマッシュをなだめる。
オリガ自身は事もなげに言っているが、オリガは現在3種類の魔法を同時に発動し維持し続けている。
普通の魔法使いが魔法のみに集中して2つの魔法を発動するのがやっとのところ、3つを発動し、維持し、その上で普通に会話しているというのは、ある程度の魔法知識を持つマッシュからすると驚異的なことだった。
「オリガはマヤに甘すぎるのだ。それから、さり気なく頭を撫でるな」
「あれれ、バレちゃいました」
マッシュに指摘され、オリガは可愛らしく舌を出すと、大人しくマッシュを撫でていた手を引っ込める。
こうして、マヤとマッシュとオリガの3人は、隠れて勝手に侵入しているとは思えない程賑やかに、ヘンダーソン家の屋敷に侵入することに成功したのだった。
***
「いやー、遠くから見た時点でわかってたことだけど、大きいね、このお屋敷」
マヤは、屋敷というかもはや遊園地のような広大な敷地の真ん中にある広場で、ぐるっと屋敷全体を見渡していた。
オリガの透過と静寂があるとわかった3人は、侵入経路こそ地下水路だが、侵入の定番である夜間ではなく、真っ昼間に侵入している。
マッシュの見立てではマッシュの家族は働かされているはずなので、幽閉されている可能性が高い夜よりも昼間のほうが救出しやすいと思ったからだ。
「中はこのようになっていたのか」
「ぷぷっ、そういえば、マッシュ、この前は門前払いだったんだもんね?」
「う、うるさい! それよりさっさと私の家族を探すぞ!」
怒ったマッシュはオリガの胸元から飛び出すと、鼻をひくひくさせて周囲の匂いを嗅ぎ始める。
「ごめんごめん。それで、どっちにいるかわかりそう?」
「少し待て……ふむ、こっちだ」
マッシュは顔を上げると、まさに脱兎の如く駆けていく。
「あっ! マッシュさん待ってください! 私から離れすぎないで下さいね!」
マッシュが魔法の範囲内から出ないように、オリガが慌ててマッシュを追いかける。
が、オリガがマッシュに追いついて振り返ると、遥か後方にマヤの姿があった。
「ちょ、ちょっと、マヤさん!?」
魔法の範囲から出そう、というかもうすでに出ていたマヤに、オリガは慌てて魔法の範囲を広げ、マヤに駆け寄る。
「はあ、はあ、はあ、いやー、ごめんごめん。ちょっと、ついて、いけ、なくて、さ」
息を荒くしてとぎれとぎれに話すマヤに、オリガはマヤがとてつもなく体力がないことを思い出した。
「仕方ないですね。マヤさん、私を強化して下さい?」
「へ? なんで?」
突然強化するように言われたマヤは、息を整えながら首を傾げる。
「いいから強化して下さい」
有無を言わさない様子のオリガに、マヤは折れることにした。
「えー、まあいいけど強化」
まだ息が整いきってない状態で投げやりに唱えられた強化だったが、その手から溢れる光の粒子はいつもどおりの勢いだった。
「ありがとうございます。それじゃあ行きますよ、マヤさん」
「え? もしかして……ってやっぱりー!」
またしてもお姫様抱っこされたマヤは、オリガに運ばれて疾走する。
マヤにとってせめてもの救いは、今回はオリガはちゃんとした服装だったことと、透過のおかげで誰からも見えていなかったことだろう。
早々に人生2回目のお姫様抱っこを経験してしまったマヤだったが、そのおかげで一瞬のうちにマッシュのところに追いついたのだった。
「ひゃああ!」
「大丈夫ですか、マヤさん?」
マヤの前を歩いていたオリガが心配そうな顔をしてマヤを振り返る。
「大丈夫大丈夫、ちょっとびっくりしただけだから」
「マヤ、いくら静寂の範囲内にいるからと言って、簡単に大声を出すんじゃない」
「だって~、突然首のところに水が降ってきて冷たかったんだもん」
「ここは地下水路ですからね仕方ありませんよ」
そう、マヤとマッシュ、そしてオリガの3人は、今地下水路の中を進んでいた。
オリガが見せてくれた地図を確認した結果、ヘンダーソン家の屋敷に侵入するには地下水路から行くのが最も確実だとわかったからである。
「そもそも、地下水路から侵入すると決めたのはお前だろう、マヤ。少し冷たいくらい我慢せんか」
