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地獄のルームシェア(1話目の間の出来事だったりします)
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真幸さんは、俺の記憶の限りでは時々仕事で見かけるかなぁ。
くらいの存在だったと思っていたのに。
所属事務所がおんなじだって知ったのが、ごく最近だった。
マネージャーに呆れ顔をされて、
「今、うちの事務所の声優さんの中でも売れてる人なのに…。そっか、若いと
あんまり興味が無いのかな?小さな事務所から、大きくなったからね。」
マネージャーは、母親の世代程で
とても世話焼きだ。
「興味ないって言うのかな?俺、あの人ちょっと苦手だと思ってたから。」
「スクールでも、一緒になったこともあるし、千紘の演劇も見に来てくれたのに…」
「んー…、ごめん。あんまり覚えてない。」
昔から俺は、人見知りだったらしくて
あんまり視線が合うのも好きではないし、できれば
ずっと好きな音楽を聴いて、音に埋もれていたいとすら
考えている。
「千紘は、芸能界の友達いないからね。先輩として、認識しておく位は
いいんじゃない?」
あー、お小言ウルサイ。
でも、前に…俺はどうしても、どうしても
あの真幸が許せなかった。
「家に帰れば、あいつがいるんだよ?俺、ヤだって言ったのに…。」
俺が住んでいる部屋は、いわゆるシェアハウスだ。
事務所の紹介だから、安心して暮らせると思って引っ越した。
引っ越す前に、誰が住んでいるかの確認はしたけど
特に気にもしなかった。
同性だから、それに…年上で仕事真面目と聞いていれば
何の迷いもなく、おれはヤツの住む部屋に
うっかりと住む事になったのだ。
真幸も、事前に聞いてはいたらしいけど
仕事の忙しさに追われていて、それ程深くは考えていなかったらしく。
俺が、荷物を引っ越し先の真幸との部屋に運んでいる時に
とうとう、本人…真幸と遭遇してしまったのだ。
「ぇ、千紘が…住む相手?」
休日の午後から、部屋の中の荷物を移動させていると
声がした。
苦手な声…。ゾワゾワする声、ほんと、ヤメテ。
どうせいつかは、と思っていたのもあるし。
俺はもう、開き直るしかなかった。
「ハジメマシテー、明安千紘です。よろしくお願いします。」
だらーっと、お辞儀をしてみた。
いや、そもそも初めましてじゃないんだった。
「…へぇ、初めまして。俺は宮森、真幸です。って、もう何度あったか忘れちゃった?」
相変わらず、妙に優し気な猫なで声が俺は無理だった。
「さあー?どれだけ会ってもアナタのコトって、覚えて無くって。」
千紘千紘って、結構なれなれしい。
俺の苦手な要素しかない、真幸を。
昔は、事務所の同じスクールに居たなんて。
「今日から、ここに…?俺も手伝うよ」
午前中の空の部屋に来てしまった俺は、物の少なくて
シンプルな真幸の部屋の雰囲気に、大人を感じていた。
部屋には、その人が出ると言う。
まず、空間が悔しいけど良い匂いがした。
嫌味の無い、優しい匂い。
「俺は、もういい大人だから傷つかないけど…千紘は、それでいいの?」
背後からの声に、やっぱりゾクッとした。
意識すると尚更だめで、
鼓動がよく自分でも分かるくらい。
本棚に書籍を戻しながら無視をした。
「まだ、この台本…持ってるなんて」
真幸の手がすぐ後ろから伸びてきて、俺は無意識に
真幸の指先を見つめていた。
「俺の、演劇部の台本…」
「嘘、これは千紘にあげたんだよ。」
「…それくらい、覚えてる。」
「じゃあ、どうして俺との過去を、忘れたがるの?」
うぅ…右耳がもう限界…!
「…ヤメロ!!お前…、普通に話せよ…耳がくすぐったくなるんだよ!!!」
振り返って、思い切り言ってやった。
…ん?あれ…?これって、言わない方がもしかして
良かった的な?
