①天乃屋兄弟のお話

あきすと

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星明の誕生日

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昼食後に、星明が知らせてくれた宝飾店に指輪を受け取りに行く事にした。
この前行った時は、星明も一緒だったけど今日は一人で商店街の老舗の
店内に入っていく。

ここの店主が、俺に占い師になる事のきっかけを半分くらい与えてくれた。
だから、時々星明との事も聞いて貰っている間柄だ。
祖母がいたなら、きっとこんな人なんじゃないかなって思える程に
親身になってくれるから。

「珠枝さーん、」
耳が少し遠いから、店の奥にいる時はこんな風に呼ばないといけない。
少し待ってると珠枝さんが出て来て、笑顔だった。
俺もつられて、笑ってる。

『月夜、その浴衣…良いわね。落ち着いてるけど。アンタ顔も髪も
派手だから丁度バランス取れてる。選んだのは星明くんでしょ?』

いきなりのファッションチェックが入って、面食らってるけど
言われた事は全て当たってる。

「さっすが。そう、星明が選んだ生地。俺なら派手なの選ぶからさ。」
『あの子は、誰よりも月夜を見て来てるから。どう着れば魅力を引き出すかも
知ってるわね。…指輪、仕上がった来たのよ。お代は頂いてるからね。
それにしても、桐の箱に紅白の水引だなんて。素敵な贈り物だよ本当に。』

「約束、誓い、感謝、祈り…」
『これをあの子が日頃から付けてくれると思う?絶対に勿体ないって言って
それこ婚約指輪みたいに、箪笥に仕舞い切りにするんじゃないかしら。』
小さな手提げ袋に入れて貰った指輪は、持ち手の1つにリボンで結んでもらった。

『絡まればほどく、解ければまた結べばいいの。そういう事よ。ただ、切らさない
努力は必要よ。』

俺の、いわば師匠でもある珠枝さんに感謝を述べて
店を去ろうとした拍子に
『あの子を、…泣かすんじゃないよ。月夜。』
「…うれし泣きなら、させるつもり…!」

珠枝さんは笑いながら
『っんとに、この…伊達男は…』
店の前まで見送ってくれた。



家に帰ると、なんだか妙にシンとしている。
人の気配がしない。と言うのか。
星明、外にでも出てるのか?この炎天下の中。
台所にも、物干しにも居ない。
事務所にでも、飲み物の準備に行ったかな?
そろそろ鑑定の時間だし、その内戻って来るだろう。

指輪はとりあえず、一旦自分の部屋に持って行く事にした。
2時までには、隣の事務所に行かなければ。
後、30分はあるものの気になる。
何となく庭先を見てみた。

「…星明、びっくりした。どこ行ったかと思った。」
庭先で水撒きをしている。
『兄貴、…あ、そろそろ着替えなきゃ。』
麦わら帽子を被ってのん気な星明にどこかホッとして
歩み寄ると
「馬鹿、ぶっ倒れるぞ…心配させるな。」
掴んだ腕の力強さに、星明は少し驚いている。

『ごめん…、着替えて来るね。』
頬を赤くして俺から逃れると、星明はホースを片付けて
家の中に戻って行った。

ちょっと、きつかったかな?言い方。でも、真剣に心配したから。
事務所の鍵を開けてすぐにエアコンをつけておく。
冷蔵庫を開けると星明の作ったタルトと、麦茶にお菓子なんかが
たくさんストックしてある。

しばらくすると、時間通りに鑑定のお客さんが事務所に現れた。
すぐに、星明がタイミングよくメニュー表を持って来てくれて
俺はホッとした。

涼やかな露草色の浴衣を見て、心が沸き立つのを自分でも感じながら
少しだけ饒舌になりながら一人目の鑑定に集中した。
星明のこだわりで、アイスコーヒーもアイスティーも全部沸かす所から
作ってるから、応接室の給湯室にもエアコンの冷気が届くように
改装してもらって、今では快適になった。

コツコツ、見えない所でいつも誰かのために頑張っている星明を
好きになるのは、必然だと思うんだよな。

お互いに補いながら毎日を送っている。
それだけ、よく互いが見えているって事だろう。
でなければタイミングも合わなくて、足を引っ張ってしまう。

星明のタイミングを気にしつつ、ドアを開けてやると
本当に毎回ピッタリだから、嬉しそうな顔するんだよな。
これを見て、お客さんが勘違いする事もありそうだから
ちょっと、心境は複雑でもある。

