過負荷

硯羽未

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番外編 Love Addict

35-10

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 正直竜司は上手くやってる、と思う。実は結構話すのが好きなのに、あえて寡黙な男を演じ、余計なことは言わない。その方が良い。
 デビューしてからもう10年くらいは経っているが、それなりに揺ぎないポジションを確立している。

 歌うのが好き。
 竜司の出す音が好き。

 だからこそ余計な情報を与えて色目で見られるのは嫌だった。純粋に自分達の作り出す音を聴いて欲しい。さっきも新曲を二人で弄っていた。
(アレンジ……途中なのに)
 それでも抱かれると、性欲が優先されてしまう。
 バックでされるのは結構好きだ。前からだと、脚を開いている自分がとてもみっともなく感じられて羞恥心を刺激される。
 背中に感じる竜司の体温が好き。拘束されるみたいにぎゅうっと抱き締められるのが安心する。
 顔なんか見えなくても、息遣いで相手が今どんなだか、わかる。

 竜司のは大きくて、いつも苦しい。体の奥底まで貫かれる感触は、何度抱かれても頭の中が熱く痺れてしまって、つい甘えた声を出してしまう。
 尤も、声を殺そうとして我慢すると、竜司が余計にはりきるのを経験上知っている。そうすると、もう無茶苦茶抱かれる羽目になる。

(たまにならいいけど)
 いつもだと壱流が大変なので、学習してからはあまり声を我慢しないことが多い。まひるたちのいる部屋まで聞こえるわけでもない。一緒に暮らしていたら、こういうわけにもいかない。
 竜司にいいようにされてよがってしまう自分を、かなり前にビデオで見たことがある。あれは竜司が忘れた時の保険だったが、それでも顔から火が出るような恥ずかしさで、渋る竜司を無視して消してしまった。

「壱流……今、何考えてんだ?」
 中を執拗に攻められながら突然問われたので、壱流はちょっと首を動かして竜司を見た。
「なに……って、別に」
「そっか? やけに締めてくるからさあ」
「そ、んなこ……っ、や、りゅ、竜、っ……」
「――無理に喋んなくていいぜ?」

 楽しそうな声に、少し悔しくなる。喋らせないのは竜司だ。こんなに激しくされたら、ちゃんとした言葉にならない。繋がったまま脚を抱えられて、ごろんと体勢を変えられてしまい、一瞬貧血にも似た眩暈に襲われる。
「そ……ゆの、やめ……」
 抗議の声も、途切れる。
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