ぁーーーー、
マズった。完全、読み違った。
真幸が、至極笑顔で俺を見ている。
逃げるコマンド、逃げるコマンド…。
「あぁ、そういう事ね…。」
とうとう、俺が触れないようにしていた
真幸へのアレコレが、バレてしまう日が来たのかもしれない。
くらいの存在だったと思っていたのに。
所属事務所がおんなじだって知ったのが、ごく最近だった。
マネージャーに呆れ顔をされて、
「今、うちの事務所の声優さんの中でも売れてる人なのに…。そっか、若いと
あんまり興味が無いのかな?小さな事務所から、大きくなったからね。」
マネージャーは、母親の世代程で
とても世話焼きだ。
「興味ないって言うのかな?俺、あの人ちょっと苦手だと思ってたから。」
「スクールでも、一緒になったこともあるし、千紘の演劇も見に来てくれたのに…」
「んー…、ごめん。あんまり覚えてない。」
昔から俺は、人見知りだったらしくて
あんまり視線が合うのも好きではないし、できれば
ずっと好きな音楽を聴いて、音に埋もれていたいとすら
考えている。
「千紘は、芸能界の友達いないからね。先輩として、認識しておく位は
いいんじゃない?」
あー、お小言ウルサイ。
でも、前に…俺はどうしても、どうしても
あの真幸が許せなかった。
「家に帰れば、あいつがいるんだよ?俺、ヤだって言ったのに…。」
俺が住んでいる部屋は、いわゆるシェアハウスだ。
事務所の紹介だから、安心して暮らせると思って引っ越した。
引っ越す前に、誰が住んでいるかの確認はしたけど
特に気にもしなかった。
同性だから、それに…年上で仕事真面目と聞いていれば
何の迷いもなく、おれはヤツの住む部屋に
うっかりと住む事になったのだ。
真幸も、事前に聞いてはいたらしいけど
仕事の忙しさに追われていて、それ程深くは考えていなかったらしく。
俺が、荷物を引っ越し先の真幸との部屋に運んでいる時に
とうとう、本人…真幸と遭遇してしまったのだ。
「ぇ、千紘が…住む相手?」
休日の午後から、部屋の中の荷物を移動させていると
声がした。
苦手な声…。ゾワゾワする声、ほんと、ヤメテ。
どうせいつかは、と思っていたのもあるし。
俺はもう、開き直るしかなかった。
「ハジメマシテー、明安千紘です。よろしくお願いします。」
だらーっと、お辞儀をしてみた。
いや、そもそも初めましてじゃないんだった。
「…へぇ、初めまして。俺は宮森、真幸です。って、もう何度あったか忘れちゃった?」
相変わらず、妙に優し気な猫なで声が俺は無理だった。
「さあー?どれだけ会ってもアナタのコトって、覚えて無くって。」
千紘千紘って、結構なれなれしい。
俺の苦手な要素しかない、真幸を。
昔は、事務所の同じスクールに居たなんて。
「今日から、ここに…?俺も手伝うよ」
午前中の空の部屋に来てしまった俺は、物の少なくて
シンプルな真幸の部屋の雰囲気に、大人を感じていた。
部屋には、その人が出ると言う。
まず、空間が悔しいけど良い匂いがした。
嫌味の無い、優しい匂い。
「俺は、もういい大人だから傷つかないけど…千紘は、それでいいの?」
背後からの声に、やっぱりゾクッとした。
意識すると尚更だめで、
鼓動がよく自分でも分かるくらい。
本棚に書籍を戻しながら無視をした。
「まだ、この台本…持ってるなんて」
真幸の手がすぐ後ろから伸びてきて、俺は無意識に
真幸の指先を見つめていた。
「俺の、演劇部の台本…」
「嘘、これは千紘にあげたんだよ。」
「…それくらい、覚えてる。」
「じゃあ、どうして俺との過去を、忘れたがるの?」
うぅ…右耳がもう限界…!
「…ヤメロ!!お前…、普通に話せよ…耳がくすぐったくなるんだよ!!!」
振り返って、思い切り言ってやった。
…ん?あれ…?これって、言わない方がもしかして
良かった的な?
ぁーーーー、
マズった。完全、読み違った。
真幸が、至極笑顔で俺を見ている。
逃げるコマンド、逃げるコマンド…。
「あぁ、そういう事ね…。」
とうとう、俺が触れないようにしていた
真幸へのアレコレが、バレてしまう日が来たのかもしれない。
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