俺に対する、笑顔だと…思いたいなんて。
狭量な話だろう。

2組目はカップルだった。
星明には、適当に休める時には家で休めと言ってある。
(でも、インターフォン持たせてるから俺がボタンを押したら
来て貰わないといけない)

器用さが無いと、こんなにも立ち回れないだろうから。
かと言って、ずっとその辺で立ってられるのも俺は気になるし。
やっぱり、一緒に頑張ってるってのが良いんだよな。

2組が帰った頃に、星明が給湯室に戻って来た。
「星明、」
『ぁ…、なに…?』
どうやらガス台で何かを作ってるみたいで
「すげー、もしかしてプリン?」
『違う。これはね、ココナッツミルクプリン。』
「ちょ、そんなサービスしなくていいって。」
『これは、兄貴と一緒に食べる用。少し時間空いたからさ。』
「薄あまーい匂い。」
『甘さが優しいからね。夜には食べごろだね。』
涼感のあるガラスの器に、注がれる白。

「ウチの冷蔵庫、また一杯なんだろ…」
『ちらし寿司の具材が…ね。』
「コッチもそろそろ入らなくなるぞ?ったく。」

『ね、ね…それよりも。兄貴にその浴衣すんごく似合ってるね。葡萄茶色に近いのかな?』
「さっき、珠枝さんにも言われた。」
『珠枝さん、和服に関しては凄いからね。褒めてくれたんだ…良かったね、兄貴。
大人っぽくって俺も好きなんだよね。』
やたら褒めてくれる星明が、本当に可愛くて。
「星明も髪切って、雰囲気変わって…浴衣も似合ってるし。ここが家だったらなぁ。」

ぼそっと言った言葉に星明は、自分の腕をクロスさせて
『今、仕事場でしょ~。絶対だめだからね。』
よこしまな考えはすっかり、星明によって打ち消されてしまった。

夕方の6時時過ぎには、今日の鑑定は全て終わった。
『多分、商店街の七夕見に行く人も多いんじゃない?』
あ。すっかり忘れてた。
「折角、浴衣着てるんだから写真撮っておくか?星明。」
『スマホでもいいよね。』
「そうだな、大事なのは撮る相手と状況。」

俺の、星明隠し撮り写真と言った後ろめたいものでは無くて
公正明大な写真は、本当に久し振りだった。

『俺にも、後で送っといて貰えるかなぁ…』
「もちろん。」
先に星明は自宅に帰って、晩御飯の支度にとりかかった。

将来は喫茶併設の占いの館を開店するのも悪くないな。
でも、その時は人を雇う事になりそうだな。
ぅわーめんどくさ。
俺と星明の関係がバレても、平然としてるような子でないと厳しい。
(そもそもバレたらダメな気もする)

家に戻って、星明は既に着替えてしまっていた。
「早くない?着替えるの」
『汚れたら困るし、兄貴のと違って薄い色味の生地だから気を遣うよ。』
Tシャツと短パンで、エプロンという姿もえらく刺激的である事は
気付かないのかと思いながら邪魔にならない距離で、星明を呼ぶ。

「どうしよっか。先に風呂ってこようか?」
『…?好きにしていいよ。俺はどのみち後からだからさ。』
振り返った星明の額に、熱気で張り付いた髪をそっと取る。

「ん。分かった。」
手伝っても良かったんだけど、返って邪魔になる気がしたから俺は
2階で着替えの準備をしてから風呂場に向かった。

指輪を渡すタイミングを考えてる間に、時間はあっという間に過ぎていた。
脱衣所から洗面所に行き、長い髪を乾かすのに一苦労。
台所に戻ると、食卓は七夕らしい料理が並んでいた。
「おめでとう、星明。」

椅子に座って星明に給仕されてるけど
「いや、俺…何もしてなくない?」
俺の言葉にクスクス笑いながら
『兄貴は、いいから座ってて。その方が楽なんだもん。』
と、ハッキリ言われてしまった。

だろうね、とは思っていただけに。
『今日は、あいにくの曇り空だけど。雲の先は晴れてるから。
何の心配も無いんだけどね。』
普通に手の込んだ料理が並んでいて、これだけを上手く段取りをしながら
空き時間に作れるんだから星明の事は、素直に尊敬できる。

事務所の給湯室で作っていた、ココナッツミルクプリンは
ミントの葉と、クコの実が添えられていた。
「俺、星明のこういう細かい所も綺麗に再現してくれるとこ、大好きなんだよ。」

