【クソ彼氏から離れらんなくて⑱】窓の外は雨景色

あきすと

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【央未side】

時々、1人で考えてみたりもする。
例えば、朔が何かのきっかけで俺と一緒に居ない人生の事も
嫌だけれど想像してみる。

ただ、3年前に戻るだけだ。

頭の中では簡単に理解もできている。
俺の感情を抜きにして、冷静さが導き出す。

当たり前になって来た暮らしが、終わるのはどうしようもない程
辛いだろうし、耐えられない。

やばいなぁ、夕食の準備をしながら気が滅入っていく。
と言うか、さっきから軽い頭痛がしてる。

雨で冷えた体が、エアコンの冷たさで冷え固まろうとしていく。
ご飯を炊いて、味噌汁を作りメインのおかずも作りながら
あっという間に過ぎて行く時間に追われていると、

『央未、代わる。』
側に朔が来てくれた。

朔は外に出ている時と、家にいる時では少しだけ印象が違って見える。
「あ…、うん。ありがとう。」
『……なんか、しんどそう。どうした?』

じ、と朔を見ていた所に手のひらをヒラヒラされてハッとした。
「大丈夫…。ん、平気。何でもない。」

朔が俺の頬に触れて、
『顔冷たいな。シャワー、首のうしろ温めると良いよ。』
静かに笑う。

家にいる時は、どちらかと言えば穏やかでまったりしている
朔がウソみたいに優しくて。
安心して側に居られる、甘えてしまう。
「…朔って、本当に変わってる。何で俺なの?」

自分でも聞いてみたくなる時があった問い。
『体、冷えてるとさ考えもネガティブになるよな。』
不意に抱き締められて、朔の肩にもたれる。

「じゃ、温まって来たら…こんな考えも消えるのかな?」
背中を撫でる朔のあつい手のひらの感触が薄く伝わって来る。

『その頃には、きっと腹も空いてるんじゃ…あ、いや、空腹で風呂に入ると危ないって。』
「そうなの?でも、シャワーだし。実は冷蔵庫の常備してるチョコ、1粒食べたけど。」
あーあ、やだな。このままずっとこうやって
いちゃいちゃしてたいのに。現実はそうもいかない。

背伸びをして、朔の頬にキスをし腕からすり抜けた。


【朔side】
央未は放っておくと、心に俺に言えない想いをたくさん溜め込んでしまう。
顔に出やすいからまだ、分かりやすいんだろうけど。
特に、俺が帰国した時期になると思うトコロがあるらしくて
わりと、うかない顔をしている。

飽きもしないで、よく一緒に居てくれるんだな。と思う。
日々を重ねれば重ねる程に、央未からの想いが伝わって来る気がする。

空白をつくってしまった後悔に時々襲われる。
俺が央未を深く傷つけた。

だから?このせいで、もし今を一緒に居られるんだと思う事もある。
きっと、央未が聞いたら怒りそうだけど。

青白い顔で、俺を見上げてくる姿や
思い悩んでどうしようもなくなっている姿すら、俺は愛おしいと感じる。

繋がる事なんか出来なかったはずの、糸と糸を絡ませ合って
もう二度とは解けそうにない繋がり。

水中で、息をこぼしながらもがく姿を一生忘れない。
恐怖を感じると同時に、しばらくしてから確信に変わっていった。

なんとなく、放っておけない。
俺からすると央未はいつも、どこか寂しそうで。
笑顔でさえも、時々俺を不安にさせる。

友達では足りず、親友では無くて。
もっと近い立場で央未と言う人間を知りたかった。


今でこそ、多分央未の両親よりも央未の事をあらゆる角度で
理解は出来てるんじゃないかと思う。

さっきシャワーに行く前につけていたエプロンが、椅子の背に掛けてある。

「やば…。」
ちょっと、アレな記憶が蘇って来る。
もう、半年以上も経つのかと思うと、央未との日々が
いかに充足しているのか、よく分かる。

改めて央未を冷静に見ると、実は結構
容姿は華やかだ。
本人は、性格が大人しく人前に出たがらないせいで
あまり注目される事もなかった学生時代だったけど。

俺は内心ヒヤヒヤしていた。
異性ともよく話はしていたから、央未が異性からどんな風に見られて
いるのかも、それとなく知っていた。

もちろん、意図的に学生の頃はこんな事をしていた。
あの頃は、まだ央未からの俺への評価だとかがいまいち
伝わって来なかった為、苦肉の策だった。

こんな考えを持っている事を、央未に知られるのは一応嫌ではある。
俺は、央未が思っている以上にあいつの事に関しては執着が酷い。

央未は、抱き締めるとひどく安堵してくれる。
肩がすとんと下りて、ちょっと甘えた視線で俺を見上げてくる。
これが、俺の全てかもしれない。

と思わせてくれる程の感情が見える。

メインのおかずを2品作っている間に、央未がリビングに戻って来た。
部屋着に髪には、タオルを掛けたまま料理の入った器を
テーブルに運んで並べる。

頬っぺたが薄っすらと赤くなっているのを見て、ホッとした。
「温まったか?」
『うん…。実は頭痛してたんだけど。おさまったみたい。』
「気圧か~?」
『多分、この時期のものかな。』

央未はエプロンを持って、カウンターの内側に来た。
「食欲、あんだろ?」
『うん、もちろん。朔のご飯食べないなんてあり得ないから。』
「…そっか?なぁ、またお前変な事考えてたんじゃないかって。俺との事考えたりしてさ。」
『そりゃ、考えてるよ。俺もそれ程真剣なんだなって思う。』

やっぱり、言葉だけじゃ難しい。
俺の考えを寸分違わぬ様に伝える術が見えない。

「止めろとは、俺も言えない。俺は央未の気持ちを尊重してたいからな。」
『俺は、朔が女の人と結婚して家庭を持つ事を祝えるよ。』
「はぁ、…やめてくれ。思想の暴力だそりゃ。」
央未は、キョトンとして不思議そうに俺を見てくる。

『ごめん。でも、やっぱりもったいないって思うんだよ。』
「もったいなくねーよ、俺の人生全部…央未にくれてやろうって。思ってんのに。」





















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