「一人だけそんなところにいるマッシュに言われてもなー」
オリガが着ているローブの胸元から顔を出した状態のマッシュに、マヤはジト目を向ける。
「仕方ありませんよ。マッシュさんはしゃべれる魔物とはいえうさぎですし、水に入るのは色々まずいですし」
「それはそうだけどさあ」
釈然としないものを感じながら、マヤは膝下まで水に使っている足を蹴り出し、水をバシャバシャ言わせる。
「おい! 言ってるそばから音を立てるやつがあるか!」
「ははは、まあまあ。大丈夫ですよ、私から離れすぎなければ外には音も聞こえませんし、姿も見えてませんし、水も動いてませんから」
すねているマヤに苦笑しながら、オリガはマッシュをなだめる。
オリガ自身は事もなげに言っているが、オリガは現在3種類の魔法を同時に発動し維持し続けている。
普通の魔法使いが魔法のみに集中して2つの魔法を発動するのがやっとのところ、3つを発動し、維持し、その上で普通に会話しているというのは、ある程度の魔法知識を持つマッシュからすると驚異的なことだった。
「オリガはマヤに甘すぎるのだ。それから、さり気なく頭を撫でるな」
「あれれ、バレちゃいました」
マッシュに指摘され、オリガは可愛らしく舌を出すと、大人しくマッシュを撫でていた手を引っ込める。
こうして、マヤとマッシュとオリガの3人は、隠れて勝手に侵入しているとは思えない程賑やかに、ヘンダーソン家の屋敷に侵入することに成功したのだった。
***
「いやー、遠くから見た時点でわかってたことだけど、大きいね、このお屋敷」
マヤは、屋敷というかもはや遊園地のような広大な敷地の真ん中にある広場で、ぐるっと屋敷全体を見渡していた。
オリガの透過と静寂があるとわかった3人は、侵入経路こそ地下水路だが、侵入の定番である夜間ではなく、真っ昼間に侵入している。
マッシュの見立てではマッシュの家族は働かされているはずなので、幽閉されている可能性が高い夜よりも昼間のほうが救出しやすいと思ったからだ。
「中はこのようになっていたのか」
「ぷぷっ、そういえば、マッシュ、この前は門前払いだったんだもんね?」
「う、うるさい! それよりさっさと私の家族を探すぞ!」
怒ったマッシュはオリガの胸元から飛び出すと、鼻をひくひくさせて周囲の匂いを嗅ぎ始める。
「ごめんごめん。それで、どっちにいるかわかりそう?」
「少し待て……ふむ、こっちだ」
マッシュは顔を上げると、まさに脱兎の如く駆けていく。
「あっ! マッシュさん待ってください! 私から離れすぎないで下さいね!」
マッシュが魔法の範囲内から出ないように、オリガが慌ててマッシュを追いかける。
が、オリガがマッシュに追いついて振り返ると、遥か後方にマヤの姿があった。
「ちょ、ちょっと、マヤさん!?」
魔法の範囲から出そう、というかもうすでに出ていたマヤに、オリガは慌てて魔法の範囲を広げ、マヤに駆け寄る。
「はあ、はあ、はあ、いやー、ごめんごめん。ちょっと、ついて、いけ、なくて、さ」
息を荒くしてとぎれとぎれに話すマヤに、オリガはマヤがとてつもなく体力がないことを思い出した。
「仕方ないですね。マヤさん、私を強化して下さい?」
「へ? なんで?」
突然強化するように言われたマヤは、息を整えながら首を傾げる。
「いいから強化して下さい」
有無を言わさない様子のオリガに、マヤは折れることにした。
「えー、まあいいけど強化」
まだ息が整いきってない状態で投げやりに唱えられた強化だったが、その手から溢れる光の粒子はいつもどおりの勢いだった。
「ありがとうございます。それじゃあ行きますよ、マヤさん」
「え? もしかして……ってやっぱりー!」
またしてもお姫様抱っこされたマヤは、オリガに運ばれて疾走する。
マヤにとってせめてもの救いは、今回はオリガはちゃんとした服装だったことと、透過のおかげで誰からも見えていなかったことだろう。
早々に人生2回目のお姫様抱っこを経験してしまったマヤだったが、そのおかげで一瞬のうちにマッシュのところに追いついたのだった。
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