急だったとは思うけど。本当にそうだから、伝えたかった。
『…ありがと。』
頬が薄く赤みを差していて、照れてる様子がうかがえる。
「洗い物は俺がやっておくから、少ししたら星明も風呂でゆっくりしてこいな。」

『いいの?…んじゃ、お言葉に甘えちゃおうかなぁ。兄貴、お気遣いありがとう。』

俺は、台所のシンクを見て食器の多さに引いていた。
いやいや、いつもは星明がこれを洗ってるんだ。
俺も、これくらいはササっと綺麗にしないと。

食器洗ってる時って、妄想がはかどる。
くだらない事考えるには、持って来いだな。
俺は、この後どうあっても良いんだけど。
後は星明次第かな。

ちょっと卑怯な気もするけど。
出方を見てから、と言う方が柔軟性が有るとも言える。

リビングとキッチンの明日の準備までをして、俺は2階に上がり廊下の窓を閉めた。
自室に入ると少しだけ涼しい。
ベッドに腰掛けて、小さなスタイニーボトルを持って来たのを
テーブルに並べる。

信じられない。あの可愛い星明がもう20歳。
感慨深くて、なんとなく考えに耽っていた。

コンコン、と部屋のドアがノックされてハッとした。
開けに行くと今日は、縫いぐるみなしで星明だけが立っていた。
『びっくりした、お米まで研いでくれてありがとう。』
「それくらいは、俺でもできるよ。1名様ですか?」
『はい。』
「ここは、今日から飲酒・喫煙・おセッセ解禁の部屋ですが…
お間違いありませんか?」

我ながら、アホな質問だとは思いながらも。
星明の反応が見たくて、聞いてしまう。

『今日、20歳になったばっかりです。大人の仲間入り、させてくれます?』
と、にこりと笑う星明に内心悶えそうになったけれど
自制心が仕事してくれて助かった。

「もちろん、仲良くいたしましょう?愛らしいお客様。」
星明の手を取って、部屋に招いた。
「酔う前に、大事な物は先に渡させて。」
小さな手提げ袋をベッドに座る星明に手渡す。

相変わらず、可愛いパジャマ着てるなぁ。
ぽこぽこした生地で、手触りが面白いんだよな。
星明は、慎重にリボンを解いて。中から桐の箱を取り出した。
『すごい…』
紅白の水引を箱からずらして、静かに中の指輪を見つめている。
「つけてもイイ?星明に…」
『小指で良かった。薬指だったら失神してたかも。』

「俺はね、色んな意味でこれは星明に日頃からつけてて貰いたいって
思ってはいるんだけど。星明次第だ。」
小さなリングを俺は星明の前に膝をついて、左手の小指に
ゆっくりと嵌めていく。

『可愛い…愛おしいね。』
「それは、星明の事みたい。」
今にも泣きそうな星明の瞳が、うるうるしてて本当に綺麗で。
『口説くの、上手いなぁ兄貴は。あのね、俺で最後にしてくれる?』
「数年前から、ずっとそのつもりでした。」

星明が俺に倒れ込んで来た。
危うく、後ろに倒れてテーブルに直撃するかと思った。

『生涯大事にします…つけたり、たまに外すかもしれないけど。』
「やむを得ずは、あるからね。そこは気にしないで。」
『兄貴、あれなぁに?お酒…かな?いつの間に買ってたの。』
「内緒~…。とりあえず、飲みやすそうなシャルドネのスパークリングにしたけど。
度数、ちょっと高いから少しだけ最初に飲んで見な。」

軽く乾杯してから、俺が先に飲むと様子を見てから星明が一口飲んでみた。
『…ちょっと、強めの葡萄サイダー?みたいな』
言ってくれるわ。
「あんまり舐めない方がいいぞ、飲みやすいは酔いやすいだからな。」
俺はアルコール耐性あるけど。
星明は両親に似てるのであれば、そこそこ飲めるかもしれない。

『やだぁ…これ、ねむい…』
俺にしな垂れながら、すぐに星明は酔いが回っていた。
やっぱりな。
まぁ、その日の体調もあるんだろうけど。
水のボトル持って来て良かったわ。

全部なんて飲ませたら大変な事になるから、途中でボトルは取り上げだな。
「水飲めよ?アルコールは脱水しやすいからな。ほら、」
『でも、シャルロネ?おいしぃよぉ…』
「お前、酔いが回るの早すぎ。グラグラしてるし。ほら、水飲んでもう寝るぞ。」
『ねぇー、寝ても良いの?』

