上 下
13 / 26

俺の声じゃダメ?

しおりを挟む
あぁ、素直に言えてればどんなに
良かっただろ。
ずっと、言わないつもりでいたから
突然、文化祭に来てくれた真幸の姿を見て俺はセリフがぶっ飛びそうだった。

演劇の世界を最初に見せてくれたのは真幸で。俺も、真幸みたいになりたくて飛び込んだ世界。
だから、いつかは一緒に同じ舞台に立てれれば、とかなんとか
一途に想い続けた相手と暮らして
早、1年。

生活にそれほど大きな変化はなく。
相変わらずの忙しい日々をお互いに送りながら、今日も平穏に1日が過ぎていく。
変わった事は、きっと…あるとしたら夜、かな。

真幸の腕の中で眠っていたら
ゆっくりとキスを額にされて
気が付いた。あとちょっとで、ゆめの入り口に立つところだった。
「まさきぃ…寝ないの?」
『…もう少しだけ千紘とうとうとしてたいけど、ムリ。』
「えぇぇ、ねむたいよ…ねようよ、真幸」
いつの間に!?と思う早さで
パジャマのボタンが外されて
胸元に、真幸が唇を寄せた。

『天乃屋星明って、知ってる?』
真幸の言葉に、ドキッとして
「だれ?それ…」
『最近、現れた声の世界で話題の人。』
「…へぇ?真幸、なんだよ…珍しく気になるの?」
一気に眠気が覚めた。
実は今、真幸には内緒でとある
プロジェクトが、進められていた。

俺とは別名義での活動を始める事となり、始めに歌とラジオで
活動し始めたのだが、まさかもう
真幸の耳にまで届いているなんて
やっぱりSNSの力は大きい。

もちろん、俺の姿は見せないで
天乃屋星明としてのイラストを
描いてもらって、キャラとしての
人格を与えられていた。
そしてこのプロジェクトは、最終目標が、真幸と自然に共演する事なのだ。
だから、バレてはいけない。
絶対に…でも、俺はなんとなく自信がないと言うのか、いつかバレないかとヒヤヒヤしていた所なのだ。

『星明くんと、千紘の声が俺は似てる気がするんだよね。気のせいかなぁ?そのせいで、近頃は星明くん推しになってしまったんだよ。』

俺に勝手ないたずらをしながら、
この真幸のおバカさんは
 別人格のもう1人の俺にハマった
事を報告してくるなんて、
愛が深過ぎやしない?
「馬鹿みたい、でも、声優さんが、推してくれるんだから、やっぱり…上手なの?俺に似てるって、どんなとこが…」
『教えない…。千紘がもーっとヤキモチ焼くまで教えない。』
「聞いた方が、ヤキモチ焼くのに…」

まんまと俺の掌の上で転がされてるのに分かってない真幸が
なんだかとても可愛く思えて。
『千紘の鳴き声が、星明くんの声に思えてくるなんて、いけない事だよね。』
どうだろう?でも、正解なんだよね。と、思いながら俺は真幸にキスをしてみせた。
晒された胸に、何度もキスの雨が降る。感覚を確認するみたいで、くすぐったくって、もどかしくて
焦れったい、

気づいて欲しくて、やっぱりイヤで
心は揺れていた。
「まさき…好きなの?その子のこと」
『声は、好きだよ。だって、千紘と似てるから』
「俺の声じゃダメ?」
『まさか、千紘の声が1番に決まってる。ほら、たくさん鳴いて?』

パジャマのズボンの上から、
性器に触れられて
「ん…っ、」
『声、我慢しないで…千紘』
「だって、まさきの…焦れったいもん」
指先でなぞったり、くすぐる様な動きに弄ばれながら、すっかり真幸のペースに持ち込まれてしまう。
お尻を真幸の指で慣らされる恥ずかしさは、今でも消えなくて
顔が熱くて、真幸と目を合わせるだけで気まずい。

