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⑥かわらないもの
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『お月見、しよっか。』
央未が言った。央未の部屋からベランダに出て
スーパームーンと言われる月を見上げる。
中秋の名月とは言え、満月では無い事もあるらしい。
「俺、あんまり黄色い月ってなんか苦手でさ。」
『そうなんだ?いかにも月って感じで…俺は好きだけどな。』
酒でも片手に、月見をするのかと思ったらそんな事は無くて。
ただ、満ちた月を眺めているだけの央未。
下の方からは鈴虫の大合奏が聞こえる。
随分と、涼し気な雰囲気は整っているにも関わらず
日中なんかはやっぱりまだまだ夏を引きずっている。
「月が、綺麗ですね…央未サン。」
『…ぁ、うん。』
一瞬だけはにかんだ笑いが、何となく心に刺さる。
思った事をすぐに言わない央未らしい表情だ。
少しだけ、背伸びをしながらうっとりと見上げる横顔は
顔の輪郭がどことなく年相応には思えない。
「意味、伝わったか?」
『分るよ。ちゃんと、伝わってる。』
「良かった。」
央未の細い腰を抱き寄せると、振り向いて
『ダメだよ?…今日は、お月さまが見てるから。』
なんて言うから。
昨日のアレは何だったのかと聞きたくなる。
感傷的な央未は珍しい。
俺が帰国してすぐの央未に再会した頃を思い出す。
「もう3年も経ってるなんて…早い。」
『なんだか、すっかり落ち着いちゃったよね。』
「お前と、姉貴の子供を預ったあたりからかな…何か、俺の中での気持ちが落ち着いた。」
『あ、懐かしい。もう歩いてるんでしょ?晄稀くん。』
「もうめっちゃ元気。御堂で走り回ってる。」
『え~、楽しそう。良いなぁ…俺も晄稀くんに会いたくなっちゃった。』
「今度、実家にお前もついて来ればいいだろ?」
央未は、少しだけうつむいて
『俺じゃ、赤ちゃんできないからさ…』
当たり前な事を言う。
「当たり前じゃん。何を今更。何だよ~子供でも欲しくなったか?
その内ファミリーカーまで欲しがるなよ『茶化さないで、朔。』」
こうなった央未は、わりと真剣に真面目に思い悩んでいる時だ。
「全然、からかう気も無いし。ただ、俺はお前が居ればそれで…満足。
央未は、まだ何か欲しい?」
央未の心をないがしろにする訳にはいかない。
『俺は、朔に…何もあげられないからだよ。』
「ソレ、本気で言ってる?だとしたらお前、理想が高すぎると言うか。」
こーんなあどけない顔をして、きっと央未には央未なりの
家族像があるんだろう。
『寂しくない?朔は』
「俺には、央未が居るし。」
『朔がそんな事言うなんて…』
「や、常日頃思ってるけどさ。わざわざ、そんな言えないって。」
『そういうものなの?』
気恥ずかしい。
俺が、長年に渡ってどうにかこうにか
央未を傍に置いておいたのに。
(仕事で海外に出たりもしたけど)
「今の生活に、俺は満足してる。」
『ぅわ~…嬉しい♡』
「お前はさ、こんな月の綺麗な夜に哀しい顔するなよな。笑ってろ。」
ぎゅ、と抱き締めると央未の方から額にキスをして来た。
ほんと、心をくすぐる様な可愛さが央未にはある。
『俺、本当はね…朔となら見られても構わない。って思う時ある。』
「俺は、自分で言うのアレだけど。連れて歩いても恥ずかしくないと思う。」
『あはは、ほんっと…自分で言うなだよ。うん、でも、それはあるよ。』
央未を抱き抱えて、部屋の中に戻った。
「重くない?」
『そこそこ、現実的な質量だな。』
「言い方~。」
ソファに一緒に座って、いちゃいちゃする。
指を絡ませて、手に触れて。央未の太腿に頭を預ける。
下から見上げても、央未の顔は可愛げがある。
『寝る?』
「まだもう少し…」
