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第1巻第1章 とりあえず冒険者になってみます
マヤのポテンシャル
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「『強化』!」
マヤが強化の呪文を唱えると、その右手から溢れ出た光の粒子がマッシュに吸収されていく。
「ふんっ!」
マッシュが前足を振るうと、大きな熊の魔物が黒の粒子となって霧散した。
「流石だね、マッシュ」
「そんなにすごいことではない」
そう言いながらもマッシュの耳はぴこぴこ動いている。
耳をぴこぴこ動かすのは、嬉しいときのマッシュのクセであることを、マヤはこの1ヶ月で見抜いていた。
「全く、素直じゃないんだからー」
「お、おい、やめろマヤ、自分で歩ける! 抱っこするな、降ろせ、撫で回すな!」
マヤは熊の魔物が落したこぶし大の魔石をさっとポーチにしまい、マッシュを抱っこして撫で回す。
マッシュは口では文句を言っているが、されるがままに撫でられていた。
マヤがひとしきりもふもふし終わった頃、マヤに抱っこされたままのマッシュが顔を上げる。
「そもそも、私があれだけ楽に魔物を倒せるのは、マヤお前の力が優れているからだ」
「私の?」
「そうだ。いつもお前が私にかけている強化魔法だが、あれは本来基礎の基礎で、そこまで効果のあるものではない」
「そうなんだ? でもそれじゃあ、やっぱりマッシュが強いってことなんじゃないの?」
「人の話は最後まで聞け。いいか、これはあくまで私の体感だが、マヤの『強化』には、通常の10倍以上の効果がある」
「そんなに!? でも私特に何もしてないけど……」
「だろうな。そもそもあれだけ光の粒子が見えるのは未熟者の証だ。あれは無駄に多く込めた魔力が見えるようになった結果だからな」
「え? そうなの? なんかきれいだからあれでいいのかと思ってた」
あの光の粒子、まさに魔法っぽい! とマヤが感動していた現象だったのだが、実際は、私は未熟です! と言ってるようなものだったらしい。
「まあそれは今はいい。ともかく、マヤにはなにか特別な力があるらしい、ということだ」
「おお! 特別な力! なんかいいねそういうの! わくわくするよ。 っととっ、とっ、うわっ!」
特別な力と聞いて浮かれていたマヤは、ビターン、という音が聞こえそうな勢いですっ転んだ。
ちなみにマッシュはマヤがふらついた時点でその腕から逃れ、華麗に着地している。
「……強化魔法は本当に特別なんだがな」
「う~~~」
マヤが地面に突っ伏しているせいで、見上げる形となったマッシュに、残念なものを見る目で見られマヤは涙目で唸ることしかできないのであった。
***
「た、ただいまあ……」
マッシュが宿の部屋でくつろいでいると、ヘロヘロになったマヤが帰ってきた。
「今日も街の冒険者たちと特訓か?」
「そうだよー……みんな優しいんだけど、私、とにかく体力ないからさー……」
「今日は何をやってきたんだ」
「格闘技でしょ? 治癒魔法でしょ? 後はいつもの剣術だね」
「なるほど、頑張っているな……」
それだけに、マッシュは少しかわいそうな気持ちになる。
なぜなら、その全てで驚くほど結果が出ていないのである。
格闘技をすれば渾身の力で殴ってもペチッと音がするような威力しかなく、魔法を使えば何も起こらず、剣を振れば剣の重さに負けて振り回される。
「全然上手くいかないけどねー」
「体を使うものはともかくとして、どうして魔法も使えないのだろうな? 強化魔法はかなり強力なのだが」
「さりげに私の運動音痴をディスったねマッシュ? まあそれは後でもふもふさせてもらうから許すとして、魔法が使えないのは教えてくれた魔法使いの人も首を傾げてたよ? 何でも魔力量だけなら平均の数十倍はあるんだって。なのに水一滴も火の粉の一つも出ないのは意味がわからない、ってさ」
「ふむ、なるほど。しかし、すぐに気にする必要はないだろう。私がいれば冒険者としてのやっていけるわけだしな」
「まあそうだね。それがせめてもの救いかな」
冒険者になってから1月あまり、マヤはマッシュがサクサク魔物を倒してくれるおかげで、冒険者としての安定した収入を得られるようになっていた。
「それで、だ。そろそろ私の家族を助けに行きたいのだが」
「そうだね、ごめんね待たせちゃって」
「気にすることはない。どうせ私一人で行ってもまた捕まるのが関の山だ。それに、今度は脱獄の分が上乗せされて即殺されるかもしれん」
「それならいいけど。今さらだけど、ちょっとでも早い方いいだろうし、明日出発しようか。マッシュの家族を攫った貴族っていうのは、どこにいるの?」
「隣の国だな」
「じゃあそんなに遠くないね」
国とは言ってもこの世界の国とは、どうやら日本で言うところの都道府県程度の規模のようなので、隣の国と言っても隣の県くらいの距離である。
「よし、それじゃあマッシュの家族を救いに行こう!」
こうして、マヤとマッシュは、ようやくマッシュの家族を救うべく、出発することなったのだった。