ふにゃふにゃ笑いながら、抱き着いて来てコレは酒乱だな。
「んー、俺は焦ってないから。今日で無くてもいいし。」
『俺も別に?焦っては無いけど…兄貴がシたいならぁ…イイかなぁって…』
とか言いながら、ベッドに転がる星明を見てボトルはまだ半分以上残ってる。

「ふわふわする?」
『ぅん、こんなの初めてでぇ…頭がぐるぐるすんだけど~大丈夫かなぁ?』
「大丈夫、水飲めば体内でアルコールが薄まる…はず。」
『水は、水だもん。味ある方が美味しいよぉ』
手をついて、上体を起こした星明にキスをされる。

猫がするみたいな頭突きのキスだった。
「って…」
『シてもいいけど。寝たらゴメンねぇ~…』
「もう、星明にはアルコール禁止。ムード無くなるから。」
『!?ぇ、…しないの…?にゃんでぇ…ねぇ、兄貴…』
まさかこんな酔い方するとは、思わずに。
可哀そうかもしれないけど。

やだ、と星明はしゃくり上げながら
『頭痛い…、っ…』
と俺にしがみついて来た。

だから、水飲めってのにもう…。
しょうがなく俺が水を飲ませる事にした。
ぐっ、とペットボトルの水を口に含んで星明に飲ませる。
理解したのか、少しだけ大人しくなって瞳がトロンと
なったのを感じた。

多分、スイッチが入ったなと悟った。
酸欠を起こさない様に気を付けながら、キスと口移しを
してみたら。すっかり星明は出来上がっていた。

「大丈夫か…?」
『ぅん…ちょっと、楽になった。不思議だね、兄貴のおかげだよ。』
あぁ、ほら。可愛くなった。

まだ、体を拓いてから日が浅い星明に無理はさせられない。
ネックレスを外して、預かると星明は微笑んでいた。
『兄貴のものだよ?俺はちゃんと。』
「アクセサリーの事か。そんなつもりは無いけど。」

『でも、嬉しいんだ。あんなに綺麗なネックレスや指輪を俺に…選んで
贈ってくれる人なんてやっぱり世界にたった一人だし。それも、大好きな人
からだよ?夢みたいに思っちゃうよ。』
首筋にキスをしながら、パジャマのボタンを外していく。
綺麗な鎖骨に、唇を寄せて指先では胸の突起を緩く擦る。

しっとりと吸い付くような肌の感触が、心地いい。
『…ぁ…っゃ…』
脚で、耐えながらも期待してるのがよく分かる。
この小さな突起を弄ぶだけで、今にも泣き出しそうな声を上げるんだから
随分と快楽を知ったんじゃないかと思う。
「星明、俺が触らない時も…触ってるだろ?」

星明は、真っ赤に赤面しつつ
『…っ、なんでぇ…っ、分かるの?』
やっぱりな。カマかけたのもあるけど、まさか本当だとは。
「でもさ、自分ではこんな事も出来なくて…辛かった?」
ちゅ、と音を立てて星明の小さな突起を吸う。

『~っ……』
体が、びくびくするのを感じながらも指先から下腹部へと移して
短パンの中に手を突っ込む。
生暖かい空間で、下着のウエストのゴムを越えて星明の性器を手にする。
「…っは、…えっろ…濡れてる」
『にゃ…っ…ん…、』
濡れてるって、ワザと焚きつけてゆっくり扱いてやる。
先端責めたら…まだ痛がるだろうからせめて優しく気持ちよく抱いてやりたい
一心で口でシてやる。

半端に脱がせた下着も全部、脱がせた。
頼りないパジャマの上着もほぼ脱げてる。
『ぁ…っ…』
頭をもたげた性器をゆっくりと舐め上げていく。
上体を反らしながら星明は口元に手をやりながら
声は抑えきれてもいない。

この前は、星明に口でされたから何となく俺もやってはみたけど。
これ、地味に疲れるだろうに。
頑張ってくれたのかと思うと、ちょっと真剣になってしまう。
裏筋を、舌先でそっとなぞると腰を捩って星明が
『でちゃ…っ…ふ……ぅ…』

口内で出されて、普通に精飲した。

放心状態の星明に、そのままキスをしたけど全然嫌がりもしないし。
むしろ、舌まで入れてきてチロチロ舐めて来たから
大した奴だと、呆気にとられそうだった。
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