お互いが居ればほとんどスマホも触らないし、こんな感じで
どうでもいい話をしながら2人で過ごす。
央未が言った。央未の部屋からベランダに出て
スーパームーンと言われる月を見上げる。
中秋の名月とは言え、満月では無い事もあるらしい。
「俺、あんまり黄色い月ってなんか苦手でさ。」
『そうなんだ?いかにも月って感じで…俺は好きだけどな。』
酒でも片手に、月見をするのかと思ったらそんな事は無くて。
ただ、満ちた月を眺めているだけの央未。
下の方からは鈴虫の大合奏が聞こえる。
随分と、涼し気な雰囲気は整っているにも関わらず
日中なんかはやっぱりまだまだ夏を引きずっている。
「月が、綺麗ですね…央未サン。」
『…ぁ、うん。』
一瞬だけはにかんだ笑いが、何となく心に刺さる。
思った事をすぐに言わない央未らしい表情だ。
少しだけ、背伸びをしながらうっとりと見上げる横顔は
顔の輪郭がどことなく年相応には思えない。
「意味、伝わったか?」
『分るよ。ちゃんと、伝わってる。』
「良かった。」
央未の細い腰を抱き寄せると、振り向いて
『ダメだよ?…今日は、お月さまが見てるから。』
なんて言うから。
昨日のアレは何だったのかと聞きたくなる。
感傷的な央未は珍しい。
俺が帰国してすぐの央未に再会した頃を思い出す。
「もう3年も経ってるなんて…早い。」
『なんだか、すっかり落ち着いちゃったよね。』
「お前と、姉貴の子供を預ったあたりからかな…何か、俺の中での気持ちが落ち着いた。」
『あ、懐かしい。もう歩いてるんでしょ?晄稀くん。』
「もうめっちゃ元気。御堂で走り回ってる。」
『え~、楽しそう。良いなぁ…俺も晄稀くんに会いたくなっちゃった。』
「今度、実家にお前もついて来ればいいだろ?」
央未は、少しだけうつむいて
『俺じゃ、赤ちゃんできないからさ…』
当たり前な事を言う。
「当たり前じゃん。何を今更。何だよ~子供でも欲しくなったか?
その内ファミリーカーまで欲しがるなよ『茶化さないで、朔。』」
こうなった央未は、わりと真剣に真面目に思い悩んでいる時だ。
「全然、からかう気も無いし。ただ、俺はお前が居ればそれで…満足。
央未は、まだ何か欲しい?」
央未の心をないがしろにする訳にはいかない。
『俺は、朔に…何もあげられないからだよ。』
「ソレ、本気で言ってる?だとしたらお前、理想が高すぎると言うか。」
こーんなあどけない顔をして、きっと央未には央未なりの
家族像があるんだろう。
『寂しくない?朔は』
「俺には、央未が居るし。」
『朔がそんな事言うなんて…』
「や、常日頃思ってるけどさ。わざわざ、そんな言えないって。」
『そういうものなの?』
気恥ずかしい。
俺が、長年に渡ってどうにかこうにか
央未を傍に置いておいたのに。
(仕事で海外に出たりもしたけど)
「今の生活に、俺は満足してる。」
『ぅわ~…嬉しい♡』
「お前はさ、こんな月の綺麗な夜に哀しい顔するなよな。笑ってろ。」
ぎゅ、と抱き締めると央未の方から額にキスをして来た。
ほんと、心をくすぐる様な可愛さが央未にはある。
『俺、本当はね…朔となら見られても構わない。って思う時ある。』
「俺は、自分で言うのアレだけど。連れて歩いても恥ずかしくないと思う。」
『あはは、ほんっと…自分で言うなだよ。うん、でも、それはあるよ。』
央未を抱き抱えて、部屋の中に戻った。
「重くない?」
『そこそこ、現実的な質量だな。』
「言い方~。」
ソファに一緒に座って、いちゃいちゃする。
指を絡ませて、手に触れて。央未の太腿に頭を預ける。
下から見上げても、央未の顔は可愛げがある。
『寝る?』
「まだもう少し…」
お互いが居ればほとんどスマホも触らないし、こんな感じで
どうでもいい話をしながら2人で過ごす。
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