自分にだけ、きっとこんな事をしてくれる真幸なんだろうとは思いながら、羞恥心の中に少しだけ
優越感が混じりだす。

猛った真幸の性器を、受け止めながら目にはいつも涙が溜まる。
感情からでは無い、生理的な涙が
出てしまう。
真幸は最初の頃は俺が泣くたびに
罪悪感に苛まれていたみたいだけど、今ではもっと泣かせたいとすら
思うらしくて、
俺はベッドで真幸に、押し潰されそうになりながら何度も
気持ち良さの先に果てそうになる。



『星明くん、ラジオ可愛いよね~千紘は聞いてないの?』
「聞かないね。」
『あ、でもなんか今日は声が少し掠れ気味だった気がする。大丈夫かなぁ?』

それは、昨夜たくさん真幸に
追い詰められてしまったからだとは
言えずにいた。
「……」
『あれ?そういえば、今日は千紘もマスクしてるし…ノド調子悪い?』
プロジェクトは半年間。
まだまだ先は長い。
能天気な真幸にバレずに
共演できるその日まで、
俺は今日も真幸を上手く誤魔化し
続けなければいけないのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

目覚ましに先輩の声を使ってたらバレた話

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
サッカー部の先輩・ハヤトの声が密かに大好きなミノル。 彼を誘い家に泊まってもらった翌朝、目覚ましが鳴った。 ……あ。 音声アラームを先輩の声にしているのがバレた。 しかもボイスレコーダーでこっそり録音していたことも白状することに。 やばい、どうしよう。

咳が苦しくておしっこが言えなかった同居人

こじらせた処女
BL
 過労が祟った菖(あやめ)は、風邪をひいてしまった。症状の中で咳が最もひどく、夜も寝苦しくて起きてしまうほど。 それなのに、元々がリモートワークだったこともあってか、休むことはせず、ベッドの上でパソコンを叩いていた。それに怒った同居人の楓(かえで)はその日一日有給を取り、菖を監視する。咳が止まらない菖にホットレモンを作ったり、背中をさすったりと献身的な世話のお陰で一度長い眠りにつくことができた。 しかし、1時間ほどで目を覚ましてしまう。それは水分をたくさんとったことによる尿意なのだが、咳のせいでなかなか言うことが出来ず、限界に近づいていき…?

風邪をひいてフラフラの大学生がトイレ行きたくなる話

こじらせた処女
BL
 風邪でフラフラの大学生がトイレに行きたくなるけど、体が思い通りに動かない話

初めてできた恋人は、最高で最悪、そして魔女と呼ばれていました。

香野ジャスミン
BL
篠田 要は、とあるレーベルの会社に勤めている。 俺の秘密が後輩にバレ、そこからトンでもないことが次々と…この度、辞令で腐女子の憧れであるBL向上委員会部のBLCD部へと異動となる。後輩よ…俺の平和な毎日を返せっ!そして、知らぬ間に…BLCD界の魔女こと、白鳥 三春(本名)白鳥 ミハルにロックオン!無かった事にしたい要。でも居場所も全て知っているミハル。声フェチだと自覚して誤解されるも親との決別。それによって要の心に潜む闇を崩すことが出来るのか。※「ムーンライトノベルズ」でも公開中。2018.08.03、番外編更新にて本作品を完結とさせていただきます。

友達が僕の股間を枕にしてくるので困る

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
僕の股間枕、キンタマクラ。なんか人をダメにする枕で気持ちいいらしい。

エレベーターで一緒になった男の子がやけにモジモジしているので

こじらせた処女
BL
 大学生になり、一人暮らしを始めた荒井は、今日も今日とて買い物を済ませて、下宿先のエレベーターを待っていた。そこに偶然居合わせた中学生になりたての男の子。やけにソワソワしていて、我慢しているというのは明白だった。  とてつもなく短いエレベーターの移動時間に繰り広げられる、激しいおしっこダンス。果たして彼は間に合うのだろうか…

処理中です...