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第7話 ご主人様の言うとおり
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「わっかんねえなあ……」
目を瞑ったまま寝返りを打ったら、ふとヘッドフォンの音が遠ざかった。頭から外れたそれを取り上げて、いつの間にそこにいたのか、眼鏡を外したまひるが「何が?」と耳元で囁いた。
「うっ、わあ! なんだ急に。いつからいたんだ」
長い髪が、さらりと腕に触れた。まひるは小さく笑んで、俺の転がっているベッドに同じように体重をかける。
スプリングが軋んだ。
「ご主人様の命令で。ちょっと先に竜司くん癒してこいって。──ほら、どうかなあこれ」
艶っぽく笑みを浮かべたまひるは、以前グラビアの仕事をしていたというだけあって、素晴らしく魅力的な胸がエプロンからこぼれんばかりに揺れている。
下着らしきものは、見えない。
「それは俗に言う、裸エプロン……って、やつ……あのちょっと、まひるさん」
どういう趣向ですかと問いたい。
前置きもなくあまりに唐突すぎて、刺激が非常に強い。
これをどうしろと言うのか。おいしく頂けとでも?
「壱流は今お風呂に入ってるから。出たら参戦するって」
「はぁっ!?」
忘れてた。
本当に三人でする気だったのか。迂闊にも失念していた。ていうかまさか本気だとは思っていなかった。単なる冗談かと。
あまりのことに硬直している俺の体に乗るようにして、まひるがジッパーを静かに下ろした。
「俺はまだ風呂入ってねえし! ……あ、いや、そういうことじゃなくてさ、なんもする気ないんだけどっ」
「壱流はやる気満々だけど? まあいいじゃない、ほら、こっちは反応してる。素直だなあ、竜司くん」
本当に素直に反応してしまった俺を、あまり大きくない手のひらがそっと触れた。
今日会ったばかりの女にほぼ全裸に近い恰好でのしかかられて、軽くパニックに陥る。
どうしたものかと乱雑な頭の中で考えていたら、いつの間にか壱流がドアのところに若干呆れた顔で突っ立っていた。
「まひるやーらし。竜ちゃんにしてほしいんだろ」
どことなく冷たく聞こえた声のトーン。壱流は濡れた髪を拭きながら、ぱたんとドアを閉める。入り口の傍にあった照明のリモコンを操作して、薄闇が部屋を包んだ。
「でも駄目だよ。してほしいんなら、俺のをあげるからね」
「ちょ、おまえなあ! こんなこと本気で実行するかっ!?」
「女の下で膨張してる奴の科白じゃない。竜ちゃん、気持ち良い? まひる上手だろ」
ベッドに三人目の体重がかかって、壱流がまひるの腰を自分に引き寄せた。びくりと反応して甘い声を上げた様子に、何をしているのか察する。
目を瞑ったまま寝返りを打ったら、ふとヘッドフォンの音が遠ざかった。頭から外れたそれを取り上げて、いつの間にそこにいたのか、眼鏡を外したまひるが「何が?」と耳元で囁いた。
「うっ、わあ! なんだ急に。いつからいたんだ」
長い髪が、さらりと腕に触れた。まひるは小さく笑んで、俺の転がっているベッドに同じように体重をかける。
スプリングが軋んだ。
「ご主人様の命令で。ちょっと先に竜司くん癒してこいって。──ほら、どうかなあこれ」
艶っぽく笑みを浮かべたまひるは、以前グラビアの仕事をしていたというだけあって、素晴らしく魅力的な胸がエプロンからこぼれんばかりに揺れている。
下着らしきものは、見えない。
「それは俗に言う、裸エプロン……って、やつ……あのちょっと、まひるさん」
どういう趣向ですかと問いたい。
前置きもなくあまりに唐突すぎて、刺激が非常に強い。
これをどうしろと言うのか。おいしく頂けとでも?
「壱流は今お風呂に入ってるから。出たら参戦するって」
「はぁっ!?」
忘れてた。
本当に三人でする気だったのか。迂闊にも失念していた。ていうかまさか本気だとは思っていなかった。単なる冗談かと。
あまりのことに硬直している俺の体に乗るようにして、まひるがジッパーを静かに下ろした。
「俺はまだ風呂入ってねえし! ……あ、いや、そういうことじゃなくてさ、なんもする気ないんだけどっ」
「壱流はやる気満々だけど? まあいいじゃない、ほら、こっちは反応してる。素直だなあ、竜司くん」
本当に素直に反応してしまった俺を、あまり大きくない手のひらがそっと触れた。
今日会ったばかりの女にほぼ全裸に近い恰好でのしかかられて、軽くパニックに陥る。
どうしたものかと乱雑な頭の中で考えていたら、いつの間にか壱流がドアのところに若干呆れた顔で突っ立っていた。
「まひるやーらし。竜ちゃんにしてほしいんだろ」
どことなく冷たく聞こえた声のトーン。壱流は濡れた髪を拭きながら、ぱたんとドアを閉める。入り口の傍にあった照明のリモコンを操作して、薄闇が部屋を包んだ。
「でも駄目だよ。してほしいんなら、俺のをあげるからね」
「ちょ、おまえなあ! こんなこと本気で実行するかっ!?」
「女の下で膨張してる奴の科白じゃない。竜ちゃん、気持ち良い? まひる上手だろ」
ベッドに三人目の体重がかかって、壱流がまひるの腰を自分に引き寄せた。びくりと反応して甘い声を上げた様子に、何をしているのか察する。
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