【クソ彼氏から離れらんなくて⑭】お帰り、クソ彼氏。

あきすと

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『お前の有休を俺にくれ。』
前々から、上司に有給消化を言い渡されて来たけど
まさか、朔にまで言われるとは。

俺が風呂上りに、冷蔵庫のミネラルウォーターのボトルを取って
飲んでいると朔がソファの前に膝を立てて座っているのを立ち上がった。

「やれないよ、朔ってちょいちょい休んでるの?お前仕事なのか休みなのか分かんないもんなぁ。」
『失礼な、ちゃんとほどほどに休んでるだけだし。そうじゃなくって…俺はお前とどっか旅行にでも行きたいだけ。』

タオルで髪を拭きつつ、朔のそばに立って
「珍しい事、言うなよなぁ。ビックリする。なんか、また朔が…居なくなるのかなって。」
朔の胸に寄りかかる。
ちゃんとすぐに、俺の背中には朔の手のひらの熱が伝わって来る。

『行きたい?俺と、2人で…』
ムカつくくらいにカッコいい。同じ男として、たまーにコンプレックスを刺激される。
でも、大好きだ。こんなおかしなイケメンなんて、そうそう居ない。
誰かに見つかったらどうしよう。

「行く。有給どうせたまってるから、いっぱい休む。」
『ぇ、あー…3日くらいでいいぞ?あとできれば、週末挟む形で頼むわ。』
「んー…分かった。で、いつがいいの?」
『お前の誕生日までには。』
「そう、結構長く見てんだね。まぁ、これから暑いしなぁ。」

朔の鼓動が聞こえる。力強くて、思わず顔を見上げてみた。
ばっちり目が合って、
「!?ぅわ…っ」
髪を拭いていたタオルで目隠しをされた。

ぁ……。
キスされてる。
首がつらい。けど、そんな事言えるわけが無いし
息も苦しい。顔が熱い。

朔が俺の後頭部を左手で支えながら、唇の隙間から舌を割り込ませる。
すんなりと侵入を許してしまうと、心のタガはあっけなく外れる。
耳たぶもふにふに触られて、ゾワゾワしっぱなし。
気持ちいいのを思い出させてくれるのは、いつも朔だ。

口内の粘膜を朔の舌先が繊細に撫でる様に、絶妙なくすぐったさで
頭がおかしくなりそうなもどかしさが悩ましい。
とろとろの唾液を飲みそこないかけて、目を見開いて朔の胸を押し返した。

危ない、危ない。

没頭するのもほどほどにしないと。
『水の味する。』
「水、味…?」
『うん。結構、俺は好き。生っぽい…渇きの味がする。』

朔って、たまに不思議ちゃんみたいな事を言う。
「朔は、まだ少し煙草の味…」
『辞める気無いもん。』
「でしょうね。」
『俺は、寂しいの。わざわざ、煙草買って火を点けて吸いたいんだよ。面倒なはずなのに、何でだろうね。』
「朔が、煙草吸ってる時は結構…落ち込んでる時な気がする。」

ニコ、と朔は笑って頷く。俺はソファーの上に座る。
朔は、その下に座った。

『何だろ、反応に困る時ってのが一番合ってるかな。』
「よく言うよね、手持ち無沙汰な人が。って」
『そんなもんだよ。ポケットに手も突っ込むじゃん?あれと一緒。』
「そういえば、今日で復縁?から2年経つわけだけど…どんな心境?」

朔は、少し考えてから
『復縁じゃない。俺はすぐに帰って来るつもりだったよ。』
「うん。まぁ、3年待ったけどさ」
『何にも変わらない自信があった。お前にも…自分にもな。』
「ぁー、言いたい事分かる。」
『だろ?そりゃぁ申し訳ないとは思ったけど。無駄じゃ無かったとも思う。』
「あの頃は、俺も働き始めて慣れるまで煮詰まってたからな。」
『俺も、早く帰って来たくて必死だった。お前に逢いたくて。』

急に改めて言われると、心が騒ぐ。
物腰のやわらかい朔が、俺の方を向いて話してくれる姿が好きだ。
3年馬鹿みたいに待つよ、そりゃ。
「許さない、って思う事もあった。…けど、朔の事を思い出す瞬間なんて無いほどに」
『想いっぱなしだった…?』

こんな時に頭を撫でて来る、無防備になってしまう。
また同じ時間を重ねられる喜びを、今は毎日感じている。

悔しさも無い。
ただ、俺の想いも少し朔に知ってて欲しい。
大きく頷いて、俺はたまらずに朔に抱き着いた。

『…央未、泣いてる?』

朔は快く笑って、俺の頭を撫でては抱き締め返してくれた。
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