マヤが強化の呪文を唱えると、その右手から溢れ出た光の粒子がマッシュに吸収されていく。
「ふんっ!」
マッシュが前足を振るうと、大きな熊の魔物が黒の粒子となって霧散した。
「流石だね、マッシュ」
「そんなにすごいことではない」
そう言いながらもマッシュの耳はぴこぴこ動いている。
耳をぴこぴこ動かすのは、嬉しいときのマッシュのクセであることを、マヤはこの1ヶ月で見抜いていた。
「全く、素直じゃないんだからー」
「お、おい、やめろマヤ、自分で歩ける! 抱っこするな、降ろせ、撫で回すな!」
マヤは熊の魔物が落したこぶし大の魔石をさっとポーチにしまい、マッシュを抱っこして撫で回す。
マッシュは口では文句を言っているが、されるがままに撫でられていた。
マヤがひとしきりもふもふし終わった頃、マヤに抱っこされたままのマッシュが顔を上げる。
「そもそも、私があれだけ楽に魔物を倒せるのは、マヤお前の力が優れているからだ」
「私の?」
「そうだ。いつもお前が私にかけている強化魔法だが、あれは本来基礎の基礎で、そこまで効果のあるものではない」
「そうなんだ? でもそれじゃあ、やっぱりマッシュが強いってことなんじゃないの?」
「人の話は最後まで聞け。いいか、これはあくまで私の体感だが、マヤの『強化』には、通常の10倍以上の効果がある」
「そんなに!? でも私特に何もしてないけど……」
「だろうな。そもそもあれだけ光の粒子が見えるのは未熟者の証だ。あれは無駄に多く込めた魔力が見えるようになった結果だからな」
「え? そうなの? なんかきれいだからあれでいいのかと思ってた」
あの光の粒子、まさに魔法っぽい! とマヤが感動していた現象だったのだが、実際は、私は未熟です! と言ってるようなものだったらしい。
「まあそれは今はいい。ともかく、マヤにはなにか特別な力があるらしい、ということだ」
「おお! 特別な力! なんかいいねそういうの! わくわくするよ。 っととっ、とっ、うわっ!」
特別な力と聞いて浮かれていたマヤは、ビターン、という音が聞こえそうな勢いですっ転んだ。
ちなみにマッシュはマヤがふらついた時点でその腕から逃れ、華麗に着地している。
「……強化魔法は本当に特別なんだがな」
「う~~~」
マヤが地面に突っ伏しているせいで、見上げる形となったマッシュに、残念なものを見る目で見られマヤは涙目で唸ることしかできないのであった。
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「た、ただいまあ……」
マッシュが宿の部屋でくつろいでいると、ヘロヘロになったマヤが帰ってきた。
「今日も街の冒険者たちと特訓か?」
「そうだよー……みんな優しいんだけど、私、とにかく体力ないからさー……」
「今日は何をやってきたんだ」
「格闘技でしょ? 治癒魔法でしょ? 後はいつもの剣術だね」
「なるほど、頑張っているな……」
それだけに、マッシュは少しかわいそうな気持ちになる。
なぜなら、その全てで驚くほど結果が出ていないのである。
格闘技をすれば渾身の力で殴ってもペチッと音がするような威力しかなく、魔法を使えば何も起こらず、剣を振れば剣の重さに負けて振り回される。
「全然上手くいかないけどねー」
「体を使うものはともかくとして、どうして魔法も使えないのだろうな? 強化魔法はかなり強力なのだが」
「さりげに私の運動音痴をディスったねマッシュ? まあそれは後でもふもふさせてもらうから許すとして、魔法が使えないのは教えてくれた魔法使いの人も首を傾げてたよ? 何でも魔力量だけなら平均の数十倍はあるんだって。なのに水一滴も火の粉の一つも出ないのは意味がわからない、ってさ」
「ふむ、なるほど。しかし、すぐに気にする必要はないだろう。私がいれば冒険者としてのやっていけるわけだしな」
「まあそうだね。それがせめてもの救いかな」
冒険者になってから1月あまり、マヤはマッシュがサクサク魔物を倒してくれるおかげで、冒険者としての安定した収入を得られるようになっていた。
「それで、だ。そろそろ私の家族を助けに行きたいのだが」
「そうだね、ごめんね待たせちゃって」
「気にすることはない。どうせ私一人で行ってもまた捕まるのが関の山だ。それに、今度は脱獄の分が上乗せされて即殺されるかもしれん」
「それならいいけど。今さらだけど、ちょっとでも早い方いいだろうし、明日出発しようか。マッシュの家族を攫った貴族っていうのは、どこにいるの?」
「隣の国だな」
「じゃあそんなに遠くないね」
国とは言ってもこの世界の国とは、どうやら日本で言うところの都道府県程度の規模のようなので、隣の国と言っても隣の県くらいの距離である。
「よし、それじゃあマッシュの家族を救いに行こう!」
こうして、マヤとマッシュは、ようやくマッシュの家族を救うべく、出発することなったのだった。
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