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番外編 Love Addict
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しかし壱流にとって他の誰かとそうなるのは本当にありえない選択であって、竜司以外を受け入れることがどうしても出来ない。もしも前後不覚に陥って、無理矢理にでもモノにされてしまったら、その時自分の感情がどう変化するかはわからないけれど。
そういう事態は極力避けたい。もしかしたらまかり間違って相手を好きになってしまう可能性だって捨て切れないが、それ以前にプライドが許さなかった。竜司以外の男に体を好きにされるなんて、虫唾が走る。
(竜司がいないと、俺は生きてけない)
それが恋愛感情かどうかなんて、壱流にはもうわからない。そのことについて考えるのは随分前にやめた。まふゆは勿論、まひるのことも好きだと思うし、同じように竜司のことも好きだ。誰かを選んで誰かを切り捨てるのは無理だ。
竜司は別に、選べ、とは言わない。
まひるも現状を納得している。納得した上で壱流の傍にいる。けれどまふゆがそれを知った時どう思うか、壱流はそれが不安でもあった。
近頃はわりと落ち着いている、リストカット。まふゆに嫌われたりしたら、その悪癖がまた出るかも。そう思っても、竜司に抱かれるのを拒んだり出来なかった。
相変わらず潤んだ瞳で見つめる壱流のシャツのボタンが外され、竜司の大きな手が肌に触れた。
「とりあえず一回くらいヤっとくか?」
「……アレンジ途中じゃん」
「ヤリたそうな目ぇしてる」
肌の上で動いた竜司の指が、胸の小さな突起をつまんでくにくにと転がした。不意打ちで与えられた妙な感覚に、思わず小さく声が洩れる。
弄られるうちに性感帯になってしまった部分。背中をそっと撫でられるのも、ぞくぞくする。竜司の顔が耳元に近づいて、軽く耳朶を噛んだ。以前手首を切る痛みの代わりになるかもと、へリックスにちょこんと開けたピアスを舌でなぞられた。竜司の腕の中でぴくんとする。
「あんまピアスぼこぼこ開けるのはよせよ? こういうのってハマるともっと開けたくなる奴、多いらしい」
「まだこれ一個しかないだろ」
「あと二つくらいまでならいいけどよ」
「そんなの俺の勝手だ」
どうして竜司にピアスの数を指定されなければならないのだ。別にいくつも開けたいわけではないが、竜司の好みに合わせる気はない。
そんなに健気ではない。
相手の言うとおりに自分を歪めるのはやめた。
そういう事態は極力避けたい。もしかしたらまかり間違って相手を好きになってしまう可能性だって捨て切れないが、それ以前にプライドが許さなかった。竜司以外の男に体を好きにされるなんて、虫唾が走る。
(竜司がいないと、俺は生きてけない)
それが恋愛感情かどうかなんて、壱流にはもうわからない。そのことについて考えるのは随分前にやめた。まふゆは勿論、まひるのことも好きだと思うし、同じように竜司のことも好きだ。誰かを選んで誰かを切り捨てるのは無理だ。
竜司は別に、選べ、とは言わない。
まひるも現状を納得している。納得した上で壱流の傍にいる。けれどまふゆがそれを知った時どう思うか、壱流はそれが不安でもあった。
近頃はわりと落ち着いている、リストカット。まふゆに嫌われたりしたら、その悪癖がまた出るかも。そう思っても、竜司に抱かれるのを拒んだり出来なかった。
相変わらず潤んだ瞳で見つめる壱流のシャツのボタンが外され、竜司の大きな手が肌に触れた。
「とりあえず一回くらいヤっとくか?」
「……アレンジ途中じゃん」
「ヤリたそうな目ぇしてる」
肌の上で動いた竜司の指が、胸の小さな突起をつまんでくにくにと転がした。不意打ちで与えられた妙な感覚に、思わず小さく声が洩れる。
弄られるうちに性感帯になってしまった部分。背中をそっと撫でられるのも、ぞくぞくする。竜司の顔が耳元に近づいて、軽く耳朶を噛んだ。以前手首を切る痛みの代わりになるかもと、へリックスにちょこんと開けたピアスを舌でなぞられた。竜司の腕の中でぴくんとする。
「あんまピアスぼこぼこ開けるのはよせよ? こういうのってハマるともっと開けたくなる奴、多いらしい」
「まだこれ一個しかないだろ」
「あと二つくらいまでならいいけどよ」
「そんなの俺の勝手だ」
どうして竜司にピアスの数を指定されなければならないのだ。別にいくつも開けたいわけではないが、竜司の好みに合わせる気はない。
そんなに健気ではない。
相手の言うとおりに自分を歪めるのはやめた。
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